【サウンドトラック】ミュージック・フロム・ザ・サウンドトラック 時計じかけのオレンジ(Music From The Sound Track A Clockwork Orange)
- Title Music from A Clockwork Orange (2:25)「時計じかけのオレンジ」タイトル・ミュージック|Wendy Carlos, Rachel Elkind / Wendy Carlos
- Rossini: The Thieving Magpie (Abridged) (5:57)「泥棒かささぎ」序曲|Gioachino Rossini
- Theme From A Clockwork Orange (Beethoviana) (1:48)ベートヴィアーナ|Wendy Carlos, Rachel Elkind / Wendy Carlos
- Beethoven: Symphony #9 - .2 (Abridged) (3:52) 交響曲第9番「合唱」 ~第2楽章|Ludwig van Beethoven
- March From A Clockwork Orange (Ninth Symphony, Fourth Movement, Abridged) (7:06)「時計じかけのオレンジ」~マーチ|Ludwig van Beethoven / Wendy Carlos, Rachel Elkind
- Rossini: William Tell - Overture (Abridged) (1:20)「ウィリアム・テル」序曲 ~スイス軍隊の行進|Gioachino Rossini / Wendy Carlos
- Elgar: March #1, "Pomp & Circumstance" (4:35) 行進曲「威風堂々」第1番|Edward Elgar
- Elgar: March #4, "Pomp & Circumstance" - (Abridged) (1:38) 行進曲「威風堂々」第4番|Edward Elgar
- Timesteps (Excerpt) (4:18) タイムステップス|Wendy Carlos / Wendy Carlos
- Overture to the Sun (1:46) 太陽の序曲|Terry Tucker
- I Want to Marry A Lighthouse Keeper (1:04) ぼくは灯台守と結婚したい|Erika Eigen / Erika Eigen
- Rossini: William Tell - Overture (Abridged) (3:02)「ウィリアム・テル」序曲 ~夜明け|Gioachino Rossini
- Beethoven: Symphony #9 - .2 (Abridged), Scherzo, "Suicide" (3:09) 自殺スケルツォ|Ludwig van Beethoven / Wendy Carlos
- Beethoven: Symphony #9 - Mvt. #4 (Abridged) (1:38) 交響曲第9番「合唱」 ~第4楽章|Ludwig van Beethoven
- Singin' In The Rain (2:37) 雨に歌えば|Nacio Herb Brown, Arthur Freed / Gene Kelly
これは、クラッシックや現代音楽、そしてポップ・ミュージックまでも大胆に導入し、前作『2001年…』に匹敵、もしくは凌駕するのではないかと思える程、映像と音楽のシンクロを完全に成し遂げたサントラの傑作だ。何故なら、このサントラを聴くだけで映画を完全に追体験できる程、高い完成度を誇っているからだ。
ここで、作曲・アレンジ・演奏と大車輪の活躍を見せてくれるウォルター・カルロス(後に性転換、現在はウェンディー・カルロス)は、1968年にモーグ・シンセサイザー(現在のシンセサイザーの元祖。当時はアナログ音源を使用していた)を駆使したアルバム『スウィチ・オン・バッハ』を発表し、一躍脚光を浴びたシンセ界の巨匠で、当時のポップ・ミュージックに多大な影響を与えた事で知られている。キューブリックは、原作のベートーヴェンの扱われ方と、近未来的なイメージを両立するためにカルロスを起用したと思われるが、これ以上の的確なキャスティングはないと言っていいだろう。
また、クラッシックからの選曲も、いかいにもキューブリックらしい皮肉(廃虚と化したオペラ・ハウスでのレイプ・シーンには「泥棒かささぎ」、刑務所での内務大臣視察シーンには「威風堂々」といった具合)に満ちていて観るものをニヤリとさせてくれる。
サントラを聴きながら、アレックスの、まるでバレエやダンスを踊るように繰り返される暴力シーンを思い返していると、この映画は、史上初めての(以降も実現しそうにない)「暴力オペラ映画」、もしくは「暴力ミュージカル映画」と言えるのではないだろうか?だとすると、「サウンド・オブ・ミュージック」や、「ウエストサイド物語」等とおなじカテゴリーということになってしまう…(何たる皮肉!)アルバムのラストで痴呆的に流れる「雨に唄えば」が、その感をより一層強くさせているのかもしれない。
「第九」や「雨に唄えば」のイメージを根底から覆す力を持つ映画とこのサントラ。年末や雨の日のにハッピーな気分でいたい向きには絶対お薦めできないが、その負の魔力に取り付かれたものには、常備しておきたい必携の一枚だ。