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【オマージュ】『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニング・シークエンス

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 キューブリックファンにはおなじみの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』オープニング・シークエンスの「CRM114」です。元ネタは『博士の異常な愛情』のコクピットにあった暗号封鎖回路名。製作・監督・脚本がキューブリック・フォロワーのスピルバーグ&ロバート・ゼメギスですから、当然仕込んできますよね。  当時、あまりの大ヒットぶりにシリアスな映画ファンからは疎んぜられたこともありましたが、今観るとこの底抜けに明るい雰囲気はいかにも80年代で、結構素直に楽しめちゃいます。「ポップコーン・ムービー」というレッテルを皮肉でなく賛辞として贈りたいですね。タイトルは知っているけどまだ観たことがないという新しい世代の方も是非全編鑑賞(できれば3部作全部)をおすすめします。世間は80年代リバイバルですから、一周して新鮮に感じるかもしれませんよ。

【名曲】モリー・マローン(Molly Malone)

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 『時計じかけのオレンジ』でホームレスがアレックスたちにリンチされる時に歌っていた歌がこの『モリー・マローン』。アイルランド・ダブリン市民の愛唱歌だそうで、かなり広く歌われているみたいです。特にアイルランド出身のアーティストでは定番曲となっているらしく、シンニード・オコナー、U2なんかもカバーしてますね。  1970年代当時、アイルランド人がロンドンでどういう立場だったかは詳しくは知らないのですが、政情不安だったアイルランドから隣国のイギリスに移民が流入し、そのいくらかはホームレスになっていたのかもしれません。それにアイルランド人といえば大酒飲みのイメージがありますし。  歌詞も簡単なのでワンフレーズくらい憶えてアイリッシュ・パブで歌ってあげたらウケるかも。ただ、どこでこの歌を知ったかは・・・言わない方か賢明かと思いますが(笑。

【パロディ】アベノ橋魔法☆商店街 第3話 『合体! アベノ橋☆大銀河商店街』

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 ちょっと面白かったのでご紹介。アニメ『アベノ橋魔法☆商店街』の第3話、『合体! アベノ橋☆大銀河商店街』です。どうやらこの回のテーマはSFやロボットアニメらしく、全編に渡っていろんなネタが仕込んであり、その内のひとつがもはや定番と化した『2001年宇宙の旅』ネタです。  調べてみると2002年と結構前のアニメですが作画がすばらしい!今のデジタル全盛の時代にはない極端なパースとデェフォルメ、スピード感。どこかで見たな、と思っていましたがなるほど、あの『エヴァ』で有名なガイナックスですか。納得です。  ただ声優さんが残念。キャラの動きのスピードに全くついていけてない感じ。全話は見ていませんが、それぞれの回がそれぞれのパロディになっているらしく、元ネタを知っている人には楽しめそうです。直リンクはアレなので貼りませんが、検索すればヒットしますんで興味のある方は是非どうぞ。

【オマージュ?】a flood of circle/博士の異常な愛情

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 今回は珍しく日本のバンドをご紹介。a flood of circleのアルバム『PARADOX PARADE』からの曲『博士の異常な愛情』です。 歌詞 を読むとまあそのまんまなので説明は要らないですね。音はミッシェル・ガン・エレファントやブランキー・ジェット・シティの正統後継者っていう感じでカッコイイです。ボーカルの歌い方なんかにはかなり影響を感じますね。今後の活躍に期待したいです。

【場所・地名】ストーヴィントン(Stovington)

  『シャイニング』で、ジャックがパジャマ代わりに着ていたTシャツに書かれていた文字。この「ストーヴィントン」とはジャックが教師をしていた高校の名称で地名、原作にも登場しています。  ところで鏡に映ったこのシーン。後の「REDRUM」→「MURDER」のトリックを考えると何か意味がありそうですが、逆から読むと「NOTGNIVOTS」となり全く意味不明。陰謀論者なら何かこじつけてきそうではありますが、これは原作準拠なのでそこまで考えなくてもよさそうです。

【俳優】才能あるクソッタレ(a talented shit)

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 カーク・ダグラスが1988年にした自叙伝『くず屋の息子』でキューブリックを評した有名なこの言葉、少し「才能あるクソッタレ」の部分が一人歩きしているように思うので、もう少し前段を引用してみます。 「『スパルタカス』以降の約30年間、キューブリックは7本の映画しか作っていない。もし僕が彼を手放さずにいたら、その残りの映画の半分が、僕の会社のものになっていた」「素晴らしい才能と、性格の良さは関係ない。クソッタレが素晴らしい才能を持つこともあれば、その反対に、本当にイイ奴で微塵の才能もない者もいる。スタンリー・キューブリックは、才能のあるクソッタレだ」(引用:『映画監督スタンリーキューブリック』)  この一文を読むとカークは、キューブリックの契約解除に応じた後成功を収め、高い評価と莫大な興行収入をもたらした事実にある程度敬意を払っているようにも受け取れます。もちろん両者の個性の違いから、たとえ『スパルタカス』直後は引き止めに成功していたとしても、いづれの両者の決裂は自明だったでしょう。  ひょっしたらキューブリックはカークから自由になりたかったのかも知れません。「カークの元にいる限り、俺は一生雇われ監督だぞ」という危機感を感じていたとしたら、キューブリックの数々の無神経な振る舞いも計算ずくであった可能性もあります。  カークはこの時40歳半ば、キューブリックは30歳。親子とまではいきませんが一回り以上年上のカークは、キューブリックにとって乗り越えなければならない父親のような存在にも思えます。だからこそ、あえて反抗的な態度に出た。そうやって独立し成功した息子のようなキューブリックに贈った、愛憎半ばするカークなりの賛辞だったのかも知れません。

【ロケーション】ハースト城(Hearst Castle)

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 『スパルタカス』でクラッサスの別荘のシークエンスが撮影されたのは、あの悪名高きメディア王で『市民ケーン』のモデルでもあったハーストの邸宅、サン・シメオン宮殿。現在の「ハースト城」です。  キューブリックにしてみれば、自身が好きな映画の第3位に挙げた『市民ケーン』のモデルになったハースト邸でのロケに感慨深いものがあったかも知れませんが、当時まだ30代半ばと若かったキューブリックにとってはそれどころではなかったかも知れませんね。

【俳優】アメリカのTV番組『What's my Line? 』出演時のスー・リオン

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 これまた貴重な映像。『ロリータ』のロリータ役、スー・リオンがアメリカの長寿人気クイズ番組『What's my Line? (私を当ててね)』に出演した際の映像です。回答者が「イグアナの夜」と答えていますので1964年夏、ちょうど18歳になる頃ですね。「『ロリータ』と『イグアナの夜』どっちが好き?」と聞かれて『ロリータ』と答えています。「どうして?」と問われると「私の初めての映画だったしイギリスはエキサイティングだったから」と言っているみたいです。  でもこの頃は結婚していて人妻なんですよね(相手は俳優で後に『ブレード・ランナー』の脚本家となるハンプトン・ファンチャー)・・・とてもそのようには見えませんが。  おまけで 『ロリータ』の母親 も同番組に出演していますが・・・まあこっちはどうでもいいですね(笑。

【オマージュ】Bleu de CHANELのCM

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 ブルー・ド・シャネルの2010年のCMです。一瞬ですが『シャイニング』のカーペットが映っています。しかもこの二人のポーズ、モロにミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』ですね。それもそのはず、このCMを監督したのはなんとマーティン・スコセッシ。しばしばキューブリックについて言及(特に『2001年宇宙の旅』がお気に入りのよう)していたスコセッシなりのキューブリックに対するオマージュなのでしょうね。

【セット】『シャイニング』のカーペット(Shining Carpet)

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 『シャイニング』で登場する印象的な柄のカーペット。原作では蜂の巣が邪悪な霊の象徴として登場するので、映画化の際にそれをモチーフに迷路の暗喩も含めてデザインしたもの、と解釈しています。

【俳優】2009年、36歳のダニー・ロイドの動画

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 こんな動画を見つけてしまった・・・。2009年8月14日~16日、ケンタッキー州で開催されたホラー・フェスティバル『フライト・ナイト・フィルム・フェスト』でサイン会に臨むダニー・ロイドです。現在はケンタッキー州のエリザベスタウンコミュニティ技術カレッジで生物学の教授をしているそうです。36歳ですからね、立派なおっさんです。でも笑顔はやっぱりあのダニーでした。

【関連記事】S・キング「シャイニング」前章に「ウォーキング・デッド」脚本家

 1980年にスタンリー・キューブリック監督によって映画化された、スティーブン・キングの長編小説「シャイニング」(77)のプリクエル(前章)にあたる映画プロジェクトが進行中だが、その脚本家として、大ヒットドラマ「ウォーキング・デッド」のショーランナーを務めたグレン・マザラが交渉中だと米Deadlineが報じた。  テレビシリーズ版「クラッシュ」のクリエイターでもあるマザラは、フランク・ダラボンが降板したのちの「ウォーキング・デッド」シーズン2と3の制作責任者を務めた実績を持つ。  米ワーナー・ブラザースが進めている同プリクエルのタイトルは「オーバールック・ホテル(The Overlook Hotel)」。映画ではジャック・ニコルソンが演じた作家ジャック・トランスが、管理人として妻子と一緒に住み込む山奥のホテルの名前だ。今回の前章では、一家が移り住む以前に同ホテルで起こった惨劇が描かれる見込みだが、原作では当初プロローグとして描かれたその部分が最終的にカットされている。  ちなみに、原作者キングは、今回のプリクエルについてあまり快く思っていないようだ。ひとつには権利の問題があり、ワーナーは80年の「シャイニング」製作時に原作の映画化権を獲得しているが、その権利の範囲が現時点では不明瞭だという。すでに30年以上前の話で、権利が原作者のもとに戻っている可能性もある。  キングは米エンターテインメント・ウィークリー誌に対して、「企画を阻止するとは言っていない。私はどちらかと言えばいい奴だからね。(中略)自分の作品がどう展開されていくのか、いつも興味深く見守っている。しかし、(『シャイニング』のプリクエルについては)実現しなくても満足だ」とコメントしている。  なお、キングが「シャイニング」のダニー少年のその後を描いた続編は、「Doctor Sleep」のタイトルで今年9月24日の刊行を予定している。 (引用: 映画.com/2013年4月19日 )  脚本家が誰になるかも興味がありますが、前日譚ってホテルの方でしたか・・・。てっきりトランス一家の方かと思ってました。若き日のジャックとウェンディを誰が演じるのか気にしてたんですけどね。  と、いうことはあのオーバールック・ホテルのセットが完全再現される訳ですね。これは観てみたい!「原作に描かれていた部分をカット」とはマフィアの...

【関連動画】キューブリック・フィルモグラフィーのフラッシュ・アニメーション2作品

 アーティスト製作によるフラッシュ・アニメーションを使ったキューブリックのフィルモグラフィ・ビデオです。それぞれの切り口とアイデアで見せてくれるビデオとなっています。 ・ STANLEY KUBRICK A FILMOGRAPHY ・ Stanley Kubrick - a filmography

【上映情報】『恐怖と欲望』オフィシャルサイト&ディザー

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 『恐怖と欲望』の日本初公開に向けてのオフィシャルサイトとディザーが公開になっていたのでご紹介。紹介文にもあるように、キューブリックはこの『恐怖…』を忌み嫌っていて、1991年にコロラド映画祭、1994年にはニューヨークのフィルム・フォーラムで上映された際「訴訟も辞さない」と強硬な態度で臨み、中止に追い込もうとしたほど。  没後は何度か企画上映され、本国アメリカでは既にTVでオンエア、DVD/BDとしてリリース済です。また、それなりにネットで検索すれば・・・観れます。(当然字幕はないですが)でも、多分劇場公開は今回が最初で最後でしょうから、この機会は逃さないでおきましょう。どうしても観に行けない方は日本版DVD/BDのリリースも当然あり得ますので、それを待ってみるという手もあります。  ところで上記のような経緯もあるので、キューブリックの遺志を尊重するなら「観ない」という選択肢もあるかと思います。ただ、一度オフィシャルに公開してしまったものは、例え本人が気に入らないといっても後から取り消す事はできませんので、これはキューブリックには諦めてもらうしかなさそうです。実は『恐怖…』だけでなく自主制作第二弾『非情…』も封印しようと試みたようです。さすがに世界公開(日本でも短縮版として公開)され、フィルムが世界中に散逸してしまっていたので、回収は不可能だったみたいですが。  この事からも分かるように、キューブリックはハリウッドで製作した『現金…』を自身のデビュー作と見なしていたようです。当時は自主制作の2作品は知られていませんでしたからそれで良かったのですが、有名になって以降は自主制作映画だけでなくドキュメンタリー映画まで掘り起こされてしまったのは、このブログで紹介している通りです。  肝心の作品ですが、オフィシャルサイトやディザーでは期待感を煽っていますが、過度な期待は禁物です。所詮は自主制作ですし、役者もほとんどが素人。『非情…』でさえあのデキですからあとは推して知るべしかと思います。当時のキューブリックの年齢(24歳)や置かれた状況、その頃の映画のレベルを加味して判断すべきでしょう。それがどの程度のものなのか・・・そして「キューブリックらしさ」はどこまで垣間見えるのか・・・。今から公開が楽しみです。    

【俳優】デヴィッド・プラウズ(David Prowse)

 『時計じかけのオレンジ』で作家アレキサンダーのヘルパー兼ボディーガードのジュリアンを演じた。『スター・ウォーズ(現在の副題は「新たなる希望」)』(1977)、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1977)、『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(現在は「帰還」)』(1977)のダースベーダーの中の人としても有名。  他の主な出演作は『007/カジノ・ロワイヤル』(1967)、『大逆転』(1969)、『暗殺指令ブラック・サンデー』(1974)、『ジャバーウォッキー』(1977)、『続・恐竜の島』(1977)など。1935年7月1日イギリス・ブリストル出身。2020年11月に新型コロナウイルス感染症に罹患、11月28日にロンドンの病院で死去。享年85歳。

【登場人物】ジュリアン(Julian)

 『時計じかけのオレンジ』で作家アレキサンダーのヘルパー兼ボディーガード。ちょっとわかりにくですが、ジュリアン登場シークエンスは、同じ横移動のドリーショットで最初の奥さん登場シークエンスをなぞっていて、「かすかに息をする音が聞こえるな・・・奥さんかな・・・ってマッチョか!!」って笑うトコなんですけどね。  演じたのは後にダース・ベーダーの中の人で有名になるデヴィッド・プラウズ。

【俳優】バーバラ・スコット(Barbara Scott)

 『時計じかけのオレンジ』でアレックスにナンパされる女の子、マーティーを演じた。他に出演作はないようだ。  年齢・出身不詳。

【登場人物】マーティー(Marty)

  『時計じかけのオレンジ』でレコード 店でアレックスにナンパされた女の子の内のひとり。アレックスに「誰が好き?」と尋ねる方の女の子。

【俳優】ジリアン・ヒルズ(Gillian Hills)

 『時計じかけのオレンジ』でアレックスにナンパされる女の子の一人、ソニエッタを演じた女優兼フレンチ・ポップスシンガー。他の主な出演作はミケランジェロ・アントニオーニの『欲望』で、モデルの一人として出演しています。歌手としてもそこそこ有名だそう。  1944年6月5日エジプト・カイロ出身のイギリス人。父親は冒険家のデニス・ヒルズ、母親はポーランド人の詩人ボレスワフの娘。現在はAC / DC、エマーソン・レイク&パーマー、シンディローパーなどのマネージャーをしていたスチュワート・ヤングと結婚しイギリスに在住。

【登場人物】ソニエッタ(Sonietta)

  『時計じかけのオレンジ』で、レコード店でアレックスにナンパされた二人組の女の子の内の一人。演じたのは女優でフレンチ・ポップスシンガーのジリアン・ヒルズ。

【俳優】ノーマン・ゲイ(Norman Gay)

 『時計じかけのオレンジ』ではコロバ・ミルクバーで第九を歌う歌手の横に座ったBBCのプロデューサー役を、『バリー・リンドン』ではベルベットの仕立て屋役を、『シャイニング』では「盛会じゃね」の負傷したゲスト役を演じた。  他の出演作は『エレファント・マン』(1980)、『セックス・ピストルズ/グレート・ロックンロール・スウィンドル』(1980)など。   1922年7月24日イギリス・ケント州出身、1999年1月26日死去、享年76歳。

【登場人物】負傷した客(Injured Guest)

 「負傷した客」と、なんともそっけない役名しか与えられていないですが、「盛会じゃね!」の名台詞でインパクトを残すタキシードを着て頭を勝ち割られたパーティー客の事。よく見ると持っているグラスにはお酒じゃなく血が入ってます。あと、ジャックがゴールドルームのパーティーに入っていく際、中央奥でウエイターをしている男性と同一人物のように思えるんですが・・・確証はないですけど。演じたのは『時計じかけのオレンジ』や『バリー・リンドン』にも出演していたノーマン・ゲイ。

【パロディ】グレインベルト・ビールの『シャイニング』のパロディCM

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 『シャイニング』のパロディの中でもまあまあデキが良かったのでご紹介。アメリカのビール会社、グレインベルト・ビールのCMです。まあビール会社ですからね、こうなる展開は予想できますが、オチの奥さんの笑顔が怖過ぎ(笑。そしてエンディングの曲はジョン・レノンの『インスタント・カーマ』でエンドロールももちろんパロディ。ここまで徹底してもらえれば楽しめるってもんですよね。

【ロケーション】スカイブレイク・ハウス(Skybreak House)

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 『時計じかけのオレンジ』の作家の家の室内は、ノーマン・フォスターらの「チーム4」によって建てられたスカイブレイク・ハウスが使用されています。ただし廊下と風呂場は適当なロケ地が見つからなかったのでセットを組んだそうです。場所はハートフォードシャー・ラドレットです。  このノーマン・フォスターは新アップル本社のデザインや、「天空の橋」で有名なフランスのミヨー橋も手がけています。このスカイブレイク・ハウスは竣工が1966年と古い建物ですが、フォスター初期作品として取り壊さず残しておいて欲しいですね。 (参考・引用: Hidden Architecture )

【考察・検証】タイトル『アイズ ワイド シャット』の意味を紐解く

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 キューブリックが『アイズ ワイド シャット』というタイトルを選んだ理由で、まず考えられるのは慣用句の「Eyes wide open」(しっかりと見る)のもじりだという事。それは脚本を共同執筆したフレデリック・ラファエルの著『アイズ ワイド オープン』からも伺えます。  それと同時にこの言葉を聞いてすぐ思い出される格言があります。それは「Keep your eyes wide open  before marriage, half shut  afterwards.(結婚をする前には、両眼をぱっちり開けてよくみるがよい。しかし、結婚後は片眼を閉じたほうがよさそうだ。)」で、これはアメリカ独立の功労者であり、100ドル札の顔にもなっているベンジャミン・フランクリンのものです。説明するまでもなく「結婚前はよく見て相手を選び、結婚後は多少の不満にも目を瞑りましょう」という意味ですね。この格言を読む限り、そのまま『アイズ…』の内容を説明をしているようでとてもしっくりきます。つまり、キューブリックはこの格言を観客に想起させるために、それを略し『EYES WIDE SHUT』としたのでしょう。  ・・・多分、そういった意味も含まれているとは思います。でもこんな単純な話でもないような気がします。ダブルミーミング、トリプルミーミングが大好きなキューブリックがそんな単純な理由だけでこのタイトルを採用するとは思えません。まず「Eyes wide」だけで「目を見開く」という意味があります。次の「Shut」は「閉じる」ですね。つまりこの文節だけで矛盾する意味を併せて持つトリッキーな表現となっています。無理矢理訳すなら「目を見閉じて」となるでしょう。では何を見て、何を見ていないのでしょうか。  「見ている」のはもちろんこの映画です。ちょっと間の抜けた金持ちのイケメン医者が、美人の奥さんの浮気願望を聞かされて激しく動揺し、「だったら俺も浮気してやる」と夜の街に出かけたはいいがさんざんな目に遭って憔悴しきって妻の元に帰還。妻はそれを許した後「すぐセックスしましょう」と言い放って映画は終わります。とても美しく、思いやりに満ちた夫婦の愛の物語で、ハッピーエンドです。  でもどうでしょう、観賞後にとてもハッピーな気持ちになれたでしょうか?「これから帰って嫁さんと子づくりに励むぞー!!...

【ロケーション】なるべく近場でロケーション

 キューブリックは『スパルタカス』以降、海外ロケを試みていた時期もあったようですが、『博士の異常な愛情』、『2001年宇宙の旅』、『時計じかけのオレンジ』と遠方でのロケが不要だったり、脅迫のせいもあり、『バリー・リンドン』の頃にはすっかり出不精になってしまっていました。その『バリー…』でプロダクション・デザイナーのケン・アダムに出した注文が「自宅から20マイル(32km)以内でのロケ」。キューブリックにとってロケは「32km」が限界と考えていた事が伺えます。つまり「日帰り撮影の圏内」ですね。  もちろん『バリー…』ではそれは不可能だったので、しぶしぶ「アイルランド・オデッセイ」(長期アイルランドロケ)を了承するのですが、それがトラブル続きだった事もあり、後期3作は舞台が全てイギリスでなかったのにも関わらず『シャイニング』では全てセット(一部第二版がアメリカロケ)、『フルメタル…』はイギリス南部のみ、『アイズ…』ではセットとロンドン・ロケ(一部第二版がアメリカロケ)で撮影してしまいました。  まあキューブリック本人や家族はそれで良いのですが、つきあわされたスタッフはさぞかし大変だったでしょう。特にケン・アダムは精神崩壊寸前まで追い込まれてしまいました。この件に限らず、キューブリックは夢中になりすぎると他人を疎かにする傾向があったようです。第三者はこれを「キューブリックらしい」で片付けられますが当事者は・・・イヤ、ごめんですね(笑。  

【小説家】ウィリアム・メイクピース・サッカレー(William Makepeace Thackeray)

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   『バリー・リンドン』の原作者。他には『虚栄の市』(1847-48)が過去何度かTVシリーズとして映像化されている。1835年に結婚を機に新聞社の通信員となるが2年で退職し、評論や『アイルランド・スケッチブック』(1840)、『俗物の書』(1846)などの小説などの執筆で生計を立てる。『バリー…』(1844)はこの頃の作品になる。『虚栄の市』で作家としての地位を確立し『ペンデニス』(1848 - 50)、『ヘンリー・エズモンド』(1852)、『ニューカム家の人々』(1853 - 55)などを発表した。  1811年7月11日インド・カルカッタ生まれのイギリス人。1863年12月24日に『デニス・デゥヴァル』の執筆中に死去。ケンサルグリーン墓地に葬られた。享年52歳。

【ロケーション】ハイクレア城(Highclere Castle)

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 『アイズ ワイド シャット』で例の乱交パーティーの舞台になった屋敷のロケ地。イギリス南部のハンプシャー州にある個人所有の城なのですが、一部を一般にも開放しているそうです。壮絶なる光景が繰り広げられた本棚と暖炉がある部屋は、ここの応接室が使われました。  因に、怪しげな儀式が行われていたホールはまた別のロケ地で、サフォーク州にあるエルベデン・ホールが使われたそうです。  それにしても・・・よく貸してくれたものですね。

【考察・検証】真性ロリコン監督とロリコンを演じた俳優との知られざる交流

 もちろん「ロリコン監督」といってもキューブリックの事ではない。キューブリックが尊敬し、影響を受けた世界的に著名で偉大な監督、チャールズ・スペンサー・チャップリンの事だ。キューブリックはそのチャップリンの最高傑作の一つ『街の灯』をベスト10ムービーの第5位に挙げている。  その偉大さや作品の清廉さから、実直で品行方正なイメージのあるチャップリンだが、実は真性のロリコン(つまり厳密な意味での少女偏愛者)であった事は有名な話。当時15歳だった『黄金狂時代』のヒロイン、リタ・グレイの処女を奪って妊娠させてしまったために結婚した(させられた)のを始め、合計4人の妻をめとっている。なんとその内十代は三人で、最後の妻のウーナ・オニールに至っては当時17歳、この時チャップリンは既に54歳だったのだ。そんなチャップリンも晩年は穏やかにスイスで隠居生活をして過ごしていたのだが、その頃交流があったのが隣村で同じく隠居生活を送っていたジェームズ・メイソン。そう、『ロリータ』でハンバート役を演じたあの俳優だ。  そのメイソン、1983年にイギリスのテレビ局が製作したチャップリン映画のアウトテイク集のドキュメンタリー『チャップリン・その素顔と未公開映像』でナレーションを担当している。これだけみてもその友好関係がいかに良好だったかを伺わせるエピソードだが、このDVDにはあのリタ・グレイも登場している。もちろんかの事件には一言も触れられていないが。  リタ・グレイは好んで自身を「リリータ」と自称していたという。これをヒントにウラジミール・ナボコフは『ロリータ』を執筆した、という話もある。もしこれが事実だとすれば、チャップリンの少女偏愛癖にインスピレーションを得た小説家が『ロリータ』という小説を書き、チャップリンに憧れた監督がそれを映画化し、その主人公を演じた俳優が晩年にその元凶たる監督と親交を温める・・・という奇妙な四角関係が成立してしまうのだ。  その内の二人、チャップリンとメイソンが現在3mの距離で同じ墓地に埋葬されているのは何か皮肉な巡り合わせを感じなくもない。当時、隠居中二人の間で一体どんな会話が交わされたのであろうか、そして死後、僅かな距離の墓の中に居るものどうしで何を語り合っているのか・・・。今となっては誰も知る由もない。

【考察・検証】『シャイニング』とジョン・レノンの『インスタント・カーマ』

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 キューブリックの映画版では単なる超能力、テレパシー程度の描写しかなく、あまり重要視されなかった『シャイニング』という概念について主に原作の観点から考察してみました。  スティーブン・キング自身が公言しているように、この「シャイニング」という言葉はジョン・レノンの『インスタント・カーマ』の歌詞「Well we all shine on  Like the moon and the stars and the sun(そうさ私たちは輝けるさ、月のように、星のように、そして太陽のように)」が着想源です。「カーマ」はサンスクリット語で「業」を意味しますが、業の概念が分からないキリスト教圏の人間であるキングは、このカルマという言葉を「因果」と解釈しています。つまり小説『シャイニング』で語られる、オーバールック・ホテルに集う人間たちが積み重ねて行った悪行、「負の因果の繰り返し」の事です。そのカルマ(負の因果)に対抗できる唯一の(キリスト教的な)聖なる光がダニーの持つ「シャイニング」だとキングは理解し、小説のアイデアの中心に据えたのです。  この『インスタント・カーマ』の歌詞を、なるべく『シャイニング』の世界観に準じ、ダニーの視点で訳してみました。 お手軽な因果がパパを狙っている パパの頭の中に入り込もうとしてる よくよく自分自身を見つめないと すぐに死はやってくるよ いったい何を考えているの 愛を笑いとばして いったいどういうつもりなの それはパパ次第なんだ お手軽な因果がパパを狙っている パパの顔をじっくりとのぞき込んでる 愛する人のことをよく考えて 人類に生まれたことを楽しんで 世界には色々あるんだってことを知って バカみたいだと笑ってもいいから いったいどういうつもりなの そうだよ、パパは確かに スーパースターだよ そうさ、ボクたちは輝けるんだ 月のように、星のように、そして太陽のように そうさ、みんなが輝ける さあ、みんな! お手軽な因果がパパを狙っている パパを完全に打ちのめす みんな仲間だってことに気がついて 僕たちはどうしてここに存在しているんだろう 苦痛や恐れで生きているんじゃないんだ パパならどこにでも行けるのに どうしてそんなところにいるの こっちに来て、みんなで分かち合おうよ そうさ、ボクたちは輝けるんだ 月のように、星のように、そして太陽のよう...

【家族】マニュエル・ハーラン(Manuel Harlan)

 キューブリックの妻、クリスティアーヌの弟でキューブリック作品のプロデューサーだったヤン・ハーランの長男。キューブリックにとっては義理の甥になる。『フルメタル・ジャケット』のベクトン・ガス工場ロケで若き日のマニュエルがキューブリックと並んでモニタを覗き込む写真が残っていて、IMDbではビデオ・オペレータとのクレジットがある。『アイズ ワイド シャット』ではロケーション用の資料写真の撮影をまかされて、大量のスチール写真を撮っている。  現在はフォトグラファーとして活躍しているそうだ。

【関連書籍】栄光の小径(Path of Glory)

 カナダ人作家、ハンフリー・コッブが1935年に書いた『突撃』の原作(映画原題も同じ)。第一次世界大戦の最中、フランス陸軍で起こった反乱罪によって死刑に処された5人の未亡人たちが、損害賠償を求めて提訴するが敗訴になったという記事をコッブが目にし、そこから着想を得てこの小説を書いた。  キューブリックはこの本を高校時代に既に読んでいて、 「この本は私が高校時代に楽しんで読んだ本の、数少ないもののひとつだった」「父の仕事場に置いてあったのを見つけ、父が患者の診療を終えるのを待っている間に読み始めた」(引用:キューブリック全書) と語っている。  タイトルの「栄光の小径」はイングランドの詩人、トマス・グレイの『故郷の墓地に書かれし哀歌』の一節「栄光の小径はただ墓へと続くのみ」から採られている。

【関連動画】ステディカムで撮影された映画・ドラマの名シーンを一本にまとめた動画『The Art of Steadicam』

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 キューブリック作品は『シャイニング』『フルメタル・ジャケット』『アイズ ワイド シャット』、関連作品としては『A.I.』が取り上げられています。当初は画期的だった滑らかな移動映像も今では当たり前になってしまったせいか、目線の高さで撮った映像はあまり新鮮さは感じませんね。でも、『シャイニング』『フルメタル…』のローアングルはやっぱり効果的です。あとクレーンと組み合わせた立体的なカメラワークは目を惹きます。そういえばキューブリックはクレーンってあんまり使っている印象がないですね。記憶では『フルメタル…』の高い障害物を乗り越える訓練シーンくらいしか思い出せません。あとは『スパルタカス』とか。今度検証してみようかな。  この動画ではオミットされてしまいましたが、史上初のステディカム使用映画は『ウディ・ガスリー/わが心のふるさと』です。キューブリックが『シャイニング』で初めて使用したと勘違いされないためにも、念のためここに記しておきます。

【場所・地名】ヴェルダンの戦い(Battle of Verdun)

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 『突撃』のモデルになった、フランス東部ヴェルダンで行われた第一次世界大戦での主要な戦いのひとつ。1916年2月21日に始まり同年12月16日まで続き、両軍合わせて70万人以上の死傷者を出した。  劇中の「蟻塚」のモデルは「ドォーモン砦」といい、現在でもその遺構が残されている。「Fort Douaumont」</a>で画像検索すれば当時の凄惨な戦場の様子や、兵士たち、死体、塹壕、トーチカ、砲撃の跡の穴ぼこだらけの大地、また現在の様子など様々な写真を見る事ができる(閲覧注意)。キューブリックもこれらの資料に基づいて映像化したのだろう、映画は割と忠実に再現しているのが見て取れる。  戦いの前半はドイツ軍がドォーモン砦を始め数々の砦を奪取するなど優勢に立っていた。フランス軍の間では士気は著しく低下し、厭戦気分が漂っていたという。それを知ったペタン将軍は兵士の待遇を改善し補給路を確保、士気も上がり物資も潤沢になったフランス軍はやがてドイツ軍の撃退に成功、同年の年末にはフランス軍は全ての失地を回復した。この功績によりペタンは一躍第一次世界大戦の英雄に祭り上げられるが、その後の第二次世界大戦ではナチスドイツの傀儡、ヴィシー政権の首相になり、戦後は国賊として糾弾されるのだから運命とは皮肉なものである。  尚、『突撃』で描かれた反乱罪による死刑は前年の1915年に起こっている。5人の兵士の未亡人がフランス陸軍を相手に訴訟を起こし、敗訴したという事実に基づいており、この戦いで起こった出来事ではない。

【ロケーション】ノーフォーク湖沼地方(Norfolk Broads)

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 『フルメタル・ジャケット』でドアガンナーがベトナム人をヘリで上空から銃撃するシークエンス。さすがにこれは現地ベトナムか東南アジアで第二班がロケしたのかと思っていたのですが、実はこれもイギリスで撮影されたものだそう。そのロケ地はイギリス東部にあるノーフォークにある「ザ・ブローズ(湖沼地方)国立公園」。ここはヨーロッパで最も重要な一大湿地帯で、125マイルも続く水路や水車などが点在している観光名所です。  キューブリックはこの湿地帯をベトナムに見立てるため、早朝に低空でヘリを飛ばして撮影しました。つまり南国に見えたあの色調は朝焼けの色だったのです。自宅からちょっと距離はありますが、イギリス南部ですのでアイルランドに行った事を思えばまだ近い方。ここまで「近場でロケ」にこだわるとは、すごいを通り越して呆れてしまいますね。  でも、飛行機恐怖症のキューブリックは絶対ヘリには同乗はしていないと思います。だったら最初っから東南アジアで第二版がロケした方が良かったような気がするんですが・・・。

【パロディ】スリップノット/スピット・イット・アウト(Slipknot - Spit it out)

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 アメリカ・アイオワ州出身のヘビメタ・ミクスチャーバンド「スリップノット」のセカンドシングル『スピット・イット・アウト』のMV です。  まあなんと申しましょうか、本人達が楽しんでいればそれでいいのではないでしょうか?としか言いようがないですね。こういうへビメタ系ミクスチャー・ロックは攻撃的で過激な反面、チープでどこかコミカルなのがお約束となっていますので、このPVのノリはまさしく王道でしょう。ヘビメタ→ホラーという発想の安易さも定番ですね。  バンドはいろいろトラブルに見舞われていて2010年にはメンバーの死亡事故も発生しているようですが、言っちゃあなんですがそれも定番のイベントのようなもの。命を賭すほどの価値がある音楽とは思えませんが、この世界の住民にとってはそういうものなんでしょう。