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4月, 2014の投稿を表示しています

【関連動画】『シャイニング』のゴールドルームで流れていた音楽4曲

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 『シャイニング』でジャックがムシャクシャしながらゴールドルームに向かうシーンから、パーティーシーン、バーのシーン、トイレのシーンまでバックに流れる楽曲の一覧の動画です。 Masquerade|Jack Hylton and his Orchestra / singer : Pat O'Malley Midnight, the Stars and You|Ray Noble and his Orchestra / singer : Al Bowlly It's All Forgotten Now|Ray Noble and his Orchestra / singer : Al Bowlly Home|Henry Hall and his Gleneagles Hotel Band / singer : Maurice Elwin  2はラストシーンにも流れますので有名ですが、他はうっすらとしか聴こえないので、この調査は助かります。4はサントラに収録されていますが、この曲を入れるくらいなら2を入れるべきでしょう。まあ、レーベルや契約の問題があったのかもしれませんが。  それにしてもキューブリックってジャズやワルツが好きですね。

【プロップ】MG-TD

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 『現金に体を張れ』で馬を狙撃したニッキが乗っていた車。MGとはイギリスの自動社メーカー、モーリス・ガレージ社の意味で、このTDは1950年台前半に生産されたスポーツカーです。『現金…』は1956年の映画なので、当時の洒落者が乗っていたスポーツカーという認識でよさそうです。  でも・・・オープンカーで白昼堂々と銃をぶっ放すっていうのはどうかと。まあそういった細かい事よりも犯罪映画としてのダイナミズムを優先した、と良心的に解釈しておきましょう。

【パロディ】とっても『2001年宇宙の旅』なデンマークのバターのCM

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  まあ、『2001年宇宙の旅』は世界中のCMでパロディにされているので、今更感はありますが気合いが入っていて、なかなか面白かったのでご紹介。ナレーションがなんと言っているのか分かりませんが、恐らく「LURPAKさえあれば料理の範囲が広がります」という意味なんでしょう。  全ては触れませんが、あれはあのシーン、これはあのシーンが元ネタだな。と思われるカットが何ヶ所も(笑。スターゲートをああいう風に表現する発想は面白いですね。ムーンバスもなかなかのアイデアです。BGMはもちろんアレ。製作スタッフのこだわりと思い入れが伺えて嬉しくなっちゃいます。このLURPAK、日本での取り扱いはないようですが、ちょっと味見してみたくなりますね。

【名曲】憎いあなた/ナンシー・シナトラ(Nancy Sinatra - These Boots Are Made for Walkin')

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  1966年に発表されたフランク・シナトラの娘であるナンシー・シナトラによるヒット曲。同年のビルボード・チャートで第1位を獲得した。歌詞の内容は「憎いあなた」などと可愛らしいものではなく、「ブーツは歩くためにあるものよ。その内あなたをこのブーツが踏みつけて行くかもね」とかなり挑発的で過激、浮気している男を懲らしめる内容になっている。まさにこのシーンの売春婦の挑発的な歩き方そのものだ。  『フルメタル・ジャケット』後半のベトナム・パートの最初のシーンで流れるこの曲。パイルの自殺シーンでジリジリとした緊張感を強いられていたところで、ここで一気に緊張が緩む。原作小説ではジョーカーとラフターマンがPX(米軍購買部)から映画館に行くシーンから始まるが、それではメリハリが弱いと感じたのか、売春婦とのくだらないやりとりを頭に持ってきている。

【関連動画】エンド・オブ・ザ・ワールド/死を呼ぶエイリアン脱出計画

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 映画好きも長い間やっているとだんだん耐性ができてしまい、めったな作品では感動できなくなってしまうという弊害を生んでしまいます。そうなると嗜好があらぬ方向に向かってしまい、カルトやB級、さらにそれらさえも超越した「Z級」を好むようになるという困った事態に。以前ご紹介した『恐怖と欲望』のヒロイン、ヴァージニア・リースが出演していた『死なない脳』もそうですが、こういった作品を見つけた時の香ばしい気持ちと言ったら!!・・・いえ、何でもないです(汗。  そんな管理人が見つけたZ級映画である、この『エンド・オブ・ザ・ワールド/死を呼ぶエイリアン脱出計画』ですが、何故この作品を取り上げたのかというと『ロリータ』ではスクリーンの外と中でしか共演できなかったスー・リオンとクリストファー・リー(ロリータを驚かせたフランケンシュタインの怪物)が、堂々と(!)共演しているからです。しかも主人公の妻と神父(敵のボス)というメインキャストで。  ただこの作品、早送りしないで観るのはとても困難を伴います。つまり見せ場がほとんどないグダグダ展開で、かったるくってしょうがない。これってひょっとしたらZ級ではなくて単なる駄作なのでは・・・と思ってしまうのですが、まあそれを「味」として嗜みましょう。その苦労は一瞬見せる神父の正体と唐突なラストシーンで報われ(?)ますので。

【サウンドトラック】『2001年宇宙の旅』オリジナル・サウンドトラック(2001: A Space Odyssey Original Sound Track )※CBS盤

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2001:A Space Odyssey Soundtrack(Amazon) Overtune:Atmospheres (Excerpt)(Ligeti) 2:47/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour Title Music:Also Sprach Zarathustra(R. Strauss) 1:39/Karl Bohm Conducting Berlin Philharmonic Orchestra From Earth to the Moon:The Blue Danube(J. Strauss) 9:49/Herbert von Karajan Conducting Berlin Philharmonic Orchestra TMA-1:Lux Aeterna(Ligeti) 5:57/Stuttgart Schola Cantorum Conducted by Clytus Gottwald Discovery:Gayane Ballet Suite (Adagio)(Khachaturian) 5:13/Leningrad Philharmonic Orchestra Conducted by Rozhdestvensky Star Gate:Requiem For Soprano, Mezzo Soprano, Two Mixed Choirs & Orchestra(Ligeti) 5:58/Francis Travis Conducting The Bavarian Radio Orchestra Star Gate II:Atmospheres(Ligeti) 8:37/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour Transfiguration:Atmospheres (Excerpt)(Ligeti) 1:39/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour  1990年にアメリカCBSからリリースされたオリジナルMGM盤のCD化だが、一曲目に『序曲:アトモスフェール』を追加、前後に分かれていた『ドナウ』を一つにまとめて、曲順を映画の登場順に変更している。

【ロケーション】シェパートン・スタジオ(Shepperton Studios)

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シェパートン・スタジオを空軍基地に見立てて撮影中のキューブリック  『博士の異常な愛情』でバープルソン空軍基地の外観に使用されたのは、ロンドン西部、クイーンメアリー貯水池の南にあるシェパートン・スタジオです。もちろん最高作戦室など、『博士…』の他のシーンはこのスタジオにセットを建て込み、撮影されました。また『2001年宇宙の旅』のTMA-1発掘現場もこのスタジオが使用されました。(それ以外の主な撮影はボアハムウッドにあったMGMスタジオ)  因にリッパー将軍の執務室に飾ってあった滑走路がある基地の上空写真は、このシェパートン・スタジオのすぐ北側にあるヒースロー空港です。  現在は当時と様子が全く変わっています。Googleのストリートビューは こちら 。

【関連動画】スタンリー・キューブリック・アーカイブのリポート動画

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  ロンドン芸術大学内にある「スタンリー・キューブリック・アーカイブ」をリポートした動画がありましたのでご紹介。  これらの資料は元々ハートフォードシャーのキューブリック邸に保管されていたのものでしたが、2007年に遺族がロンドン芸術大学に寄贈、その際に同大学がこの保管設備を整備したものです。この動画ではほんの一端しか見る事しかできませんが、それでも『フルメタル・ジャケット』の少女スナイパーの生首や『時計じかけのオレンジ』のフィリップ・キャッスルによるイラストレーションなど、マニア垂涎のレアなお宝がゴロゴロと。  最初にチラっと映る閲覧スペースは『2001年宇宙の旅』の宇宙ステーション内部をイメージしたものです。無料で一般にも公開しているそうなので、ロンドンに行かれる際は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

【撮影・技術】ADR(Automatic Dialogue Replacement)

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ADR・Dubbing(wikipedia)   「オートマティック・ダイアログ・リプレースセメント」自動的に台詞を置き換えること。つまりアフター・レコーディング(アフレコ)もしくはダビング。  キューブリックはこのアフレコを毛嫌いしていて、マイクの小型化が実現するとすぐに採用するなど、常に撮影と台詞の同時録音にこだわった。アシスタントのレオン・ヴィタリによると、  「撮影の際に描写される雰囲気が決してADRでは、醸し出すことができないからだと思う」 とインタビューで応えている。  現場では小型マイクとブームマイクを使い分けていたようで、編集の際には他のテイクの台詞の一部分のみを切り出し、使用テイクの音源と差し替えたりするなど、あくまで同時録音にこだわっていたようだ。  キューブリックは処女作『恐怖と欲望』でアフレコに手間取り、当初4万ドルだった経費に更に上乗せして2万~3万ドル余計に支払わされる羽目になり、それもあってこのADRを嫌っていたのかもしれない。  ただし、すべて同時録音だったわけではなく、状況によって(例えば『2001年宇宙の旅』のHALのセリフ)はADRも使用している。

【コンピレーション】Dr. Strangelove: Music From The Films Of Stanley Kubrick

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Dr. Strangelove: Music From The Films Of Stanley Kubrick(Amazon) Also Sprach Zarathustra (1:48)/ツァラトゥストラはかく語りき(2001年宇宙の旅)Richard Strauss / Prague Philharmonic Orchestra Main Title (3:41)メイン・タイトル(スパルタカス)Alex North / Prague Philharmonic Orchestra Ode To Joy (5:35)ベートーヴェン交響曲第九番「合唱」第4楽章(時計じかけのオレンジ)Ludwig van Beethoven / Prague Philharmonic Orchestra Women Of Ireland (4:31)アイルランドの女(バリー・リンドン)Traditional / Prague Philharmonic Orchestra Sarabande (4:07)サラバンデ(バリー・リンドン)Prague Philharmonic Orchestra Full Metal Jacket: Themes (5:15)フルメタル・ジャケット:テーマ(フルメタル・ジャケット)Abigail Mead / Prague Philharmonic Orchestra Surfin Bird (2:22)サーフィン・バード(フルメタル・ジャケット)The Trashmen Main Title / Robbery (4:51)メイン・タイトル/ザ・ロバリー(現金に体を張れ)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra Murder 'Mongst The Mannikins (3:30)マーダー’マング・ザ・マネキン(非常の罠)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra A Meditation On War (5:52)ア・メディテイション・オン・ウォー(恐怖と欲望)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra Madness (3:45)マッドネス(恐怖と欲望)Gerald Fried / Prague Phil...

【トリビア】ジャズ・ドラマー(Jazz Drummer)

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1950年3月3日、ルック誌の取材時にジョージ・ルイス・アンド・ヒズ・バンドとセッションをするキューブリック   キューブリックはハイスクール時代、ドラマーとして数々のオーケストラやダンスパーティーなどで演奏していたそうだ。その腕前はというと当時のクラスメートによると、  「彼は、熱心に練習に来て演奏していた。スウィングやジャズ、流行の曲などを演奏している時が、一番練習に集中していた。驚くのは、練習に彼がカメラを持ってこなかったことだ。バンドに全力投球ていた。ドラムが上手だった彼はリズムをとるだけではなく、ソロもこなした」(『映画監督 スタンリー・キューブリック』より) と証言している。キューブリックは一時期はかなり真剣にジャズ・ドラマーになる事を考えたという。しかし後にツアーばかりのミュージシャンの生活を知るに及び、こんなに大変で体力的に厳しいならならなくてよかった、という旨の発言をしている。  キューブリックのこのドラマーとしての資質は映画製作にも活かされ、撮影時のアドリブを好み、まるで俳優とジャムセッションをするかようにアイデアの応酬を繰り広げていたようだ。その後の編集作業でもサウンドトラックと合わせたリズミカルな編集などにその影響が見て取れる。

【関連動画】ドキュメンタリー『ピーター・セラーズ・ストーリー』のキューブリック関連部分の動画

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 1995年、イギリスBBCの『アリーナ』で放映されたドキュメンタリー、『ピーター・セラーズ・ストーリー』のキューブリックに関する部分のみ抜きだした動画です。ピーター・セラーズ邸の裏庭のテニスコートでクリスティアーヌとペアでテニスをするキューブリック(相手はプロデューサーのジェームズ・B・ハリス)というレアなシーンも面白いですが、セラーズとカメラマンのウィージーとのやりとりが録音されているテープは貴重です。『博士…』のストレンジラブ博士の口調は、当時キューブリックが映画のスチール撮影に招聘していたウィージーの口調を真似たものですが、何故かこの事実はあまり知られていなくて、未だにキッシンジャーがモデル(キューブリックもセラーズもキッシンジャーを見たこともなかったのにも関わらず)などという間違った認識が広まったままになっています。  他にはクリスティアーヌが「特徴的」と語っていたキューブリック独特の足の組み方も映像で確認できますね。クリスティアーヌはそれがよほど印象的なのか、死去直後にそれを『スタンリーの思い出』という絵の中に描いています。

【パロディ】とある科学の超電磁砲 第13話『ビキニは目線が上下に分かれますけどワンピースは身体のラインが出ますから細い方しか似合わないんですよ』に登場した『2001年宇宙の旅』のパロディ

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水着で月面のモノリスに遭遇。まあバーチャルなんですけど   2009年秋にオンエアされたアニメ『とある科学の超電磁砲 』の第13話『ビキニは目線が上下に分かれますけどワンピースは身体のラインが出ますから細い方しか似合わないんですよ』でパロディにされた月面のモノリスです。また、ツインテールの女の子が骨を持っていたり、月、地球、太陽の天体直列があったりします。BGMは言わずもがな。全く脈絡なく唐突に始まりますので、まあスタッフのお遊びでしょう(笑。  このようにアニメでキューブリック作品のパロディを探そうと思えば結構ありそうです。『エヴァ』や『ガンダム』は「影響」なので、それを取り上げるとなると論じなければならくなってしまい、当ブログの趣旨から外れしまいますのであえて触れませんが、こういったお遊びやパロディは嫌いじゃない(もっと遊んでもらってもいいくらい)ので、今後も取り上げていきたいと思っています。

【関連動画】『フルメタル・ジャケット』の日本版劇場用予告編

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 現在DVD等に収録されているのはオリジナルの公式予告編ですので、この日本版予告編映像のソースはどこからのものでしょうか。キューブリック作品はVHSを始めLDなど様々なメディアで映像ソフト化されていますので、それらのいずれかに収録されていたものかも知れません。もしくはどなたかがたまたま録画しておいたのが残っていたとコアか。ナレーションは内海賢二氏のようです。

【アーティスト】アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)

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 オランダ、アムステルダム出身の建築デザイナー。『2001年宇宙の旅』で、ボーマンとプールが食事に使用したカトラリーは、ヤコブセンが1957年にコペンハーゲンのSASロイヤルホテルのためにデザインしたもの。そのミニマムなフォルムは『2001年…』の世界観にピッタリで、キューブリックが採用したのもうなずけますね。しかし・・・高すぎます(笑。インテリアが好きな方にはAJテーブルランプやセブンチェア、ローゼンダール時計などが有名。

【考察・検証】『アイズ ワイド シャット』のニコール・キッドマンのインタビューから、キューブリックの映画製作への取り組み方を考察する

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  『アイズ ワイド シャット』のDVDやBDに収録されている1999年7月12日に行われたニコール・キッドマンのインタビューです。映画製作に於けるキューブリックの考え方を知る上で極めて重要なインタビューですが、結構ご存知ない方も多いようなのでテキスト起こしをし、改めてここでご紹介します。これを読めばいかにキューブリックの撮影現場が芸術性を重んじ、自由で、創造性に満ちていたか理解できるかと思います。またキューブリックを語るなら最低限押さえておいて欲しい知識でもあります。ネットや書籍上にまき散らされた数多い偏見や誤解を解く一助になる事を強く希望します。 ── アイズ ワイド シャットへの出演依頼はシドニー・ポラックとトムを通じて?  直接脚本を送ってきたの。スタンリーはトムとはファックスでずっとやり取りしてたわ。私は不在で内容は知らなかったけど、1年以上はやりとりが続いていたわ。私は『ある貴婦人の肖像』の撮影でロンドンにいたの。監督のアシスタントから電話があり、脚本と手紙の送り先を聞いてきたの。私はもう驚いちゃって、自分で受け取るよう念を押され、私は大丈夫と言ったの。その時の手紙はちゃんと保管してあるわ。「アリス役にピッタリだ、ぜひ君にやってほしい。腰を落ち着かせて読んでくれ。集中して欲しい、読んだら電話してくれ。」これが依頼された時のだいたいの事情よ。 ── あなたがトムより先に脚本を?  いえ、トムにも脚本が届いていたわ。私の出演作のテープを監督が取り寄せて観ていたことを、その時エージェントから聞いたの。全然知らなかったわ。エージェントは単なる照会だと思ったのね。こんなふうに始まっていったの。 ── それでスタンリーに会いに行ったんですか?  ええ。 ── 第一印象はどうでした?  髪の毛がボサボサで(笑)。あの時彼はジャケットを着ていたわ。人間の目としては今まで見たことがないものすごい目で、娘さんも同じなの。半ば閉じたような目なんだけど、どこかいたずらっ子のような雰囲気を持っているの。でもそれでいて、長い人生を感じさせる目なの。 ── ほかの人が気づかなかった何かをあなたに見たと思う?  私はただビクビクしてて、私を一目見ただけで見込み違いだと言われるかと。そして降ろされると思ったの。彼といると緊張して最初の1ヶ月はずっとそう恐れていたわ。畏敬の念が強く...

【ブログ記事】『2001年宇宙の旅』のイラストレーター、ロバート・マッコールが描いた不採用シーンのストーリーボード

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  『2001年宇宙の旅』で広告のアートワーク全般を担当したロバート・マッコールが描いたストーリーボードです。スペース・ポッドがスターゲートを抜け、通常空間に戻るシーンのようです。クラークの小説版によると第42章の「見知らぬ空」のワンシーンだと推察できます。  以前ここでも指摘したようにキューブリックは一旦はクラークの小説の忠実な映像化を試みていたようです。しかし結果そうならなかったのは小説をそのまま映像化すると陳腐になる、既に予算や時間を費やしすぎてしまった等の判断があったのだと思われます。キューブリック自身がインタビューで「わざと曖昧にする必要はなかった」と答えているように、リアルで説得力のある映像表現を目指していたら結果的に曖昧にせざるを得なかった、という事でしょう。  キューブリックはその後、この「映像を暗喩・象徴的に使用し、演技や台詞で全て説明してしまう事を避ける」という手法を好んで使うようになり、キューブリック作品の代名詞になっています。どうしても具体的に「そのものズバリ」を見せてしまう映像の特性を逆に利用したこの方法論はキューブリックが初めて用いたものではありませんが、「劇」映画が主流のハリウッドの映画界でここまで徹底的に、しかも高いクオリティを持って表現し続けたのはキューブリックが初めてである、と言い切って良いでしょう。

【ロケーション】タイムズ・スクエア(Times Square)

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デイヴィがマフラーを取り返したシーン   『非情の罠』で、デイヴィとグロリアが待ち合わせたダンスホール「快楽の園」の前の路上のロケ地。ニューヨークの有名な観光名所です。映画のこのシーンには『二つの世界の男(The Man Between)』の広告が映り込んでいますが約10年後に、この映画の主役であるジェームズ・メイソンを『ロリータ』で主役に抜擢するなどこの頃のキューブリックは夢にも思わなかったでしょうね。

【関連記事】エルスツリー・スタジオの敷地から『シャイニング』の雪が発掘される

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エルスツリー・スタジオに作られたホテルの裏側と迷路のセット エルスツリー・スタジオの片付け作業中に、ホラー映画の古典作品に出てくる偽の雪が発見される。  エルスツリー・スタジオの土地埋め立て工事は完成に近づいており、請負業者は敷地内に埋もれた珍しいものを発見したが、そこに埋まっていると噂されていたミレニアム・ファルコン号の痕跡は見つからなかった。   しかし、作業員は白い粉が詰まった袋を何袋も発見した。分析の結果、この白い粉は偽の雪であることが判明した。このエリアで最後に偽の雪が使われたのは、34年以上前の スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』の時だった。  『シャイニング』の製作総指揮者ヤン・ハーランは次のように語っている。「ホテルの正面の一部は、エルスツリー・スタジオの敷地内に足場を組んで再建されました。冬のシーンでは、空気に触れると硬化するホルムアルデヒドベースのフォームを使用して大量の人工雪が追加され、その後、リアルな結晶効果を得るために塩で覆われました。」  「34年を経て、今頃は「雪」は粉々になっているかもしれません。これは比較的簡単でしたが、本当の問題は、画像に神秘的な輝きを与えるために人工の霧を加えることでした。この薄い植物の煙は、ほんの少しの風でも数秒で吹き飛ばされてしまいます。無風と幸運は映画製作の一部です。撮影のために、エリア全体が人工の雪で覆われました。」 〈以下略〉 (引用: SCREEN DAILY/2014年4月8日 )  敷地内に大量にバラまかれた発泡スチロール(当時はホルムアルデヒドの有害性は指摘されていなかった)雪が残っていたんですね。よくあの雪は塩という話がありますが、実はほとんどが発泡スチロールで、それに更に本物っぽさを加えるために塩で覆ったのです。『メイキング・ザ・シャイニング』で人工雪を降らせているシーンが出てきますが、あれが発泡スチロールですね。塩はあんなに結晶は大きくないですから。  記事によると「多数の袋が発見された」となっていますので、バラまかれたものが残っていたのではなく、未使用もしくは使用済の袋入りのものを勝手にスタッフが埋めて処分していたのが見つかった、という事かもしれません。ある意味貴重な資料なので、捨てないでスタンリー・キューブリック・アーカイブズでの収蔵をお願いしたいですね。

【名曲】ロリータ・ヤ・ヤ(Lolita Ya Ya)

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サントラ収録のオリジナル・バージョン 日本でもおなじみベンチャーズ・バージョン 謎なシェリー・ウィンタースのバージョン  『ロリータ』のテーマ曲として書かれたこの曲、映画用オリジナル曲としてはキューブリック作品中最大のヒット(アビゲイル・ミードが書いた『フルメタル・ジャケット』はサントラ収録用楽曲なので厳密には映画用オリジナルとは言えない)だったようで、様々なアーティストのカバー音源が残されています。  有名どころでは日本でもおなじみのベンチャーズ、ザ・クレバーズ、オーケストラ・デル・オロ、そして最大の謎バージョンなのが『ロリータ』の母親役だったシェリー・ウィンタースが歌ったもの。どういう経緯でこのバージョンが残されたのか知りませんが、なんともまあ珍妙な味わいですね。  因にこの曲にネルソン・リドルと並んでクレジットされているボブ・ハリスとはプロデューサーのジェームズ・B・ハリスの実弟です。どうやらハリスがキューブリックに頼んで採用してもらったそうです。

【関連記事】英カルチャーサイト選出「2000年代を代表する映画25本」

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  A.I.(IMDb)  英カルチャーサイトShortListが、「2000年代を代表する映画25本(The 25 Greatest Movies of the 00s)」を特集している。  ほとんどが英語の映画&アメリカ映画という前提のリストになるが、ゼロ年代のアメリカといえば、ブッシュ政権の誕生、9・11同時多発テロ、イラク戦争、リーマンショックと世界同時不況、そして初のアフリカ系アメリカ人、オバマ大統領の誕生に代表される激動の10年だった。  25本は以下の通り(年代順)。 「あの頃ペニー・レインと」(2000) 「アメリカン・サイコ」(2000) 「グラディエーター」(2000) 「ハイ・フィデリティ」(2000) 「メメント」(2000) 「A.I.」(2001) 「ドニー・ダーコ」(2001) 「28日後...」(2002) 「シティ・オブ・ゴッド」(2003) 「キル・ビル」(2003) 「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」(2003) 「俺たちニュースキャスター」(2004) 「エターナル・サンシャイン」(2004) 「ミリオンダラー・ベイビー」(2004) 「トゥモロー・ワールド」(2006) 「ディパーテッド」(2006) 「パンズ・ラビリンス」(2006) 「ノーカントリー」(2007) 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007) 「THIS IS ENGLAND」(2007) 「ゾディアック」(2007) 「ダークナイト」(2008) 「第9地区」(2009) 「イングロリアス・バスターズ」(2009) 「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009) ( 映画.com ニュース/2014年4月3日 )  混沌したゼロ年代を象徴する微妙なランキングですね。選ぶ人によってはこの顔ぶればガラっと変わるでしょう。それにそんなに面白いとは思えなかった『A.I.』が入っているのも謎です。まあそれだけ誰もが認め、素晴らしいと言えるインパクトのある作品がなかった、という事でしょうね。

【関連動画】HAL9000のスクリーンセーバー

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  ずいぶんと前からあるサイトですが、改めてご紹介。HAL9000そっくりのスクリーンセーバーがダウンロードできます。隅々まで神経の行き届いたデザインが美しく、なかなかの再現度です。とりあえず2種類を無料で試用できますので、お気軽にお試しを。  好みはフルスクリーン・バージョンですね。確かにコンソール・バージョンの方がHALらしいですが、あまりにもモロバレなので、ここは「分かる人には分かる」フルスクリーン・バージョンで通ぶりたいです。一見単なる普通にカッコイイスクリーンセーバーですから、インストールするPCを選ばないのもいいですね。研究や開発で使用しているPCならそれっぽくってなおさらよろしいかと。でも個人的にはスリープ派なのでスクリーンセーバーは使わないと思います(爆。  映画でのこのモニター表示はダグラス・トランブルを始めとするスタッフの手描きアニメーションだったのは有名な話ですね。ワイヤーフレームのアニメーションはまさしくワイヤーフレームを実際に作成し、それを回転台の上に載せて少しずつ回転させながら撮影、それを画像処理してあのAE35ユニットなどのアニメーションを製作したそうです。何気ない映像ですが恐ろしく手間がかかっているのです。スタッフが逃げ出すのも無理ないですね。

【関連記事】これが原点。「天才少年」と謳われた若きスタンリー・キューブリックの写真作品

 「2001年宇宙の旅」、「時計仕掛けのオレンジ」、「シャイニング」などで知られる映画界の巨匠スタンリー・キューブリック監督が1940年代に撮影した写真をご紹介します。1940年代、17歳から22歳の頃にルック誌の見習いカメラマンとして働いていた時代です。キューブリックはニューヨークの人々を捉えています。決して生き生きとした人物達が捉えられているわけではなく、どこか影のある人物やアングルで撮影されています。この頃から独自の視点をもっていたことがわかりますね。関係者には「天才少年」と言われていたようです。ルック誌での活動の後、短編ドキュメンタリー「拳闘試合の日」を製作しルック誌を辞めています。映画を撮る以前、若いキューブリックのこれらの写真を残していることがとても興味深いですね。 (引用元:ARTIST DATABASE/2014年4月1日)※記事は削除されました。  最近キューブリックのルック社在籍時代をまとめた写真集『スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945‐1950』へのアクセスが多いと思ったらこういう記事が出ていたんですね。当ブログでもこの時代の事はたびたび記事にしています。まず写真集についてはこちら。ルック社に入社するきっかけになったという、ハイスクール時代にルック社に25ドルで売りつけた有名な写真についてはこちら。通称『シカゴ・シリーズ』の没テイクをまとめた動画はこちら。キューブリックの愛機についてはそれぞれ、スピグラ、コダックモニター、ローライ、ライカとリンク先で記事にしています。また、キューブリックはこの頃ダイアン・アーバス、ウィージー、バート・スターンら超一流カメラマンらとも交流がありました。  それにしても上記の記事にはコメントはもちろん、ツイートやいいね!も結構なカウントがされていますね。去年イタリアのジェノバでこの時代の写真展が開催されていますが、これだけ需要があるなら日本での開催も可能ではないでしょうか?是非関係者様にはご検討をお願いしたいです。

【プロップ】アメリカ陸軍パラシュート部隊ブーツ(US Army Paratroopers Jump Boots)

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   『時計じかけのオレンジ』でアレックスたちドルーグが履いていたブーツはアメリカ陸軍パラシュート部隊ブーツです。いわゆる 「ボバーブーツ」 ですね。マルコム本人に確認済だそうです。ただ現在同じものを入手するのは非常に難しいでしょうね。コスプレ等で愛用されているのはドクターマーチンが多いようです。定番は1460の8ホールですが、イメージが近いのは 1490の10ホールです。  マーチンといえばMade in Englandでしたが、2003年にイギリス国内での生産を止め、全ての工場が中国にシフトしたためイギリス製のマーチンは今でも中古市場で人気があるみたいです。私も以前、黒とチェリレ、黒のサイドゴアと3足所有していましたが丁度その頃に手放してしまい、今は別のブランドのブーツを履いています。

【関連動画】『博士の異常な愛情』の未発表テイクが含まれたプロモーションフィルム

 ※動画は削除されました。  これはすごい!明らかに没テイクや別テイクが含まれています。どういった趣旨でこのフィルムが製作されたのか残念ながらよくわかりませんが、動画の説明には「ナレーションはキューブリックのように聞こえる」とあります。もしそれが正しければキューブリックが映画完成前に映画関係者にどのような映画なのか説明するために製作した広報用フィルムなのかもしれません。実際『2001年…』でも製作中にMGMの重役たちを招いて試写会を開いています。これもそういった意図で製作されたものだとすれば、完成作品以外は全て破棄してしまうキューブリックにしては手落ちがあったという事でしょう。もしくはこの頃はまだ極端な秘密主義に走っていなかった、という事かも知れません。  是非とも音声と映像をクリアにデジタル化してBD等の特典映像として収録すべきです。また、それを望みます。関係者各位には何卒実現をお願いいたします。

【関連記事】スタンリー・キューブリックの長年のプロデューサーが『ルーム237』を酷評し、『アイズ ワイド シャット』をお気に入りのキューブリック映画に挙げる

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Jan Harlan(IMDb) 「Room 237」を見ましたか?  ああ、なんてバカなんだ。もちろんそう思ったよ。気に入らないという話ではない。ただ馬鹿げている。つまり、(この 映画監督は)明らかにキューブリックが死ぬまで待っていたんだ。こういうことは何度も彼に起こったし、偽の月面着陸をしたという話もそうだ。これは彼が死んでからしかできなかった。人は虫けらのようにやってきて、墓から訴訟できない奴を利用する。いずれにせよ、私はそういうことは気にしない。 (引用: Indiewire/2014年3月31日 )  『時計じかけのオレンジ』以来キューブリック作品に長年プロデューサーとして参加し、義弟でもあるヤン・ハーランが例の『ROOM237』についてインタビューに応えています。ヤンは「何も解明しない陰謀説オタク映画」「明らかにキューブリックが死ぬのを待っていた大バカだ」「墓から出て来れない者を利用している」と批判のオンパレードです。  しかし、あえて私は苦言を言いたい。インタビューでも言及されている「偽の月面着陸」とはこの『オペレーション・ルーン』を指しているのでしょうが、その番組に姉(キューブリックの妻クリスティアーヌ)と一緒に嬉々と出演していたのはあなたでしょ?と。そんなあなたにこの『ROOM237』を批判する資格があるのかと。自作の権利を頑までに守り、TVのオンエアや広告、果ては上映館の壁の色まで口うるさく介入していたキューブリックの遺志を尊重し、あなたの言う「何も解明しない陰謀説オタク」からキューブリック作品を守らなければならないあなたと姉が、どうして『オペレーション・ルーン』などというくだらない番組に出演してしまったのか。その安易な行動がその「大バカども」に免罪符を与えてしまった責任ををどう考えているのか。とことん問いつめたくなります。  映画であれ、写真であれ、絵画であれ、音楽であれ、小説であれ、創作活動をした経験のある方ならよく理解できると思いますが「自作」というものは自分にとって我が子のように愛おしいものです。それを陰謀ごっこの道具にされ、あまつさえ金儲けのダシに使われるのを気にしなかったり、自作は嫌だけど他人の作品なら笑って許せる、という人は創作者でもクリエーターでもなく単なるカネの亡者、守銭奴です。その低レベルなゴミ自称芸術家たちはここに晒してあり...

【オーマジュ】ジュラシック・パーク(Jurassic Park)

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  スピルバーグの『ジュラシック・パーク』でレックスがキッチンの下に隠れるのは、『シャイニング』でダニーがジャックから逃れるためにキッチンの下に隠れたシーンのオマージュと言われています。確かに良く似ていますが、恐竜の間抜けなオチを用意するあたりがいかにもスピルバーグらしいです。  本作でティム少年を演じたジョゼフ・マゼロはキューブリック幻の企画『アーリアン・ペーパーズ』で主役のマチェックを演じる予定でした。となると当然キューブリックはこのオマージュシーンを観たはず。当人は何を思ったのでしょうね。