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【関連記事】抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り続ける理由

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2001: A Space Odyssey(IMDb) <1968年に公開され、世界を驚愕させたキューブリック監督の『2001年宇宙の旅』。説明が足りないからこそ宇宙への畏怖を僕は実感した> 3カ月ほど前からChatGPTを使い始めた。遅い。自分でも思う。いつもこうだ。人より遅れる。鈍いのだ。気付けばみんなはずっと前を走っている。 でも周回遅れで集団から離れるからこそ、見えたり発見できたりすることがある。 〈以下略〉 (引用: ニューズウィーク日本版/2025年08月21日 )  映画監督の森達也氏によるコラムです。論に特に目新しいものはありませんし、さんざん語り尽くされてきたことを繰り返しているだけに思えますが、それでも公開から半世紀以上経た現在もなおこうしてこうして語り継がれ、記事にされるということは素晴らしいことです。ですが、やたら特撮だったり未来予想だったり、難解(説明不足な)ラストシーンについての話題ばかりで、肝心のテーマについては今も昔も(一般層に)理解が進んでいないな、と感じるのは私だけではないでしょう。それは記事にある通り、 キューブリックは、人間の最大の問いをラストに提示した。われわれはどこから来たのか。何者なのか。どこへ行くのか。 という「人類のレゾンデートル(存在意義)への問いかけ」だったのですが、それを「神(宇宙)視点で描いた」点にこの作品の偉大さがあるのです(ちなみにクラークは小説版を「人類視点」で描いている)。  そういう意味で本作品は「永遠に越えられないSF映画の金字塔」と言われているのですが、それが必ずしも「特撮」や「未来予想」を指しているわけではない(もちろんそれはそれで素晴らしいのですが)、という事実をもっと多くの人に知ってほしいですね。

【原作小説】Amazon Kindleにサッカレーの小説『バリー・リンドン』が新訳で登場。しかも398円の超破格値!

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バリー・リンドン: アイルランド落ちぶれ貴族の波乱万丈の生涯 (Amazon)  状態にもよりますが、当時460円の角川文庫版・深町眞理子訳の小説『バリー・リンドン』が4000円程度からとプレミア化している現在、なんとAmazon Kindleに19世紀堂書店より『バリー・リンドン: アイルランド落ちぶれ貴族の波乱万丈の生涯』として登場しています。しかも読み放題のkindle unlimited加入なら無料、購入でも398円と破格の安さ!  では、その新訳のデキはどうなのかというと、比較は以下の通り。 第1章 我が家系と家族優しき情熱の影響を受ける 情熱  アダムの時代以来、この世で起こった災厄のほとんどには、 必ずと言っていいほど女性が関わっている。 我 がバリー家が家系として存在し始めた時(それはアダムの時代にほぼ近いほど古く、 誰もが知るように高貴で由緒ある家柄である)から、 女性たちは我が一族の運命に多大な影響を与えてきた。  ヨーロッパ中で、 アイルランド王国のバリー・オブ・バリューグ家の名を知らぬ紳士はいないだろう。 グウィリムやドジエの記録にもこれほど有名な家名は見当たらない。 世慣れた者として、私は靴磨きの下僕同然の系図しか持たない成り上がり者たちの高貴な血統主張を心底軽蔑し、 アイルランドの王族の末裔だと吹聴する同胞たちの自慢話を嘲笑するが、 真実を述べるなら、 我が家系はこの島で最も高貴であり、おそらく全世界でもそうであった。 戦争、裏切り、 時の流れ、 祖先の浪費、 古い信仰と君主への忠誠によって、今は 取るに足らないほど縮小した我が家の所領も、かつては驚くほど広大で、アイルランドが現在よりはるかに繁栄していた時代には多くの州を包含していた。 私は紋章にアイルランド王冠を掲げたいところだが、それを称し陳腐化させている愚かな詐称者があまりにも多い。  女性の過ちがなければ、 今頃私はその王冠を戴いていたかもしれない。 あなたは疑いの目を向けるだろう。 なぜ不可能だと言える?もしリチャード2世に膝を屈した腰抜けどもではなく、勇敢な指導者が我が同胞を率いていたなら、 彼らは自由の身となっていたかもしれない。 残忍なならず者オリバー・クロムウェルに対抗する決然たる指導者がいたなら、 我々は永遠にイギリスの軛を振り払えたはずだ。 しかし僭称者に対抗するバ...

【ブログ記事】キューブリックの三女ヴィヴィアン、CIA職員が「スタンリー・キューブリックを殺したのは私だ」とのTPVショーンのポストに「卑猥な嘘をでっち上げ」と大激怒!

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CIA職員、臨終の告白「スタンリー・キューブリックを殺したのは私だ」  スタンリー・キューブリックは映画を作っただけでなく、真実を暴いた。彼の遺作となった『アイズ ワイド シャット』は、エリート層の儀式の仮面を剥ぎ取り、編集版を提出してからわずか数日後に彼は亡くなった。  公式には心臓発作によるものとされたが、あるCIA職員は臨終の場で、上層部の命令による暗殺だったと告白した。  彼は、私たちが見た『アイズ ワイド シャット』はキューブリックの構想を歪めたバージョンだったと明かした。ナレーションは切り取られ、シーンは丸ごと削除され、エリート層の小児性愛ネットワークを暴くぞっとするようなサブプロットは編集室の床に埋もれていたのだ。 (引用: X@tpvsean/2024年8月19日 ) 父の死について、人々が狂気じみた嘘をでっち上げるのを止める術はない  @TPVSean の「報道」と、その生々しい「臨終の告白」を、私は無理やり最後まで見届けた。そこに真実があるのか​​どうか疑ったからではない―真実などない―ただ、反応する価値があるかどうか判断しなければならなかったからだ。  そこで、残酷なセンセーショナリズムよりも真実を重視する皆さんへ、私の反応を述べる。  父の死に関する何かを見るのは、いつも奇妙で非現実的で不安な体験だ。私自身も、父の死を悼み、深く悲しみ、苦しむ記憶を心に刻み、26年経った今でも涙を流す。そして、その場に居合わせたわけでもなく、父を知らず、何の繋がりもない、堕落した人々が、父の死因について卑猥な嘘をでっち上げている。  まるでマルウェアのように、父の死の真相に紛れ込んでいる。  ショーンが投稿した記事は、父の死に関する長年の陰謀論であり、全く真実ではない。しかし、そこに、人間によるマルウェアとしか言いようのない、忌まわしい例が付け加えられている。歪んだスリルを求める者が、父の人生に紛れ込もうとする、実にグロテスクな試みで名声を得ようとしているのだ。  見知らぬ男が留守番電話に、あなたの父を残酷に殴り、惨殺し、心臓を引き裂いたと告白する。嘘だと分かっていながら、それでもあなたはその残酷さとサディスティックな意図を受け止めざるを得ない。この臨終の懺悔者は、死者を搾取し、同時に悪意に満ちた嘘で生きている者を苦しめることを知りながら、堕落した自慰行為を行...

【関連記事】リドリー・スコット「『2001年宇宙の旅』以降、SFは死んだ」

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Ridley Scott(IMDb)   2007年のベネチア国際映画祭で、彼の代表作であるノワール・スリラー映画「ブレードランナー」の特別上映会でのスピーチで、 「エイリアン」の伝説的監督、リドリー・スコット卿は、SFというジャンルは西部劇と同じ道を辿り、すでに死んでいると考えている、と発表した。  スコットは、デイリー・ギャラクシーの私たちと同様に、映画『マトリックス』『インデペンデンス・デイ』 『宇宙戦争』といった大作の派手な特殊効果は興行収入では売れるかもしれないが、スタンリー・キューブリック監督の1968年の忘れがたい大作『2001年宇宙の旅』に勝るものはないと考えている。この映画は、公開当時と同じくらい新鮮で(そしておそらくより現代的でもある)、今日でもなお健在だ。 〈中略〉  「独創的なものは何もありません。私たちはこれまで全てを見てきました。そこに行き、やり遂げてきました」とスコットは言った。  アメリカとソ連の「宇宙開発競争」が最高潮に達した時期に制作された『2001年宇宙の旅』は、悪意あるコンピューターと日常的な宇宙旅行が蔓延する世界を予見していました。キューブリックは細部にまでこだわり、宇宙船の設計にはNASAの専門家を起用しました。  リドリー卿は、『2001年宇宙の旅』は照明、特殊効果、そして雰囲気の使い方において「最高傑作」だと述べ、それ以降のSF映画はすべてこの作品を模倣、あるいは参考にしてきたと付け加えた。「現代のSF映画は特殊効果への過度の依存と、ストーリー展開の弱さが見られます」と彼は述べた。 〈以下略〉 (引用: THE DAILY GALAXY/2009年7月10日 )  かなり古い記事ですが、リドリー・スコットが刺激的なことを言っていたのでご紹介。この発言は2007年のベネチア国際映画祭のものですが、2025年現在、この発言を覆すほどの傑作SF映画が誕生したかと言えば・・・やはりそうとは思えません。リドリーが言うように「特殊効果への過度の依存と、ストーリー展開の弱さ」の問題は解決していないように見受けられます。もちろんそれなりの「良作」は頭の中にいくつか浮かびますが、それらが『2001年…』に並ぶ、もしくは超えるものなのかと問われば・・・やはりイエスとは言えないと思います。無論そんな現状をわれわれ映画ファン...

【ブログ記事】スケジュールも予算も守れず、際限なくテイクを繰り返すキューブリックは「無能監督」か?

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Stanley Kubrick(IMDb)  キューブリックは『時計じかけのオレンジ』以降の作品を全てワーナー・ブラザースの資金提供で製作していますが、それはワーナーが映画の内容と予算とスケジュール管理をキューブリックに一任するという、映画監督としては「破格の条件」を提示していたからで、例えば脚本や撮影中のラッシュフィルムを見せる見せないや、初号試写などもキューブリックの裁量で自由にできました。つまりワーナー側からすれば「キューブリックのやることに一切口出しできない」という、かなり不利な条件を呑んでいたということになります。それは裏を返せば「キューブリック作品は必ず利益を生む」という信頼であり、そしてキューブリックはほとんどの作品でその信頼(利益を出すこと)に応え続けていました(『バリー・リンドン』はかなり厳しかったようですが)。これは現在においてもスタジオ側がこれだけ映画監督に裁量権を与えることはなく、非常に稀有な例と言えるもので、この点を理解しておかないとキューブリックの映画製作のスタンスを完全に見誤ってしまいます。  例えば「テイクを際限なく繰り返すのは監督があらかじめビジョンを確立していないから」「スケジュール管理ができていない監督なんて無能」という批判です。これは、スタジオ側(出資側)に映画製作の権限を握られている場合には当てはまりますが、キューブリックの場合には当てはまりません。なにしろ何をどう撮ってどれだけ時間をかけるかはキューブリックの自由なわけですから、予算とスケジュールに縛られる一般の映画監督とは立場が全く異なるわけです。確かに監督がその作品のビジョンをあらかじめ確立しておき、予算やスケジュール通りに撮るというのは優秀な監督の条件ではありますが、それは予算やスケジュール、もっと言えば出資者側の(映画の内容に立ち入る)横槍にも振り回されるということであり、それはもう作家ではなく単なる専門職ということになってしまいます。つまりその認識だと「優秀な映画監督」とは「優秀な専門職人」であると言っているのと同義です。  もちろんどんな映画監督でも専門職人ではなく「作家」でありたいと努力しているとは思いますが、出資者側の権限が強い映画界では「ただの専門職」に成り下がってしまっているのが現状です。そんな映画界の悪しき常識の範疇でしかキューブリックを語れない(また...

【関連記事】『ロリータ』の暗部。主演の少女女優の処女を奪ったプロデューサーのジェームズ・B・ハリスとその後のスー・リオンの人生

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『ロリータ』のセットでのハリスとスー。この写真を撮ったキューブリックは、この時すでに二人の関係を知っていたのかも知れない ハリスとスーが『ロリータ』で共演した演劇のシーン。画像一番左がハリス スーの最初の夫、ハンプトン・ファンチャー。結婚期間は1963年12月〜1964年12月 『ロリータ』の暗部  スー・リオンがこの映画に出演した時、彼女は14歳だった。プロデューサーはいずれにせよ彼女と寝たのだ。 サラ・ウェインマン著 2020年10月24日   1996年、エイドリアン・ライン監督による新作『ロリータ』の映画化が発表されると、スタンリー・キューブリック監督の1962年作品で主演を務めたスー・リオンが長年の沈黙を破って登場した。当時15歳だった新ロリータ役のドミニク・スウェインより(撮影当時)1歳年下のリオンはこう語った。「私の人間としての破滅は、あの映画に端を発しています。『ロリータ』は、あの年頃の少女が経験すべきではない誘惑に私をさらしました。14歳でセクシーなニンフ役でスターダムに駆け上がった可愛い女の子が、その後も安定した道を歩み続けられるとは到底思えません。」  そして、15歳のリオンは、この「成人向け映画」のロサンゼルスとニューヨークでのプレミア上映への出席を禁じられた。  『ロリータ』はリオンをスターにした。それはまた、ナボコフのニンフ(注:ニンフェット〜妖精的美少女)が経験したような破滅の始まりでもあった。彼女の未来は、数十年にわたる精神的不安定、5度の結婚、最終的に捨て去ることになる子供、そして長引く肉体の衰えと、2019年に73歳で亡くなるという結末を迎えた。リオンは自身の「破滅」の原因は初期のスターダムにあったと主張したが、撮影中に起こり、そして彼女を破滅させたのは、プロデューサーのジェームズ・B・ハリスとの性的関係だったという噂が長く囁かれていた。もしリオンの破滅が『ロリータ』から始まったとしたら、たった一人の人間がこれほどのダメージを与えた可能性はあるのだろうか? 『ロリータ』以前のリオン  リオンは『ロリータ』のオーディションを受けるつもりはなかった。幼なじみの親友ミシェル・ギリアム(後にママス&パパスのフィリップスとなる)とモノポリーに興じている最中、フィリップスの記憶によれば、リオンの母親が真新しいドレスと靴下を持って飛び込...

【関連動画】NHK BS8KでしかOAされていないはずの8K版『2001年宇宙の旅』のサンプル映像がYouTubeにアップされました

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ガラスに貼り付けたペンを回すシーンで、ガラス面に付着した汚れも一緒に回っているのが確認できます。おそるべし8K!(クリックで拡大)  スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968)[RAW UHDTV 8K 4320p · オリジナルカメラネガからリマスターされた 70mm スキャン · NHK BS8Kで放送、日本、2025] RAW UHDTV サンプルと高解像度静止画です。(Youtubeでは4Kまでしか許可されていません)  オリジナルカメラネガからリマスターされた70mmスキャンに基づいた『2001年宇宙の旅』の進行中の作業を皆さんと共有します。 NHK BS8K(日本)で放送され、2025年4月3日午後1時00分07秒に録画されました。これは史上初めて8Kで放送された映画で、もともとBS8Kで2018年12月1日に放送されました。  リマスターの技術的な詳細については、こちらを参照してください。  録画は中国の販売者から購入し、品質を損なうことなく8K放送を録画できる市場で唯一の専用のPT4K衛星受信カードを使用して作成されました。 私の目標は、すべてのフォーマット(劇場、ホームメディア、テレビ、ストリーミング)を含め、できるだけ多くの吹き替えと字幕を追加することです。役立つと思われる資料や技術情報(音声、字幕など)をお持ちの方は、個人的にご連絡いただくか、コメントを残すか、●●●までメールでご連絡ください。   上記に添付されているRAWサンプルは、Pythonスクリプトを使用して動画をトリミングして作成したもので、品質圧縮は行われていません。つまり、完成した.tsファイルはまさにこのようになっています。進捗状況はTelegramとDiscordで更新します。プロジェクトが完了すると、誰でもアクセスできるようになります。保存家、アーキビスト、コレクター、修復者、リマスター担当者、研究者、言語オタク、ファンなど、どなたでもご参加いただけます。録画の仕様は次のとおりです。 ビデオの長さ: 2時間29分 コーデック: HEVC ビットレート: 58.5mb/s 幅: 7680ピクセル 高さ: 4320ピクセル アスペクト比: 16:9 オーディオ言語: 英語 フォーマット: AAC LC ビットレート: 315 kb/s チャンネル:...

【ブログ記事】『博士の異常な愛情』のB-52コクピットのセット資料となった書籍と、FBIの捜査対象になるかもという逸話の真実

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『博士の異常な愛情』コレクター・エディションDVD の特典映像『メイキング・ドキュメンタリー』より引用 ーアダム率いる美術チームはB52機内セットを米軍の協力なしで造った。 ピーター・マートン(美術監督):『戦略空軍命令』という本を見つけた。その表紙に我々が切望していた写真があった。写りは悪かったがB52のコクピットだ。それを手がかりに残りはすべて自分たちで創造したんだ。 ケン・アダム(美術監督):(ピーターは)素晴らしかった。機内のセットはすべてピーターに任せてあった。彼はスイッチや警告ランプに何時間も費やしてスタンリーを感心させた。 ーあまりにリアルなデザインに思わぬ波紋も起きた。 ケン・アダム:撮影中に何人か米国空軍の人間をセット見学に招待した。B52の機内を見て彼らは顔色を変えた。本物も同然だったらしい。CRMにいたるまでだ。翌日スタンリーがメモで、どこで資料を入手したのか確認してきた。ちゃんとした情報源で合法なんだろうなって。さもないと厄介だぞと心配していた。FBIの捜査が入るかもって。 (引用: 『博士の異常な愛情』コレクター・エディションDVD特典映像『メイキング・ドキュメンタリー』 )  キューブリックという人は、映画制作におけるあらゆる可能性を考え、検証し、対策を講じる非常に慎重な考えの持ち主だったのですが、それは本人曰く「チェスをするときの思考回路に似ている」と発言しています。すなわち、チェスでは次の一手を決めるとき、ありとあらゆる可能性を選択肢として全て並べ、その中からベストと思われる手を選択するのですが、それは映画制作についても同じだと言うのです。そんなキューブリックの姿を見てスタッフは「慎重すぎる」「心配性」などと評していたようなのですが、上記の「FBIの捜査対象になるかも」という発言もキューブリックの慎重さ、もしくは心配性な性格をよく表していると思います。  この「FBIの捜査対象になるかも」という発言がいつの間にか一人歩きし、実際に「FBIの捜査対象になった」と語られることもありますが、事実は以上のように「心配性のキューブリックがただ心配しただけ」の話です。FBIの捜査が実際に行われるか、もしくはその検討がなされたのなら「キューブリック伝説」として語られるべき逸話なのですが、残念ながら事実はそうではありません。キューブリックは秘密主義者...

【スペシャルレポート】アイドルグループ『キューブリック(CUBΣLIC)』のライブに参戦してきました

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激しいダンスとボーカルでも笑顔は絶やさない!  以前から気になっていたアイドルグループ『キューブリック(CUBΣLIC)』。このグループ名である以上採り上げなければ!という謎の使命感と、ちょっと興味のあった「アイドルの世界」を見てみたい!という好奇心から、2025年6月30日、渋谷のDESEO mini with Village Vanguardで開催された『CUBΣLIC 現体制1周年記念公演』に参戦してきました。  アイドルグループ『CUBΣLIC』とは、異次元をコンセプトに2019年8月23日結成された「フューチャーベース異次元アイドルユニット」で、  2019年11月3日お披露目ライブ開催以降、 フューチャーベースサウンドにキレのあるダンスとキュートな歌声で会場を異次元空間へと誘うライブを開催。「いくつかの場所は、そう、人みたいなんだよ。僕たちのような能力を持っているものもいれば、そうじゃないものもあるってことさ」を合言葉に、メンバーの変遷を経つつも現在まで精力的にライブ活動を継続中です。  そのライブですが、単に可愛いだけなのかと思ったら大間違いで、ノンストップで激しいエレクトリカル・ダンスポップチューンの連続攻撃。途中MCは挟みますがミドルテンポやバラードなどはなく、とにかく激しく歌って踊ってのあっという間の1時間(アンコール含む)でした。ライブの後は物販とチェキタイム。さっきまでの熱い空間とは打って変わって和やかな空気が流れていました。  当日のセトリは以下の通りです。 ウェザー・リポート バトルロワイヤル宣言! 〜MC〜 シュガビタ テルミー? シーサイドタイムマシン2025 晴れトキドキ 〜MC〜 インターフェース Filp-Flop スーパーフルフラット 微レ存ガール 〜MC〜 シーサイドタイムマシンREMIX いえないっしょん 〜アンコール〜 KISS KISS CUBΣLIC  「キューブリック」の名を冠する通り、過去にはキューブリック作品のパロディやオマージュも。ただし現在はやっていないそう。でも、現メンバーが好きなキューブリック作品は教えていただきましたので、会話のきっかけには良きかもですね。 フライヤーやアパレルなど、キューブリック・パロディの数々 ▼メンバーの好きなキューブリック作品 黒川音(くろかわ おと) …『フルメタル・...

【関連記事】1972年1月30日、ザ・ニューヨーク・タイムス紙に掲載されたキューブリックのインタビュー

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A Clockwork Orange(IMDb) ブロンクスの素敵な男の子? クレイグ・マクレガー ロンドン発―では、スタンリー・キューブリックのようなブロンクス出身のユダヤ人の好青年が、『時計じかけのオレンジ』のような奇抜な映画を撮っているのはなぜだろう? まあ、誰でも最初はどこかの好青年から始まるもんだ、とスタンリーは言う。彼は微笑む。ユーモアのセンスもある。レストランでオヒョウを食べ、いつもの地味なオリーブ色の防弾チョッキを着て、陰気な髭面は、次回作の主人公となるナポレオンにそっくりだ。天才には見えないし、黙示録的な光輪も頭上には見えない。柔らかなニューヨーク訛りで、まるでブロンクスのあの伝説の好青年のようでもある。  しかし、43歳になり、年間最優秀監督賞を受賞し、カルト的な人気を得る頃になると、あなたは変わった。高い壁に囲まれた大きな屋敷に住み、メルセデスを乗り回し、無線電話でコミュニケーションを取り、現実世界で目にするものは往々にして気に入らないものだ。そして数年後、ついに『時計じかけのオレンジ』のような映画を作ることになる。レイプ、暴力、性的サディズム、残虐行為、そして人間の永遠の野蛮さを主題とする、不気味で単純、そして身の毛もよだつほど悲観的な映画だ。  「人間は高貴な野蛮人ではなく、卑劣な野蛮人だ」とキューブリックは氷水に手を伸ばしながら言う。「人間は非理性的で、残忍で、弱く、愚かで、自分の利益に関わることに関しては何事にも客観的になれない。それが人間の本質を言い表している。私が人間の残忍で暴力的な性質に興味を持つのは、それが人間の真の姿だからだ。そして、人間の本質についての誤った見解に基づいて社会制度を作ろうとする試みは、おそらく失敗する運命にある。」  例えば、どんなことですか?「そうだな、リベラル神話の多くの側面が今、破綻しつつある。しかし、私は例を挙げたくはない。そうするとウィリアム・バックリー(アメリカの保守思想家)のように聞こえてしまうからだ…」  キューブリックの社会観も同様に暗い。社会は人間を本来の姿よりもさらに悪くしてしまう可能性がある。「社会的な制約がすべて悪いという考えは、ユートピア的で非現実的な人間観に基づいている」と彼は言う。「しかし、この映画では、社会制度が少し暴走した例が描かれている。法と秩序の問題に直面した社会制度は...

【関連動画・関連記事】1980年10月24日、矢追純一氏によるキューブリックへのインタビューとその裏話

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JY=矢追純一 SK=スタンリー・キューブリック JS=ジュリアン・シニア JS  –ええ、ミッシェルです。やあスタンリー、探したよ。今ちょっと話せるかい?ミスター矢追と今一緒に立っている。 SK – 準備できているかい? JS  –できているよ、ちょっと待って。 JY –はじめまして。私の名前は矢追純一です。いくつか質問してもよろしいでしょうか? SK – はい、もちろんです。 JY – 最新作にホラーを選んだのはなぜですか? SK – まず、直接お話しできないことをお詫びします。ジュリアンが説明したと思いますが、私はラボやサウンドスタジオを駆け回っていて、実は今は電話ボックスからあなたに電話しています(注:キューブリックはカメラ嫌いなので避けている) JY – はい、分かりました。 SK – ホラーストーリーを選んだのはなぜですか・・・うーん、私がこれまでに制作したすべての映画について同じ質問をされたとしても、答えるのは難しいでしょう。私はたくさん本を読み、もちろん常に映画のストーリーを探しています。それはなぜ奥さんに恋をしたのかと聞かれるようなものなのです。好きなストーリーを読むと、映画の可能性が示唆されることがあります。このプロットはそのジャンルで最も巧妙で、最も興味深いものだと思いました。そして、それを読んだとき、私はこれを映画にしたいと思ったのです。 JY – なるほど。超能力についてはどう思いますか? SK – つまり、本当にどう思っているのかということですか? JY – はい。 SK – わかりませんが、オカルト体験をした人々の興味深い話や報告はたくさんあると思います。有名な天文学者が宇宙、つまり世界と宇宙における生命について語り、「私は宇宙に生命があると思うが、いずれにしてもそのような考えは驚異的だ」と言ったのと少し似ています。生命があったとしても、なかったとしても、ある意味驚異だと思います。 JY – ええと、何か超能力みたいなものをお持ちですか? SK – もう一度言ってください。 JY - あなたには超能力がありますか? SK – いいえ、あればいいのですが。 JY – (笑)あなたは未来を予測したり、役者の心を読んだり、異次元からイメージを考えたりする能力があるはずだとみんな言っていました SK – そうですね、私には超能...

【関連記事】早川書房社長の早川浩氏、アーサー・C・クラークと一緒に『2001年宇宙の旅』を鑑賞した思い出を語る

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『2001年宇宙の旅』(1968年) 〈前略〉   あるとき「ヒロシ、スタンリーのあの映画は見たか?」と聞かれた。クラークの小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した「2001年宇宙の旅」である。まだ見ていないと答えると「じゃあ一緒に見よう」と2人で映画館に入った。見終わった後、「自分で切符を買ってこの映画を見るのは実は初めてだ。実にいい作品に仕上がっている」と珍しく笑顔を見せていたのを覚えている。 〈以下略〉 (引用: 日本経済新聞『私の履歴書』(16)巨人の面影/2025年6月17日 )  クラークの著作を数多く翻訳・出版している早川書房の社長、早川浩氏がアーサー・C・クラークと一緒に『2001年宇宙の旅』を鑑賞した話を日本経済新聞の『私の履歴書』で語っていたのでご紹介。  ずいぶんとご機嫌なクラークの姿が目に浮かぶようですが、試写会時や公開当初は映画『2001年…』を気に入っていないどころか、失望すらしていたとは思えないほどの厚遇ぶりですね。鑑賞した日時は不明ですが、文章の内容から評価が酷評から激賞に変化した1968年夏以降だと思われます。ちょうどその頃に小説版が発売され、その邦訳版の出版契約か何かで渡米された時のエピソードではないでしょうか。  上記記事は有料とありますが、無料会員登録すれば月1回まで有料記事が無料で読めます。全文が気になる方はぜひ登録を。 情報提供:Kさま

【関連記事】音楽を怖がってください。『シャイニング』『2001年宇宙の旅』『アイズ・ワイド・シャット』・・・巨匠キューブリックが愛した恐怖クラシック

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左からバルトーク、リゲティ、ペンデレツキ  「別に怖い音楽を書いたわけじゃないんだけどね?」という作曲家たちの声が聞こえてきそう。なぜか、ホラー映画御用達の現代音楽。巨匠キューブリックは、バルトークやリゲティ、ペンデレツキといった作曲家を愛し、偏執的に映画の中で用いました。とっつきにくいと思われがちな現代音楽、こうなったら「怖がる」楽しみ方はいかがですか⁉  キューブリック・ファンに嬉しいプレイリスト付きでご紹介します。 〈以下略〉 (引用: ONTOMO/2018年8月13日 )  少し古い記事ですが、目に留まったのでご紹介。キューブリックがバルトーク、リゲティ、ペンデレツキを使ったのは「無調音楽」の匿名性、つまり主役のメロディがあってないような音楽なので、BGMではなく効果音的な使い方ができるということもあったかと思います。逆にメロディがどっしり主役を張る音楽は、特定のシーンに意図的に使うことで、ある種のメッセージを伝えようとする場合が多いです。(こう書くと特定の曲が思い浮かぶ方も多いはず)  キューブリックの自宅には図書館ほどの膨大なレコード・ライブラリーがあり「これほどたくさんの曲があるんだから、いろいろと使ってみないといけない」と語っていたそうです。使用する音楽は撮影中に思いついたりすることもあったようですが、やはり編集中にあれこれ試しては最適な曲を選び出していたようで(もちろん選んだ曲が100%使えるわけではない。使用許可が下りない場合もある)、それはそれは「楽しい作業」だったのだと思います。(キューブリックは編集作業が大好き)  記事では『2001年宇宙の旅』でのリゲティの「無許可使用」にも触れていますが、キューブリックがリゲティの使用を決めたのは公開直前のことで、その時はリゲティと連絡が取れなかったそうです。やむなく無許可で使用したところ(キューブリックはそれだけどうしてもリゲティを使いたかったのでしょう)、後でそれを知ったリゲティは「私の曲をハリウッド映画に使うなんて!』と大激怒!(当時は映画音楽は低く見られていた)無許可使用も相まって訴訟問題に発展するのですが、『2001年…』が画期的な傑作と評価されるようになると態度も軟化、後に無事に印税も支払われ、後のインタビューではキューブリックやその作品について好意的に語っています。(記事にはここ...

【関連記事】スタンリー・キューブリックが『シャイニング』の制作中に住んでいた英国の邸宅が900万ドルで売りに出される

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キューブリック一家が居住していた当時のアボッツ・ミード  まさにセントラルキャスティングから出てきた物件です。  スタンリー・キューブリックがかつて住んでいたハートフォードシャーの邸宅―彼が『シャイニング』『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』などの作品を制作した場所―が、約900万ドル(12億円)という破格の価格で売りに出された。  アボッツ・ミードとして知られる8ベッドルームの英国邸宅は、ロンドン郊外エルストリーのバーネット・レーンに位置している。金曜日に送られた不動産会社からのリリースによると、サヴィルズが販売している。   ニューヨーク生まれの故キューブリックは1965年にこの土地を購入し、14年間をそこで精力的に制作活動に費やしました。そして1999年に亡くなりました。  エルストリー・スタジオのすぐ近くにあるおかげで、この隠遁生活を好む映画監督は、緑豊かな2エーカーの敷地を離れることなく、制作や編集から特殊効果の開拓まで、あらゆる作業を管理することができました。  「豊かで多様な歴史を持つ素晴らしい住宅を数多く販売できることは、私たちにとって大変幸運なことです。しかし、映画撮影のロケ地として使われた場合を除き、これほど映画制作と直接的なつながりを持つ物件は稀です」と、サヴィルズ・リックマンスワースのオフィス責任者、スティーブン・スペンサー氏は声明で述べています。   スペンサー氏はさらに、「エルストリー・スタジオに近いことがキューブリック氏とその家族にとって完璧な拠点となりましたが、キューブリック氏は自宅で多くの仕事をし、スタジオ内で彼の並外れた作品群のうち4本の映画のあらゆる側面を注意深く管理していました」と付け加えました。 (引用: THE NEW YORK POST/2025年5月23日 )  キューブリックが『2001年宇宙の旅』〜『シャイニング』の制作中に住んでいた英国の邸宅「アボッツ・ミード」が900万ドル(約12億円)で売りに出されているそうです。内装は当時と変わっていると思いますが、記事には室内写真がいくつか。それに当時はプールはなかったはず。  キューブリックはそれまでたびたび映画製作のためロンドンは訪れていましたが、あくまで拠点は自身の出身地であるニューヨークでした。(ハリウッドが嫌で舞い戻ってきていた)。で...

【関連記事】トム・クルーズ独占インタビュー「ただ映画を作るために映画を作ったことは一度もない。常に映画作りの探求だった」

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〈前略〉 - 『アイズ ワイド シャット』は近年再評価され、多くの批評家から傑作と評されています。あなたは今、この作品についてどう思われますか?  素晴らしい経験でした。とても興奮していました。スタンリーの映画はよく知っていて、シドニー・ポラックを通して彼を知りました。それでスタンリーはシドニーに電話をかけ、私に映画を作ってほしいと言って、ファックスを送ってきたんです。  彼の家まで(ヘリで)飛んで、裏庭に着陸しました。前日に脚本を読んで、一日中それについて話しました。彼の出演作は全部知っていましたし、スコセッシ監督にも彼とシドニー・ポラックについて話しました。だから、彼の仕事ぶりや仕事のやり方は知っていました。それから、彼と私はお互いを知るようになりました。そうしているうちに、私はニコールに(アリスの)役をやってくれないかと提案しました。彼女は明らかに素晴らしい女優ですから。  撮影が長引くことは分かっていました。彼は「いやいや、3、4ヶ月で終わるよ」と言っていましたが、私は「スタンリー、いいかい、君のためにここにいる。どんなことがあっても、やり遂げる」と言いました。この映画はとても興味深いと思い、ぜひそういう経験をしてみたいと思いました。映画を作るときは、実際に依頼する前に綿密な調査を行い、関係者とじっくり時間をかけて話し合います。そうすることで、彼らが何を求めているのか、そして彼らが私のことを理解し、どのように一緒に仕事をすれば特別な作品が作れるのかを理解してもらえます。  とてもユニークな経験でした。クルーはそれほど多くありませんでした。夏に到着して、基本的にはテスト撮影を始めたばかりでした。脚本はまだアイデアの段階でした。映画のトーンを本当に見つけるために、シーンを何度も書き直し、撮影し、そしてまた撮影し直しました。 -映画の夢のようなクオリティを実現するために、キューブリックとどのように協力しましたか?  レンズを操作しながら、構図やシーンのリズムを探っていました。カメラの動かし方。それぞれのシーンに独特のリズムがあって…催眠的で夢のような体験を生み出します。まさに私のキャラクターが経験していたことと同じでした。そして、最終的に彼がたどり着いたのは、ジェルジ・リゲティの作品を使うことでした。彼はリゲティが大好きだったんです。 - プロデューサーのヤン・ハ...

【ブログ記事】カンヌ国際映画祭のカンヌ・クラシックで『バリー・リンドン』が4Kで上映

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 ライアン・オニールとマリサ・ベレンソンが主演を務めるスタンリー・キューブリック監督による、ウィリアム・メイクピース・サッカレーの18世紀の古典小説『バリー・リンドンの回想録』は、繊細で颯爽とした悪党の栄枯盛衰を描いた作品。アイルランドを追われたハンサムな若者レドモンド・バリー(オニール)は、決闘でイギリス軍将校を殺害したためアイルランドを追われ、プロイセンで兵士、スパイ、そしてヨーロッパのエリート層の間でギャンブラーとして一攫千金を夢見る。彼は名前を変え、富を求めて貴族(ベレンソン)と結婚するが、求め続けた成功はついに果たせない。 アカデミー賞4部門受賞:撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞、作曲賞 監督:スタンリー・キューブリック 製作年:1974年 製作国:イギリス、アメリカ 上映時間:184分 (引用: カンヌ映画祭公式サイト )  2025年5月23日、カンヌクラシックスのクロージング作品として上映された『バリー・リンドン』はクライテリオン社による新しい4K修復版で、35mmのオリジナルカメラネガの4Kスキャン、撮影時の正しいアスペクト比1.66:1で上映、サウンドはオリジナルの35mm磁気トラックから作成されたそうです。  上映当日、主演の一人であるマリサ・ベレンソンが登壇。映画はキューブリックとファンにはおなじみの映画評論家ミシェル・シマンに捧げられました。 4K版はクライテリオンから7月に4KUHDでリリースされる ことが決まっていますが、残念ながら日本語字幕はなし。まあなくても内容は知っているし困らないのですが、特典映像はないと困ります。ワーナーは出す気あるのでしょうか?でなければ『午前十時の映画祭』あたりでの上映を期待したいですね。

【ブログ記事】NHK『映像の世紀バタフライエフェクト〜AI未来を夢みたふたりの天才』に『博士の異常な愛情』のストレンジラブ博士が「不適切な引用」として登場

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 2025年5月19日にOAされたNHKの『映像の世紀バタフライエフェクト〜AI未来を夢みたふたりの天才』は、現在のコンピュータの基礎の基礎になったエニグマ解読機の開発者アラン・チューリングと、プルトニウム型原爆の開発に携わったフォン・ノイマンが特集されていました。  番組中、フォン・ノイマンが『博士の異常な愛情』のストレンジラブ博士のモデル「とも言われる」とされていましたが、それを示す資料も証言もありません。あるのは、当時物議を醸したストレンジラブ博士のモデルを巡って、様々な「憶測」や「推論」が飛び交い、その中にはエドワード・テラー、フォン・ノイマン、ヘンリー・キッシンジャー、フォン・ブラウン、ハーマン・カーンといった面々が「取りざたされていた」という事実です。つまりそのように「言われていた」だけの話です。ですので番組中も「とも言われる」とナレーションされたのですが、往往にしてこの「とも言われる」は無視されることが多く、そのまま「ストレンジラブ博士のモデルはフォン・ノイマン」と解釈されがちです。その意味でも不適切だと言わざるを得ません。  ちなみにストレンジラブ博士は原作小説『赤い警報』には登場しませんので、完全にキューブリックサイドの創作になります。ドイツ出身の優秀な科学者というアイデアはフォン・ブラウンなど(当時アメリカの最先端の科学者にはドイツ出身者が多かった)から、核戦争の思想については『熱核戦争論』のハーマン・カーンから、キャラクターそのものは演じたピーター・セラーズのアドリブによるもので、車椅子のアイデアはキューブリック、黒い手袋と勝手に動く右手のアイデアはセラーズ、ドイツ語訛りの口調は写真家のウィージーを参考にしたというところまでは判明しています。  さて、この番組、チューリングとノイマンだけでは尺が余ったのか、後半に「AIの父」と呼ばれるマービン・ミンスキーが登場します。ミンスキーは『2001年宇宙の旅』にアドバイザーとして参加し、その貢献度の高さから「カミンスキー博士」として劇中にも登場しています(冷凍睡眠中にHALに殺されてしまいますが)。AIの話をするならノイマンよりもはるかに重要人物で、『2001年…』でのスペース・ポッドのマニュピレーターやHALのモニタ画面(正方形)の元になった映像が番組内に登場しています。  番組の構成としてはチューリ...

【関連記事】トム・クルーズ、『アイズ ワイド シャット』の役にニコール・キッドマンを「推薦した」と語る。「彼女は素晴らしい女優だ」

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クルーズとキッドマンは2001年に離婚するまで11年間結婚生活を送っていた。  トム・クルーズは、離婚から25年近く経った今でも、元妻のニコール・キッドマンを高く評価している。  Sight and Sound(The Independent経由) との最近のインタビューで、俳優は1999年の映画『アイズ ワイド シャット』を振り返り、スタンリー・キューブリック監督のエロティック・スリラーで、ドクター・ビル・ハーフォードの相手役としてアリス・ハーフォード役にキッドマンを推薦したと語った。  「彼の家まで(ヘリで)飛んで、裏庭に着陸したんだ。前日に脚本を読んで、一日中それについて話した。彼の作品は全部知っていたんだ」と彼は回想する。「それから、彼と私はお互いを知るようになった。そうしているうちに、ニコールに(アリスの)役を演じてはどうかと提案したんだ。だって、彼女は素晴らしい女優だからね」  クルーズはこの映画に特に熱心で、撮影が予想よりずっと長引いたにもかかわらず、キューブリックに「(映画を作るために)何が起ころうとも、我々はやるつもりだ」と語った。 〈中略〉  「この映画はとても面白かったので、自分もそういう経験をしてみたかったんだ」と『ミッション:インポッシブル』のスターは振り返る。「映画を作るときは、実際に手がける前に綿密な調査をし、出演者たちとじっくり時間をかけて話し合う。そうすることで、彼らが何を求めているのか、そして彼らが私のことを理解してくれるかを理解し、どうすれば一緒に特別な作品を作ることができるのかを理解できるからだ」  キッドマンは以前、一部の視聴者がスクリーン上の二人の関係と現実の関係を比較したため、クルーズと『アイズ ワイド シャット』で共演したことで、当時の二人の結婚生活について「否定的な感情」が生じたかどうかについて言及していた。 「それは人々が思い描いていた物語には当てはまるけれど、私は絶対にそうは思っていませんでした」と彼女は2020年にニューヨーク・タイムズ紙に語った。「私たちはそういったことを乗り越えて幸せな結婚生活を送っていました」 〈以下略〉 ( The Hollywood Reporter/2025年5月11日 )  実はそのトムのキャスティングもワーナー側からの提案でした。最初ハリウッドスターを起用することを渋っていた(『...

【関連記事】「名監督スタンリー・キューブリックと、19歳の私」『2001年宇宙の旅』の制作に参加したブルース・ローガンのインタビュー記事

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宇宙ステーションVのセットに立つブルース・ローガン  1965年、私はイギリスのボアハムウッドにあるアニメーションスタジオで働いていました。BBCと軍向けの小さなアニメーションプロジェクトを制作していました。ロンドン・サンデー・タイムズ紙の記事で、私の大好きな監督、スタンリー・キューブリックが、通りの向かいにあるMGMスタジオでSF映画を制作するという記事を見つけました。その映画のタイトルは『2001年宇宙の旅』でした。 名監督スタンリー・キューブリックと、19歳の私  それから間もなく、運命の出会いがありました。VFXのパイオニア、ダグラス・トランブルが、この映画のアニメーションアーティストを探しに、私たちの会社にやって来たのです。当時、優良企業で安定した仕事をしていれば、半年ほどフリーランスの仕事に就くことなど考えられませんでした。しかし、私は気まぐれで気ままな性格だったので、面接を受け、そして採用されました。  まさかこの仕事が2年半(この業界での生涯最長の収入源)も続き、私のキャリアの中で最も影響力のある経験になるとは、その時は夢にも思っていませんでした。そして、その後数年間、スタンリー・キューブリックと一緒にテスト上映に座り、作品を批評することになるとは、夢にも思っていませんでした。もし今これをやらなきゃいけないと誰かに言われたら、きっと神経衰弱を起こしてしまうでしょう。でも、当時は19歳で、何も分かっていませんでした。 では、スタンリー・キューブリックとはどんな人だったのでしょうか?  彼との出会いは、深い思いやりと優しさ、そして共感力を持ち、ユーモアのセンスも抜群の人でした。しかし、それが彼の人柄でした。映画監督として、彼は自身のビジョンを形にするために、非常に強い意志と容赦ない精神力を持っていました。私が数日間体調を崩したとき、彼は自宅に電話をかけてきて、救急車を呼んで担架で運び込み、アニメーション撮影をさせると脅すほどでした。  彼には、『博士の異常な愛情』で演じたジャック・D・リッパー将軍によく似た、特異な癖もありました。彼はボトル入りの水しか飲まなかった(60年代のイギリスでは考えられないことだった)。ポケットを空っぽにしておくのが好きで、車のキーを車に置きっぱなしにして、私たちからタバコをせびっていた(注:妻のクリスティアーヌに禁煙を厳命され...

【関連記事】手塚治虫が選ぶ「SF映画ベスト10」

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天国への階段 幽霊紐育を歩く メトロポリス 月世界征服 光る眼 原子人間 宇宙戦争 2001年宇宙の旅 地底探検 猿の惑星  SF映画の面白さはSF小説の面白さとは違う。映画は画期的に面白く、ゲテモノでなく、見た目に面白いものがよい。最近では『猿の惑星』が傑作だ。  『時計じかけのオレンジ』は社会風刺としては面白いが入れるのをためらった。そういう意味では『博士の異常な愛情』などはSFというよりもSF番外編としてはトップに入れたいところだ。総体的に原作がある作品にあまり面白いものがなく、オリジナルな映画が面白いというのは、原作にしばられて思うように画像の飛躍ができないからだろう。『日本沈没』は小説は面白いが映画は失敗するだろう。  小松左京氏、筒井康隆氏などにぜひシナリオを書いてもらいたいものだ。マンガ家にもSF映画の発想ぐらいには参画させてほしい。 (引用:『ロードショー』1973年10月号)  手塚治虫が『2001年宇宙の旅』を高く評価しているのは周知の事実ですが、コメントとして『時計じかけのオレンジ』『博士の異常な愛情』にも触れ、結局3つもキューブリック作品を選んでいますね。どんだけキューブリック好きやねん!と思いますが、他はまあ1973年当時としては順当な気がします。ちょっとクラシック寄りな気もしますが。1、2は存じ上げなかったので調べてみましたが、SFというよりファンタジー要素が強そうな作品です。意外なのは『地球が静止する日』『地球最後の日』『禁断の惑星』あたりを挙げていないこと。単に忘れていただけな気もしますけど。  「総体的に原作がある作品にあまり面白いものがなく、オリジナルな映画が面白いというのは、原作にしばられて思うように画像の飛躍ができないからだろう」という指摘は自身もクリエーターである立場からの発言だと思います。実は映画は原作ものばかりですが、権利関係や契約などで映画製作者の創作の自由が縛られてしまうとつまらなくなってしまう、という意味に取っておきましょう。キューブリックはまさにそれを嫌がって契約には白紙委任状態を求め、製作はハリウッドの目が届きにくいロンドンでという判断をしました。  あと、『日本沈没』は興行的には成功しましたね。内容(評価)的に失敗するという意味かも知れないですが。手塚先生はその場の思いつきでぱぱっと言ったりする方なので、こう...

【スペシャルレポート】シネ・リーブル池袋にてNTLive『博士の異常な愛情』を鑑賞してきました

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  以前 こちら で告知したNTLive(ナショナル・シアター・ライブ)『博士の異常な愛情』をシネ・リーブル池袋にて鑑賞してきましたのでその感想を記してみたいと思います。 〜以下、ネタバレ注意〜  まず「演劇を映像に収録してそれを世界各国の映画館で上映する」(詳細は こちら )というアイデア。その場で演じられるライブ感を楽しみたいコアな演劇ファンはどう思っているかはわかりませんが、個人的には好意的に思いました。なにしろ海外で上演された演劇を日本でそのまま観る方法はほぼなく、日本人俳優によるローカライズがせいぜいです。それに演劇鑑賞は鑑賞者にある種の緊張感を強いてきます。もちろんそれが好きという方もいらっしゃるとは思いますが、映画ファンにとって敷居が高いのも事実。そういった「懸念」を全く感じさせることもなく、本国で上演された演劇をそのまま映画館で気軽に鑑賞できるという意味では、非常に有意義な試みだと思いました。  さて、肝心の本編ですが、もちろんあのキューブリックの名作を演劇に落とし込む際、様々な制約があったことは理解できます。さらにこの作品は主演のスティーブ・クーガンが、ピーター・セラーズが演じたストレンジラブ博士、マフリー大統領、マンドレイク大佐に加え、ピーターが演じるはずだったコング機長まで演じています。それによってもたらされた制限・制約は非常に多く、それを回避するために採られた方法に100%同意できるかといえば、やはりもっとやりようがあったのではないか?と感じてしまいました。つまり、テンポの悪さが気になったのです。また、リッパー将軍やタージドソン将軍の演技に「狂気成分」が足らないな、とも感じました。もちろん現代におけるコンプライアンス的な問題があったのかもしれませんが、映画版のスターリング・ヘイドンやジョージ・C・スコットのキレッキレの演技を見慣れている目にはそう映ったのも事実です。  ですが、全体的には非常に満足できました。確かに映画版のような狂気成分は薄めですが、コメディ要素を増やした分、何度も声を上げて笑うことができました。映画版は狂いすぎてて「笑うに笑えない」ですからね。それに付け加えられた昨今の国際情勢ネタ、特に「おそロシア」ネタには大爆笑。ラストシーンも「こうくるか・・・笑」と謎の感動があり、おおいに楽しませていただきました。  そして何よ...

【関連記事】ルック社時代、上司だった著名なフォトジャーナリスト、アーサー・ロスシュタインが撮影した入社したてのキューブリックのポートレート

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アーサー・ロシュタインが撮影した17歳のキューブリック。当時まだ目は悪くなかったはずで、メガネはふざけてかけたものだと思われる 〈前略〉 キューブリックの写真スタイル  ルック誌のカメラマン見習いとして働き始めた最初の6か月間、キューブリックは同誌のより経験豊富なカメラマンから指導を受けた。その指導者の1人がアーサー・ロスシュタインだった。1978年のインタビューでロシュスタインは「年配のカメラマンにとって仕事で得られる最大の満足感は、若いカメラマンが何かを達成するのを手助けすることです。私はキューブリックがルック誌の専属カメラマンだった初期の頃、彼を助けました」と語っている。 フォトエッセイ   ロシュスタイン の著書「フォトジャーナリズム」によると、この雑誌には6段階のフォトエッセイ制作プロセスがあった。写真家は、写真編集者からストーリーを割り当てられると、プロセスの第3段階に参加することになる。写真家はアイデアを提案できるが、通常は自分の能力と好みに基づいてフォトストーリーが割り当てられる。  プロセスの第4段階では、写真家とライターが現場に出向き、記事用の写真を撮影します。  撮影現場に出発する前に、写真家は編集者と撮影内容について話し合い、撮影台本を含む被写体に関する情報を受け取ります。  ルックは、作家が写真家と協力して物語を完全に理解することが重要だと信じていました。作家は視覚的に考えるよう奨励され、脚本を準備する際には、写真家が物語を捉えるのに役立つ主題や設定に関する情報をすべて盛り込むように指示されました。  この雑誌は、写真家たちに、表現力豊かな孤立した写真ではなく、フォトエッセイや物語性のある連続写真の制作を求めていました。原稿から逸脱することが頻繁にあったため、写真家たちは柔軟に対応する必要がありました。  この撮影アプローチは、キューブリックの映画人生を通じて貫かれました。後のインタビューで彼は「最後の瞬間に適応できること」と、たとえ脚本の弱点が露呈することになったとしてもチャンスを活かすことが重要だと語っています。 報道を受ける   ロスシュタイン の本では、撮影範囲の重要性についても触れています。『ルック』は実際の記事よりも写真に重点を置いており、キューブリックを含むスタッフカメラマンは、雑誌の美術部門に記事のレイアウトに幅広い選択肢を...

【上映情報】昨年秋、ロンドンで上演された舞台版『博士の異常な愛情』が2025年5月9日よりTOHOシネマズ日本橋ほかで映画として上映決定!!

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『博士の異常な愛情』 5/9(金)〜 TOHOシネマズ日本橋ほか あのキューブリックの名作が舞台になって登場! 演出:ショーン・フォーリー(映画『マインドホーン』監督、オリヴィエ賞受賞演出家) 作:スタンリー・キューブリック 脚色:ショーン・フォーリー、アーマンド・イアヌッチ(映画『スターリンの葬送狂騒曲』監督・脚本、映画「どん底の作家に幸せあれ!」監督・脚本、エミーアワード受賞歴あり) 主演:スティーヴン・クーガン(4役) 撮影場所:ノエル・カワード・シアター 上映時間:2時間5分 ポイント:BAFTA賞を7度受賞したスティーヴ・クーガン(『アラン・パートリッジ』『トリップ』)が、スタンリー・キューブリックの傑作コメディ『博士の異常な愛情』の世界初舞台化で4役を演じる。アメリカの悪徳将軍が核攻撃を引き起こしたとき、政府と一人の風変わりな科学者が世界滅亡を回避するために奔走する、シュールな競争が繰り広げられる。 エミー賞受賞のアーマンド・イアヌッチ(『ザ・シック・オブ・イット』、TVドラマ『Veep/ヴィープ』)、オリヴィエ賞受賞のショーン・フォーリー(『The Upstart Crow』、『The Play What I Wrote』)など、世界的に有名なクリエイティブ・チームが率いる、爆発的に面白い風刺劇。 (引用: ナショナル・シアター・ライブ『博士の異常な愛情』公式サイト )  昨年秋、ロンドンのノエル・カワード・シアターで上演された、スティーヴン・クーガン主演(ストレンジラブ博士、マフリー大統領、マンドレイク大佐、コング機長の4役)の舞台版『博士の異常な愛情』が、2025年5月9日よりTOHOシネマズ日本橋ほかで「映画として」上映決定いたしました。ロンドンの上演を観ることができず、悔しい思いをされた方には朗報ですね。  私は一足早く、試写版を視聴させていただきましたが、キューブリック版をかなり忠実に再現していたのには驚きました。舞台である以上、俳優の着替え時間や場面転換などの制約があるのですが、さまざまな工夫を凝らすこと(詳細は語りません。笑)で上手くそれらを回避しています。さらにあの「北の大国」や例の「チョビ髭」も(必要以上に?)コスられていて、お笑いにはシニカルな私もおもわず声を上げて笑ってしまいました。  とにかく、あの名場面もあの台詞もあの曲も登場...

【関連記事】『シャイニング』の不気味な写真に隠された45年間の謎が解明されたか?

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 引退した学者兼ジャーナリストが、古典ホラー映画の悪名高い写真に写っていた男性を特定した。  これは『シャイニング』のラストシーンに重ねて使用されたとされるオリジナル写真です。1921年2月14日、ロンドン、ケンジントンのロイヤル・パレス・ホテル、エンプレス・ルームで開催されたバレンタインデー・ダンスと社交ダンスの大会に出席する観客たちを捉えています。手前中央で両腕を大きく広げているのは、南アフリカ出身の社交ダンス教師、サントス・カザーニ(通称ジョン・ゴールマン)です。( Morey/Topical Press Agency/Hulton Archive/Getty Images )  それはホラー映画の歴史に刻まれた瞬間です。  スタンリー・キューブリック監督の1980年のホラー映画の傑作『シャイニング』で、 カメラはオーバールック・ホテルの廊下に掛けられた白黒写真にズームインする。写真には1921年7月4日の日付が記されている。中央には、ジャック・ニコルソン演じるジャック・トランスが、パーティー参加者の群衆の中で微笑んでいる。    しかし、この写真はエキストラを使って撮影されたものではありません。1920年代の実際の写真で、ニコルソンの顔が誰かの顔に重ねられていました。一体誰の顔だったのでしょうか?  〈以下略〉 (引用: CBC Radio/2025年4月10日 )  『シャイニング』のラストシーンに登場した、ジャック・ニコルソンが写り込んだ古い集合写真は映画のために撮影されたのではなく、既存の古い写真にニコルソンの写真を合成(切り貼りしてその境目をエアブラシで補修)したことは以前 この記事 でお伝えした通りです。そして今回、ついにその「古い写真」の詳細がわかったということでそれは記事にある通りです。  意外だったのが映画の設定年と実際に撮られた年が1921年と一致していたこと。数年のズレはあっても仕方ないだろうと考えていたのですが、どうやらその年のバレンタインデーのパーティーか、独立記念日のパーティーかの違いしかなかったようです。これはラッキーでしたね。  キューブリックは原作小説の「呪われたホテルが焼け落ちる」というラストを早々に「陳腐だ」と廃棄し、代替案をいろいろと考えていたようですが、その一つに病院シーンの後に単にホテルの...