【作品論】『恐怖と欲望』(原題:Fear and Desire)

Fear and Desire(IMDb)

 キューブリックの自主製作映画第1弾。また、記念すべき映画監督デビュー作。だが、残念なことにキューブリック自身が、この作品を「不器用で思い上がっている」として忌み嫌い、封印してしまったため、現在では見ることができない。だが、どういうわけかネガが流出してしまい、1991年のにはコロラド映画祭で、1994年にはニューヨークのフィルム・フォーラムで上映されてしまう。それに対してキューブリックは「訴訟も辞さない」と強硬な態度を取っている。

 だが、資料を読み解く限り、キューブリックがそこまで忌み嫌う程の愚作とは思えない。ストーリーは、架空の国の戦争が舞台で、山中に不時着した小隊が、敵の前線をいかだを使って突破する途中、敵のアジトを発見し、それを襲撃するというもので、印象的なダイアローグと詩的な映像で、極限状況における人間の精神状態と自己のとの対峙(敵と味方が同一の役者で演じられている)といったテーマが語られているという。

 製作資金は裕福な叔父のパーヴィラーに借り、スタッフは、ニューヨークのビレッジで知りあった仲間を総動員し、カリフォルニアのサン・ガブリエル山脈でロケが行われた。そのスタッフの中には、当時のキューブリックの妻、トーバも台詞監督として参加している。また、キューブリックは当時、アフレコの技術に疎く、撮影よりもアフレコに多くの費用と時間を費やしてしまったというエピソードが、いかにもカメラマン出身のキューブリックらしい。

 当然、未見なので、あまり多くは語れないが、その後のキューブリックが一番多く扱ったジャンル(戦争物)でもあるし、ファンなら当然気になる作品だ。是非再上映、それが無理ならビデオソフトリリースでも構わないので。ワーナーや、キューブリック・プロの方には、是非検討していただきたい。

※未見時の論評

初出:2006年6月27日

 

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