【考察・検証】「フィクション」を「ドキュメント」するカメラマンの眼


  ハイスクール時代からカメラに親しみ、その写真を写真報道誌『ルック』に採用されるほどの実力を持っていたキューブリックは、その後その『ルック』に入社、報道カメラマンとして全米各地や時には海外まで出かけ、やがてドキュメンタリー映画を手掛ける事になる。

 その「ドキュメンタリー作家」としての感性は、映画監督になってからも如何なく発揮され、作品内の何処にも、また誰にも自己投影せず、答えを描ききったり、詳しい説明も避け、明解な意図も、意志も提示しない…といったキューブリック独特の、一種超然とした視点から語られる物語は「ドキュメンタリー作家」ならではのもの、と言えるのではないだろうか。

 つまりキューブリックは結局のところ、根っからのカメラマンであり、ジャーナリストなのだ。狂った世界を、歪んだテクノロジーを、人間の醜悪さを暴きだすために、自らが創りだした「世界(フィクション)」を、自らのカメラで「報道(ドキュメント)」する。それが例え、一般的な観客を置き去りにしてしまうことになったとしても、劇的な興奮が欠落していても、だ。

 キューブリックが描き出し、切り取った映像に意味や意図を見出すのは、観客である我々の仕事なのだ。ただ漫然とスクリーンを眺めているだけでは、その真意は全く伝わらない。キューブリックと真剣に対峙するつもりのない観客に、キューブリック作品を批評する資格などないのだ。

TOP 10 POSTS(WEEK)

【台詞・言葉】ハートマン先任軍曹による新兵罵倒シーン全セリフ

【考察・検証】作品タイトルを『短期除隊兵(ショート・タイマーズ)』から『完全被甲弾(フルメタル・ジャケット)』に変更したキューブリックの真意とは

【関連書籍】戸田奈津子 金子裕子著『KEEP ON DREAMING』で語った、『フルメタル・ジャケット』翻訳家降板事件の戸田氏の言い分

【台詞・言葉】『時計じかけのオレンジ』に登場したナッドサット言葉をまとめた「ナッドサット言葉辞典」

【関連記事】原田眞人氏が『フルメタル・ジャケット』のセリフ翻訳担当の経緯と、その作業内容を語ったインタビュー記事

【関連動画】4K UHD『時計じかけのオレンジ』とDVD、BDの画質を比較した動画

【関連動画】2種類あるDVD、BD、UHD BD収録の『2001年宇宙の旅』オリジナル劇場予告編

【考察・検証】『アイズ ワイド シャット』の儀式・乱交シーンについてのスタッフの証言集[その1]儀式シーンのリサーチについて

【台詞・言葉】黒んぼ定食(Chicken and Watermelon)

【パロディ】『2001年宇宙の旅』でボーマンとプールが食べていた「ディストピア飯」が登場したアニメのまとめ