【ブログ記事】米アマゾンプライムで配信中の『フルメタル・ジャケット』の見出し画像にあった「Born To Kill」の文字を消去した問題で主演のマシュー・モディーンが批判(現在は訂正済)

現在はこの画像に差し変わっている

 「BORN TO KILL」を削除することを決めたのは誰でしょうか? フィリップ・キャッスルの象徴的な芸術作品を変更しただけでなく、そこにそれが存在する意味を完全に誤解しています。ジョーカー二等兵は、「BORN TO KILL」とピースボタンが付いたヘルメットをかぶっていますが、これは「人間の二面性」についての声明です。

(引用:X@MatthewModine

これを引用し、管理人がコメント

 『フルメタル・ジャケット』でジョーカーを演じたマシュー・モディーンがアマゾンプライムビデオの「BORN TO KILL」を削除したことに抗議。今のところトップ画像だけの模様。ポリコレもここまで来るともはやファシズム。

(引用:X@KubrickBlogjp



 マシューの元のポストに投稿された他の方の指摘によると

(1)画像に文字が入っていると上に文字が乗った際に見辛くなるので消しただけ

(2)画像に文字を入れるのを許可すると、権利元が宣伝コピーを入れた画像を載せようとするから禁止というルールがAmazonにある。

との理由が示されていますが、このコメントはAmazonからの公式な説明ではない(関係者か事情通かも不明)ことに注意が必要です。その上で、この説明に説得力がないことを以下に示します。

(1)ならば「Born To Kill」の文字をぼかせば済む話だし、その方が手間もかからず簡単。もっと言えばシーンの画像(宣材写真)と入れ替えれば良い(現状はそうなっている)だけであって、であればなぜPhotoshopなどで文字を「消去」し、消した跡が不自然にならないようにきれいに「加工」してあるのかの説明にはなっていない。

(2)これも(1)同様に、わざわざ「Born To Kill」を手間をかけて消去した理由にはなっていない。画像差し替えで十分に対応可能。

この問題の悪質な点は、このヘルメットのキービジュアル(キューブリックがアイデアを出し、フィリップ・キャッスルがイラストを描いた)の、「Born To Kill」の文字がないバージョンを初めてみた際、それをそのまま受け入れてしまう危険性がある、という点です。それぐらい自然な形で「消されて」います。かつての北の大国で、粛清者が写った写真の該当部分を自然な形で消し去った有名な話がありますが、それに似た「恐ろしさ」を感じます。繰り返しますが、もし「指摘者」の言う通りなら「Born To Kill」部分をボカす(これも良くないが、少なくとも「見せてはいけない何かがあるな」というのは伝わる」)か、他画像に差し替えれば問題は解決です。ですがAmazonはわざわざ画像加工の手間をかけてまで作品を「改竄」したのです。これはプラットフォーマー(権力者)が、パフォーマー(表現者)の意図を捻じ曲げて、自分の思想に都合の良い情報だけを大衆に伝えようとする「作為」の可能性を疑わざるを得ません。もしそれが誤解だと言うのなら、上記の(1)(2)の説明が説得力を持っているはずです。ですが、私には全くそれは感じられませんでした。

 また、これはAmazonだけの問題ではなく、行き過ぎたプラットフォーマーの「検閲」「干渉」によってオリジナル作品が台無しにされている現状があります。ハリウッドでも度々話題になっており、日本では自殺者まで出す騒ぎになったのは記憶にも新しいところです。これが単に「読みやすさの優先や過剰な宣伝をさせないための方策」なのか、「ハリウッドに巣食うある勢力の圧力に屈した結果」なのか、私たち映画ファンは絶対に無関心であってはいけません。また、プラットフォーマー(権力者)側の言い分を鵜呑みにしてはいけません。それは映画の未来(過去や歴史も)を左右する大きな問題だからです。故に常に注視する必要があるのです。故の過激な私のコメントです。

 なお、現在該当部分は宣材写真に差し替えられて</a>います(最初からこうすべき)が、現在に至ってもAmazonはこの件に関して正式なコメントは出していません。不誠実極まりないですね。

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