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原田眞人(wikipedia) 字幕翻訳者交代劇から始まったキューブリック監督との絆 原田:日本では一般的にFワードに対して「バカヤロー」とか「クソガキ」とか、通り一遍の訳し方をしちゃう。でもキューブリックは一言一言全部チェックしてたから、何がどういうふうに間違っているかっていうのを把握していた。英語圏の人にとっても初めて聞いたような罵倒の言葉を使ってるわけだから、それは日本人にとっても、初めて聞く罵倒の言葉じゃなきゃダメだって。「セイウチのケツにド頭つっこんでおっ死ね!」とかね。ああいうのが、その通りに訳されてなかった。それで、誰かそういう感覚が分かる奴いないのかってことで僕に話がきた。僕はキューブリックの気持ちも分かるので、喜んでやりましょうって。そのあとは、メールもネットもない時代だから、ほとんど毎晩のようにキューブリックと直接電話で連絡し、少し訳しては向こうに送って、それをキューブリックがチェックして。キューブリックからダイレクトに「ここはオリジナルとは変わっているけど、どういう理由なの?」と質問がきて、理由を説明すると、「元に戻そう」という時もあれば、「それでいこう」という時もある。そんな、細かいやり取りをしていった。でも、途中からはお互いの感覚が分かったし、僕は基本的にキューブリックの意向に沿ってやりたい、っていう気持ちを彼も分かってくれて、「任せるよ」ということになっていったんだ。 衝撃の事実!劇場公開用に製作された日本語吹替だった! 原田:キューブリックの意向で日本語吹替版を作ることになったっていうことは、劇場版として日本語吹替版をやりたいっていうことだったと思うよ。だけど日本語吹替版は劇場公開されなかった。でも素材としては存在していたから、水曜ロードショーでやろうって話になったんじゃないかな。ところが内容的に放送禁止用語が結構いろんなところに出てきている。それで放送できなかった、ということかもしれない。 だけどテレビ用の日本語吹替版とは比較にならないくらいお金かけているんで(笑)キャスティングも含めて。観たいと思っていたけど、なんで出ないんだろうってずっと思っていた。 キューブリックからもお墨付き!原田眞人翻訳・演出の日本語吹替版 原田:キューブリックも利重剛と村田雄浩をすごく気に入っていた。彼は各国の吹替え版を全部持っていて、言語バラバ...