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【関連動画】キューブリックによってボツにされたアレックス・ノースによるオリジナル録音の『2001年宇宙の旅』のサントラ

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   キューブリックがアレックス・ノースに依頼していた『2001年宇宙の旅』のサントラを、大急ぎで録音までしていたのに全てボツにしたのは有名な話ですが、そのボツにした音源がYouTubeにありましたのでご紹介。  このスコア自体は『2001年~デストロイド・ヴァージョン~オリジナル・スコア』としてジェリー・ゴールドスミス指揮により再録音され、CD化されている(詳細は こちら )のですが、上記の音源は1968年1月15・16日にヘンリー・ブラント指揮で演奏されたもの。つまりノースが体調不良で病院からストレッチャーで現場に運ばれてまで録音したものになります。  そんな苦労話を知っているとついノースに同情したくなってしまうのですが、『Bones』を聴くとどうしても『ツァラ…』が頭をよぎってしまいます。キューブリックは既存曲の仮サントラをノースに聴かせていたのだからそれは仕方ないことかも知れないですが、やはり旧来のハリウッド映画のサントラの域は超えておらず、キューブリックがボツにしたのも納得せざるを得ません。もちろんノースは音楽を映画の主役とは考えておらず、そのシークエンスを効果的に盛り上げるものだと思っていたはず。対するキューブリックは「(映像と)音楽は主役」ですから、このコラボは最初から上手くいくはずがなかったのかも知れません。  上記動画は6曲までしか聴けませんが、Spotifyでは全曲聴けます(リンクは こちら )。どう贔屓目に見ても『ツァラ…』『ドナウ』そしてリゲティのインパクトには及びませんが、ノースの苦労はしのばれます。こうしてオリジナル音源が聴けるようになって、より一層その思いを強くしますね。

【関連動画】イギリスの国立映画・テレビ学校で『2001年宇宙の旅』の白い部屋のミニチュア制作と、それを使ってCG合成の授業をしている動画

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 イギリスの国立映画・テレビ学校(The National Film and Television School)とは、1971年に設立されたバッキンガムシャー州ビーコンズフィールドにある、ビーコンズフィールドスタジオを拠点とする映画、テレビ、ゲームの学校です。その授業の一環として『2001年宇宙の旅』の白い部屋のミニチュアモデルを製作し、後にCGと合成するという内容の動画がありましたのでご紹介。  なぜ『2001年…』が選ばれたのかはわかりませんが、ロンドン芸術大学内にある「スタンリー・キューブリック・アーカイブ」から詳細な資料を手に入れることができるから、というのはあるでしょう。とっても羨ましい限りですが、ボーマンを演じたキア・デュリアが『2001年…』公開時に語った、「2001年にはきっと、ニューヨークの53番街にあるおんぼろビルで子供たちがこの映画を勉強しているに違いない」が実現したことになります。もっとも「2022年に」「イギリスの」「施設の整った映画学校で」ですが。そう考えるとなかなか感慨深いものがありますね。

【パロディ】『2001年宇宙の旅』でボーマンとプールが食べていた「ディストピア飯」が登場したアニメのまとめ

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エヴァQでシンジ君が食べていた、いかいも不味そうな「ディストピア飯」   ここ数年ですっかりネットミームとして定着した感のある「ディストピア飯」。その元ネタは『2001年宇宙の旅』でボーマンとプールが食べていた宇宙食だと言われています。まあそれが事実かどうかは置いといて、エヴァQでシンジ君が食べていた不味そうな食事がその普及に一役買ったのは間違いないでしょう。この記事ではアニメに登場したいわゆる「ディストピア飯」をまとめてみました。 タイトル:『学園アイドルマスター』ゲーム本編内OPアニメーション 制作:2024年 作った人:料理が得意な花海咲季 作った飯:アスリート向けの食事「トップアイドル養成ごはん」 タイトル:『月とライカと吸血姫〈ノスフェラトゥ〉』第2話『宇宙飛行士への道』 制作:2021年 食べさせられた人:イリナ・ルミネスク 食べさせられた理由:宇宙飛行士訓練施設の食堂で出された宇宙食。 タイトル:『ダーリン・イン・ザ・フランキス』第16話『ぼくたちの日々』 制作:2018年 食べさせられた人:13部隊のコドモたち 食べさせられた理由:第13都市に配給された食料。 タイトル:『遊戯王VRAINS』第19話『闇に葬られし事件』 制作:2017年 食べさせられた人:藤木遊作 食べさせられた理由:少年時代の遊作が監禁された際に出された食事。 タイトル:『金田一少年の事件簿R』第11話『獄門塾殺人事件 ファイル2』 制作:2014年 食べさせられた人:金田一 一と太陽荘の生徒 食べさせられた理由:獄門塾の太陽荘で出された勉強食。 タイトル:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』 制作:2012年 食べさせられた人:碇シンジ 食べさせられた理由:連れてこられた旧ネルフ本部で出された食事。 タイトル:『ノエイン もうひとりの君へ』第6話『ナミダノジクウ』 制作:2005年 食べさせられた人:上乃木ハルカ 食べさせられた理由:ラクリマ時空界の独房で出された食事。 タイトル:『機動新世紀ガンダムX』第37話『フリーデン発進せよ』 制作:1996年 食べさせられた人:パーラ・シス 食べさせられた理由:フリーデンの食堂でパーラ・シスたちが食べていた食事。 タイトル:『新世紀エヴァンゲリオン』第6話『決戦、第3新東京市』 制作:1995年 食べさせられた人:碇シンジ 食べさ...

【関連記事】評論家は堕落する~ジョン・ホフセズによるキューブリックのインタビュー(1980年5月)

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The Shining(IMDb)  ロンドンより—『シャイニング』はスタンリー・キューブリックの「超ヒット作」(『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』の半分の成績でもいい、と彼は私に言った)であり、スコアの値を均等にするための試みである。『シャイニング』が商業的に成功すればキューブリックにとって、彼の基本的な信念のひとつが正しいことを証明することになる。「もしある物語に私が十分に興味を持ち、2、3年かけて映画化するならば、他の多くの人々も同様に興味を持つだろうと私は信じている。もし映画の出来が良ければ、配給会社や興行主が売り込みで致命的なミスをしない限り、適切な観客を見つけられないことはないだろう」 興行成績についての記述なので〈中略〉 「『シャイニング』を選んだのは、商業的な価値だけではない」とキューブリックは言う。「ある物語が私の注意を引くためには、それが映画的な可能性を持っていなければならない。映画で何ができるかを考えるうちに、ますます興味が湧いてきたら、私は決断を下す。ワーナー・ブラザーズが送ってくれたスティーブン・キングの小説に興味を持ったのは、読者に次の展開を予想させる方法だった。この小説には独創的な物語があり、私は魅力を感じたのだ」  『シャイニング』はキューブリックの最高傑作でもなければ、最大の賭けでもないが、大勢の観客とつながりを持とうとする彼の最も野心的な試みである。「私は映画で華々しい成功を収めたことがない。私の評判は徐々に高まってきており、多くの人が私のことをよく話してくれるという点で、私は成功した映画監督と言えるかもしれない」(ジャック・クロールが『シャイニング』を「最初の壮大なホラー映画」と呼んだニューズウィーク誌5月26日号が、彼が話している目の前に置かれている) 「だが、私の映画で満場一致で好評を博したものでもないし、大ヒットしたものもない」  しかし、私との会話の中には、キューブリックが18年間イギリスに住みながら、アメリカ映画を作ることができるという映画界のあらゆる疑念に証明したいのだということがしつこく示唆されている。これは、彼が実際には無申告の国外居住者であり、ポーリン・ケールが『バリー・リンドン』のレビューで主張したように、彼のアメリカのルーツから切り離されたという見方に対する対抗措置だ。  ブロンクスで育ち、映画に熱中していた...

【ブログ記事】カーク・ダグラスがスペインで『スパルタカス』の戦闘シーンを撮影中のキューブリックに宛てた手紙

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 スタンへ  便りがないのは良い便りだということを願っています。すべてが順調に進んでいると信じています。こちらでできることがあれば何でも言ってください。  その間、私に手紙を送って、何を作っているのかを知らせてください。  こちらではすべてがいつも通りに進んでいます。キムはヒステリックに、ディック・クワインは感情的に動揺していますが、もちろん私はどうということではないだろうと知っているので、そのまま進めています。  アーヴィンからフットボールの試合のサウンドトラックを手に入れたことを聞いたでしょう。どうやら彼らは非常に上手くやったようです。  もし何かの助けになるのなら。私はあなたとあなたの軍隊のことをしょっちゅう考えています。 カーク・ダグラス  カーク・ダグラスがスペインで『スパルタカス』の戦闘シーンを撮影中のキューブリックに宛てた手紙がありましたのでご紹介。ずいぶんと心配しているようですが、カークはスペインのロケには行っていないんですね。戦闘シーンを見るとスペインで撮ったロングの画と、ハリウッドで撮った寄りの画を上手く編集でつないでいます。改めてこのシーンを見ると、キューブリックは『ナポレオン』でこれがやりたかったんだろうなあ・・・としみじみ思ったり。当のキューブリックは妻のクリスティアーヌと一緒だし、うるさいカークもいないことから新婚旅行気分だったかも知れませんが、スペインから帰りの飛行機が生涯最後の飛行機搭乗になってしまいました。かなり揺れて酷い目に遭ったという話があるのですが、ソースが見つかればまた記事にしたいと思います。

【関連記事】『片目のジャック』『スパルタカス』『ロリータ』『博士の異常な愛情』・・・2002年に行われたキューブリックの盟友、ジェームズ・B・ハリスのインタビュー

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左からキューブリック、ハリス、スー・リオン、セブンアーツのエリオット・ハイマン、ジェームズ・メイソン。『ロリータ』のプレミアにて ジェームズ・B・ハリス :キューブリックと私が『突撃』を完成させたとき、マーロン・ブランドが私たちに電話をかけてきて、君たちと一緒に映画を作りたいと言ってきたんです。彼は『現金に体を張れ』と『突撃』を見て、私たちとビジネスでやっていくべきだと思ったんです。一緒に映画を作る計画を立てようとミーティングを始めたんですが、どんな映画を作るかについてマーロンと合意することができませんでした。それは私たちの好みが全く違っていたのか、あるいは彼がスタンリーに『片目のジャック』を撮らせるためにずっと交渉していたのか、どちらかだと思うんです。この種の会議を何度も何度も重ねた末に、彼は最終的にそれを私たちに押し付けたのです。パラマウント社での義務があるのだからハリスには素材を探し続けさせて、その間にスタンリーと私で『片目のジャック』をやろうと。彼がずっと望んでいたのは、スタンリーに監督してもらうことだったと思いますが、それが発展して自分が監督したいと思うようになったのでしょう。  私が『ロリータ』の権利を得た時には、スタンリーは『片目のジャック』の仕事を終えていました。マーロンはスタンリーにとって非常にやりにくい相手となり、スタンリーは自分が認めた相手以外とは仕事をしたことがなかったのです。私たちはとにかく同じように感じていたので、誰かに説明することもありませんでした。そして私たちは『ロリータ』の仕事に戻り、脚本を練り上げることになったのです。スタンリーはもうパラマウントでマーロン・ブランドと仕事をしていなかったので、自分たちのオフィスに戻るとすぐに電話が鳴りそれはカーク・ダグラスからで、『スパルタカス』の件で困っているのでスタンリーに監督をやってもらえないか、ということでした(※評伝では自宅でポーカーをしているとき、となっていた)。ダグラスは3日間の撮影でアンソニー・マンをクビにしました。まあ、私はスタンリーがマーロンと終わるのを待っていたのだから、ある意味落ち込みました。幸運にもその取引は決裂し、スタンリーは映画を撮らずに去っていました。私たちは『ロリータ』の脚本を練り始め、そこに『スパルタカス』の話が舞い込んできました。私たちは、スタンリーが大きなク...

【関連動画】『アイズ ワイド シャット』に使用されたリゲティのピアノ曲『ムシカ・リセルカタ』全曲の演奏動画

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 『アイズ ワイド シャット』で使用されたリゲティのピアノ曲『ムシカ・リセルカタ』(動画では『ムズィカ・リチェルカータ』)は「II」ですが、この動画の説明文によると「Mesto, rigido e cerimoniale / 悲しげに、粗く儀礼的に」とあります。11曲全曲通して聴くとそこまで難解な印象はありません。実はこの曲、1曲目が2音、2曲目が3音・・・というように使う音が増えていき、最後に12音全部使うというアイデアで構成されているのです。1曲目はドミナント(ラ)のみ弾き、最後にトニック(レ)を弾いて「今まで聴いていたのはドミナントだったのか!」と驚くという曲。2曲目は『アイズ…』で使われた曲ですが、まずはファとファ#の2音だけ使い、いきなり「ソ」を突っ込んでくるという曲。リゲティはこれを「スターリンの胸に突き刺すナイフ」と語っています。3曲目はC(ドミソ)とCm(ドミbソ)を繰り返すことによって諧謔性を表しているそう。あとはとてもわかりやすい解説動画がありましたので、 こちら をご覧ください。絵画でも詩でも古戦場(!?)でもなんでもそうですが、知識があって摂取するのと、なくて摂取するのでは全然違いますね。ぜひ生演奏を聴いたみたいものです。  ところでこの曲、サントラCDではドミニク・ハーランとクレジットされているのですが、それはピアノ演奏したのがドミニク(ヤン・ハーランの次男)というだけであって、作曲したのはリゲティです。誤解を招きやすい表記なので間違わないようにしましょう。

【家族】キューブリックの孫、サム・キューブリック=フィニーが「KUBRICK」のアーティスト名で音楽活動再開、ただいまMV公開中

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  デスメタルバンド、シールズのボーカル兼ギターで活躍していたキューブリックの実孫(次女アンヤの一人息子)サムくんですが、やっと音楽活動を再開したようです。  シールズは2018年にメンバーが自殺してしまうという残念な終わり方をしてしまったのですが、今度は随分とデジタルでダンサブルな感じですね。とりあえず活動はYouTubeが中心のようですが、2022年4月23日にロンドンでギグも決まってるみたいですし、機会があればぜひ来日していただきたいです。まあ、ご本人はおじいちゃんを全然憶えていないと思いますけど。  KUBRICKのlinktreeは こちら をどうぞ。