【関連作品】火を噴く惑星(Планета бурь)
キューブリックが『2001年宇宙の旅』を製作するにあたり参考に観た映画のひとつ。
旧ソ連製のSF映画で、あらすじは「金星探査に向かったソ連の宇宙船三艇の内、一艇が隕石と衝突して破壊されてしまう。それにも挫けずソ連人民と共産党の期待に応えるべく残りのクルーで金星探査を続行するが、そこには人間を喰らう植物や恐竜、荒ぶる火山などが行く手を阻む・・・」という物語。
未知の惑星探査、謎の声と先史文明の存在、クルーの相棒的存在のロボットなど『禁断の惑星』の影響をかなり感じさせますが、宇宙服や水陸両用車のデザインなどは一周回ってかなりかっこ良く感じます。宇宙船のセットや特撮にもそれなりにお金がかかっているし、人間を裏切るロボットがアメリカ製であるなどプロパガンダ臭もあるので当時の共産党宣伝部が真面目に、それなりのお金を使ってつくったんだろうなあ、とは思います。
まあでも水や海や植物まであって火まで起こしているのに、いつまで宇宙服着っぱなしなの?とか、なんでもかんでも敵とみれば銃をぶっ放すのはどうなの?とか、突っ込みどころは満載ですが、それはそれ、1961年の映画なので大目に見てあげましょう。
でもこのストーリー、キューブリックやクラークが当初構想していた『2001年…』のプロットの
「地球外の人工物体との出会いを、発端ではなくクライマックスに置くというものだった。その手前では、いろいろな事件なり冒険をとおして、月や惑星の探検が描かれるという趣向だ」(引用『失われた宇宙の旅2001』)
とそっくりなんですが。まさかパクっ・・・たわけではないでしょうけど、この作品を反面教師としたのなら『2001年…』にインスパイアを与えたと言えなくもありません。キューブリックはそのジャンルの映画を撮ると決めると、リサーチも兼ねてありとあらゆる同ジャンルの映画を見たそうです。ですので「キューブリックが観た=影響を受けた」と自慢げに知識を語る方々は、肝心の「キューブリックはリサーチマニアだった」という基礎的な知識が欠落しているか、その程度の知識もなくアクセス欲しさに語っているんでしょうね。「どんな映画でも学ぶべき点はある」とはキューブリックの弁ですが、それは「愚作を観れば愚作にならずにならずに済む方法も学べる」という意味を含んでいます。つまり「反面教師」ということです。
余談ですがこの作品、かのB級映画の帝王ロジャー・コーマンが安価で買いたたき、事もあろうに改作映画を2本(『原始惑星への旅』、『金星怪獣の襲撃』)を製作、上映したそうです。