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【ブログ記事】『アイズ ワイド シャット』の未公開シーンの撮影風景3枚

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   『アイズ ワイド シャット』の未公開シーン。どの画像もアリスが海軍士官との浮気願望を覚えた、夏の休暇で行ったケープコッドのシーンだと思います。1枚目は「ザ・スタンリー・キューブリック・アーカイブ」にも掲載がある、以前から知られていたボート遊びのシーン、2枚目はニコール・キッドマンが乗馬をしているシーン、3枚目は珍しいトム・クルーズが自転車に乗るシーンです。  ケープコッドはwikiによるとアメリカ東海岸の有名な避暑地で、ケネディの別荘があることでも知られているそうです。日本で言えば軽井沢のようなイメージでしょうか?原作小説『夢奇譚』では一家の休暇はデンマーク(舞台はウィーン)だったのですが、秘密のパーティーのパスワードもデンマークであったため「偶然にしてはできすぎ感がある」ということで、避暑地はケープコッド、パスワードは「フィデリオ」に変更したのだと思います。そもそも舞台が19世紀末のウィーンから20世紀末のニューヨークに改変されているので「デンマーク」は使うことはできませんでしたが。  キューブリックの飛行機嫌いのため、撮影はアメリカのケープコッドで行われたはずがなく、似た風景のおそらくロンドン郊外のどこかだと思います。原作小説でもこの休暇のくだりはあまり重要ではないので、撮影をしていたこと自体が驚きなのですが、どのシーンも「休暇といえばサイクリング、乗馬、ボート遊び」的なありきたりなシチュエーションですし、回想シーンの予定でしょうから映画でも重要度は低いですね。カットするかもしれないけどとりあえず念のために撮影しておいた・・・という程度だと思います。

【関連動画】時代を先取りした映画Top10ランキング

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 「時代を先取りした」という定義が曖昧ですが、まあ順当のようなそうでもないような・・・。でも、キューブリック作品が2作品(おまけ含めると3作品)ランクインというのは喜ばしいことであります。たとえナレ声に若干の違和感を感じるmojoさんであっても(謎。  1位は皆さんご存知で、なおかつ誰もが納得のいくキューブリック作品が選ばれています。今現在もなお時代を先取りし続けていると言う意味でも画期的な作品です。この作品が自分たちと同時代にこの世に存在すると言う幸せを、もっと特別なことと感じるべきかもしれませんね。

【関連動画】キューブリック vs スティーブン・キング!映像化された両者の『シャイニング』を同時表示して比較した動画

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 両作品を同時表示していますので両者の違いが分かりやいですね。キューブリック版は141分の北米版です。こうしてみるとスティーブン・キングの『シャイニング』も悪くない気がしますが、よく言えば描写が丁寧、悪く言えば会話が冗長なので、ここまで刈り込んだことでよく見えるだけなのかもしれません。  ちょっと思うのは、キング版の廊下の消防ホースは、比較するなら「双子の少女」だと思います。あとよく言われることですが、公開年が17年も違うのにキューブリック版の方が古さを感じさせません。「予算のかけ方が違う」という話もありますが、キング版は全3話のミニシリーズに映画並みの予算をかけたそうです。  しかし、何度見ても気になるのがジャック役の「アメリカの大泉洋(笑」ことスティーブン・ウェバー。悪くないんだけど印象が弱い。それが後半の「狂気」を薄めてしまっている感じがします。ウェンディ役のレベッカ・デモーネイにも存在感で完敗しています(クレジットでもデモーネイの方が先だった)。TV俳優と映画俳優の存在感の差は歴然とありますね。そう考えるとキューブリック版のジャック・ニコルソンとシェリー・デュバルの「顔芸対決」は迫力あるし面白い。キューブリックがシェリーの演技に不満を持ちつつも彼女を降板させなかったのは、シェリーの「(ヒステリー症的な)存在感」を買っていたのでしょう。共同で脚本を担当したダイアン・ジョンソンは「シェリー・デュヴァルがセットに来てからかなりの存在感でーとてもある種の奇妙なルックスをお持ちでー、脚本の言葉よりもウェンディを乗っ取ってしまった」(詳細は こちら )と語っています。キューブリックは「作品の成否はキャスティングで決まる」と言っていましたが、まさにその通りの比較動画だと思いますね(ダニー役も含めて)。

【オムニバス】『時計じかけのオレンジ』のレコードショップのシーンに登場した『2001年宇宙の旅』のコンピレーション盤について調べてみた

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『時計じかけのオレンジ』のレコードショップのシーン。『2001年宇宙の旅』のオムニバス盤(ポリドール)が見える 『2001年…』のオフィシャルサントラ盤(MGM)はこちらに登場 Theme Music For The Film 2001: A Space Odyssey And Other Great Movie Themes(Discos) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/カール・ベーム|『2001年宇宙の旅』 (ツァラトゥストラはかく語りき)1:38 ヴィルヘルム・ケンプ|『ローズマリーの赤ちゃん』(エリーゼのために)3:07 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/ロリン・マゼール|『間奏曲』(交響曲第5番 第4楽章)9:14 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団/フェレンツ・フリッチャイ|『2001年宇宙の旅』(美しく青きドナウ)9:35 アンダ・ゲーザ/カメラータ・ザルツブルク|『みじかくも美しく燃え』(ピアノ協奏曲第21番 第2楽章)7:09 マルグリット・ウェーバー、ベルリン放送交響楽団/フェレンツ・フリッチャイ|『三つの恋の物語』 (パガニーニの主題による狂詩曲 第18変奏)2:45 ルツェルン音楽祭弦楽合奏団/フランク・R・バウムガルトナー|『みじかくも美しく燃え』(四季 夏)9:35 サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー|『ワンツースリー ラブ・ハント作戦』(ガイーヌ 剣の舞)2:14  『時計じかけのオレンジ』のレコードショップのシーンに登場する『2001年宇宙の旅』のレコード。よく「サントラ」と言われますが、正確には上記によると映画に使われたクラシック曲を集めた「オムニバス」であるようです。採用されている作品は『ローズマリーの赤ちゃん』以外は知らないな・・・という感じですが、宇宙ジャケットに反して恋愛ものからコメディまで脈絡はないですね。  発売は1970年ですので、撮影当時最新のアルバムだったんでしょう。『2001年…』の2曲は映画で使用されたカラヤンのバージョンではありませんし、マニア的見地からも収集する意義は感じられませんが、人に見せて「時計じかけのレコード店にあったやつ!」程度に自慢できるくらいのことはできそうです。幾度も再発されたせいか米amazonやebayではたくさん取り扱いがあるよう...

【ブログ記事】『ロッキンオン・ジャパン』2020年10月号の表紙に、あいみょんが『シャイニング』双子の少女Tシャツを着て登場

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 私はいわゆる「ロキノン系」「ロキノン厨」と呼ばれる『ロッキンオン・ジャパン』世代ではなく、元祖である『ロッキンオン』世代です。1970年代後半から1980年代、ハードロック~プログレ~パンク~ニューウェーヴ~オルタナまでフォローし、ニルヴァーナなどのグランジ全盛時代にはもう離れていました。まあ、多感な10代~20代を『ロッキンオン』と『キネマ旬報』で過ごしたといえば、同世代に方には「ああ、あんな感じの奴ね」とわかっていただけるのではないかと思います(笑。  で、その 『ロッキンオン・ジャパン』2020年10月号 の表紙に、あいみょんが『シャイニング』双子の少女Tシャツを着て登場しています。海外ではファッション誌などで、モデルやタレントがキューブリック作品のコスプレをして表紙を飾る、という事例が過去にいくつかありました。日本ではこういった事例はあまり聞かないし、「いよいよキューブリックもここまで(若い世代の間で)メジャーになったか」と感慨深いものがあります。  でも実際は、キューブリック作品のオフィシャルなアイテム化はここ数年のことで、過去に不当な高額で販売されていたものは俗に言う「海賊版」です。もちろん海賊版のTシャツを着て雑誌やグラビアを飾ることはできません。ですので、こういったタイアップが可能になったのは最近の話、ということになります。海賊版時代からキューブリック作品のTシャツ(特に『時計…』)は原宿あたりでよく売られていたし、密かに人気もありました。ですがそれはあくまでアングラな話であって、一般的ではありませんでした。キューブリック人気が一般層に拡大した大きな要因の一つがこの「キューブリックアイテムのオフィシャル化」であったことは、紛れのない事実でしょう。  その一般層が認知しているアーティストの代表格、あいみょんが着ている『シャイニング』の双子の少女Tシャツは、おそらく こちら で紹介したNoodleのものだと思います。タイアップか私物かはクレジットを見れば(衣装協力のクレジットがある)わかりますが、あいみょん自身が『シャイニング』を知っていてこのTシャツを選んだのか、それとも単なる「デザインが可愛い」で選んだのか、はたまたコーディネーターの言われるがままだったのかは分かりません。できれば「知ってて選んだ」であって欲しいものですね。 2025年7月15日追...

【考察・検証】キューブリック版『シャイニング』は、なぜ「シャイニング」ではなくなってしまったのか?

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キューブリック版『シャイニング』でダニーを演じたダニー・ロイド(撮影時5~6歳)。小説版の設定年齢と同じ TV版『シャイニング』でダニーを演じたコートランド・ミード(OA時10歳)。ゆるい口元が利発さを感じさせない   キューブリック版『シャイニング』では、原作で中心的に活躍する「シャイニング」、つまり超能力(ESP能力)がほとんど描かれませんでした。そのため、現在に至るまで「キューブリックの『シャイニング』は『シャイニング』というタイトルながら「シャイニング」ではない」と、原作ファンを中心に批判され続けています。確かにその通りなのですが、あらゆる可能性を探り、判断して映画作りをするキューブリックが、こういった批判の可能性を考慮していなかったとは考えられません。この考察では「キューブリックは『シャイニング』における「シャイニング」の扱いを〈あえて〉矮小化した」という仮定に基づいて、なぜキューブリックがそうしたかのかを考察してみたいと思います。  さて、いきなり結論を書いてみたいと思います。それは、 キューブリックがダニー・トランスを物語の主人公から脇役へと追いやり、ジャックを中心に据えたか らです。原作小説では、物語はダニー・トランスと、ダニーが持つ「シャイニング能力」を中心に物語が進行します。しかしキューブリックはダニーを〈あえて〉物語の中心人物から脇役へと追いやり、父親であるジャックをその中心に据えました。その理由は主に以下の3つが考えられます。 ①小説のダニー・トランスが5歳児とは思えない問題  原作小説のダニーは、物語の序盤では言葉の意味がわからなかったり誤解するなど、5歳児らしい言動を繰り返します。しかし、クライマックスになるとジャックさえ気づいていない「幽霊達の真の目的」を看破し、悪と対峙します。長編の小説であればその変化はゆるやかであり、また、文字として読んでいるだけなのでほとんど違和感を感じさせません。しかし2時間で映像を見せる映画では違います。そんな短い時間で急成長するダニーの姿を映像化すれば、単なる御都合主義に陥ってしまう可能性があります。  そのため、キューブリック版『シャイニング』のダニーは終始5歳児らしさを失いません。常に幽霊や父親に怯え、その真意や意図に気づくことはないのです。唯一聡明さを感じさせるのは、終盤でジャックを迷路でまく...

【関連記事】『時計じかけのオレンジ』から50年、人生とキャリアを振り返る マルコム・マクダウェル「出演した映画のほとんどは忘れてしまった」

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  Malcolm McDowell(IMDb)  映画『時計じかけのオレンジ』の暴力的な主人公、アレックス役で世間に強烈な印象を残した俳優マルコム・マクダウェル。かつては若者の怒りを体現する存在だったが、今ではずいぶん穏やかな雰囲気になった。最新作の撮影裏話から、自身のキャリアや人生、そしてアカデミー賞まで、77歳の今だからこそ語れる本音のインタビューをお届けしよう。 「反抗的な役をずっと演じられるわけじゃないから」 70年代初頭、マルコム・マクダウェルは映画界の小生意気なプリンスだった。かつてリバプールのセールスマンだった彼は、社会の規範をかき乱す存在となった。 リンゼイ・アンダーソン監督の『If もしも…』では、イギリスのパブリックスクールで血の革命を先導する役を演じた。スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』では、コロヴァ・ミルク・バーで仲間とつるみ、夜の計画を思案する主人公のアレックス役だ。 彼の前には、無限の可能性が広がっていた。世界は彼の思うままだ。彼ならどんなことでも達成できるものと思われていた。 〈以下略〉 (引用元: クーリエ・ジャパン/2020年7月31日 )  マルコム・マクダウェルは1972年、原作者のアンソニー・バージェスともに『時計じかけのオレンジ』のプロモーションに世界中を飛び回っていました。最初の頃は二人とも映画を支持し、擁護していましたが、マスコミのバッシングが酷くなり、命を脅かす脅迫が自身の身辺まで達するとその態度を急変、一転してキューブリック批判、映画批判を始めます。それをロンドンの自宅で見ていたキューブリックが「裏切り行為」と捉えたであろうことは想像に難くありません。キューブリックは裏切り者には徹底して冷淡な態度を取ります。そうなってしまえばいくらマルコムがキューブリックに親愛の情を感じていたとしていても、無視されるのは当然と言えます。  もちろん、「自分は安全な場所にいて、自分たちだけ脅迫の危険があるプロモーション活動に従事させている」とマルコムとバージェスが不満に思っていたであろうことも想像できます。しかし脅迫はキューブリックの元にも届いていました。「人間の暴力性を暴いた映画で、人間の暴力性を批判する人たちが、人間の暴力性を露わにして脅迫する」という映画の世界を地でいく現実は、もはや「皮肉」としか...

【関連記事】仏映画サイトが選ぶ、オープニングが素晴らしい20作品

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キューブリック全13作品のタイトルバックを集めた動画  [映画.com ニュース]仏映画情報サイトallocineがオープニングが素晴らしい映画20作品を選出。映画.comの作品情報と共に紹介する。 〈中略〉 ■「2001年宇宙の旅」(1968) 「わずかな音で映像が優雅な瞬間に。観客はリヒャルト・シュトラウスの『ツァラトゥストラはかく語りき』を背景に、地球、月、太陽の整列を発見する」 スタンリー・キューブリック監督と原作者アーサ・C・クラークによる、映画史を代表する不朽の傑作SF。極端に少ないセリフや固定した長回しのカメラワーク、クラシック音楽の使用などが斬新で印象を残す。撮影時に開発された新技術と、科学的裏付けの追求により人工知能HALの暴走がリアルに描かれ、第42回アカデミー特殊視覚効果賞受賞。 〈中略〉 ■「時計じかけのオレンジ」(1971) 「オープニングで、アレックスの苦悶のまなざしがクローズアップされる。これに続いてバーでの印象的な場面に移り、私たちはこの主人公の不穏で、不健康で、超暴力的な世界に飛び込んでいく」 原作者のアンソニー・バージェス自身が”危険な本”と語った同名の小説をスタンリー・キューブリックが映像化。非行少年による暴力が横行する近未来のロンドン。喧嘩とレイプに明け暮れる日々を過ごすアレックスは、中年女性を死に至らしめた彼は刑務所行きに。しかし2年後、とある治療法の被験者になることを条件に、社会に戻ることを許される。 〈以下略〉 (引用: 映画.com/2020年7月24日 )  20作品中2作もキューブリック作品を採り上げていただいております。他は定番ものから「?」なものまでラインナップされていますが、それはリンク先でどうぞ。  キューブリックはオープニング(タイトルバック)について  「メインタイトル(タイトルバック)のことは全然気にかけていない。とても凝っていて感心したものもあるが、凝ったメインタイトル製作費の無駄遣いに過ぎず、その映画を損なうものだと思う。私の見方は非常に単純だ。映画の最初のショットは観客が席についてから最も興味深いものであるべきだということだ。タイトルと比べて映画の中身がつまらなく見えることに加えて、凝ったタイトルというのは、アニメーション、特殊効果、オプティカル処理、それに大抵、非常に高いデザイナーを意...

【ブログ記事】書籍化された『デカローグ』脚本に寄せたキューブリック「激賞」の序文

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 私は、一流フィルムメーカーたちの作品の特性を祭り上げて、称賛することには気乗りがしない。なぜならば、そうすることで彼らの作品を否応なく単純化してしまい、その価値を下げてしまう傾向があるからだ。  しかし、クシシュトフ・キェシロフスキと彼の共同執筆者クシシュトフ・ピエシェヴィッチによるシナリオをまとめたこの本においては、着想を語るのではなく、むしろ「ドラマタイズする(劇的に表現する)」その稀なる能力を、彼らが持っていることについて観察することは場違いではないはずである。  物語内の劇的な動きを通して、自分たちが狙ったポイントを押さえることにより、彼らは説明することなしに、今、スクリーン上で実際は何が進行しているのかを、観客に自由に「発見させる」ための、より一層の力を獲得している。  彼らはその驚嘆すべき技術を用いて着想を表現するが、それについてを観客であるあなたは決して気づかない。観終わってからずっとあとになり、その着想がどれだけ自分の心に深く届いていたのかをあなたは知るのである。 スタンリー・キューブリック 1991年1月 I am always reluctant to single out some particular feature of the work of a major filmmaker because it tends inevitably to simplify and reduce the work. But in this book of screenplays by Krzysztof Kieslowski and his co-author, Krzysztof Piesiewicz, it should not be out of place to observe that they have the very rare ability to dramatize their ideas rather than just talking about them. By making their points through the dramatic action of the story they gain the added power of allowing the audience to discover what's r...

【関連記事】『シャイニング』で共同脚本を担当した小説家、ダイアン・ジョンソンのインタビュー

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ウェンディのキャラクターは小説から大きく改変された 〈前略〉 マカフィー:『シャイニング』について話しましょう。どうやってプロジェクトに関わることに? ジョンソン:キューブリックが電話をかけてきて、彼が色々な本を原作にホラー映画を撮ることを考えている時に会ったのです。 マカフィー:彼は(あなたの小説)『影は知っている』の映画化に興味があったと思いますか? ジョンソン:そうかもしれません。私の印象では彼が読んだことは確かです。彼の口からは言いませんでしたが、私から聞くこともしなかったです。ロンドンで夕食をし、6ヶ月後に電話で「スティーブン・キングの小説を買ったんだが、読んでみるかい?」と言ってきたので、読みました。それからプロジェクトが動き出してから彼が一緒に働かないか薦めてくれたのです。脚本が少し進むごとに、違う草稿ができました。ロンドンにアパートを持っていましたから、午前中はそこで過ごし、彼はセットにいるという感じです。彼は全てを同時に行なっていました。同時期にセットを組み立てていましたから、彼はそれを監督しないといけなかったのです。私は午後に出向いて、夕方から夜までフィクションの問題を話しました。彼はとても文学に詳しかったです。もちろんストーリーそのものについてです。 マカフィー:実際の脚本はその会話から進化していったのですね。 ジョンソン:そうです。時々、家でシーンを書いたりしました。彼と下書きをして、さらに下書き、そしてさらに下書き、といった具合です。それからその下書きをシーンに書き起こして彼に渡し、彼が新たに上書きするといった感じです。彼はとてもいい書き手で映画監督で、私のバージョンを何回もより良いものにしてくれました。 マカフィー:つまりあなたは基本的に粗い下書きを書いて、それから二人で最終バージョンを一緒に仕上げるということですか。 ジョンソン:そんな感じです。私が出来上がったものを持っていったら、彼が「これはうまくいかないな」とか鋭いセリフを思いついたりするんです。セリフについてはとてもいいセンスを持っていました。ジャックのパートは大なり小なり彼が書いたのです。私の小説に出てくるような女性キャラであるウェンディは私が。たくさんセリフがありましたから。 マカフィー:キングの小説を脚色するにあたって、脚本に最低限残して置かないといけないことは何でしたか?...

【考察・検証】スターゲート・シークエンスの「マインドベンダー」シーンに登場する、謎のダイヤモンド型の物体の正体を検証する

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謎のダイヤモンド型の物体が登場するスターゲート・シークエンスの一場面 シーンタイトル「マインドベンダー」と記されたサスコカード   スターゲート・シークエンスに登場する謎のダイヤモンド型の物体、これは「異星人」「UFO」「スターゲートの一部」など様々な解釈がされています。このシーンには「マインドベンダー」というタイトルがつけられていて、それは残されたサスコカードで確認できます。「マインドベンダー」とは「複雑で理解するのが難しいことがら、催眠術師」という意味だそうですが、その響きから当時世界中で流行していたいわゆるサイケデリック(ドラッグ)・カルチャーの影響を強く感じさせます。では、このマインドベンダーのシーンに登場する、光り輝くダイヤモンド形の正体は一体なんなのでしょう?まず、ジェローム・アジェル編『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』には以下の記述があります。  キューブリックの「幻覚剤(マインドベンダー)」効果。スリット・スキャン映像は3フィートの高さの回転しているリグに取り付けられた多面スクリーンに投影し、7つのダイヤモンドが現れるまで繰り返した。(引用:ジェローム・アジェル編『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』)  このシーンの制作に関わったダグラス・トランブルはもう少し詳しく、以下のようにコメントしています。 The most complex aspect was a shot dubbed the ‘mindbender,’ which combined seven octahedrons arranged in the top half of the frame and the slit-scan process. Trumbull said, “We had exhausted the slit-scan, shooting vertically and horizontally, so I came up with the idea of shining the light onto Plexiglas to create this kind of pulsating effect. Each [octahedron] had four visible sides, each needing 3 passes, so as you c...

【プロップ】『2001年宇宙の旅』でアンテナ故障予知のワイヤーフレームのアニメーションは、実は本当にワイヤーフレームだった件

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HALのモニタに表示されたワイヤーフレーム「偽」CGアニメーション 撮影中(テストの可能性も)のアンテナ アンテナのネガフィルム。8×10に見えます。たとえ「賑やかし」映像でも手は抜きません アンテナの針金模型を制作するトランブル  この事実を初めて知った時は衝撃的でした。キューブリックの逝去前から「『2001年宇宙の旅』は一見最先端の撮影技術を駆使しているかのように見えるが、実はかなりの部分が手作業(力技)で、それを恐ろしく時間をかけ、かつ高品質でそれを行っている」と言われていたのですが、近年明かされるその「手作業」の部分にはいつも驚かされます。  このアンテナユニットのワイヤーフレームCGアニメーションもその一つで、実は文字通りアンテナユニットをワイヤー(針金)で作って白く塗り、それを自由台座の上に据え付けてコマ撮り撮影し、ネガファイルムを作成したそうです。言われてみれば動きが微妙に手作りアニメーションっぽいですね。  このアニメーションを製作したのはあのダグラス・トランブル。トランブルの『2001年…』における八面六臂の活躍ぶりは凄まじく、キューブリックが『2001年…』で重要な役割を果たした特撮マン4人の内の一人に挙げるのも納得です。ただ、ご本人はアカデミー賞視覚効果賞の受賞をキューブリックに持って行かれたことにかなり不満だったそうですが。  でもそのトランブルに、ツァラトゥストラ演奏付きのオープニングの映像を観せて「これでいいかな、それともやりすぎかな?」と客観的な評価を仰ぐキューブリックがいい。トランブルは「素晴らしいと思います。僕は好きですよ、これでいってくださいよ」と応えたそうですが、このエピソードひとつとってみても、キューブリックがトランブルの才能を高く評価していたのが伺えますね。

【関連動画】キューブリック初期作品の音楽を担当したコンポーザー、ジェラルド・フリードのインタビュー

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 私は地元ブロンクスの野球チーム「バラクーダーズ」に所属していた。時折、同じくらいの年齢の男が遊びに来ていたが、その男はあまり良いスポーツマンではなかったので、チームのメンバーは彼が試合に加わることを嫌がった。しかし、私は「入れてあげなよ!」と言って彼を参加させた。その男がキューブリックだった。  キューブリックが最初の短編映画(『拳闘試合の日』)を作った時、私が音楽家(ジュリアード音楽院オーボエ専攻)であることを知り、その作品のための映画音楽の作曲を依頼された。快諾したが、私はそれまで映画音楽を作曲したことがなかったため、多くの映画を見ることで勉強し始めた。その短編映画はRKOに買い取られ、それが私の映画音楽作曲家としての出発点となった。   当時は現在のように映画音楽を教える大学やクラスはなかったため、独学しかなかった。よって映画を見続けることで勉強し続けた。例えばバーナード・ハーマンがあるシーンで流している曲が、画にマッチしていなかった。つまり、そのシーンでハーマンが、目には見えない映画の登場人物の気持ちや心理を曲で表現していることを知った。場面で曲を終わらせる時も、そこには終わらせる必然性がなければならないことを私は知った。つまり映画音楽の文法を理解し始めた。やがて私は学ぶだけではなく、プロの作曲家の仕事や、映画内でのそれの使い方を自分なりに分析、批評するようになり、より映画音楽の手法を身につけた。  キューブリックが「キューブリック」になりうる前は、私に自由に作曲をさせた。2本目からキューブリックは少しづつ自分のアイデアを出すようになり、徐々に要求も高くなって来た。3本目では既に私たちは激しく議論するようになっていて、それはどちらかが打ち負かされるまでの「ノックアウト・バトル」になった。その時期までにキューブリックは、自己の趣味とスタイルを作り上げる過程にいた。  キューブリックは議論をする相手としてはハードであり、同時に賢くて才能があった。私たちは議論をしたものの、大体は意見の一致に至った。『突撃』で私はキューブリックのアイデアや意見に合わせると同時に、自分でも全てに納得のいく仕事ができて興奮した。 (ここからはフリード個人の作風の説明になるので省略。フリードのスタイルは『現金に体を張れ』で確立し、同作のメインテーマは彼のトレードマークになったとのこと)...

【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』のエンディングに使用された『黒くぬれ!』は、キューブリックのファーストチョイスではなかったのではないか?という推論

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ダナンの基地に置かれたミッキーマウスの人形  1988年に公開されたスタンリー・キューブリック監督作品『フルメタル・ジャケット』。そのエンディング曲に使用されたザ・ローリング・ストーンズの『黒くぬれ!(Paint It, Black)』ですが、公開当時、映画ファンやロックファンの間ではあまり評判が良くありませんでした。なぜなら当時流行していたベトナム戦争映画では必ずロックが使われていたし、しかもよりによって「誰でも知っている」レベルのありきたりな曲だったからです。  この使用についてキューブリックは 「ストーリーをまとめたいと思うなら、あの曲を使うよ。また、ローリング・ストーンズはあの頃のシンボルのようなもので、あの曲はちょうどいい時期に世に出てきた。だからあの時代はローリング・ストーンズ抜きには語れないんだ」(引用元:キネマ旬報1988年3月上旬号) と発言しています。時代の象徴のストーンズという意味はわかりますが、では他の曲ではなくなぜ『黒くぬれ!』なのかはこれではわかりません。一説によるとキューブリックはポップ・ミュージックに疎く、この曲が「有名すぎるぐらい有名な曲」だということを知らなかったのではないか?という話もあります。  キューブリックにしてはあまりにも安易(たとえ「戦争の真実は権力によって黒く塗りつぶされる」という意図だとしても)ではないか?と考えた管理人は、他に理由があるのではないかと考え、「実はキューブリックはこの『黒くぬれ!』はファースト・チョイスではなかったのでは?」と、以下のような仮説を提唱しています。  キューブリックは当初、行軍で『ミッキーマウス・クラブマーチ』歌うシーンに続けて、エンディングに『ミッキーマウス・マーチ』のオリジナルバージョンを使用する予定だったが、ディズニーから許可が下りず、仕方なくセカンンドチョイスとして『黒くぬれ!』を使用した。  その根拠として、キューブリックは『ミッキーマウス・クラブマーチ』について 『ミッキーマウス・クラブ』の歌は実際に海兵隊員によって歌われたんだよ。もっとも「MICKY MOUSE」ではなく「FUCKED AGAIN」と歌ってたけどね。この『ミッキーマウス・クラブ』の歌を歌ったのは18~19歳の少年兵で、彼らは数年前までTVで『ミッキーマウス・クラブ』を見ていたんだ。彼らがつい最近まで子供だ...

【ブログ記事】スタンリー・キューブリック監督に関する「超マニアック」クイズ

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 スタンリー・キューブリック監督に関する「超マニアック」クイズを作成しました。設問は10問までしか設定できませんでしたので、自主制作の『恐怖と欲望』『非情の罠』、キューブリックが自作と認めていない『スパルタカス』は省きました。  自分自身のマニア度を客観的に評価できないので、設問の難易度設定には苦労しました。タイトルに「超マニアック」と入れましたが、人によって難易度の感じ方はさまざまだと思います。管理人もTwitterで見かけるこういったクイズに何度か挑戦したことがあるのですが、「激ムズ」といいながらそんなに難しくない(ほとんど答えがわかり、数問だけカンで答えれば全問正解してしまう)ものが多いのですが、当ブログが作る以上、そんなに簡単では「その程度?」と思われるのも嫌なので、キューブリック全作品を一通り観ただけでは全問正解できない程度には難しくしました。また、「ひっかけ問題」もありますので注意してお答えください。  もちろんこの結果で「キューブリック愛」をはかろうというものではないので、「お遊びのひとつ」程度とお考えいただければいいと思います。それよりも解説を充実させることで、遊んでいただいた方にキューブリックに関する知識を増やしていただけるように配慮したつもりです。ですので、ぜひ解説も読んでくださいね。  それでは、 こちら から皆様の挑戦をお待ちしております!

【関連動画】激レア!!『シャイニング』のアウトテイクが含まれたTVCMの日本版

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 これはすごい!以前 この記事 で海外版(イギリス版・北米版)のバージョンはご紹介しましたが、その日本版も存在していたとは!しかもハロランのアップがないなど、使用シーンが若干異なります。「Here's Johnny!」は映画の採用テイクと異なるのはイギリス版・アメリカ版と同じですね。ナレーションは『ルパン三世』の次元大介役でおなじみの小林清志氏です。管理人も当時『シャイニング』のTVCMが流れていたのは記憶にあるのですが、ほとんど覚えていなかったので、録画し、保存していた方には感謝の念しかありません。

【関連動画】激レア!!『時計じかけのオレンジ』1973年のTVスポット

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  これはすごい!よくこんなの残っていましたね。1973年にTVスポットとして使用された16mmフィルムなのですが、30秒に収めるために予告編の後半部分がカットされています。途中「R指定」というナレーション(多分)が入るのもレア。タイトル画像にもR指定と明確に表示されていて、公開当時物議を醸した映画であることが伺えます。下記の劇場版の予告編と比べてみると編集具合がよくわかりますね。

【パロディ】イタリアのチョコレート菓子「キンダーブエノ」のCMが『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹だった件

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 人種差別にキビしく、平等に価値がないと言い切る軍曹でさえ唸る美味しさ、ということでしょうか?(笑。  この「キンダーブエノ」、ソニーさんが運営していた輸入食品を扱う雑貨店などで見かけた方もいらっしゃるかと思いますが、好きな方は好きみたいですね。このチョコはイタリアの菓子メーカー、フェレロが販売しているもので、「フェレロ ロシェ」という金色のアルミ箔に包まれたチョコレート菓子はあちこちで見かけるため、そちらをご存知の方も多いかと思います。  「キンダーブエノ」はそれと違い、お子様向けというか駄菓子的な商品のようです。日本で言えば「ブラックサンダー」でしょうか? なるほど、だからCMもちょっと子供っぽい演技なんですね。そんなこんなでちょっと興味が湧きましたので、銀座にあるその輸入雑貨店で買ってきました。  海外のチョコ菓子にしては甘さも抑えめで、食感も軽くてなかなか美味しかったです。ただ輸入商品なので、270円という値段にはどうしても割高感がありますね。

【考察・検証】ニューヨーク時代の若きキューブリックを知るためのキーワード「独」

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キューブリック少年と妹のバーバラ。キューブリックは妹を可愛がる心優しい兄だった  「独り」  キューブリックは幼少時代から単独行動が多かったことで知られている。仲間内で流行っているゲームやスポーツ、学校行事などに参加しようとはせず、自分の興味のあることだけに集中して臨むことを好んだ。カメラやチェス、映画鑑賞などそれは「独り」で行うことばかりで、ジャズドラマーを目指し、熱心に練習していたドラムでさえソロプレイを得意としていた。そのため協調性が必要となる学校生活になじめず、小学校時代には登校拒否をするようになる。当然ながら学業の成績は芳しいものではなく、高校は落第点ギリギリでやっと卒業できたくらい悪かったが、落第者であったことが「キューブリックを生涯の学習者(生徒)にした」と妻であるクリスティアーヌは語っている。 ルック誌カメラマン時代のキューブリック 「独立」  キューブリックが単独行動を好んだのは、協調性がなかったというよりも独立志向が強かったと言うべきものだ。共感できる数少ない友人とはよく一緒に過ごしていたようで、高校時代に知り合った(後に映画監督になる)アレキサンダー・シンガーによると「自分でやらなきゃダメだ」と常に語り合っていたそうだ。その高校時代にルック社に写真を採用され、曲がりになりにも「プロカメラマン」としてデビューするのだが、それはシンガーによると「仲間からスターが出た」と、とても誇らしいことであったという。しかし当のキューブリックはそんなちっぽけな立場に満足することなく、生来の独立心から大胆な野望を内に秘めていた。すなわち「映画監督になる」という野望だ。  その反面、キューブリックはとても「シャイ」であったことも知られている。クリスティアーヌによるとカメラはそのシャイな性格を隠す隠れ蓑だったとし、「カメラをぶら下げていれば、その場にいる理由になるから」と説明している。協調性のなさも「シャイ」で簡単に説明されてしまいがちだが、撮った写真を写真誌に売り込む大胆な行動力はとても「シャイ」の一言で片付けられるものではない。それに映画監督は(最低限の)協調性がなければ勤まらない仕事だ。キューブリックにとって「シャイ」とは「旺盛な独立心と貪欲な好奇心、そして強固な自我の裏側には意外な繊細さがある」と理解すべきものだろう。 『恐怖と欲望』を撮影中のキューブ...