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【登場人物】バーテンダーのロイド(Lloyd the Bartender)

  『シャイニング』で、誰もいないはずのバーに、突如出現したバーテンダーの霊。あまり多くを語らず、ジャックを「トランス様」と呼ぶその折り目正しく、抑制された物腰と、酒が飲めるものだからとたんに上機嫌になるジャックの下品なやりとりが可笑しくも恐ろしい。

【登場人物】デルバート・グレイディ(Delbert Grady)

  『シャイニング』で、オーバールック・ホテルのウエイター。前管理人で双子の少女の父親の際にはチャールズ・グレイディと名乗っていた。余りの孤独に気が狂い、双子の娘と妻を斧で斬殺し、自分は猟銃で自殺、霊としてジャックの前に現れて「言う事を聞かない息子と母親には〈しつけ〉が必要ですな」と静かに語るシーンはとても恐ろしい。

【登場人物】フェイ(Fay)

 『現金に体を張れ』でジョニーの恋人。

【俳優】コリーン・グレイ(Coleen Gray)

  『現金に体を張れ』でジョニーの恋人、フェイを演じた。他の主な出演作は『死の接吻』('47)、『死の接吻』('47)、『アリゾナの決闘』('48)、『赤い河 』('48)、『アリバイなき男』('52)、『赤い谷 』('54)、『対決の一瞬』('55)、『拳銃の報酬』('56)、『地獄の拳銃』('56)、『俺に近づく』('57)、『勇者の街』('65)、『野良犬の罠』('67)。  1922年10月22日アメリカ・ネブラスカ州出身。

【セット】血のエレベーター

  『シャイニング』で、予告編にも使用された血が噴き出すエレベーター。原作では、誰もいないのに動き出すという設定だったが、それだでは映像的に面白くないと判断したのか、映画では血まみれにしてしまった。予告編でもこの映像が使用されたが、タイトルロールが通常とは逆に下から上へと流れていくのが微妙に気持ち悪い。

【俳優】シェリー・デュバル(Shelley Duvall)

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Shelley Duvall(IMDb)  『シャイニング』のウェンディ役。『メイキング…』では「この撮影で貴重な体験をし、役者として一回り大きく成長できた」と殊勝にインタビューに応えていたが、カメラを回していたのがキューブリックの娘なので、当然本音を語るはずもなく、それはシェリーにとってかなり辛い体験だったようだ。キューブリックはシェリーの「役者的演技」を排除するために徹底的に高圧的に接していて、「時間を無駄にするな」「シェリーに同情しても為にはならない」「驚く姿がわざとらしい」など言いたい放題。演技に関してはキューブリックの言う通りいかにも「演技してます」感があり、役者としては下手な方なのだが、それなら俳優を変えれば良いはず。なのにキューブリックは我慢して最後までシェリーを使い続けた。これは想像だが、ニコルソンの「強烈な狂気顔」と張り合うには、シェリーの「貧相な恐怖顔」しかなかったのかも知れない。  他の出演作は『バード・シット』(1970)、『ナッシュビル』(1975)、『ビッグ・アメリカン』(1976)、『アニー・ホール』(1977)、『ポパイ』(1980)、『バンデッドQ』(1980)、『愛しのロクサーヌ』(1987)、『マイホーム・コマンドー』(1989)、『ある貴婦人の肖像』(1996)、『タロス・ザ・マミー/呪いの封印』(1998)。  1949年7月7日テキサス州ヒューストン出身。2024年7月11日、糖尿病の合併症により睡眠中にテキサス州の自宅で死去。享年75歳。

【登場人物】ウェンディ・トランス(Wendy Torrence)

  『シャイニング』で、ジャックの妻でダニーの母親。泣いているか、驚いているか、叫んでいるか、逃げているかしか印象になく、迫り来る危機に対してただひたすら受け身ばかりでちょっとふがいない。原作/TV版ではそれなりに活躍しているのだが・・・。原作では母娘関係の不和に悩み、夫との愛憎入り交じる感情や性行為の描写など丹念に描き込まれ、TV版ではジャックに「子供はもう寝たからベッドに行きましょう」と誘うシーンがあったりするのだが、映画版では全てカット。まあ、シェリーとニコルソンのベッドシーンなんて観たくないからいいけど。TV版のレベッカ・デモーネイならともかく。衣裳がネイティヴ・アメリカン風なのは、舞台のオーバールック・ホテルがネイティヴ・アメリカンの墓地の上に建てられたという設定から。

【関連記事】トムとニコールの離婚の原因は、あの映画

 トム・クルーズと二コール・キッドマンとの離婚の真相は明らかになっていないが、かねてから噂されていたスタンリー・キューブリック監督作「アイズ・ワイド・シャット」('99)に夫婦で出演したことが原因だったという見解が、再浮上した。二コールの伝記本を手がけている映画史の専門家デビッド・トムソンは、「『アイズ・ワイド・シャット』は、2人の夫婦生活を映し出す鏡となりました。演じたキャラクターと実生活の2人が、あまりに似すぎていたのです」「二コールは、人生の師を必要としていましたが、この作品に出演したことで、自立の必要性を学び、そしてトムのように強く自己中心的になれば、彼と同様にビッグになれると確信したのです。一方で、トムが求めていたのは、美しくて賢くて従順な妻です」「少なくても、同作が離婚へのプロセスになったのはまぎれもない事実です」と分析している。 (NY在住/JUNKO) (引用:AOLエンターテイメント/2006年9月18日)  『アイズ…』で演じたキャラクターが実際の二人に似過ぎていた?いや、それはないでしょう。キューブリックは意図的に劇中のビルとアリスが、実際のトムとニコールに見えるように仕向けたにせよ、ビルとトムとではイメージが違い過ぎます。アリスとニコールもそう。ただ、長い撮影期間が二人だけの時間を増やす事になり、いかんともしがたい価値観の相違を見つけた為に離婚に至った・・・というのなら理解できますが。  キューブリックは、撮影期間中はスタッフや俳優との間に家族同然の強い絆を求めます。これは、集団芸術である映画を完全に個人の支配下に置く為にも必要なやり方です。でも、製作が終わればキューブリックはあっさりとその絆を捨て去ります。興味は次作の構想に移り、絆も家族・親族だけの最低限のものだけになります。このやり方の一番の被害者はマイケル・マクドウェルでしょう。マクドウェルはキューブリックに父性を感じ、製作後もその絆を維持しようとしました。でもキューブリックは全く相手にしませんでしたが。  今回の場合、トムとニコールが映画製作中の家族同然の強い絆の中で「いかんともしがたい価値観の相違」を見つけてしまったのであったとするならば・・・まあ、原因はキューブリックであり、『アイズ…』であったと言えなくはないでしょうけど。

【俳優】ダン(ダニー)・ロイド(Dan(Danny) Lloyd)

  『シャイニング』のダニー役。5000人余りの候補者の中から選ばれた。別に子役という訳ではなかったらしく、父親は鉄道技師だった。俳優デビューがこんなラッキーな形だったのに、その後俳優の道を歩む事もなく、出演作は『シャイニング』のみ。現在は中西部あたりで科学の先生をしているらしい。写真は大人になった彼・・・・。まあ、面影はありますね。でも、髭は似合わないんじゃないの?   1972年10月13日、イリノイ州シカゴ生まれ。

【登場人物】ダニー・トランス(Danny Torrense)

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  『シャイニング』で、ジャックとウェンディの一人息子。超自然感応能力「シャイニング」を持ち、ホテルの異常にいち早く気づく。予知能力を持つもうひとつの人格「トニー」を持っているが、映画ではあまり突っ込んで描写していない。頭は良いが繊細で病弱、という印象があるが、それは勇気を持って悪霊に立ち向かうシーンをことごとくカットしてしまったからで、キング版ではそれらを復活させ、全く印象の異なるキャラクターになっている。(原作/TV版は「ダニーの成長」というのも重要な要素)ただ、少年の美しさは特筆に値する。『アイズ…』もそうだが、キューブリックが子供に向ける視線はどれもやさしい。

【作品紹介】『時計じかけのオレンジ』

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A Clockwork Orange(IMDB) 題名/時計じかけのオレンジ 題名/A Clockwork Orange 公開日/1971年12月20日(137分、カラー、ワイド) 日本公開/1972年4月29日 製作会社/ホーク・フィルムズ 製作総指揮/マックス・L・ラーブ、サイ・リトヴィノフ 製作/スタンリー・キューブリック 監督/スタンリー・キューブリック 脚本/スタンリー・キューブリック 原作/アンソニー・バージェス『時計じかけのオレンジ』 撮影/ジョン・オルコット 編集/ビル・バドラー 音楽/ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン、エドガー・エルガー、ジョアキーノ・ロッシーニほか 電子音楽/ウォルター・カルロス 美術/ジョン・バリー 出演/マルコム・マクドウェル(アレックス)、パトリック・マギー(アレキサンダー)、ウォーレン・クラーク(ディム)、ジェームズ・マーカス(ジョージ)、アレキサンダー夫人(アドリエンヌ・コリ)、パパ(フィリップ・ストーン)、ママ(シェイラ・レイノー)、内務大臣(アンソニー・シャープ)、看守長(マイケル・ベイツ)ほか 配給/ワーナー・ブラザーズ 受賞/1971年ニューヨーク映画批評家協会賞、最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞 ●ストーリー  アレックスをリーダーにした4人の非行少年グループは、「コロバ・ミルク・バー」で「麻薬入りミルク」を飲みながら、今夜の「ウルトラバイオレンス」を企てていた。手始めにホームレスを袋だたきにし、対立する少年グループは病院送り、盗んだスポーツカーで郊外の家「ホーム」に押し入りれば、作家を叩きのめし、その妻をレイプする…そんな暴力三昧の日々だった。だがベートーベン好きなアレックスは、そのベートーベンの歌に聞惚れているところを仲間に邪魔にされ、ちょっとした仲たがいを起こす。それをきっかけにアレックスは、仲間に裏切られ、強盗に押し入った老女を殺害した罪で、警察に捕まってしまう。  刑務所に収監されたアレックスは、聖書で暴力と性欲を慰める日々を送っていたが、やがて政府が犯罪者の更生にと開発した「ルドヴィコ療法」で治療すればすぐ出所できる事をを知り、それを自分に試して欲しいと自ら名乗り出る。だが、その治療法とはとんでもない代物だった。  アレックスは拘束具で身体の自由を奪われた上に眼球を閉じれないようにし、暴力的な映画...

【台詞・言葉】シャーリーン(Charlene)

  『フルメタル・ジャケット』で、パイルが自分のM-14ライフルに付けた名前。ハートマン軍曹によると「新兵が愛撫できる唯一のプッシー」だそうだ。原作ではパイルが狂気に陥るきっかけとなり、自殺する際にも軍曹に「僕のシャーリーンに手を出すな!」と叫ぶなど、まさしく「狂気の引き金」としての役割を負っているが、映画では、その役割がそのまま「フルメタル・ジャケット(完全被鋼弾)」に置き換わってしまったため重要度は低い。因に原作によるとジョーカーがライフルに付けた名前は「ヴァネッサ」。ヴァネッサはジョーカーのガールフレンドの名前だが、そういったプライベートなエピソードは映画ではことごとく省かれている。

【登場人物】ベトコン狙撃兵(VC Sniper)

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  『フルメタル…』で、ジョーカーの小隊を混乱させたベトコンゲリラの狙撃兵。年端もいかぬ少女に正規のアメリカ兵が振り回された事に、ある種の「皮肉」と受け取る向きもあるようだが、現在のイラクの混乱を見れば判る通り、民間人に紛れたゲリラほど厄介なものはないので、この戦闘も単なるベトナム戦争の一コマに過ぎない日常的なものだったのだろう。  尚、ボツになったシークエンスに「射殺した少女の首を切り取り、それをサッカーボールにして遊ぶ」があった、と噂されているが、この信憑性はかなり疑問。原作には少女の首を斧で切断し「胴体と離れて安らかに眠りやがれ、このクソアマ!」とアニマル・マザーが叫ぶシーンがあるが、それが大きくなって伝わっただけではないだろうか。

【パロディ】30秒でわかる『シャイニング』(The Shining in 30 seconds)

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 これでストーリーを全部説明できてしまうところがすごい。この「30秒シリーズ」は他にも『エクソシスト』、『エイリアン』、『タイタニック』とかあるけど、『シャイニング』なんかこれでめぼしいエピソードはほとんど網羅されています。ストーリー的には薄い映画だよなぁホント。 

【セット】生垣迷路(maze)

  『シャイニング』で、オーバールック・ホテルの裏側にある生垣の迷路。原作では生垣の動物が動き出して襲ってくるのだが、そんな物を映像化しても陳腐になるだけ、と描写を拒否したキューブリックが「ジャックの精神が錯乱していく暗喩にもなる」と代わりに採用した。  ジャックの狂気は生垣迷路の模型の中にウェンディとダニーの姿を見る(霊の視点がジャックの視点と同化する)事から始まり、最終的にはその迷路の中で凍死し、心身ともに霊(ホテル)と同化する事で終わる。迷路の暗喩はホテル内部もそうであり(ウェンディがホテルを案内された際「まるで迷路ね」と感想を漏らす)、カーペットの柄にもそれは反映されている。  生垣迷路を無事脱出したウェンディとダニーが、最終的にホテルからも脱出できたのは当然だし、ジャックがダニーの単純なトリックに気付かず凍死したのも当然の帰結。物語は始まった時から「仕組まれて」いて、「仕組まれた」通りに終わる。『シャイニング』とはそういう物語なのだ。

【台詞・言葉】お客さまだよ!(Here's Johnny!)

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 『シャイニング』でジャックが斧でトイレのドアをぶち破って言う一言。元ネタはアメリカの人気バラエティ番組『ザ・トゥナイト・ショー』で、司会者ジョニー・カーソン(2005年1月没)を迎える番組冒頭のナレーション。深夜番組でゲストは俳優やミュージシャンが多かったそうだから、日本で例えるならさしずめ『笑っていいとも!』の深夜版といった感じでしょうか?となると、字幕の「お客さまだよ!」はちょっとおかしい。「おコンバンワ!」でも「ジョニーだよおおおん!」でもしっくり来ない。人気司会者をコールするナレーションなので、「さあ、ジョニーのおでましだ!」とか「ジョニー登場!!」といったニュアンスになるはず。  実際のジョニー・カーソンは優しい印象の紳士なので、「ジョニーのおでましだ!」なんて言っておきながら狂ったニコルソンが不気味な微笑みをたたえて登場する、という所がこのシーンの異常性を印象づけているのでしょうけど、「Here's Johny!」と言われてジョニー・カーソンの顔が思い浮かばない日本人にとっては意味不明。しょうがないから苦肉の策で「お客さまだよ!」という訳が当てられたんでしょう。  因みにキューブリックはイギリス暮らしが長かったので、この元ネタを知らなかったそう。知っていたら採用していたかどうか・・・ちょっと微妙な所ですね。

【登場人物】クレア・キルティ(Clare Quilty)

  『ロリータ』に登場した、ロリータを裏で操る怪しげな男。放送作家という事だがその正体ははっきりしない。ハンバートは、「キルティ殺しで有罪」(Guilty of Killing Quilty)となってしまうんだけど、「キルティ」という変なネーミングは、このシャレから来ているんでしょう。キルティを演じたピーター・セラーズの妙な存在感が忘れられない。

【登場人物】シャーロット・ヘイズ(Charlotte Haze)

  『ロリータ』での、ロリータの母親。やたら大声でしゃべりまくる「不器用なアザラシ」(ハンバートの弁)。原作だと、ロリータがその下品な母親の血を強烈に受け継いでいることがちゃんと描写されていた。つまり、ハンバートは「子供版シャーロット」に恋をしていたに過ぎない・・・いうことになる。なんとも皮肉な話だ。

【作品紹介】『シャイニング』

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The Shining(IMDb) 邦題/シャイニング 原題/The Shining 公開日/1980年5月23日(142分、カラー、ワイド) 日本公開/1980年12月13日(119分の国際版) 製作会社/ワーナー・ブラザーズ 製作総指揮/ヤン・ハーラン 製作/スタンリー・キューブリック 共同製作/ロバート・フライアー、マーティン・リチャーズ、マリー・リア・ジョンスン 監督/スタンリー・キューブリック 脚本/スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンスン 原作/スティーブン・キング『シャイニング』 撮影/ジョン・オルコット 編集/マーティン・ハンター 音楽/ウェンディ・カルロス、レイチェル・エルキンド 美術/レイ・ラヴジョイ 出演/ジャック・ニコルソン(ジャック・トランス)、シェリー・デュヴァル(ウエンディ・トランス)、ダニー・ロイド(ダニー・トランス)、スキャットマン・クローザス(ハロラン)、フィリップ・ストーン(デルバード・グレディ)、ジョー・ターケル(ロイド)ほか 配給/ワーナー・ブラザーズ ●ストーリー  上空から冷ややかに見つめる視線。それは雄大なコロラド・ロッキーの中を走る一台のワーゲンを追いかける。やがてその視線の先に豪華なリゾートホテル「オーバールック・ホテル」が姿を現わした。ワーゲンの主は作家兼教師のジャック・トランス。彼は冬季に閉鎖されるこのホテルの管理人の採用試験に赴いたのだ。ところがその面接で支配人から不吉な話を聞かされる。前任の管理人はあまりの孤独に気が狂い、妻と娘を惨殺し自分も猟銃自殺したというのだ。そんな話を一笑に付し無事採用されたジャックは、妻ウェンディと一人息子のダニーとともに再びオーバールックに向かう。だが、超自然感応能力〈シャイニング〉を持っていたダニーは、そのホテルに不気味な影の存在を感じていた。  ホテルに到着したトランス一家に、ホテルの料理長ハロランは不安を抱く。特に自分と同じ〈シャイニング〉を持っているダニーを心配し、「237号室には何もないから近づくな」と言い残してマイアミに帰省した。一方のジャックは、断酒中の自分にはアルコールのない、静かな環境で執筆ができると乗り気で、ウェンディはそんな家族を暖かく支えるつもりだった。  だが、そんな一家の幸せな時間は長くは続かなかった。ダニーはいきなり双子の少女の霊に遭遇、ジャ...

【登場人物】アリス・ハーフォード(Alice Harford)

  『アイズ ワイド シャット』で、医者のビル・ハーフォードの奥さん。浮気願望を告白したために、ビルを苦悩させてしまう羽目に。でも、それも予定の行動だった?役名の「アリス」は『鏡の国のアリス』からの引用と考えられるが真意は不明。ラストの一言「ファック」が強烈だ。

【登場人物】ウィリアム"ビル"・ハーフォード(William "Bill" Harford)

  『アイズ ワイド シャット』の主人公で、ニューヨークで成功した若くてハンサムな医者。前半と後半でパーティーを境に夜と昼のニューヨークを彷徨うが、結局何も起こらなかった。ハンサムなクセに少々間抜けな男の姿が、背の低いクルーズによく似合っていた。キューブリックは原作のユダヤ人らしさを払拭するために「どこにでもいる標準的なアメリカ人」を意識し、名前もハリソン・フォードに因んでこの役名にしたそうだ。

【関連書籍】スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945-1950

  時折未熟で青臭い作品も混ざってはいるが、なにせキューブリックはこの頃まだ17歳から22歳の若者、それでこのクオリティなのだ。当時関係者に「天才少年」と言われただけの事はある。撮影技術はすこし拙い部分もあるが、その後のキューブリック作品に通低している冷徹でシニカルな観察眼の原点は、すでにここで完成していると見ていいだろう。  女優や俳優の取材写真など、やらせ系の作品にはあまり感心しないが、それでも構図やアングルなど「キューブリックらしさ」を見て取れる。だが、キューブリックの心髄はやはりドキュメンタリーだろう。シカゴ・シリーズやポルトガル取材、地下鉄、動物園やサーカス、競馬場、公園に集う人々の見るキューブリックの観察眼は決して暖かくない。欲望と落胆、悲哀や悲痛、苦しみ、無常観、疑心暗鬼、不信など、キューブリックは常に人間の「負の側面」にスポットを当てている。有名な猿の檻の向こう側に痴呆的な顔をして並ぶ人間達のショットはもちろん、遊園地にあるハンマーゲームのショットは、手前の力強くハンマーを振り下ろそうとする男の力強さと、得点の柱の上部をトリミングする事による頂点への遠さの対比により、人間の飽くなき欲望の深さを象徴する印象的な作品だ。  また、その後の映画作品に登場したモチーフが見られるのも本作の特徴だろう。ボクシングの取材が『拳闘試合…』『非情…』として結実したのは周知の事実だが、それ以外でも競馬場(『現金…』)、ピエロ(『時計…』)、猿と人間(『2001年…』)、強大なサイクロトロン装置と科学者(『博士…』)、そして扉に口紅で「I HATE LOVE」と書きなぐった女性の写真はそのまま『シャイニング』の「REDRUM」となった。  優れた写真とは、その撮影者の視点なりアングルなりの切り口が優れている、という事だ。観光地などで、同じ場所に大量に発生するカメラの砲列に「優れた写真」など写りようもない。キューブリックの原点を確認したいファンにお薦めなのはもちろんだが、画になる被写体を、画になるアングルから撮って、「画になる写真ができた」と喜ぶ浅はかな自称「写真家」達に、刮目して観ていただきたい書としてお薦めしたい。

【登場人物】スキート(Squirt)

  『2001年宇宙の旅』でフロイドが宇宙ステーションからピクチャーフォンを自宅にかけた際、留守番していた娘。演じているのはキューブリックの三女ヴィヴィアン。その後ヴィヴィアンは『バリー・リンドン』、『シャイニング』、『フルメタル・ジャケント』とスクリーンに登場しているので、キューブリック作品では最多出演者(となる。

【名曲】デイジー・ベル(Bicycle Built For Two (Daisy Bell))

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  『2001年宇宙の旅』で、HALがシリコン素子を抜かれ、退行していくときに歌う歌。 歌詞は「デイジー、デイジー答えておくれ、気が狂うほど君が好き。洒落れた結婚式は望めないんだ、馬車はとても無理だから。でも君が二人乗り自転車に乗る姿は素敵に見えるだろうね」という内容。 1961年にベル研究所が始めてコンピュータに歌わせた歌がこの歌だったというエピソードからの引用された。

【音楽家】ウォルタ(ウェンディ)・カルロス(Wendy(Walter) Carlos)

  『時計じかけのオレンジ』で、ベートーヴェンの『第九』などをシンセサイザーでアレンジした、シンセ・ミュージックの第一人者。1972年になぜか性転換手術をし、名前も「ウェンディ」に改名した。『シャイニング』でもシンセの楽曲を提供しているが、以前仕事をした音楽家がいきなり女になって現れたものだから、さぞかしキューブリックもびっくりしただろう。映画では他に『トロン』(1982)、『ブランニュー・ワールド』(1998)などを手掛けている。写真はまだ男だった頃のもの。  1936年11月14日アメリカ・ロードアイランド出身。

【パロディ】シンプソンズ『ホーマー宇宙へ行く』(The Simpsons - Homer in space)

  ブラックな笑いでお馴染みのアメリカのアニメ『シンプソンズ』ですが、作品中あらゆるところでキューブリックのパロディがあるそうです。で、これもその中の一つ。シャトルの中でポテトチップスをぶちまけてしまったホーマーが、無重力の中でポテトチップスを口で集めていくというものですが、BGMはやっぱり『ドナウ』、しかもホーマーとチップスがシンクロして回転までしてしまう・・・笑えます。

【名曲】美しき青きドナウ(The Blue Danube)

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  ヨハン・シュトラウス2世のペンによる有名なワルツ曲。 『2001年宇宙の旅』で使用されたのは演奏はカラヤン&ベルリン・フィルで1966年12月録音のもの。1966年といえは丁度『2001年…』製作中ですね。キューブリックは当時最新のドナウを映画に使ったのだと思いますが、カラヤンを使ったのは、やはり淀み無く流麗に舞い踊る宇宙船や宇宙ステーションの映像に合わせるには、カラヤンのドナウしかなかったのでしょう。本来のドナウはもっとリズムがもっさりしてタメがあるのですが。そうでないと踊れないですしね。上記はその「もっさり」バージョン。『2001年…』のバージョンを聴き比べるとその違いがよく分かります。カラヤンバージョンより1分も長いですし。  キューブリックは関係者用のラッシュフィルムで、無重力のシーンにメンデルスゾーンの『真夏の夜の夢』、月面のシーンにヴォーン・ウィリアムズの『南極交響曲』を使っていたそう。これはこれですごく観てみたい。

【関連記事】数学的計算による世界最高のホラー映画は「シャイニング」

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 この度英ロンドン王立大学の研究チームが行った研究によると、世界最高のホラー映画は「シャイニング」(スタンリー・キューブリック監督、ジャック・ニコルソン主演)であることが明らかになったとのこと。今回の研究で、研究者らは一体何故、人は「サイコ」や「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」といった映画に対して恐怖を抱くのかを研究し、ホラー映画の恐怖度を決定づける数学的公式を開発したという。研究者らが開発した公式には、それぞれホラー映画の重要な要素である緊張感、リアリズム、血、そして衝撃度などが計算され、いかなるホラー映画が最も恐ろしいかを導きだしたとしている。  また研究者らは今回の研究に当たって、凡そ2週間をかけて「エクソシスト」、「テキサス・チェーンソー」、「羊達の沈黙」といったホラー映画を鑑賞し、公式を開発したという。そして結果、ホラー映画の重要要素は緊張感、リアリズム、血であるという結論に達したとしている。 公式には、それら基本の三要素に加えて、緊張感を高める音楽、現実と虚構のバランス、そしてどれくらいの血や内臓が含まれているかも考慮された。  また更に、研究者らによれば、映画が真に恐怖であるためには、リアリズムが重要であり、そのため、映画がどの程度現実からかけ離れているか、または現実に起こりえることか、そのバランスも重要なポイントであるとしている。  また登場人物は少ない方がより観衆の共感を得られること、さらに映像全体の雰囲気も考慮され、例えばシャイニングにおける「冬の間閉鎖された巨大なホテルにいる家族」という非常に孤立した舞台設定、または「サイコ」におけるシャワーシーンなどは最も優れた例であるとしている。  また映画に出る血糊の量が加算された上で、ステレオタイプ度が差し引きされているが、例えばジョーズにおける血の量は最も適切な値であるとしている。「スティーブン・スピルバーグのジョーズにおける血の量は完璧ですね。我々を怯えさせるが、嫌悪まではさせない、最適値です。」研究者は語った。 そして編み出された公式は以下のようなものである。  (es+u+cs+t) squared +s+ (tl+f)/2 + (a+dr+fs)/n + sin x - 1. < es = 緊張感を高める音楽 , u = 未知要素 , cs = 主人公らが追われるシーン ,t = 罠にハ...

【登場人物】ヴィンセント・ラパロ

  『非情の罠』で、マフィアのボスでグロリアの愛人。典型的な悪漢キャラクターだが、この映画で一番いい味出しているのも彼。主役は朴訥すぎるわ、ヒロインは薄っぺらいわで、必然的にラパロに注目が集まってしまった感はあるが、素人だらけのこの映画で、まともに「俳優」と呼べるのは彼だけだったので、それも仕方ないだろう。フランク・シルヴェラ。

【俳優】フランク・シルヴェラ(Frank Silvera)

  『恐怖と欲望』で兵士のマックを、『非情の罠』でマフィアのボスのラパロを演じた。他の出演作は『四人の恐迫者』('60)、『戦略爆破部隊』('60)、『新・荒野の七人/馬上の決闘 』('69)、『追撃のバラード』('70)など。  1914年7月24日旧英国領ジャマイカ・キングストン出身、1970年6月11日死去、享年55歳。

【パロディ】A Space Ipodyssey

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  iPod nanoの黒を見た時に、モノリスを思い浮かべた人は多いはず。でも、そんな事に飽き足らず、こんなパロディ動画を作ったツワモノが現れました。著作権的には真っ黒な動画ですがデキはけっこう良いです。  ところで、iPod nanoの縦横の比率って4cm:9cmなんですよね。残念ながら厚みは1cmではありませんが。iPod nanoの造形的な美しさは、この「モノリス比率」に近いためかもしれません。

【家族】ドミニク・ハーラン(Dominic Harlan)

  『アイズ ワイド シャット』のサントラで、ジョルジ・リゲティ作曲『ムシカ・リセルタカII』、を演奏したピアニスト。キューブリックの義弟、ヤン・ハーランの息子。身内を使いたがるキューブリックに引っ張り出されたのか、それとも自分自身が積極的に売り込んだのか、映画に関係したのは今のところこの一曲のみのよう。時折、『ムシカ・リセルタカII』をドミニクの作品かのように評したものを見かけますが、ドミニクは演奏しただけです。サントラにはもっと明解にクレジットすべきでしょう。

【場所・地名】蟻塚(Ant Hill)

  『突撃』で、ドイツ軍が強固に守る戦略拠点。この「蟻塚攻略作戦」で、フランス兵を演じているのは敵であるはずのドイツの警官だった。キューブリックが撮影の際、「フランス軍のように振る舞って欲しい」と言って、笑われてしまったそうだ。この「進軍する兵隊と平行移動するドリーショット」は、後の『フルメタル・ジャケット』のラストシーンでも使われている。このシーンはロケで撮影されたが、ロケ地はドイツ・ミュンヘン郊外のダッハウ。