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【関連記事】S・キング、キューブリック版「シャイニング」を改めて批判

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 スティーブン・キングが、1977年の長編小説「シャイニング」の続編「ドクター・スリープ(原題)」が9月24日に刊行されたのにあたり、英BBCのインタビューに応じた。  キングはそのなかで、スタンリー・キューブリック監督、ジャック・ニコルソン主演で製作された1980年の映画版について「好きですか?」と問われ、「ノー。非常に冷たい映画だ」と即答。「私は冷たい人間ではない。人々が私の小説に感じる要素のひとつに、暖かさがあると思っている。読者に対して物語を共有してほしいと訴えかける感じ。だが、キューブリックの『シャイニング』には、あたかも蟻塚のなかの蟻を観察するかのように登場人物を見ている冷たさを感じる」と話した。  さらに、「シェリー・デュバル演じるウェンディは、映画史上でもとりわけ女性蔑視的な描かれ方をしている。単に悲鳴を上げるだけの馬鹿な女で、それは私が書いたウェンディとは違う」と嫌悪感をあらわにした。  キューブリック版「シャイニング」が原作とはかなり異なる部分が多く、キングが当初から批判を繰り返してきたことは広く知られている。なお、続編小説「ドクター・スリープ」では、中年になったダニー・トランス(ジャック&ウェンディ・トランス夫妻の一人息子で、前作ではまだ少年)の物語が展開される。 (引用: 映画.com ニュース/2013年9月30日 )  いや、まったくもってその通りで、原作のウェンディはとても洞察力があり、性的にも魅力的な女性に描かれています。映画のようにただ受け身ではなく、機転を利かせたり行動力もありますし。でもキングも語っている通り映画版『シャイニング』の魅力はその「あたかも蟻塚のなかの蟻を観察するかのように登場人物を見ている冷たさ」にあるんですよね。当然続編の『ドクター・スリープ』は小説版のダニーの性格設定を引き継ぐものとして展開するでしょう。ただ今時「成長したダニーがヴァンパイア軍団と戦う」っていうのはどうなんでしょう? あまりにも前作『シャイニング』の世界観と違う気がするのですが・・・。

【関連作品】サイレント・ランニング(Silent Running)

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 『2001年宇宙の旅』のスターゲートなどの特撮で一躍有名になったダグラス・トランブル</a>初の監督作。登場人物も少なく、派手な戦闘シーンもない地味な作品。主題歌がジョーン・バエスというところや、地球の環境破壊や植物保存計画など当時のエコロジー/ユートピア思想~現在のエコ運動とは異なり、ヒッピー文化や共産主義、新興宗教などが入り組んだ過激な思想。公害問題が先進国で深刻化した70年代、原始回帰や自然回帰の思想に共鳴した当時の若者が、自給自足の自由な生活を夢見たコミューン(生活共同体)を形成し生活を始めた。しかし便利な現代社会に慣れっこになっていた若者に農業は厳しすぎ生活は困窮、やがて私利私欲や物欲、利害の対立がはじまりコミューンは崩壊、運動は急速に衰退する。その一部はエコテロリストに変節したり、一部で資本主義の現実を受け入れつつ細々と活動を続けている~の影響が色濃い作品。  B級カルトSFとして有名な作品で一部では高い評価もあるが、今観返すと「自らの理想の崇高さを鑑みれば多少の殺人、破壊もやむを得ない」という当時のエコ思想の過激さの一端が覗けて興味深い。もちろん主人公の純粋さやひたむきさに惹かれる部分はあるのだが、それをリリシズムで片付けてしまうにはあまりにも稚拙で短絡的だ。実のところ監督のトランブルのスタンスもよく分からない。エコロジーに共鳴していたのか、批判的なのか、単に当時のトレンドに迎合しただけなのか、それともその全部なのか・・・。いずれにせよ1970年代のアメリカのリアルな「空気」は伝わってくる作品ではある。  因に植物ドームやラストシーンは某有名アニメの元ネタと言われている。  『2001年…』で実現できなかった土星の輪の映像化を実現した、という意味でキューブリックファンにも馴染みが深い作品。その『2001年…』ではアカデミー賞のトロフィーをキューブリックに持っていかれたが、今年長年の映画界への貢献を讃えられ、ロカルノ国際映画祭でビジョン賞を授与された。

【関連記事】『2001年宇宙の旅』ダグラス・トランブル、ロカルノ映画祭でVision Awardを授与!

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 映画『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』など数々の名作でSFXスーパーバイザーを務めた映画界の大御所、ダグラス・トランブルが、8月7日からスイスで行われるロカルノ国際映画祭でVision Awardを授与されることが明らかになった。  今年で第66回を迎える同映画祭で、トランブルが関わった中でも代表作の『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』、そしてトランブル自ら監督した『サイレント・ランニング』の3作品を上映し、さらにマスター・クラスというトランブル自ら司会を務め自身の作品について語るイベントも行われる。  現在71歳のトランブルは、映画『オズの魔法使』で特撮に関わっていたドン・トランブルの息子として1942年に生まれ、NASAと科学映画製作者コン・ペダースンらと共に撮影した初期の映像がスタンリー・キューブリックの目に留まり、『2001年宇宙の旅』の特撮スタッフに招かれ、斬新な撮影技術スリット・スキャンによって伝説の「スターゲート」シークエンスを作り上げた。  その後、『未知との遭遇』『スター・トレック』『ブレードランナー』などのSFの代表作に関わった。近年では、1秒48~60コマで撮影する3D映画を監督すると明かし、3D映画会社マグネター・プロダクションズを立ち上げた。  第66回ロカルノ国際映画祭は現地時間8月7日~17日まで開催、スケジュールのラインナップは7月17日に発表される。(細木信宏/Nobuhiro Hosoki) (引用: シネマトゥデイ映画ニュース/2013年7月2日 )  『2001年宇宙の旅』の特撮で多大な貢献をしつつも、アカデミー賞のトロフィーをキューブリックに持っていかれたダグラス・トランブル(不満を表明している)がビジョン賞を受賞ですか。業界内では知らぬ人がいない、と言われる程著名な方ですが一般的な認知度は低いですよね。監督としての才能がもっとあれば違ったのかも知れませんが。ともあれ、受賞おめでとうございます。

【考察・検証】『シャイニング』の犬男(クマ男)とタキシード紳士の謎を探る

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  『シャイニング』に登場する犬男とタキシード紳士のホモセクシャルなシーン。原作では犬の着ぐるみを着た男、すなわち「犬男」が廊下の真ん中に立ちはだかり、ダニーをジャックの元に行かせないように吠えたり脅かしたりして邪魔をする、というシーンに登場します。(このシーンに紳士は登場しません)つまり犬男を目撃するのはダニーなのです。でも映画でこの幽霊を目撃したのはウェンディでした。キューブリックはどうしてこんな改変を行ったのでしょう?理由は主に二つ考えられます。  まず、ダニーでなくウェンディが目撃する理由ですが、キューブリックは撮影によってダニー役のダニー・ロイドに恐ろしい目に遭わせ、トラウマにならないように細心の注意を払っています。ダニーが直接幽霊を目撃するのは双子の少女だけですが、撮影の現場を考えれば当然生きた二人の女の子ですから怖い撮影ではなかったではずです。それに比べダニーがこの犬男を目撃するシーンを撮影するとなると、着ぐるみを着た犬男の役者が、ダニーに向かって吠えたり叫んだりしなければなりません。これはダニー・ロイドにとって恐怖の体験になったはずです。子供は異様に着ぐるみを怖がったりしますから。キューブリックは小さな子供にそんな恐ろしい目に遭わせるのは可哀想だと思い、ウェンディが目撃する事にしたのではないでしょうか。当事者のダニー・ロイドは「ホームドラマの撮影をしていると思っていた」そうです。大人には手厳しいキューブリックですが、子供には徹頭徹尾優しかったようです。  次に何故映画では「犬男と紳士のホモシーン」に変更されたのか考察します。例えば原作通りにウェンディが廊下で犬男を目撃したとします。でも、相手は犬の着ぐるみを着た役者がワンワン吠えたり叫んだりしているだけです。小さな子供ならともかく、大の大人がそんなもの怖がるでしょうか?もし撮影したとしてもとても滑稽で、失笑もののシーンにしかならなかったでしょう。では大人が恐怖に感じる犬男のシチュエーションとはどういうものか?これは想像ですがキューブリックは原作に登場する様々な幽霊(原作には舞踏室のパーティーで、初代支配人のダーウェントがその腰巾着であるロジャーを犬扱いしてからかうシーンがある。しかもダーウェントはバイセクシャルだ)を参考に、あれこれ試したのだと思います。その中でなんだか訳は分からないけど、とに...

【関連動画】『ロリータ』プレミア・イン・マンハッタンのニュース映像

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 1962年6月13日、ニューヨークのブロードウェイ、ローズ・ステートで行われたロリータのプレミアを報じたニュース映像です。スー・リオン(この時15歳)の傘を持つ付き人がハートのサングラスをしているのが可笑しいですね。キューブリックもクリスティアーヌを伴って登場。こういった華やかな場所は苦手なはずですが、なかなかどうして堂に入っています。  スー・リオンはこの時、年齢制限で本編映画は観れなかったそうです。こういった華やかな映像を観ると、『ロリータ』は当時それなりの話題作だったことがわかります。キューブリック作品としての評価は決して高くはありませんが、キューブリック自身の認知度を上げるのには貢献した作品だと言えるでしょうね。

【撮影・技術】ドリーショット(Dolly Shot)

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 キューブリックが好んだ撮影方法のひとつ。カメラをドリー(台車)に乗せて動かしながら撮影する方法。台車の下にレールを敷く場合もある。広義にはカメラを移動させながら撮影する方法の全般を指すが、キューブリック作品の場合、ステディカムやクレーン撮影と区別するため、「台車を使った撮影」の意味で使われる場合が多い。  キューブリック作品で有名なのは『現金に体を張れ』のアパートのシーン。壁を突き抜けて横に移動しながら俳優の動きを追っている。また『バリー・リンドン』の戦闘時の行進シーン、『フルメタル・ジャケット』のラストシーンでは集団で一方向へ歩いていく部隊を平行移動するドリーショットで撮っている。『時計じかけのオレンジ』のオープニングは奥から手前の引きのドリーショットで、この時は台車だけでレールは敷かずに撮影された。  上記動画は『突撃』でドリーショットを使用しているシーンが連続して登場する。塹壕内ではまるでステディカムのように滑らかなカメラ移動に驚かされる(当然この頃はまだステディカムは存在しない)。キューブリックはこの映像が撮りたいために、史実とは異なり塹壕を台車が通れる幅に広げたという。続いての突撃シーンではキューブリックお得意の平行移動によるドリーショットだ。これらのシーンはカメラマン出身のキューブリックのこだわりが遺憾なく発揮されたまさしく「GREAT SCENE」と呼ぶにふさわしい。

【ブログ記事】スタンリー・キューブリック・アーカイブのフェイスブック

 キューブリックの資料を一手に保管・管理する「スタンリー・キューブリック・アーカイブ」が フェイスブックを開設 しています。開設は2013月2月10日のようです。そのせいか、ロンドン芸術大学内にあったアーカイブの紹介ページは閉鎖になったみたいです。  当ブログもフェイスブックを開設していますが、ほぼ放置状態(苦笑。FBのヘビーユーザーには申し訳ないですがメインは当ブログですので、こちらのチェックを宜しくお願いいたします。

【関連作品】『1984』(Nineteen Eighty-Four)

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 ジョージ・オーウェルの傑作小説の二度目の映画化。(映像化は三度目。初の映像化は1954年にピーター・カッシング主演でTVシリーズ)文字通り1984年に公開され話題になった。キューブリックとの関連は本作のロケがベクトン・ガス工場跡地で行われた事。廃墟などのシーンをよく見ると『フルメタル…』との共通の建物や瓦礫を見つける事ができる。因にロケはこの『1984』の方が先だった。  この原作の影響力は凄まじく、ディストピア系作品にはことごとく影響を与えている。それは文学だけに留まらず、音楽、映像、CM、ゲームまで幅広い。もちろんバージェスの『時計じかけのオレンジ』も例外ではない。20世紀に書かれた小説で、傑作を挙げるとするならば必ず名前が挙がる小説であるし、そういった意味でも原作は必読に値する。  映画化の一度目は1956年の白黒作品で、アメリカ公開版では原作を改竄し、スミスがビッグ・ブラザーに抵抗の意志を示して終わる。これについてオーウェルの遺族は批判している(オリジナルの英国版が最近DVD化されている)。二度目の映画化の本作ではかなり原作に忠実で、世界観も丁寧に映像化されている。ただし、原作のボリュームに対して尺が足らず、駆け足な上にかなりのエピソードが省かれている。そのため映画だけでは権力者が純粋に権力を行使し、維持するシステムを理解するには至らない。そういう意味では原作未読の視聴者にはかなりハンデがあるだろう。  主役はこういった悲惨な役にはこの人しかいない、と断言できるジョン・ハート。監督は本作がデビュー作となるマイケル・ラドフォード。党の高級官僚オブライエンを演じたリチャード・バートンにとって、本作が遺作となった。  ここには絶望しかない。いや、そんな生易しいものでなく、絶望に希望を見いだして終わるという圧倒的に絶望が勝利する世界が描かれる。そのあまりにも救いのないストーリーのためか、日本では未だにDVD/BD化されていない。これだけ世界的に影響力がある小説の映画化作品なのに、鑑賞するには中古のVHSをどこかしらから入手しなければならないという状況は異常と言わざるを得ない。関係各位には早急なDVD/BD化を望む。

【パロディ】ロブ・ゾンビ/ネバー・ゴナ・ストップ(Never Gonna Stop)

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  ロブ・ゾンビが2001年に発表したセカンドアルバム『ザ・シニスター・アージ』からの2ndシングル『ネバー・ゴナ・ストップ』のPV。もうここまでくると、オマージュとかリスペクトとかそういう話じゃなくて、モロに真似てみましたって所でしょうか。全編『時計…』をリメイクしたと言って良いほどです。  このロブ・ゾンビですが、マルチな才能を発揮しているアーティストらしく、楽曲は元よりPVも自身で監督しているそうです。映画監督でもあるそうですが、最新作 『ロード・オブ・セイラム』の予告編 を観る限り、ローアングルの多用からシンメトリーの構図、おまけに左右対称のトイレまで笑ってしまう程キューブリックですね(笑。よっぽど好きなんでしょう。

【関連動画】スティーブン・キングの『シャイニング』の続編、『ドクター・スリープ』のPV

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 スティーブン・キングの新作で『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』ですが、どうやらアメリカで無事刊行になったようです。「ホスピスで働くダニーがヴァンパイア軍団と戦う」とうあらすじだけでもはやアレなので、あまり興味はないですが・・・ただ映画化されるのなら監督や配給会社には興味があります。でもまあ売れ行き次第でしょうね。

【BD】『恐怖と欲望』 限定版スペシャルBlu-ray BOX 【1000セット完全初回限定生産】

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恐怖と欲望 限定版スペシャルBlu-ray BOX 【1000セット完全初回限定生産】(Amazon) 特製非売品オリジナルデザインTシャツ(BLACK/Mサイズ) B2オリジナルポスターを収録した限定仕様版スペシャルBD-BOX! 限定1000セットのみ。  ≪特別仕様≫ ■スペシャルアウターBOX ■非売品オリジナルデザインTシャツ(BLACK/Mサイズ) ■オリジナルポスターB2サイズ ■作品解説小冊子  えええー!!こういう商売ですか? うーん、Tシャツとかポスターではなく欲しいのは特典映像じゃないんでしょうか?因にイギリス版DVDでは『海の旅人たち』『拳闘試合の日』『空飛ぶ牧師』が特典映像として追加されているようですが、「限定版スペシャル」を名乗るならそっちじゃないでしょうか。誰得なこのBDボックス。予約が順調だったから販売元が気を良くしたのかもしれませんが、方向性が間違ってませんか?

【インスパイア】コンタクト(Contact)

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 ジョディ・フォスター主演のファースト・コンタクトをテーマにしたSF映画。原作は天文学者で作家のカール・セーガン、監督はキューブリック・フォロワーのロバート・ゼメキス。  キューブリックへの直接の言及は、主人公エリーが乗り込む宇宙機を「ポッド」と呼んでいるくらいですが、異星人(地球人の上位的存在)と神や宗教の関係や、異星人を描写しない異星人の描き方。異星人のメッセージを受信し、それを頼りに未知の旅に出る・・・というプロットなど、共通点は数多く存在します。  実質カール・セーガン版『2001年宇宙の旅』と言っても差し支えないくらいですが(カールは当然意識していたはず)テーマは似通っていてもその描き方はまさしく対照的。どちらがどうという事はありませんが、キューブリック作品にはないヒロイズムやヒューマニズム満載の描写は感情移入しやすいし、わかりやすいという意味ではこういうのもありだと思っています。  トンデモ北海道(笑 は日本人としては残念ですが、良作の割に認知度や評価が低いのが気になります。ファースト・コンタクト物としては『2001年…』『未知との遭遇』『エイリアン』と並んで外せない作品なので、未見の方には是非鑑賞をお薦めします。

【交友録】カール・セーガン(Carl Sagan)

 『2001年宇宙の旅』制作時、キューブリックが取材した天文学者のひとり。後に作家としても成功し、TVドキュメンタリー『コスモス』のパーソナリティーや映画『コンタクト』の原作者としても有名。  キューブリックとの会談時、話は異星人の姿をどうするかに終始したようで、キューブリックはヒト型を、クラークは非ヒト型と想定していたのを、カールは「どうしても嘘っぽくなってしまうから、宇宙人は描かずに観客に想像させたほうが良いのではないか」と提案したそうだ。ただキューブリックはこの科学者の横柄な態度に辟易し、「二度と会わない」とクラークに言い放っている。  結局キューブリックはカールのアイデア通り宇宙人の描写を避ける判断をしたが、自作『コンタクト』でもこの問題を秀逸なアイデアで回避している。  1934年11月9日ニューヨーク・ブルックリン出身、1996年12月20日死去、享年62歳。  

【名曲】幻想交響曲 第五楽章(Symphonie Fantastique〈Songe d'une nuit du Sabbat〉)

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 『シャイニング』のオープニングで使用されたのはウェンディ・カルロスによるアレンジ版ですが、上記はオリジナルの第五楽章です。作曲は17世紀に活躍したフランスの音楽家エクトル・ベルリオーズ。  第五楽章の『怒りの日』(3:30から)のパートが印象的にアレンジされていますが、この『幻想交響曲』、ベリオーズ自身の実体験を元にし、アヘンを吸いながら作曲したそうで、作者自身によって解説がされています。それによると、失恋により服毒自殺しようとしたがかろうじて一命をとりとめ、やがて新しく恋をする。だが失恋するのではという恐怖から彼女を殺害し、殺人罪で断頭台で死刑になり悪魔や魔女と響宴を繰り広げる・・・という内容。この第五楽章はこの「悪魔との響宴」の部分でタイトルは「ワルプルギスの夜の夢」。その狂気じみた激しい曲調はまさに『シャイニング』にぴったりですね。

【関連動画】キューブリックが『2001年宇宙の旅』でアカデミー賞特殊視覚効果賞を受賞した際の動画

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   キューブリックが『2001年宇宙の旅』で第41回(1968年度)アカデミー賞</a>特殊視覚効果賞を受賞した際の動画です。プレゼンターはバート・ランカスターとディアハン・キャロルです。なんだか盛り上がりに欠けて、投げやりな感じがありありですね。プレゼンターに責任はないですが、それにしてもこんなにもお座なりな授賞式だったとは・・・。  いくら飛行機嫌いのキューブリックとはいえ、作品賞にせめてノミネートだけでもされていたらハリウッドに赴いていたかもしれませんが、視覚効果賞だけなら行くはずはないですね。アカデミー賞の選考基準の不可解さは、もう完全に揶揄の対象になってしまってます。  当時会場にいたクラークはどんな気持ちでこの受賞を見ていたんでしょう?作品賞にはノミネートさえされず、監督賞と、そして自身がノミネートされていた脚本賞は受賞を逃し、挙げ句の果てに名誉賞(この時はまだメイクアップ賞はなかった)を『猿の惑星』にさらわれてあの一言「アカデミーの審査員は、猿人を本物と思い込んだんだ!」  身内で身内をヨイショするハリウッドの慣例に染まらず、独自路線を突き進んでいたキューブリックにアカデミーは最後まで冷淡でした。それはそれで構いませんが「不可解な選考基準」は修正されぬまま、今日に至っています。いい加減外部からの評価者を受け入れない限り、こういった茶番は繰り返されて行くんでしょうね。

【キューブリック展】SHIFT誌によるLACMAスタンリー・キューブリック展のレポート

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2012年11月からロサンゼルスのLACMAで開催された『スタンリー・キューブリック展』  私たちは、幸いにもロサンゼルス・カウンティ美術館(以下、LACMA)での、スタンリー・キューブリックの多分野に渡る素晴らしい展示の最終週に間に合った。すでにこの展覧会は終了しているが、キューブリックファンには、理由はどうであれ、私がこの展示で経験したことをぜひ紹介したいと思う。 〈中略〉  LACMAによると、8ヶ月の展示期間中243,792名が訪れ、美術館はキュレーション的なミッションとして、シネマという分野を引き続き考えていきたいとしている。展示は、監督の並外れたビジョンと手法、一方で彼の作品が近代の芸術作品として世界的に認識されるにあたって、どのようにその影響が広まっていったのかということにもスポットを当てている。  キューブリックが決して完成させることのなかったプロジェクト「アーリアン・ペーパーズ」や、1969年に製作費と諸々の問題で廃止しなければならず、その後も作られることのなかった「ナポレオン」についての展示室もあった。また、「バリー・リンドン」のキャンドルライトのシーンで有名なカール・ツァィストのレンズのf/0.7とf/0.5についてエキスパートたちの間で白熱した話題など、技術的な展示も見られた。  そしてもう一つ注目すべき点が、様々な宗教団体からキューブリックあてに送られた、タイプライターで打たれた手紙である。「ロリータ」に対する非難や、引き破られた「時計じかけのオレンジ」についての新聞のクリッピングが入っていた。当時、若者が「時計じかけのオレンジ」に魅了され、殺人を犯したり、影響されたギャングが攻撃をしたことで、彼の作品は社会的に認められず “危険な映画” とされてしまったのだ。 〈以下略〉 (引用: SHIFT/2013年9月 )  日本語で読めるキューブリック展のリポート記事がありましたのでご紹介。日本ではあまり話題にならなかったので、こういった記事は助かります。ただ誤記が一カ所、 「2001年宇宙の旅」で使用されたフロント・プロジェクション(静止しているものがあたかも動いているように見せる技術など) これは「フロント・プロジェクション」じゃなく「スリット・スキャン」の事ですね。多分元記事が間違っているんでしょう。  キューブリック展は規模に対しての集客...

【企画作品】パフューム ある人殺しの物語(Perfume: The Story of a Murderer)

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 1985年に出版され、世界中で1500万部を売り上げたと言われているドイツ人作家、パトリック・ジュースキントによるベストセラー小説の映画化。キューブリックも映画化を検討したが実現しなかった。脚本は『2001年宇宙の旅』にアシスタント・ディレクターとして参加していたアンドリュー・バーキンが担当している。紆余曲折を経て、2006年(日本では2007年)にドイツ・フランス・スペイン合作映画として公開された。

【パロディ】『ルールズ・オブ・アトラクション』の予告編

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  2002年公開の映画『ルールズ・オブ・アトラクション』の予告編がまあまあ『時計じかけのオレンジ』の予告編なのでご紹介。  こういった「若者暴走系」の映画には『時計…』のイメージがよく合いますね。これからもこうしてあちこちでパクられていくんでしょう(笑。

【関連動画】ビートルズの映像作品にキューブリックが参加!?

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 この情報ははじめて知りました。ビートルズ唯一のインストルメンタル曲として有名な『フライング』。アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』収録のこの曲、TV映画『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967)で使用された際に使われた映像の一部が『博士の異常な愛情』の空撮の没テイクだったなんて・・・上記の動画を観れば確かにそのように見えます。  何故こんなにも重要な情報が今まで表に出てこなかったのでしょう?経緯を調べてみたところ、『2001年宇宙の旅』のロケーション・スカウト/アシスタント・ディレクターだったアンドリュー・バーキンが、この『マジカル…』にもアシスタント・ディレクターとして参加していたそうです。つまり「飛んでる(フライングな)映像」って事でちゃっかり流用しちゃったんですね。多分キューブリックの許可はとっていたとは思いますが、それにしてもこんな重要な情報が今まで表に出てこなかったとは・・・没テイクとはいえ、ビートルズの映像作品にキューブリック作品おの映像が使われていた訳ですから、もっと世間に知られていても良いような気がしますが。  その当事者のバーキン、後に脚本家・映画監督として成功し、キューブリックが映画化を検討した『ウィーンに燃えて』を1988年に監督しています。また同じく映画化を検討していた『パフューム ある人殺しの物語』には脚本家として参加。女優のジェーン・バーキン<は実の妹で、ショーン・コネリー主演の名作『薔薇の名前』の脚本家としても有名ですね。

【スタッフ】アンドリュー・バーキン(Andrew Birkin)

Andrew Birkin(IMDb)  『2001年宇宙の旅』にロケーション・スカウト/アシスタント・ディレクターしてスターゲート・シークエンスの『海』の空撮や「人類の夜明け」のナミブ砂漠ロケを担当している。その後監督・脚本家として成功し、キューブリックが映画化を検討した『ウィーンに燃えて』(1988)では監督を、『パフューム ある人殺しの物語』(2006)では脚本を担当した。名作『薔薇の名前』では脚本を担当し、出演もしている。女優のジェーン・バーキンは実妹。  アシスタント・ディレクターとして参加したビートルズのTV映画『マジカル・ミステリー・ツアー』では『博士の異常な愛情』のオープニングの空撮部分を流用するのに一役買っている。  1945年12月9日ロンドン出身。

【関連記事】「スティーヴン・キングだけど何か質問ある?」海外掲示板にまさかの巨匠が降臨

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Stephen King(IMDb)  ホラー小説の巨匠スティーヴン・キング氏。彼の作った小説の30作品以上が映画化されてると言い、「ショーシャンクの空に」「スタンド・バイ・ミー」「シャイニング」など、馴染み深い作品も多いかと思います。  そんな彼がなんと、「何でも質問を受け付けるよ」と海外掲示板に登場したことで、大変な盛り上がりを見せていました。  なかでも興味深いやりとりを、抜粋してご紹介します。 Q: もし小説の中から現実の世界に登場人物を連れてこれるなら、誰に会いたいですか? A: アニー・ウィルクスはないな。シャイニングのダニー・トランスだね。 Q: キューブリック監督が映画化した、「シャイニング」と「ショーシャンクの空に」についてどう思いますか。書いたものをうまく展開できていますか A: ショーシャンクは気にいったね。シャイニングについてはそれほどという感じ。飲んだくれてラリった時代を思うと、初期の頃の本はやりなおしたいね。悪いというほどじゃないが、もっとよく出来るという意味で。ちなみにほとんどの仕事はシラフでやっている。 (一部抜粋、全文はリンク先で) (引用: らばQ/2013年06月25日 )  たまたまネットを徘徊していたら見つけたのでご紹介。『シャイング』に関する部分だけの抜粋です。アルコール依存症だった頃に執筆された『シャイニング』をやり直したいだなんて、やっぱりそれだけ思い入れの深い作品なんですね。こういった発言からもキングはジャック・トランスというキャラクターに、著しく自己投影していた事が伺えます。それに一番会ってみたいキャラクターがダニーとは・・・。ダニーは理想とする自分の子供、もしくは自分の理想の少年時代を体現するキャラクターなのかも知れません。  それを映画ではあんな風に「ヒャッハー!!呪われたホテルの一員として帰還できてハッピーだぜ!」なんてストーリーに改変されたら、そりゃ怒りますよね。キューブリックに見込まれたのが運のツキ、この件に関してだけはキングに同情の余地はありますね。

【関連記事】スティーブン・キング原作の映像作品ベスト10&ワースト5

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 2009年に刊行された長編小説「アンダー・ザ・ドーム」のテレビドラマ版がアメリカで高視聴率デビューを飾ったことをうけて、エンターテインメント・ウィークリー誌が人気作家スティーブン・キング原作の映像作品を、ランキング形式で発表した。  第1位に選ばれたのは、中編小説「刑務所のリタ・ヘイワース」をフランク・ダラボン監督が映画化した「ショーシャンクの空に」。スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」、ロブ・ライナー監督が手がけた「ミザリー」と「スタンド・バイ・ミー」、ブライアン・デ・パルマ監督の「キャリー」など、名監督が手がけたキング作品が並んでいる。  同時にワーストも発表されており、不名誉な1位に選ばれたのはトビー・フーパー監督の「マングラー」で、テレビドラマ版「シャイニング」、キングが自らメガホンをとった「地獄のデビル・トラック」などが続いている。  ドラマ版「アンダー・ザ・ドーム」を手がけているのは、コミック作家で「LOST」の脚本を執筆したブライアン・K・ボーン。「ミレニアム」シリーズを手がけたニールス・アルデン・オプレブ監督が第1話の演出を担当している。 ●ベスト10 「ショーシャンクの空に」 「シャイニング」 「ミザリー」 「スタンド・バイ・ミー」 「キャリー」 「ザ・スタンド」 「デッド・ゾーン」 「グリーン・マイル」 「ダーク・ハーフ」 「クジョー」 ●ワースト5 「マングラー」 「シャイニング」(ドラマ版) 「地獄のデビル・トラック」 「ニードフル・シングス」 「スティーブン・キング 痩せゆく男」 (引用: 映画.com ニュース/2013年7月8日 )  なんだかここまで好対照だと「もうやめてあげて」という気になりますね。ベストとワーストの2位が『シャイニング』で占められるなんて・・・。キング本人はこの評価をどう思っているのでしょうか。なんだか可哀想になってきました。

【考察・検証】キューブリックは何故「上映サイズはヨーロッパビスタ、音声はモノラル」にこだわったか?

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アメリカンビスタとヨーロッパビスタの比較。数字以上に印象が違い、ヨーロッパビスタの方が視野に全画面が収まりやすいのが分かる  キューブリックは『2001年宇宙の旅』や『博士の異常な愛情』など、意図を持った特別なアスペクト比でない限りは、上映サイズはヨーロッパビスタを基準と考えていたようです。では何故キューブリックはヨーロッパビスタにこだわり、アメリカンビスタを嫌ったか、まずはその理由を考察したいと思います。  現在は世界的にアメリカンビスタが主流になり、ヨーロッパビスタは廃れつつあります。その理由は一にも二にも視覚的なインパクトにあると考えます。とにかく視野から溢れるくらいの映像で観客を圧倒しようとするなら、よりワイドである方が有利になります。上映される映画もインパクトある大迫力CGで押しまくるハリウッド映画ばかり。当然アメリカンビスタを備えた映画館ばかりになってしまいます。(日本も例外ではありません)  一方のヨーロッパビスタはワイドとはいえアメリカンビスタまで極端でなく、画面の隅々まで注意が行き届きます。芸術性の高い映画を数多くリリースしているフランスにヨーロッパビスタが多いのも納得がいきます。  キューブリック作品の特徴と言えば当然後者になります。キューブリックはとにかくディテールにこだわる監督です。キューブリックがアメリカンビスタを嫌い、ヨーロッパビスタを好んだのは当然の事かと思います。ただ残念な事に、ハリウッド映画が世界的に隆盛を誇るようになると、ヨーロッパビスタで上映できる映画館は減少していきました。さすがのキューブリックもその現実には抗えなかったのでしょう、『シャイニング』からはアメリカンビスタでの上映を考慮せざるを得なかったようです。  次に音声はモノラルにこだわった理由を考察します。実はこれは考察するまでもなく、 レオン・ヴィタリがインタビュー でその理由を明確に答えています。曰く「300もの英国の映画館をリサーチした結果、音響設備が場所によってかなり異なるため、悪い音響設備でステレオで聴くぐらいならモノラルの方が良い」「悪いステレオより良いモノラルだ、と考えていた」だそうです。非常にシンプルで明快な話です。この話で重要なのはキューブリックはまず第一に映画館での上映をベストコンディションで、と考えていました。『2001年…』の音声がステレオのなのは...

【DVD/BD】『バリー・リンドン』BDのアスペクト比問題を検証する(追加情報)

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 『バリー・リンドン』BDのアマゾンのレビューを見ていたら、BDのアスペクト比問題でワーナーに問い合わせた方がいらっしゃいましたのでご紹介いたします。 2013年8月8日付けのUrotaさんのレビュー です。  ・・・不幸にも予想が当たってしまいました。どうしてこんな杜撰な事が起こってしまったのでしょうか?とても虚しい気持ちでいっぱいです。もうBDの高画質でキューブリックの指示通りのアスペクト比で『バリー…』を観る事ができないなんて残念でなりません。  でも、まだ希望は捨てていません。オリジナルネガが見つかるかもしれないですし、DVDから高精細にアプコンできる技術が開発されるかもしれません。現にPhotoshopの最新バージョンではピクセルの補完技術が格段に進化しています。ワーナーには責任をとってもらって、DVDの一コマ一コマ全てをフォトショで拡大し、BD化して欲しいくらいです。  しかしこうなると、スタンリー・キューブリック・アーカイブスが公表しているオリジナル(撮影時)アスペクト比の1:1.77という数字が虚偽だという事になってしまいます。つまり、1:1.58のオリジナルネガ紛失の事実を隠蔽するために、現存しているアンサープリントのアスペクト比1:1.77がオリジナルであると主張しているのではないかという事です。  もしそうだとすると、かわいそうなのはレオン・ヴィタリです。推測ですが、彼はネガ紛失の事実を知りつつもワーナーからの圧力で、それを隠蔽しなればならなかったのではないでしょうか。そのため、 BD発売時のインタビュー では1:1.77を主張しなければならない立場に追い込まれてしまい、DVD発売時との発言の矛盾を突かれ、コアなファンからは嘘つき呼ばわりされてしまっています。  ワーナーとスタンリー・キューブリック・アーカイブスにはきちっと事実を公表する義務があると思います。誠意ある対応を望みます。  最後にワーナーに問い合わせていただき、レビューを書いてくださいましたUrotaさんに、この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当に貴重な情報をありがとうございました。 追記:2017年10月にやっと正しいアスペクト比「1:1.66」でクライテリオン版BDがリリースされました。詳しくは こちら 。

【関連記事】ジャック・ニコルソンの広報が引退否定!記憶障害と痴ほう症もなし

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 オスカー俳優のジャック・ニコルソンが、痴ほう症や記憶障害のために役者を引退すると報じられたが、広報が引退説を否定した。  Radaronline.comやスター紙などが、「76歳のジャックは、以前のように脚本が覚えられないんです。記憶障害や痴ほう症に悩まされており、密かに役者を引退しました」と報じたもの。  しかし、元米NBCテレビのアンカーウーマンで、ジャックの親友でもある、アーノルド・シュワルツェネッガーと離婚調停中のマリア・シュライヴァーは、「彼が、記憶障害や痴ほう症に悩んでいる様子は見受けられないし、引退の話は聞いてない」と米テレビE!にコメント。  その後、NBCテレビがジャックの広報に問い合わせた情報として、「現在もよい脚本があれば、映画への出演意欲は変わっておらず、痴ほう症も記憶障害もない」とのコメントを明らかにし、引退報道など、すべてがでたらめな情報だったことを明かしている。  『カッコーの巣の上で』(75)でアカデミー賞主演男優賞を受賞しているジャックは、その後は10年ごとに計12回同賞にノミネートされており、『愛と追憶の日々』(83)で同助演男優賞、『恋愛小説家』(97)では同主演男優賞と、計3回の受賞を果たしている名優だが、『幸せの始まりは』(10)以降、映画には出演していなかったことも、誤報道につながったようだ。  NBAロサンゼルス・レイカーズの大ファンで、試合を観戦する姿が頻繁に報じられているジャックだが、今年2月に行われた第85回アカデミー賞作品賞のプレゼンターを務め、楽屋裏で主演女優賞を受賞したジェニファー・ローレンスに、「昔の彼女に似てるんだ」などと口説く様子などを見ても、とても加齢による脳の衰えは見受けられなかった。【NY在住/JUNKO】 (引用: MovieWalker/ 2013年9月7日 )   先日こんな記事 が出ていましたが、やっぱりデマでしたか・・・どうせそんな事だろうとは思ってましたけどね。

【DVD/BD】『恐怖と欲望』日本版DVD&BD発売決定

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恐怖と欲望 HDマスター [DVD] 恐怖と欲望 Blu-ray  『恐怖と欲望』日本版DVD&BDの発売が2013年11月22日に決定いたしました。現在アマゾンでDVDとBDの予約を受付中です。  北米版には『恐怖…』の製作資金の穴埋めに監督したと言われているカラー・ドキュメンタリー『海の旅人たち』が特典映像として入っていましたが、日本版ではどうなるのか気になるところです。まあ、 こちら で観る事は出来るんですが・・・。でも、せっかくなら字幕入りでリリースして欲しいですしね。

【関連記事】名優ジャック・ニコルソンに引退報道!原因は記憶障害?

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 映画『シャイニング 』『イージー・ライダー』などで知られる俳優のジャック・ニコルソンが、76歳にして役者業から引退したと報じられた。  50年以上のキャリアを誇る名優が、公式声明もなしに引退したとRadarOnline.comが報じている。ハリウッドの業界関係者は同サイトに「ジャックは引退しました。ファンファーレもなしにね。理由は単純で、記憶障害です。率直に言って、ジャックは記憶力に問題を抱えています。自分の番がまわってきても、セリフが出てこないんです。彼に以前のような記憶力はありません」と語ったという。  ジャックはその役者人生において、アカデミー賞に12回ノミネートされ、『カッコーの巣の上で』『恋愛小説家』で主演男優賞、『愛と追憶の日々』で助演男優賞を獲得。また1989年公開の『バットマン』では、悪役ジョーカーを演じて強烈な印象を残し、「特にジョーカー役でのパフォーマスを誇りに思っている。一種のポップアートだと考えているよ」と語っている。  現在のところジャックの役者としての最後の出演作は、リース・ウィザースプーンやオーウェン・ウィルソンが出演した『幸せの始まりは』となる。(BANG Media International) (引用: シネマトゥデイ映画ニュース/2013年9月5日 )  生前、キューブリックと親交があった数少ない俳優のひとり、ジャック・ニコルソンが引退との一報がありました。この記事が事実なら、どうして記憶障害という現場に重要な問題を引き起こす病気の情報が今まで噂にならなかったのか不思議な気がしますが・・・本人の直接のコメントを待ちたいと思います。

【考察・検証】キューブリック作品内のミスを弁護する

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『2001年宇宙の旅』の月面シークエンスでは、地球の欠け方が右だったり左だったりしている。このミスは公開当時知られていなくて、ビデオが普及してから一般に知られるようになった  映画製作にはミスはつきものです。しかしキューブリックは一般的に完全主義者として知られ、ミスを許さない厳しい態度で映画製作に臨んだとされています。実際、撮影前のプリ・プロダクションには1年以上と長い期間を設けるのが常でした。そんなキューブリックでもミスはあるもので、しかも上記のような「こんな単純なミスを見逃すなんて」というものもいくつかあります。  ただ、ここで忘れてはならないのが製作当時の映画の鑑賞環境についてです。『シャイニング』以前は作品は映画館か画質の悪いブラウン管のTV放映でしか鑑賞する方法がなく、しかも一度上映がスタートしてしまえば、一時停止やリピートなど不可能な状況でした。現在のDVDやBDのように家庭で高画質の映像をいくらでも一時停止したり、リピートしたりして鑑賞する状況を全く想定していなかったのです。ミスを許容するか撮影をやり直すかの判断は、その時代の作品の鑑賞環境に多いに影響されます。つまり「この程度のミスならお金をかけて撮り直さなくても、観客は気づかないであろうから大丈夫だろう」という判断基準が、現在よりもかなり緩かった事が予想されます。  そういった時代背景を全く考慮せず、ビデオから事細かにアラを探し出し「完全主義者のキューブリックにあるまじきミス」とあげつらうのは、単なる知識不足か悪意があるとしか思えません。ビデオが一般家庭に普及し、映画を家庭内で鑑賞する方法が常態化したのは1980年代以降です。キューブリック作品に当てはめれば『フルメタル・ジャケット』と『アイズ ワイド シャット』がそれに当たります。この2作品についてはキューブリックはビデオで鑑賞されるのを考慮に入れた判断をしていたと思います。  ただ『シャイニング』以前の作品は、そういった状況ではありませんでした。この当たり前の事実を無視をし、事細かなミスを指摘し批判し、悦に入る輩が多いのには閉口してしまいます。キューブリック作品ミスを見つけるのは構いませんが、それを論評する際、その作品が創られた時代背景を是非とも考慮に入れていただきたいものです。  尚、キューブリックはミスに気づいても、そのテイクが良ければミスを...