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【関連動画】スティーブン・キングのTV版『シャイニング』の予告編

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 スティーブン・キングが製作、ミック・ギャリスが監督をしたTVドラマ版『シャイニング』の予告編です。  なかなかの緊迫感が好印象の予告編ですが、本編はもっとグダグダ感があってこんなにスピーディーじゃありません。まあ原作にくらべればこれでもサクサク話が進むんですが。観ていただければ分かるように、ダニー役のコートランド・ミードの口元の緩さは、原作の聡明で行動力のある少年のイメージを根底から覆すものです。なんでこんな子役をキャスティングしてしまったのか、不思議でしょうがありません。  ジャック役のスティーヴン・ウェバーはなかなかの熱演を見せていますが、知名度のせいでクレジット順でウェンディ役のレベッカ・デモーネイの後に追いやられているのはちょっと可哀想。でもこの人、どうしても大泉洋に見えて仕方ないのが問題です。まあ本人に非はないのですが。  特典の未公開映像には原作者のスティーブン・キングが「溶ける」シーンがあるのですが、これがまたチープな味わいでなんだかなあという感じです。というか、幽霊のバンドマスターがキング本人だったんですね。全然気づきませんでした。ミック・ギャリスとキングや他のスタッフの音声解説はキューブリック版に対するリスペクトと対抗心が伺えて興味深かったです。  現在このTV版『シャイニング』のDVDは、中古DVDショップ等で安価で入手できますので、念のため押さえておいても悪くはないでしょう。管理人も最近未開封品を激安で入手しましたが、1000円以上出す価値はないと断言しておきます。

【関連動画】スティーブン・キングのTV版『シャイニング』の犬(狼)男

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キューブリックはこうなる事を予見して犬男とタキシード紳士のホモシーンに改変した  1997年にアメリカABCテレビのミニシリーズとして放映されたスティーブン・キングのTV版『シャイニング』で映像化された原作の犬男のシーンです。キングもさすがに犬はないと思ったのか、オオカミに変更していますが、結果的にたいして違いはなかったようです。キューブリック版の該当シーンについては こちら 。

【関連記事】『ゼロ・グラビティ』監督、『シャイニング』前日譚を監督か

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『シャイニング』の舞台のオーバールック・ホテル  映画『ゼロ・グラビティ』でアカデミー賞監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン監督が、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』の前日譚(たん)を描いた映画『ザ・オーバールック・ホテル(原題) / The Overlook Hotel』の監督オファーを受けたことがEmpireや複数のメディアで明らかになった。  『ザ・オーバールック・ホテル(原題)』は、映画『ホワイトハウス・ダウン』の製作者レータ・カログリディス&ブラッドリー・J・フィッシャーと、映画『ゾディアック』の製作者ジェームズ・ヴァンダービルトがワーナー・ブラザースの下で企画している作品。脚本はテレビシリーズ「ウォーキング・デッド」のグレン・マザラが執筆し、このたびキュアロンが監督のオファーを受けたようだ。 (以下リンク先へ:シネマトゥデイ映画ニュース/ 2014年5月26日 )  舞台がオーバールック・ホテルなら、ジャックが管理人として採用される前の話になるのでキューブリック版との整合性は取りやすいでしょうね。主人公が誰になるのか興味津々ですが、グレイディ一家の惨劇が描かれるのなら面白くなりそう。あの双子の少女にまた会いたい! キュアロン監督ならオマージュも大量に仕込んできそうですし、人選としては悪くないのでは。キングの後日譚『ドクター・スリープ』も映画化の可能性がありますが、もしそうなってもキューブリック嫌いのキングがキューブリックの世界観を踏襲するとは思えませんので、前日譚であるこちらの『オーバールック・ホテル』はキューブリック寄りになるのでは、と期待しています。続報を待ちましょう。

【台詞・言葉】私たちは心が広い(We're both broad-minded)

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 『ロリータ』でジーンがハンバートにこう問いかけるのは、いわゆる「夫●交換(ス●ッピング)」を指しての事でしょう。「大学教授で作家でもあるあなたと同じように、私たちも進歩的文化人なのでこういった〝革新的な〟関係も結べますよ」という意味ですね。もしくはそういった人たちが集まっているダンス・パーティーなので、その場にいるキルティも進歩的文化人である、と示すためでしょう。ただハンバートは思想的にも性的にも「勘が悪い」ので、その真の意味になかなか気づかない・・・という図式が『ロリータ』では繰り返されます。  こういった「進歩的思想」に対する皮肉や、性的暗喩は表現を検閲機関に大幅に規制されたキューブリックのせめてもの抵抗なのですが、その意図をちゃんと理解して鑑賞するなり批評するなりして欲しいですね。その意味ではキューブリック作品の中では一番誤解され、冷遇されているのがこの『ロリータ』ではないか、そう考えます。

【プロップ】血清 Exp./Serum No. 114

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 『時計じかけのオレンジ』でアレックスにビタミン剤と偽って注射された薬品。詳しくは描写されていないが、ルドビコ療法の主目的であるオペラント条件付けのために、吐き気や倦怠感、嫌悪感を催す成分が入っているものと思われる。  この「Serum No. 114」は「CRM(シーラム) 144」と読め、『博士…』の暗号封鎖回路「 CRM114 」の引用であるとともに、「 クリティカル・リハーサル・モーメント 」の略にもなっている。

【アーティスト】トミー・ウンゲラー(Tomi Ungerer)

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トミー・ウンゲラー(Wikipedia)  『博士の異常な愛情』のポスターのイラストレーションを担当したイラストレーター・児童文学作家。オリジナルのアートワーク(下記参照)も描いている。  主な著書は『ゼラルダと人喰い鬼』(1977)、『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』(1977)、『月おとこ』(1978)、『マッチ売りの少女アルメット』(1982)、『へびのクリクター』(1982)、『メロップスのわくわく大冒険 <1>・<2>』(1986)、『かたつむりみつけた』(1987)、『くつくつみつけた』(1987)、『すてきな三にんぐみ』(1989)、『こうもりのルーファス』(1994)、『フォーニコン』(1999)、『フリックス』(2002)、『カッチェン ― ウンゲラーのねこワールド』(2004)、『オットー ― 戦火をくぐったテディベア』(2004)、『ぼうし』(2006)、『あたらしいともだち』(2008)、『あおいくも』(2010)、『アデレード ― そらとぶカンガルーのおはなし』(2010)など。  1931年11月28日フランス・ストラスブール出身。

【関連記事】新遺伝子「時計じかけのオレンジ」理研などが発見

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 理化学研究所は6月19日、ショウジョウバエの体内時計で重要な役割を持つ新遺伝子を発見し、「時計じかけのオレンジ」と名付けたと発表した。似た遺伝子を持つ人間の体内時計の解明につながると期待している。  体内時計は睡眠などの生理機能に影響を与える体内の仕組みで、複雑な遺伝子ネットワークで成り立っていることが分かってきた。人間などの体内時計システムを解明するため、同じ起源ながら単純なショウジョウバエの体内時計システムの研究が世界的に進められている。  新遺伝子の発見は、理研の発生・再生科学総合研究センターの上田泰己チームリーダーらの研究チームと、九州大学の松本顕助教、国立遺伝学研究所の上田龍教授、米国テキサス農工大のポール・ハーディン教授らの研究チームとの共同研究の成果。  研究チームは、ショウジョウバエの頭部で24時間周期で発現している遺伝子を200個見つけた。ゲノム技術を使い、遺伝子の変異に成功した137遺伝子の変異ショウジョウバエについて24時間周期の行動リズムを観察。そのうち、行動リズムが著しく長くなった変異体の遺伝子を調べたところ、体内時計を制御する重要な役割を持っていることが分かった。  発見した遺伝子が「Orangeドメイン」と呼ばれるたんぱく質構造を持つことから、スタンリー・キューブリックによる映画化で知られる、アンソニー・バージェスの小説にちなんで「clockwork orange」(cwo)と名付けた。  cwoたんぱく質は時計遺伝子の発現を抑える働きがあり、自分自身と他の時計遺伝子の働きをコントロールする役割があるらしい。人間にもcwo遺伝子に似た遺伝子があることが知られており、体内時計システムの完全な理解につながる成果だとしている。 ( ITMediaニュース/2007年6月19日 )  古い記事ですが、何かと今話題の理研(理化学研究所)が発見した遺伝子を「時計じかけのオレンジ」と名付けたという記事が引っかかってきたのでご紹介。まさかこれも捏造・・・ではないとは思いますが、どうも昨今の報道を見る限り疑心暗鬼にならざるを得ません。これも「発見!かくにん、よかった(はぁと)」とか研究ノートに書かれていたんでしょうか?どんな偉大な発見をしても「理研」という名前がそこにある限り、ネタ扱いにされるのは避けようがないですね。

【セット】ロジック・メモリー・センター(Logic Memory Center)

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 『2001年宇宙の旅』でボーマンがHALの機能停止の為に赴いた部屋。無数のソリッド・ステート・論理ユニットで構成されていて、ボーマンが抜き取ったのは認識フィードバック、自我補強、自動思考のユニット(小説版による)。HALの高等中枢回路だけを切断し、ディスカバリー号の航行・制御に必要な自動管理システムは残しておくのがボーマンの目的だった。その際にHALが歌った『デイジー・ベル』については こちら 。

【関連動画】映画に於ける偉大なアドリブシーン25

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  こういったランキング動画は数多くYouTubeにはアップされているのですが、ランキングの根拠がその動画製作者の判断なので、あまり意味がないと今まで取り上げませんでした。しかし、この動画は再生回数が1300万回以上と突出して多かったのでご紹介します。  なんと25作品中キューブリック作品が『博士の異常な愛情』、『時計じかけのオレンジ』、『シャイニング』、『フルメタル・ジャケット』と4作ランクイン。それだけインパクトのあるアドリブシーンがキューブリック作品に多い、という事でなのでしょう。この事はいかにキューブリックがアドリブを重視し、撮影現場で生まれる「 その瞬間 」を待ち望んでいたかの証左なのですが、それは当ブログで再三指摘している通りです。 こちらも似た趣旨のランキング。チョイスも似通っています

【関連動画】グリーン・クロス・コードマン(Green Cross Code Man)

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 『時計じかけのオレンジ』でアレキサンダー氏のアシスタントとして立派な体躯を見せていたデヴィッド・プラウズがその後ダース・ベーダーの「中の人」になったのは有名ですが、本国イギリスではそれよりも前に交通安全の公共広告で、子供を交通事故から守る「グリーン・クロス・コードマン」として一躍有名になりました。そのCM動画がYouTubeにありましたのでご紹介。  こういった「心優しき力持ち」って全世界共通なんでしょう。日本で言えば女性ですがALSOKの吉田沙保里でしょうか。キューブリックはハロッズで健康器具のセールスマンをしていたプラウズをスカウトして『時計…』に起用したそうですから、この出会いが彼の運命を大きく変えた、と言えるでしょうね。

【考察・検証】『時計じかけのオレンジ』でカットされたシーンから、原作小説の暴力性とバージェスのキューブリック批判を考える

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 原作での最初の被害者、結晶学の本をビリビリに破かれる学者風の紳士のシーン。このあとこの紳士は入れ歯を奪われ、その口を殴られて血まみれに。挙げ句に着ている服も全て破られ棄てられるという残虐極まりない仕打ちを受けます。  パブで気前よくおばさんたちにお酒をおごった後タバコ店で強盗をし、パブに戻ったところで警察に職務質問されたが、おばさんたちが気を利かせて嘘のアリバイ証言をしてくれる(アレックスたちがそうするように仕向けている)シーン。  デュランゴ95を盗み出すシーンです。原作によるとここはただ合鍵を使って車を盗むだけですので、カットされたのはしょうがないですね。  以上のカットされた3シーンは全て暴力、または暴力に関係するシーンです。実は映画よりも原作の方が何倍も、何十倍もアレックスたちは凶暴で残忍です。キューブリックの映画版はあれでもずいぶんとトーンダウンさせているのです。なのに原作者のバージェスは「キューブリックがアレックスの暴力衝動が薄れていくラストシーンをカットし、暴力性を取り戻したところで終わらせた」と非難しています。自身が書いた小説の方が何十倍も暴力描写が激しいというのに・・・。  キューブリックによると、バージェスは当初から非難していたわけではなく「ある日突然に」非難を始めたそうです。公開前に試写でバージェスに観せたところ、そんな事は全く言っていないどころか、レイプシーンがあまりにも辛いと妻が退席しようとした際に「キューブリックに失礼だから」と我慢して観続けるように促したり、公開後にも旅行嫌いのキューブリックの代わりに映画の宣伝に世界中を飛び回っていたり、  「映画も文学も、原罪に対して責任を持たない。叔父を殺した人がいても、それをハムレット劇のせいにすることはできない。逆に殺戮や殺人に対して文学が責任を負うというのであれば、この世に存在するもっとも執念深い本である聖書こそがもっとも罪深いものだ」(引用:『映画監督 スタンリー・キューブリック』) と自身の原作や映画を擁護さえしています。   ここ と ここ で記事にまとめていますが、要するにバージェスにもキューブリックと同じくかなり強烈な脅迫があったのではないか、と推察をしています。あの21章は出版当時、出版社の意向に沿ってバージェスが「書き加えた」という事実。映画が公開され暴力描写が問題視されるまで...

【関連作品】火を噴く惑星(Планета бурь)

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  キューブリックが『2001年宇宙の旅』を製作するにあたり参考に観た映画のひとつ。  旧ソ連製のSF映画で、あらすじは「金星探査に向かったソ連の宇宙船三艇の内、一艇が隕石と衝突して破壊されてしまう。それにも挫けずソ連人民と共産党の期待に応えるべく残りのクルーで金星探査を続行するが、そこには人間を喰らう植物や恐竜、荒ぶる火山などが行く手を阻む・・・」という物語。  未知の惑星探査、謎の声と先史文明の存在、クルーの相棒的存在のロボットなど『禁断の惑星』の影響をかなり感じさせますが、宇宙服や水陸両用車のデザインなどは一周回ってかなりかっこ良く感じます。宇宙船のセットや特撮にもそれなりにお金がかかっているし、人間を裏切るロボットがアメリカ製であるなどプロパガンダ臭もあるので当時の共産党宣伝部が真面目に、それなりのお金を使ってつくったんだろうなあ、とは思います。  まあでも水や海や植物まであって火まで起こしているのに、いつまで宇宙服着っぱなしなの?とか、なんでもかんでも敵とみれば銃をぶっ放すのはどうなの?とか、突っ込みどころは満載ですが、それはそれ、1961年の映画なので大目に見てあげましょう。  でもこのストーリー、キューブリックやクラークが当初構想していた『2001年…』のプロットの  「地球外の人工物体との出会いを、発端ではなくクライマックスに置くというものだった。その手前では、いろいろな事件なり冒険をとおして、月や惑星の探検が描かれるという趣向だ」(引用『失われた宇宙の旅2001』) とそっくりなんですが。まさかパクっ・・・たわけではないでしょうけど、この作品を反面教師としたのなら『2001年…』にインスパイアを与えたと言えなくもありません。キューブリックはそのジャンルの映画を撮ると決めると、リサーチも兼ねてありとあらゆる同ジャンルの映画を見たそうです。ですので「キューブリックが観た=影響を受けた」と自慢げに知識を語る方々は、肝心の「キューブリックはリサーチマニアだった」という基礎的な知識が欠落しているか、その程度の知識もなくアクセス欲しさに語っているんでしょうね。「どんな映画でも学ぶべき点はある」とはキューブリックの弁ですが、それは「愚作を観れば愚作にならずにならずに済む方法も学べる」という意味を含んでいます。つまり「反面教師」ということです。  余談です...

【プロップ】1957年型フォード・カントリーセダン(Ford Country Sedan 1957)

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 『ロリータ』でハンバートとロリータが旅をする際に乗っていた車。実際はヘイズ家所有の車だった。  アメリカ各地をドライブするシーンは第二版がアメリカロケをし、スー・リオンの代わりにキューブリックの妻、クリスティアーヌが乗っていたそう。つまり「お前アメリカロケに行ってきてくんない?俺も行きたいけど、こっち(イギリス)での撮影もあるから忙しくて行けないんだよ」「何言ってんの、飛行機乗るの嫌だから行きたくないって正直に言いなさいよ!」という会話がキューブリック家であった・・・のかも知れない。

【サウンドトラック】Dr. Strangelove And Other Great Movie Themes

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Dr. Strangelove And Other Great Movie Themes(Amazon) Theme from Dr. Strangelove (2:17)|The Laurie Johnson Orchestra Theme from The Victors (My Special Dream) (2:36)|Sol Kaplan & Orchestra River Kwai March - Colonel Bogey (2:30)|Morris Stoloff & Orchestra Moonglow - Picnic (3:01)|Morris Stoloff & Orchestra From Here To Eternity (2:44)|Morris Stoloff & Orchestra Diamond Head Theme (2:28)|Johnny Williams Conducting the Columbia Pictures Studio Orch. Damn the Defiant! (3:05)|Orchestra Conducted by Muir Mathieson Lawrence of Arabia (1:54)|Orchestra Conducted by Maurice Jarre Theme From Psyche 59 (1:40)|Orchestra Conducted by K.V. Jones In the French Style (2:14)|Norman Percival & His Orchestra Barabbas (5:05)|Orchestra Conducted by Mario Nascimbene Song Without End (The Rakoczy March) (4:02)|Orchestra Conducted by Morris Stoloff Theme From The Interns (Toss Me a Scalpel) (2:53)|Leith Stevens & Orchestra  1964年にモノラル・ステレオの2種類のアナログLPでリリースされた『博士の異常な愛情』唯一のオフィシャルサウンドトラック。 ...

【名曲】トライ・ア・リトル・テンダネス(Try a Little Tenderness)

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キューブリックがローリー・ジョンソンに依頼してアレンジした『博士…』バージョン この曲を一躍有名にしたオーティス・レディングのバージョン スリー・ドッグ・ナイトのバージョン ロッド・スチュワートのバージョン  『博士の異常な愛情』のオープニングに使用された『トライ・ア・リトル・テンダネス』は様々なアーティストにカバーされていて、上記の他にビング・クロスビー、フランク・シナトラ、クリス・コナーなどもカバーしているようです。  歌詞は「男を若い女に取られた女性には、少しだけ優しく慰めてあげたらいい」という内容でとても思いやりに満ちた美しいラブソングなのですが、それを爆撃機の空中給油のシークエンスにかぶせるというセンスがいかにもキューブリックです。  この空中給油はよく性的な意味合いで語られる事が多いのですが、歌詞を読む限りもっと純粋で、切なく優しい歌ですね。エンディングで流れる『また会いましょう』もラブソングと簡単に語られてしまっていますが、これも別れの切なさの歌です。つまり、この曲はエンディングの伏線であり、対にもなっているのです。この手法はキューブリックが好んで使っていて、『突撃』の『ラ・マルセイエーズ』→『忠実な兵士』、『フルメタル…』の『ハロー・ベトナム』→『黒く塗れ』と同じです。  他の手法としては、劇中のキーになる曲を再度エンディングに使う(『2001年…』『時計…』『シャイニング』)、オープニングとエンディングが同じ曲(『バリー…』、『アイズ…』)と計3パターンに分類できます。この辺りの考察も今後記事にまとめたいと思います。

【音楽家】ローリー・ジョンソン(Laurie Johnson)

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Laurie Johnson(IMDb)    『博士の異常な愛情』の『トライ・ア・リトル・テンダネス』と『テーマ(ジョニーが凱旋するとき)』のアレンジを担当した作曲家。  他の主な参加作品は『追いつめられて… 』(1959)、『暴力の門 』(1961)、『苦い報酬 』(1963)、『欲望の終着駅 』(1964)、『激流ナイルの恋 』(1964)、『H.G.ウェルズのS.F.月世界探険 』(1964)、『華麗なる天才詐欺師/ミスター・ジェリコ 』(1969)、『女子大生・恐怖のサイクリングバカンス 』(1970)、『真夜中の放火魔 』(1971)、『吸血鬼ハンター 』(1974)、『子ぎつね物語 』(1976)、『悪魔の赤ちゃん3/禁断の島 』(1987)、『ヒュー・グラントの 浪漫騎士 』(1989)、『ワイルド・レーサー2 』(2003)など。  1927年2月7日イギリス・ロンドン出身。2024年1月16日逝去、享年96歳。

【名曲】ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)

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 『突撃』のオープニングで流れるフランス国家。よく「過激な歌詞」という話を聞くので wiki を見てみると・・・確かに過激。『突撃』はフランス軍の腐敗を扱った作品ですので、もちろんキューブリックはこの歌詞の意味を知った上で、皮肉としてオープニングに使ったのでしょう。  映画ではキューブリックのブロンクス時代の旧友、ジェラルド・フリードによってマーチにアレンジされたバージョンが使用されています。キューブリックはフランスや親仏国での上映が困難にならないように、パーカッションによる別の音楽も用意していたのですが、残念ながらその努力は実を結ばなかったようで、結局フランスやスイスでは上映禁止、ベルリンのフランス区域でも上映が禁止されたそうです。

【関連商品】映画「シャイニング」のあのカーペットが着れちゃうよ

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 スタンリー・キューブリックの作品はいつ観ても色褪せませんよね。その巨匠キューブリック監督による映画「シャイニング」の舞台である「The Overlook Hotel」のあの印象的なオレンジとブラウン色なカーペットにインスパイアを受け、アメリカのテキサスにあるアートブティックMondoがニットウェアを制作しました。  ラインナップはセーターとカーディガン、スカーフ、スキーマスク、ドアマット、ラグの6種類。 (引用元: GIZMODO/2014年5月9日 )  シャイニングのカーペットはあちこちでネタにされているので、今更感はありますが結構本気で売っているようですね。このカーペットの柄がハニカムなのは原作に登場した蜂の巣をイメージしたのでは? という指摘をしているのですが、それを示す資料がある訳ではないので実際は分かりません。  しかしなんだが痒そうに見えるのは私だけでしょうか。まあマニア相手に一定数は売れそうですが、着るには勇気が要りそうです。セーターが85ドル、カーディガンが75ドル、マフラーが50ドル、目出し帽が35ドル、ドアマットが85ドル、ラグが300ドルですので欲しい方はお早めに。

【ローケーション】サマーセット田園生活博物館(Somerset Rural Life Museum)

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サマーセット田園生活博物館( Street View )  『バリー・リンドン』の終盤近く、ブリンドン卿とのピストル対決のロケが行われた納屋のロケ地で、イギリスのサマーセット州グラストンベリーにひっそりと佇む小さな博物館。このシーンでは十字架から差込む外光が印象的だが、もちろん自然光ではなく、照明を使っている。

【関連記事】「オーメン」「シャイニング」「エクソシスト」……ホラー映画の子役たちはいま

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 スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」で忘れがたい印象を残した双子の少女が34年ぶりに公の場に登場し、SNSを始めたことが話題になったが、英カルチャーサイトShortListが、ホラー映画の子役たちのその後と現在を紹介している。映画の製作年度順に並べた。 〈中略〉 「シャイニング」(1980) ダニー・トランス少年役 ダニー・ロイド(現在41歳) 米シカゴ生まれ。「シャイニング」撮影時は6歳だったが、非常に集中力のある子どもだったという。その後、俳優としては82年のテレビ映画への出演のみ。養豚家を経て、生物学の教授になり、2007年から米ケンタッキー州のエリザベスタウン・コミュニティー・カレッジで教鞭をとっていた。現在は米ミズーリ州の大学にいるという。 「シャイニング」(1980) 双子の少女“グレイディ・ツインズ”役 リサ&ルイーズ・バーンズ姉妹(現在46歳) イギリス生まれの一卵性双生児。「シャイニング」出演当時は12歳だった。姉妹ともに映画に出演したのは「シャイニング」のみで、その後ふたりは普通の生活を送り、リサは文学を学び、ルイーズは微生物学者として活動している。2013年12月、突如として「Shining Twins」の名義でTwitterとFacebookを開始し、ネットを騒然とさせた。 (記事全文はリンク先へ: 映画.com ニュース/2014年5月5日 )  ダニー役のダニー・ロイドの近況については こちら 、双子の少女(グレイディ・ツインズ)のリサ&ルイーズ・バーンズの近況については こちら で記事にしています。

【関連記事】製作されなかった偉大な映画25本

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キューブリックは長い間『ナポレオン』の映画化を望んでいた   奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督がフランク・ハーバートの「デューン/砂の惑星」映画化に挑んだものの、実現に至らなかった経緯を描いたドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」がアメリカで公開されたのを受けて(6月14日日本公開)、米映画サイトThe Playlistが「製作されなかった偉大な映画25本(The 25 Greatest Movies Never Made)」を特集している。  構想段階で終わったもの、脚本は完成しているもの(その多くはオンラインで読むことができる)、撮影にこぎつけたが中断したものなど、未完の理由はさまざまだが、映画ファンなら見たいと思う企画ばかりだ。25本は以下の通り。 スタンリー・キューブリック「ナポレオン」 スティーブン・スピルバーグがキューブリックの脚本をもとにミニシリーズ化を企画中。 ケン・ラッセル「ドラキュラ」 脚本は「Ken Russell's Dracula」として書籍化されている。 デビッド・クローネンバーグ「フランケンシュタイン」 オーソン・ウェルズ「Heart of Darkness(ハート・オブ・ダークネス)」 ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」の映画化。ラジオドラマとしては放送された。 マーティン・スコセッシ「ガーシュウィン」 ポール・バーホーベン「Crusade(十字軍)」 アーノルド・シュワルツェネッガー主演で十字軍を描く予定だった。 フランシス・フォード・コッポラ「Megalopolis(メガロポリス)」 ニューヨークにユートピアを築こうとする建築家を主人公にしたSF映画。 (記事全文はリンク先へ: 映画.com/2014年4月20日 )  キューブリックのナポレオンは当然として、ケン・ラッセルの『ドラキュラ』やクローネンバーグの『フランケンシュタイン』は観てみたい。ウェルズの『闇の奥』は有名ですがタルコフスキーの『白痴』は知りませんでした。スコセッシの『ガーシュウィン』って作曲家のガーシュウィン? バーホーベンとシュワちゃんで『十字軍』だと殺戮描写の嵐になりそう。コッポラがSFを撮ろうとしていたんですね。これは興味深いです。

【キューブリック展】クラクフ国立博物館でのスタンリー・キューブリック展のオープニングに大勢の観客が集まる

 Tłumy na otwarciu wystawy Stanley Kubrick w Muzeum Narodowym Wśrod licz-nie zgro-ma-dzo-nej pu-blicz-no-ści otwar-to w nie-dzie-lę wy-sta-wę pre-zen-tu-ją-cą życie i twor-czość re-ży-se-ra Stan-leya Ku-bric-ka, twor-cy m.​in. "Me-cha-nicz-nej po-ma-rań-czy" i "2001: Ody-se-ja Ko-smicz-na", w Mu-zeum Na-ro-do-wym w Kra-ko-wie.  『時計じかけのオレンジ』や『2001年宇宙の旅』の監督、スタンリー・キューブリックの人生や仕事の展覧会がクラクフ国立博物館で始まった。日曜日には大勢の観客を集めた。 (以下リンク先へ: onet.wiadomosci/2014年5月4日 )  ポーランドのクラクフでキューブリック展が始まりました。写真を見る限り規模は小さそうですが、オープニングには今回もクリスティアーヌが来場したようです。前回のサンパウロやその前のロサンゼルスと比べるとずいぶんと地味な展示ですが、人口規模を考えると仕方ないかも知れません。さて、日本での開催は・・・・?

【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』のベトナム・パートを原作と比較・検証し、キューブリックの真意を探る。

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  フルメタル・ジャケット (角川文庫)(Amazon)  まず、原作『フルメタル・ジャケット(ザ・ショートタイマーズ)』第2章の『殺害戦果』と、映画の後半のベトナム・パートのあらすじを整理したいと思う。 【原作小説】 (1)ダナンでラフターマンと映画館へ行き、そこでカウボーイと再会する。 (2)ラフターマンに「前線に行きたい」と相談される。(ベトナム人の売春婦が少しだけ登場) (3)宿舎に戻り休憩中、テト攻勢を受ける。 (4)リンチ少佐からピースバッチをとがめられる。そしてラフターマンと共にフバイ行きを命令される。 (5)フバイの広報部に着任、ジャニュアリー大尉から軍曹昇進の報を受けるがジョーカーはこれを固辞。 (6)宿舎で休息。ペイバックが「千里眼」の話をする。 (7)暇つぶしにネズミ退治を始める。退治したネズミを埋葬し『ミッキーマウス・マーチ』を全員で歌う。 (8)明け方にベトコンの奇襲を受け、ラフターマンは初めての実戦を経験する。 (9)ヘリでフエに移動。途中銃撃手が眼下の農夫を銃撃する。 (10)フエに到着。戦車に同乗させれもらい、司令部に向かうが途中でベトナム人の少女をひき殺してしまう。 (11)司令部に到着。翌日そこでCBSテレビの撮影チームを目撃。 (12)最前線に取材に向かうが、そこにはカウボーイの所属する部隊「ワン・ファイブ」がいる事を知る。 (13)カウボーイと再び再会。クレイジー・アールがベトコン兵の死体を紹介する。 (14)王城での作戦開始。ジョーカーとラフターマンも作戦に同行する。誰かがミッキーマウス・マーチを歌い始める。 (15)ロケット弾を受けジョーカーは気絶するが、意識を回復。しかしミスター・ショートラウンド、クレイジー・アールが戦死。 (16)ジョーカーは気絶している間に狙撃兵がひとりひとり嬲り殺しにした事実を知り、その狙撃兵を探す事にする。 (17)カウボーイが部隊を指揮し、狙撃兵を探す。ラフターマンが狙撃兵を仕留め、ジョーカーがとどめを刺す。そしてアニマル・マザーが首をはねる。(カウボーイは戦死しない) (18)部隊は休みを言い渡され、ジョーカーとラフターマンは虐殺現場の取材をする。 (19)ジョーカーとラフターマンは部隊を離れ、フバイへ向けて歩き出す。しかしラフターマンは戦車に轢かれ死亡する。 (20)ジョーカーはひ...

【台詞・言葉】クロンカイト(Cronkite)

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 『フルメタル・ジャケット』でロックハート中尉がテト攻勢の概略をジョーカー達に説明する台詞で「TVも勝ち目のない戦争と呼ぶ気らしい」とあるが、実際の台詞は「クロンカイトも勝ち目のない戦争と呼ぶ気らしい」だ。  そのウォルター・クロンカイトとはCBSイブニングニュースの有名なアンカーマンで、この台詞は実話に基づいてる。  ケネディ政権時代の1960年代前半にアメリカが本格介入したベトナム戦争に対して当初は客観的な立場からの報道を続けていたものの、南ベトナム解放民族戦線による南ベトナムへの攻撃「テト攻勢」が行われた直後の1968年2月に「民主主義を擁護すべき立場にある『名誉あるアメリカ軍』には、これ以上の攻勢ではなく、むしろ交渉を求めるものであります」と厳しい口調で発言して戦争の継続に反対を表明、アメリカの世論に大きな衝撃と影響を与えた。これを知らされた当時の大統領ジョンソンは、「クロンカイト(の支持)を失うということは、アメリカの中産階級(の支持基盤)を失うということだ(If we've lost Cronkite, we've lost Middle-America)」と嘆いたという。その後保守派の多くもベトナム戦争の継続に懐疑的になり、この直後にジョンソンは2期目の大統領選への出馬断念を発表するに至った。 (引用: wikipedia/ウォルター・クロンカイト )  つまりキューブリックは有名なこの「クロンカイト・リポート」に言及する事により、戦争がいかにメディアによって左右されるものなのかを暗に示しているのだ。それを単に「TV」と訳したのはクロンカイトを知らない日本人に配慮したものだと想像できるが、そういった「配慮」がこの『フルメタル・ジャケット』という作品のテーマ、コンセプトを見えにくくしているのもまた事実だ。  「メディアを操る者が思想を語れば、それはすなわちプロパガンダである」報道カメラマン出身のキューブリックはそれを身を以て知っていた。「映画」というメディアを操るキューブリックは、戦争を淡々と描写する事に終始し、反戦・好戦など一切の思想性を拒絶している。そして「戦争とはマクロ的には権力者(マスコミや一般大衆も含む)の欺瞞であり、ミクロ的には銃弾のごとく浪費される人命である」とシンプル且つ冷徹に告発するのみにとどめ、そこから先の「思想」は受...

【キューブリック展】スタンリー・キューブリック展 開催地リスト

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エド・リーブ、ロンドン・デザイン・ミュージアム提供 イスタンブール (トルコ) 開催場所:イスタンブール映画博物館(İstanbul Sinema Muzesi) 開催期間:2022年10月1日~2023年3月1日 マドリード (スペイン) 開催場所:マドリード総合芸術協会(Circulo de Bellas Artes) 開催期間:2021年12月21日~2022年5月8日 ニューヨーク (アメリカ) 開催場所:ミュージアム・オブ・ザ・ムービングイメージ(Museum of the Moving Image) 開催期間:2020年1月18日~7月19日(会期途中で2021年4月30日~10月17日に変更) 備考:『2001年宇宙の旅』展として開催 ロンドン (イギリス) 開催場所:デザインミュージアム(Design Museum) 開催期間:2019年4月26日~9月17日 バルセロナ (スペイン) 開催場所:バルセロナ現代文化センター(Centre de Cultura Contemporania de Barcelona) 開催期間:2018年10月24日~2019年3月31日 フランフクルト (ドイツ) 開催場所:ドイツ映画博物館(Deutsches Filmmuseum) 開催期間:2019年3月21日~2019年9月23日 備考:『2001年宇宙の旅』展として開催 コペンハーゲン (デンマーク) 開催場所:KUNSTFORENINGEN GL STRAND 開催期間:2018年9月23日~2018年1月14日 メキシコシティ (メキシコ) 開催場所:国立メキシコ映画館(Cineteca Nacional MEXICO) 開催期間:2016年12月1日~2017年3月31日 サンフランシスコ (アメリカ) 開催場所:ユダヤ現代美術館(Contemporary Jewish Museum) 開催期間:2016年6月30日~10月30日 ソウル (韓国) 開催場所:ソウル現代美術館(Seoul Museum of Arts) 開催期間:2015年11月29日~2016年3月13日 モンテレイ (メキシコ) 開催場所:メキシコ現代美術館(Museo de Arte Contemporaneo) 開催期間:2015年3月6日~7月26日 トロント (カナダ) 開催...

【プロップ】M16ライフル(M16 rifle)

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ジョーカーやカウボーイが使用したM16ライフル 銃を撃たないシーンではモデルガンを使用。指のような突起物が特徴 銃を撃つシーンでは実銃を使用。突起物がない  『フルメタル・ジャケット』の後半の市街戦で使用されたM16ライフル。この時撮影用に使用されたのが日本の会社MGC社製のモデルガンというのは良く知られた話で、赤丸で示した突起物の形状を見れば容易に識別可能。発砲シーンでは実銃(アメリカ空軍採用のモデル604)の空砲で、それ以外はこのモデルガンを使用したそうです。これをもって「完全主義者のキューブリックにしては・・・」という論を展開する方を見かけますが、映画撮影では安全を優先させ、必要のないシーンではダミーを使うと言うのは常識です。特に危険がつきまとう戦争映画の撮影で、必要のないシーンまで本物のライフルを使って撮影するなどあり得ません。そうでなくても映画撮影での事故(死亡事故)は珍しくないのですから。  大体「カメラに映るもの全て本物でなければならない」なんて言い出したら映画なんて作れません。要はキューブリックの求めている高いクオリティに達していればいい訳で、そういう意味ではMGC社製のM16はキューブリックのお眼鏡にかなった高品質のモデルガンである、とガンマニアやユーザーは胸を張っていいんじゃないんでしょうか。