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【機材】ポラロイド パスファインダー 110A(Polaroid Pathfinder 110A)

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ライフ誌の取材で『2001年宇宙の旅』のセットでポラロイドカメラを使ってみせるキューブリック  キューブリックが撮影時、ピントや照明の確認などで愛用したポラロイドカメラ、パスファインダー110A。フィルムはロール仕様なので、現在入手してもパックフィルム仕様に改造しない限りそのままでは使えないそうです。ローライもそうですが、こういったアナログ機器はその内リバイバルが来そうな感じですね。

【パロディ】フルメタル・ディ●ニー

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 久々に大爆笑!!これは完成度が高いです。一応説明しますと、ハートマン軍曹がドナルドダック、ジョーカーがグーフィー、カウボーイがプルート、そして微笑みデブは・・・これは動画で確認してください(笑。

【ロケーション】ティンバーライン・ロッジ (Timberline Lodge)

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 『シャイニング』のオーバールック・ホテルの外観に使用されたオレゴン州のフット山麓にあるホテル。実はロケだったのはオープニング・シークエンスとハロランが雪上車でホテルに近づくシーン、それに徐々に雪に包まれてゆく遠景の映像だけで、あとは全てイギリスのエルスツリー・スタジオの敷地内に セットが建てられました。  その雪上車のシークエンスでは、詳細な指示が第二班の撮影班に指示されていました。キューブリックの厳しい要求に従っていたスタッフはさぞかし大変だったろうと思います。  ホテル側はキューブリックに「宿泊客が怖がって(原作の)217号室に泊まりたがらなくなるので、実在しない237号室に部屋番号を変更して欲しい」と要請し、キューブリックはそれを受け入れました。しかし公式ウェブサイトの『シャイニング』紹介ページによると「不思議で、またちょっと皮肉な事に217号室は他のどの部屋よりもしばしばリクエストされます」との事です。  内装はカリフォルニアのヨセミテ国立公園内にあるアワニー・ホテルを参考に全てセットが組まれました。『シャイニング』気分を味わいたいのならこちらがおすすめです。

【撮影・技術】スニーク・プレビュー(Sneak Preview)

 一般的には「ごく限られた人たちだけに向けた試写会」の意味で使われていますが、厳密には「極秘試写会」という意味だそうで、「映画の題名、内容、監督、出演者などを一切知らせず行う試写会のこと」だそうです。  ここでは前者の意味として使用します。キューブリックはこのスニーク・プレビューを行った後、更に編集を行うことがよくありました。『博士の異常な愛情』ではパイ投げシークエンス</a>をまるまるカットしましたが、有名なのは『2001年宇宙の旅』の件です。ニューヨークでの試写に向かう客船内でも編集作業をし、試写後さらに編集をして月面シーンや船内活動シーンなど、約20分ほどカットしています。また『シャイニング』では全米公開後5日ほどして病院のシークエンスなどをカットしています。  『アイズ ワイド シャット』では1999年3月2日、ワーナーのテリー・セメル、ロバート・ディリー、トムとニコールに向けてスニーク・プレビューされましたが、その5日後に亡くなってしまいました。つまり恒例の試写後の更なる編集はしていないと思いますので厳密には『アイズ…』は未完成のまま公開、という事になります。  キューブリックはこのスニーク・プレビュー後の編集について 「私はいつもできあがった映画を、初めて見るかのように見ようとしている。映画を一人で、または観客と共に、数週間試写をする。この方法でなければ、正しい長さを決める事ができない」(引用:『イメージフォーラム・キューブリック』) と語っています。

【交友録】テリー・セメル(Terry Semel)

 キューブリックに全幅の信頼を置いていた元ワーナーブラザースのCEO。その後2001年4月に米Yahoo!のCEOに就任しましたが、ネット上では「米ヤフーを凋落させた元凶」としてすこぶる評判が悪いです。でもキューブリックファンにとっては「キューブリックに好きに映画を撮らせてくれたいい人」という評価が決定的になっています。  もちろんキューブリックの興行的価値を熟知した上での、経営者的判断に他ならないのですが、当のキューブリックはそのセメルに対して 「電話してこっち(イギリス)に来てもらう。どうなるかというと、やつは大急ぎでこっちに飛んでくる。それでロンドンにホテルをとってやって24時間くらいは電話もしないで放っておく。そうすると、やつは体を休めて元気になると同時に〈中略〉話を聞きたくてうずうずしてくる。次にどうするかというと、迎えの車を出してこの家に彼を連れて来させ、椅子を勧めて、脚本を手渡して読んでくれと言う。そして、これが今度私が撮りたいと思っている映画だと告げる。やつはどうすると思う?わざわざイギリスまでやって来て、私の自宅で私の目の前に座っているんだ。どうしょうもないってわけさ」(引用:『アイズ・ワイド・オープン』)  とラファエルに対してその策略家ぶりを披露しています。まあこれはキューブリックなりの照れの裏返しのような気がします。ワーナーには多大な恩義を感じている旨の発言はありましたし。キューブリックは自分を信頼してくれた人に対しては最大限恩義を尽くす義理堅いところがあったようです。そのかわり自分を裏切った人間に対しては徹底的に辛辣でしたが。  1943年2月24日生まれ、アメリカ・ニューヨークのブルックリン出身。

【関連動画】1980年にイギリスで放映された『シャイニング』のTVスポット

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 けっこう未見のアウトテイクが混ざっていて興味深いTVスポットCMです。当然ですが、これはキューブリックが編集したものでしょうね。こういったアウトテイクを所有しているのはキューブリック以外にありえませんから。キューブリックは最終的に形になったフィルム以外、セットだろうが未使用フィルムだろうが全て破棄してしまいますので、そういう意味では非常に貴重な映像になります。  上映館での予告編は「血のエレベーター」だったのですが、TV用にはある程度ネタばらししても視聴者の興味を引き、興行成績につなげたかったのでしょうか。かなり重要なシーンがチョイスされていますね。  高解像度版は以下をどうぞ。使用カットが若干異なっています。骸骨パーティーのシーンがあることから北米用のTVスポットですね。

【プロップ】アドラー・ユニバーサル39 タイプライター(Adler Universal 39)

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タイプライターの初登場時は薄いベージュ色をしている このシーンでは濃いグレーに塗り替えられている 『メイキング・ザ・シャイニング』を編集中のヴィヴィアンと撮影に使用されたタイプライター。場所はおそらく自宅ではないかと思われる  あまり指摘されていませんが、実は作品内でタイプライターの色が淡いベージュ色から濃いグレーに変わっています。これはキューブリックが塗り直しの指示をしたそうで、担当した美術部門のロン・パンターによると「おそらく他との色調を合わせようとしたからではないか」との事です。(個人的にはタイプライターの紙が薄い黄色なので、本体の色と同化するのを避けたかったのではないか、と推察しています)  確かにタイプライターが初めて画面に登場するシーンと、ウェンディがジャックの様子を見に来た時とは色が若干違うようです。その後のジャックが悪夢にうなされるシーンや、「All work and no play・・・」を発見するシーンでははっきりと色が濃くなっているのが分かります。また、初登場時のシーンではロゴの横にシールの跡のようなものがありますが、後のシーンではそれがなくなっています。塗り直した際に剥がしたのだと思われます。  撮影に使われた現物はその後、三女のヴィヴィアンが使用していたようですが、ヴィヴィアンは『アイズ…』の頃にアメリカに渡ってしまったので現在の所在は不明です。残念ながら『スタンリー・キューブリック展』に展示中の物は同機種の別物、という事になります。塗り直した跡もないですし、色も違いますのでそれは歴然としていますね。

【関連動画】3DソフトのRealFlow 4 と Lightwave 9.6 で再現した「血のエレベーター」

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 少し血の色がくすみ過ぎな印象もありますが、なかなかの再現度です。最初サムネールを見た時はオリジナルの予告編かと思いました。血が流れ出すまではCGか否か少し判断に迷うほどです。  このRealFlowというソフト、あらゆる液体をシミュレートする専門のソフトだそうですが、CGで一番表現が難しいとされている液体をパソコンレベルでここまで再現できる時代に来ているんですね・・・。この調子で行けば近い将来、オリジナルと見分けがつかなくなるかも知れません。すごい時代になったものです。

【愛機】IBM XT

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 1984年1月にIBM XTと写真に収まるキューブリックです。詳細な型番まではわかりませんが、1984年といえば丁度『フルメタル・ジャケット』を製作中の頃、まだWindowsは存在していませんでした。こんなに早くからPCを導入していたのですね。妻であるクリスティアーヌによると、キューブリックはずっとコンピュータが一般化するのを待ちわびていて 「パーソナル・コンピュータの登場は彼が生まれてこのかたずうっと登場を待ち望んでいたものが実現したようなもの」(引用:『写真で見るその人生』) だったそうです。  こういった記念写真を残しているところを見ると、キューブリックにとって初パソコンだったんでしょうね。プリンターもありますし当時総額いくらくらいだったのでしょうか?どこかしら誇らしげなキューブリックがとても微笑ましいです。撮影場所は「セント・オールバンズの近くの自宅」とありますので、死去するまで住んでいたハートフォードシャーの邸宅だと思われます。  その後どういうPC遍歴を辿ったかは不明ですが、フレデリック・ラファエルの『アイズ・ワイド・オープン』によると「シフトを押しながらF8を押す。そうするとメニューが出てくる・・・」などとラファエルに指示していた所を見ると、最期までPC+Windowsだったようです。機種は『2001年…』で多大な協力をしてくれたIBMだったと思いたいですね。

【名曲】マスケッド・ボール(Masked Ball)

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 イギリス出身の女流ビオラニスト、ジョスリン・プークによる『マスケッド・ボール』、つまり『仮面舞踏会』というタイトルのこの曲、『アイズ ワイド シャット』で例の怪しげな儀式のBGMでナイチンゲールが演奏しているように使用されていますが、バックには意味不明な言語が流れています。これは聖書のヨハネ13、34章をルーマニア語を逆から詠唱した物だそうです。  まあ、また陰謀論者がいろいろ難癖をつけてきそうではありますが、これは純粋に劇伴音楽と考えてよさそうですね。キューブリックは『アイズ…』では具体的な宗教色、とくにユダヤ教を想起させないように腐心しています。そこで具体的な宗教を想起されにくい、意味不明言語と混沌としたメロディのこの楽曲を使用したのではないでしょうか。  アルバム『Flood』(1999)にはリミックス・ロング・バージョン収録です。このアルバムの『アイズ…』使用曲では他に『ミグレーション』がリミックスで収録されています。この曲は前作『Deluge』(1997)で既発表済で、こういった事実を繋ぎ合わせると『ミグレーション』を気に入ったキューブリックがプークに映画での楽曲使用をオファーし、プークは『アイズ…』用に『ナヴァル・オフィサー』、『ザ・ドリーム』、『マスケッド・ボール』を書き下ろし提供、その内『マスケッド・ボール』を自身のアルバムに再録した、という経緯が想像できます。  プークはその後映画のサントラ関係の仕事が多くなったようです。キューブリックと仕事をするというのはこういう事なんですね。その影響力、絶大です。

【アーティスト】ジョスリン・プーク(Jocelyn Pook)

 『アイズ ワイド シャット』で『ナヴァル・オフィサー』、『ザ・ドリーム』、『マスケッド・ボール』、『ミグレーション』の楽曲提供や楽曲製作を担当した女性ビオラニスト。他の映画参加作は『星に魅せられて』(2002)、『ヴェニスの商人』(2005)、『ハイジ』(2006)、『ローマ、愛の部屋 』(2010)など。  1960年2月14日、イギリス・バーミンガム出身。 

【関連記事】「ハートマン軍曹」リー・アーメイが人生とユーモアを大いに語るインタビュー動画

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 リー・アーメイのインタビュー動画いくつかあるのですが、日本語字幕付きでしかも自身の半生を語っているのでご紹介。『フルメタル…』に触れた部分はありませんが、そのかなりヤンチャな生い立ちと保守的な発言は興味深いです。銃規制論議が喧しい昨今、それを意識して発言しているようにも見受けられます。その是非はともかく、一度でも戦場に命を晒した事がある人に対して他国の、しかも平和ボケした門外漢がとやかく言う事はありません。いつまでも元気に「吠えて」欲しいものです。

【関連書籍】映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで/町山智浩 著

 映画評論家の町山智浩氏による映画解説本。タイトルは『映画の見方がわかる本』だが、中身は関連書籍やインタビュー、メイキングなどの既存情報の繋ぎ合わせであることに注意したい。キューブリック作品に関して言えば『2001年宇宙の旅』についてはキューブリック自身がプロットをインタビューで明かしているし、『時計じかけのオレンジ』についてもよく知られた情報ばかり。ファンなら既知の情報が多いので特に入手の必要はないだろう。  記載されている情報は各作品の裏話や制作エピソードの紹介なので、正確にこの本のタイトルを記するとすれば『あなたの知らない名作映画のウラ情報』といったものになると考えられるが、あえてこういったタイトルを採用したのは、出版不況が叫ばれ始めた2000年代初頭に、なんとしてでも本を売らんがためなのだろう。その当時から比べても現在の出版界の現状は暗澹たるもので、シネコンが全国的に普及した現在は、映画を取り巻く状況も「鑑賞」から「消費」へと劣化しているように感じる。そんな時代に「映画を深く知る」という「見方」をもたらせてくれる本書は、映画初心者の最適なガイドラインの書として一定の評価が可能になってきている。  そういうニーズもあってか、古本としては割高な金額で取引されているようだ。古本にその値段はちょっと・・・と感じるようであれば図書館でもよく見かける本なので一度手に取ってみて、映画を「消費」するのではなく「鑑賞」するきっかけとして一読をおすすめしたい。 2016年12月22日:レビュー修正・評価変更  

【ブログ記事】『2001年宇宙の旅』のハイクオリティ・アイコン

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  あまり実用性は感じないですがクオリティが高かったのでご紹介。『2001年…』のアイコン集ですがそのチョイスがかなりマニアックです。HALの眼やスペース・ポッド、ムーンバス、クラビウス基地、ボーマンのヘルメットあたりまでは理解できますが、AE-35ユニットや、ロジック・メモリー・センターの扉とその鍵、無重力トイレの注意書きに、TMA-1の書類に「ハムはあるかな?ハム、ハム・・・」で有名なサンドイッチまで(笑。  ページ左側から各OSに合わせてダウンロードし、ご使用ください。さて私は・・・RMCの鍵アイコンにナニでアレなファイルでも入れときますかね。  ダウンロードは こちら からどうぞ。

【プロップ】ジンチェア(Djinn Chair)

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 『2001年宇宙の旅』宇宙ステーションV(ファイヴ)内、ヒルトンホテルのロビーに設置されていた赤いイス、それがジンチェアです。デザインしたのはフランス人のデザイナー、オリビエ・ムルグ。1939年生まれで、フランスのインテリア・メーカーのエアボーン・インターナショナルに在籍中にこのジンチェアを製作したそうです。1965年だったそうですから、キューブリックまさに当時最先端の家具を採用したんですね。キューブリックが『2001年…』のセットや模型のほとんどは破棄(一部は現存している)してしまっていますので、キューブリック展に展示されているのは多分レプリカでしょう。  このジンチェア、家具好きの間ではいわゆるミッドセンチュリー系として知られていますが、日本でミッドセンチュリーといえばイームズ・チェアの方が一般的で、レプリカでもを扱っている店はあまりないようです。どうしても座ってみたい方は、家族サービスと称してラスクで有名な ガトーフェスタ ハラダの新本館シャトー・デュ・ボヌール へ訪れてみてはいかがでしょうか?。嫁さんと子供が美味しいラスクを選んでいる間にニンマリしながら座り心地を楽しむ・・・うーん、一石二鳥ですね。

【撮影・技術】クリティカル・リハーサル・モーメント(Critical Rehearse Moments)

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「CRM」を求め何日間も悩み続け、撮影が止まるということも珍しくない  キューブリックが撮影の際、アドリブを促したり、何度もテイクを重ねる理由はクリティカル・リハーサル・モーメント(リハーサルの決定的瞬間)を求めてのことです。つまり素晴らしくクリエイティブなアイデアを得る瞬間の事です。キューブリックは『時計じかけのオレンジ』でアレックスが『雨に歌えば』を歌いながら暴力を振るうというアイデアや『シャイニング』におけるジャック・ニコルソンの演技を例に挙げています。『アイズ ワイド シャット』でもキッドマンはキューブリックにリハーサル中「我々は何かを掴んだね」と言われたと証言しています。  ちなみに『クリティカル・リハーサル・モーメント』を略すと『CRM』となり、『博士の異常な愛情』に登場した暗号封鎖回路『CRM114』と同じになります。キューブリックがいつ頃からこの『クリティカル・リハーサル・モーメント』の用語を使い始めたかは分かりませんが、ダブルミーミングが好きなキューブリックがこの偶然の一致を気に入っていたのは確かで『2001年宇宙の旅』ではスペースポッドの形式番号として(作品内では確認できず)、『時計…』では血清の型番号として、『アイズ…』では遺体安置所がC棟1階14号室として登場(作品内では確認できず)しています。また、他の映画監督にも影響を与えていて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニング・シークエンスは特に有名です。

【関連記事】すばらしすぎる!!!クリス・ハドフィールドが国際宇宙ステーションで録音したデビッドボーイの「Space Oddity」が公開!!

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 アップされてから数日しかまだ経ってないのに、すでにYouTubeでは400万ビュー近くいってます!!やばいです!!デビットボーイを知らないあなたでもこのビデオは必見!!このデビットボーイの「Space Oddity」はインターナショナルスペースステーションChris Hadfieldによって撮影されました。遠い宇宙からこんにちわです。 (引用: kokusai/2013年5月14日 )  デビッド・ボウイの名曲『スペース・オディティ』が『2001年宇宙の旅』にインスパイアされているのは有名な話ですが、本物の宇宙飛行士が実際に宇宙でこの曲を歌い、演奏し、レコーディングする日が来るなんて・・・。本当に素晴らしいです。どうせ素人の歌唱だろ、と侮ってはいけません。決して上手くはないのですが、非常に丁寧に、また繊細に歌い上げ、とても素晴らしいPVに仕上がっています。

【関連記事】リック・スプリングフィールド、キューブリックを語る

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 「そう、『時計じかけのオレンジ』と『2001年宇宙の旅』はどの映画より多く観ています」「それは完璧な映画です。私はキューブリックの大ファンです」「私の会計士がクライアントの財産保全にイギリスに行かなければならない、と言ってきたんです」「キューブリックの財産保全のためにイギリスに定住しなければならないと」「私は「ちきしょう!なんで今までそれを言ってくれなかったんだ!」と言いました」(一部抜粋:管理人訳※誤訳はご了承ください) (引用: Indiewire interview/2013年5月15日 )  ある特定の年代の方以外には全く需要のない記事ですが、思わず懐かしく、また意外な人がキューブリックを語っているのでご紹介。  このリック・スプリングフィールド、80年代前半には大ヒットを連発、俳優でもあり、ルックスも良いことからミーハーファンが大量発生し、渋くも甘い歌声といかにも当時の産業ロック的なサウンドにうんざりした硬派なロックファンにはそっぽを向かれ、その硬派なファンに支持されていたブルース・スプリングスティーンと名前が似ていてるというだけで勘違いされては、とばっちりで毛嫌いされていたという、まあ要するに当時のアイドル・ロッカーの代表格みたいなものです。  そんなリックが『時計…』や『2001年…』を「どの映画よりも多く観た」「私はキューブリックの大ファンだ」と語るインタビュー記事を目にすることになろうとは・・・。両者の接点なんてまるで想像できなかっただけに意外すぎます。  それに、上記のPVはデヴィッド・フィンチャーが監督していたとは知りませんでした。まだ『セブン』や『ファイトクラブ』で有名になる前で、今観ると映像も曲もかなりキツいです。そういえばフィンチャーもキューブリック・フォロワーですね。そう考えると両者はまんざら遠くはないのかも知れません。

【関連動画】1949年、キューブリックがシカゴで撮影した写真のスライドショー

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 キューブリックがシカゴで撮影した写真のアウトテイク集(一部採用写真も)がスライドショーになってYouTubeにありましたのでご紹介。タイトルは『シカゴ~街の陰影』です。  ほとんどが35mmですが、トランペットを吹く男性の写真とビッフェの写真は明らかに画像の鮮明さが他と違いますしヤラセ臭いのでローライフレックスで撮った取材写真ではないでしょうか。はっきりと6×6とわかるのは赤ちゃんとボディービルダーの写真ですね。前にインタビューで「赤ちゃんと運動選手はどちらが力が強いかとかくだらない写真ばかり撮らされた」と言っていたのはこの写真の事かも知れません。取材写真は基本的にローライフレックスを使っているようです。  35mmで撮っているのはドキュメンタリー写真ですから機動性のある小型カメラを使ったのでしょう。ライカIIIだと思いますが、確証はないです。フィルムはコダックのスーパーXXを使用しているようです。キューブリックはこの時まだ20歳。翌年にはルックを退社してしまうのですからたいした度胸です。  ところで上記の動画や各所の紹介記事には撮影は1949年夏となっていますが、写真集『ドラマ&影:写真1945-1950』によると1949年1月となっています。駅の人々の服装からすると、どうみても冬ですね。もしかしたら冬と夏二回派遣されて両方の写真が混ざっているのかもしれませんが、もしそうだとしても、もうちょっと調べてから記事にして欲しいものです。

【愛機】ライカIII(Leica III)

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セルフポートレート、1940年代  キューブリックが愛用したライカIII、写真集『ドラマ&影:写真1946-1950』が発表されて一気にメジャーになった感のある上記の写真で手にしているのがライカIIIです。  この写真、『ドラマ&影』には1940年代としか表記がありませんでしたので、撮影時期と場所の特定を試みたのですが、『あるコーラスガールの日常生活』のアウトテイクと思われますので、撮影日時は1949年3月、場所はニューヨークである事が分かります。上記写真は顔全体と両手まで入る大きい鏡の前で撮影していますから、コーラスガールが出演中の待ち時間の楽屋で撮ったのではないでしょうか。最初は宿泊していたホテルで撮ったのかと思いましたが相当大きい鏡ですからね。ただ日にちは違うかも知れません、時計をしていないですから。数日に渡る同じ一連の取材で撮った物とするならば、キューブリック20歳、ニューヨークでの写真という事になります。  でもご存知の通り、キューブリックって同じ格好ばっかりするので有名ですからね・・・。髪型も少し違うような気がします。服装で特定できないのが辛いところです(笑。  ところでキューブリックは35mmではコンタックスも愛用していました。『地下鉄車中での秀作』(1946年)はコンタックスで撮影した事が知られています。しかもレリーズをポケットに隠し、盗み撮りだったみたいです。そのコンタックスですが詳細な型番までは不明ですので、情報が分かれば記事にしたいと思います。

【愛機】コダック・モニター620(Kodak Monitor 620)

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コダック モニター Six-20(写真は当人のものではありません)  キューブリックが16歳の誕生日に父親から贈られた、生涯初めての記念すべき自分専用のカメラ。13歳の誕生日には父親が所有していたスピード・グラフィックを譲られています。キューブリックはこのカメラや35mmをぶらさげ被写体を探しては学校や街を歩き回り、学校のチアガールの撮影ではプリントの裏に「スタンリー・キューブリック撮影」とスタンプを押して被写体になった人に渡していたそうです。それにしても・・・ずいぶんとウザい奴です(笑。  このコダック・モニター620、フィルムは620サイズで6×9cm(ロクキュウ)になりますからスピグラと比べるとコンパクトです。キューブリックは後に「あんなにカメラを安定して持てる人を他に知らない」とカメラマンからも高い評価を得ていますが、その基礎は子供の頃にスピグラを使いこなすことによって身体で憶えたのかも知れません。そして次がこのコダック、そして更にコンパクトなローライへと続くのですが、スピグラが扱えればどうってことないでしょうね。現在でも「カメラを本格的に始めるならまず一眼から」と言われますが、こういう事も関係しているんでしょう。 【ご注意】現在キューブリックが初めて使用したカメラについて、スピード・グラフィックとコダック・モニター620と両方のソースがあるようです。評伝『映画監督スタンリー・キューブリック』によるとグラフレックス(スピード・グラフィック)となっていますが、これは父親所有のものだった事が記されています。一方の1948年10月のカメラ誌の記事には「キューブリックは19歳の誕生日を向かえたばかりだが、丁度3年前に父親からコダック・モニター620を贈られた」とあります。両方のソースを考慮すると、上記のように13歳の誕生日に父親所有のスピード・グラフィックを譲り受け、16歳の誕生日に改めて新品のコダック・モニター620を贈られたのではないか、と判断して記事にいたしました。

【愛機】スピード・グラフィック(Speed Graphic)

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LACMAで開催された『スタンリー・キューブリック展』に展示された本人所有の「スピグラ」  キューブリックが初めて手にした記念すべきカメラ。「父親からのプレゼント」と言われていますが実際は父親所有の物で、当時13歳だったキューブリックに使用許可を与えただけではないかと推察しています。まあキューブリックの事ですから、そんな事はおかまいなしに自分の物として使い倒していたであろう事は容易に想像できます。評伝によると、アパートの階下に住むマーヴィン・トローブと一緒になって写真を撮りまくり、彼の家にあった暗室にしょっちゅう通い詰めるという事態に。そんなキューブリックを見たマーヴィンの伯母に「あの子には自分のアパートがないのかしら」と皮肉まで言われる始末なのでした。  そんなキューブリックに自分のカメラを独占されたお父さん、しょうがないんで3年後の16歳の誕生日には正式にキューブリック専用の物としてコダック・モニター620を贈っています。  さて、このスピードグラフィック(俗にスピグラと呼ぶそう)というカメラ。よくギャング映画などでマスコミがバシャバシャとフラッシュを焚いて写真を撮っているシーンを見ますが、まさにそれになります。以前紹介したローライフレックス・スタンダートより大きい大判カメラと呼ばれるもので、子供が扱うにはとても大変だったろうと思います。フィルムは4×5判(シノゴ)で、デジタル全盛以前はプロ用フィルムとして定番のサイズでした。とにかくフィルムが大きいのでポスターやカレンダー、看板など、大きく引き伸す必要のあった撮影には必ず用いられていました。  難点はフィルムが12枚しか装填できず、1枚撮るごとに感光防止シートを引き抜かなければならなかった点です。昔の人は本当に良く考えてシャッターを切らないとシャッターチャンスを逃していたんですね。「下手な鉄砲(数撃ちゃ当たる)方式」でOKなデジカメとは雲泥の差、シビアな世界です。  現在LACMAで開催中のキューブリック展には実物のスピグラが展示中です。もちろんキューブリックの物ですが、父親の遺品でもあります。大切に取っていたんですね。両親の葬式には出席できなかったキューブリックですが、それなりに想いはあったのでしょうね。 【ご注意】現在キューブリックが初めて使用したカメラについて、スピード・グラフィックとコダック・モニター6...

【機材】ローライフレックス・スタンダート(Rolleiflex Standard)

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ローライフレックス・スタンダートを持ってポーズを決める若き日のキューブリック  キューブリックがルック社のカメラマン時代に愛用していたローライ社製の二眼レフカメラ。フィルムは通常の35mmより大きく6cmあるブローニーで、ブローニーカメラ(中判カメラ)と呼ばれています。フィルムが大きい分画質が良いので、主に風景写真やプロカメラマンなどプロフェッショナル専用というイメージがありますが、愛好家も数多くいて、デジタル全盛の現在でも隠れた人気があります。ファッションカメラマンがファインダーを上から覗き込みながらハンドルでフィルムを廻してシャッターを切るシーンなんかをよく見かけますが、あれがブローニーカメラです。  フィルムは35mm(24×36mm)とは縦横比が異なり、6×4.5cm判、6×6cm判、6×7cm判、6×8cm判、6×9cm判とさまざまありますが、ローライフレックス・スタンダートは6×6(ロクロク)用なのでその名の通り正方形になります。写真集『写真で見るその人生』のP37~43に掲載されているノートリミングでベタ焼きされた正方形の写真は全てこれで撮ったものだと思われます。キューブリックはカメラマン出身なので映画撮影ではスタンダードサイズにこだわった・・・などどいう論を唱える人は、カメラといえば35mmかデジカメしか知らないのでしょう。プロである以上、どんな縦横比のフィルムでもキッチリと構図を決めて撮る事ができます。もちろんキューブリックも、です。当たり前の話ですね。  しかし映画はそうはいきません。上映館や再生装置(TVなど)によって縦横比が大きく変わってしまいます。これにはキューブリックも頭を抱えた事でしょう。なにしろ撮影時には構図を完全に決めていても、再生場所によってそれが崩れてしまうのですから。それへのせめてもの対策はここで記事にしています。  当時キューブリックはこれ以外にもスピード・グラフィックやコダック・モニター620、コンタックス、ライカIIIも愛用していたようです。本人所有のスピード・グラフィックの実物は現在LACMAで開催中のキューブリック展で展示されています。

【考察・検証】キューブリックは何故「撮影はスタンダード、音声はモノラル」にこだわったか?

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 『アイズ ワイド シャット』のDVDには「キューブリックの意図した撮影時のアスペクト比(スタンダード)で表示されています」との表記がある。1999年の時点ではテレビはまだブラウン管が主流だったからだと思われる。なお、BDにはこの表記はなく16:9での表示  書籍『ザ・スタンリー・キューブリック・アーカイブ』に掲載されている撮影アスペクト比の一覧。ただ、『バリー・リンドン』の1.77にはファンの間から疑義の目が向けられている(個人的には1.66ではないか?と判断)。  ステディカムの使用やビデオのモニター使用に代表されるように、撮影方法や制作システムなどでは新しい技術を大胆に取り入れていたキューブリックでしたが、肝心の作品は最期まで「撮影はスタンダード、音声はモノラルが基本」(一部を除く)を貫き通しました。今回はこの件に関して考察したいと思います。  キューブリックが映画製作を始めた1950年代は撮影・上映はスタンダードでモノクロ、音声はモノラルが一般的でした。キューブリックも当然それに倣って映画を作り始めます。ところがその後映画は急速な発展を遂げ、カラー化はもちろん、視覚的にも迫力が増すワイド化の道を進み始めます。しかしその際、全世界共通の上映基準を設けなかったために、あちこちで規格が異なるという混沌とした状況を招いてしまいました。また、音声もステレオからサラウンド、THXなど規格が乱立してしまいます。  さらにテレビの一般家庭への普及が事態をいっそう混乱させます。映画がテレビでオンエアされるようになると、スタンダードサイズであるブラウン管にワイドサイズの映画が収まるはずはありません。今では考えられませんが、当時は無理矢理左右を圧縮して歪みまくった映像や、左右をバッサリとカットするという、制作者の意図をまるで無視した映画が平気でオンエアされていました。当然音声は当時のテレビではモノラルが標準です。  画面の配置やレイアウトに人一倍こだわるキューブリックがこの事態を深く憂慮していただろう事は想像に難くありません。視聴者側がどのような再生装置で作品を鑑賞するかによって全く印象が異なってしまうのですから、製作者が採るべき方法は限られてきてしまいます。すなわち「音響設備の悪いどこの映画館でも、家庭用のテレビでもなるべく同じ印象を持たれるようなフォーマットで映画を作る」とい...

【関連記事】『シャイニング』への愛情溢れるピクサーのリー・アンクリッチ(Pixar’s Lee Unkrich On His Love Of The Shining)

『シャイニング』とピクサーは、自然な組み合わせには思えないかもしれない。しかし、スタジオの主要監督の一人であるリー・アンクリッチ(『トイ・ストーリー2』、『モンスターズ・インク』、『ファインディング・ニモ』の共同監督を務め、『トイ・ストーリー3』の監督)は、素晴らしく詳細なシャイニングブログTheOverlookHotel.comの自称「管理人」でもある。ピクサーの『死者の日』映画に熱心に取り組んでいるにもかかわらず、彼は10月26日に公開される『シャイニング』のドキュメンタリー『ルーム237』に先立ち、『シャイニング』が彼に与えた多大な影響について、Empireに喜んで語ってくれた。 (引用: EMPILE )  『トイ・ストーリー』に『シャイニング』への言及が多いのは、どうやらこの人が元凶のようです。『トイ…』の一作目にシャイニング・カーペットが登場していたのは知っていたのですが、他にもRM237や無線のマイクまであったんですね。細かすぎて気づきませんでした。

【トリビア】罠(The Trap)

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俳優・スタッフ達と記念写真に収まるキューブリックと妻のトーバ・キューブリック  ただいまオーディトリウム渋谷で絶賛上映中のキューブリック処女作『恐怖と欲望』の当初のタイトル。企画時は『恐怖の形(The Shape Of Fear)』と題されていましたが、撮影中は『罠(The Trap)』に変更になりました。しかし『罠』というタイトルの映画は既にいくつかある事を知ったキューブリックが最終的に選んだのがタイトルが『恐怖と欲望』だったいう経緯があります。  こういった小ネタも知って『恐怖…』を観るとまた違った印象を受けるかも。『恐怖…』のどこに「罠」と言える要素があるのか・・・それは劇場でご確認ください。

【キューブリック展】キューブリックのルック社在籍時代の写真展がイタリア・ジェノバで開催中

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 ニュース映像がアップされていたのでご紹介。ルック社在籍時代の写真を集めた展覧会がイタリア・ジェノバのドゥカーレ宮殿で2013年5月1日から8月25日まで開催中です。会場の雰囲気は上記の動画で分かりますが、あまり大きな規模ではないようです。LACMAで開催中のキューブリック展は不可能でも、この規模なら日本での開催も可能な気がします。関係各位には是非検討して頂きたいですね。

【関連記事】最もセクシーなシーンは? 仏誌が選んだホットな映画25

 仏GQ誌が、セクシーシーン満載のホットな映画25を発表した。  特に順位付けはないが、最初に紹介されているのは、昨年死去したシルビア・クリステルさん主演、自由奔放な若妻エマニエルの性生活を描いた「エマニエル夫人」。日本でもヒットし、籐椅子に腰かけた夫人のポスターや主題歌も人気を集めた。  そのほか、「肉体の悪魔(1986)」「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」をはじめ、後に実生活で夫婦となるペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが初共演、激しいラブシーンを繰り広げる「ハモンハモン」など、ヨーロッパ作品が多く並ぶのが特徴だ。また、1946年に公開された白黒映画「ギルダ」などが取り上げられているのも興味深い。  選ばれた25作品は以下の通り。カッコ内は監督名。 「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン) 「トランスフォーマー」(マイケル・ベイ) 「肉体の悪魔(1986)」(マルコ・ベロッキオ) 「薔薇の名前」(ジャン=ジャック・アノー) 「アイズ ワイド シャット」(スタンリー・キューブリック) 「トゥルー・ロマンス」(トニー・スコット) 「私生活のない女」(アンジェイ・ズラウスキー) 「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」(ジャン=ジャック・ベネックス) 「ナインハーフ」(エイドリアン・ライン) 「セックスと嘘とビデオテープ」(スティーブン・ソダーバーグ) 「ハモンハモン」(ビガス・ルナ) 「華麗なる賭け」(ノーマン・ジュイソン) 「氷の微笑」(ポール・バーホーベン) 「地上より永遠に」(フレッド・ジンネマン) 「The Last Mistress」(カトリーヌ・ブレイヤ) 「ギルダ」(チャールズ・ビダー) 「ジャッキー・ブラウン」(クエンティン・タランティーノ) 「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」(セルジュ・ゲンズブール) 「卒業白書」(ポール・ブリックマン) 「ドラキュラ(1992)」(フランシス・フォード・コッポラ) 「Les Galettes de Pont-Aven」(ジョエル・セリア) 「ワイルド・アット・ハート」(デビッド・リンチ) 「ポルノグラフィックな関係」(フレデリック・フォンテーヌ) 「追いつめられて(1987)」(ロジャー・ドナルドソン) 「フラッシュダンス」(エイドリアン・ライン) (引用: 映画.com ニュース/2013年5月4日 )  セクシ...

【トリビア】ギルド劇場(Guild Theater)

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 キューブリック初の劇場用映画『恐怖と欲望』を上映したニューヨークにあった独立系シアター。場所はかの有名なロックフェラーセンターで、ラジオシティーホールの50番街側に入口があり、当時はアール・デコ風な外観と内装でした。  1938年12月2日にオープンし1画面450席、家具はフィンランドのデザイナー、アルヴァ・アールトがデザイン。通路のカーペットはアールデコ様式だったそうです。1999年に閉鎖、現在はファッションブランドのアンソロポロジーが入居しています。ストリートビューで見ると当時のチケットブースがかろうじて入口右側に現存しています。  このギルド劇場で『恐怖…』が初上映されたのは1953年3月31日、ロキシー・シアターでポルノまがいに宣伝され上映されたのが6月12日ですから、この約2ヶ月以上、映画は全く稼がなかったのでしょう。評論家からの評価は悪くなかったそうですが、この厳しい現実・・・キューブリック、前途多難の24歳の船出です。

【関連作品】『死なない脳』(The Brain That Wouldn't Die)

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 ああ、なんという無惨な姿に!『恐怖と欲望』で木に縛りつけられてしまう悲劇のヒロイン、ヴァージニア・リース嬢が約10年後の1962年に出演したB級カルトホラー映画『死なない脳』。あの可憐なヒロインがあわれにもこんな姿になってしまうとは・・・。でもこのB級感がマニア心を強烈にくすぐりますね(笑。  ストーリーは人体実験に取り憑かれている医者が美人助手の恋人を連れて運転中に事故に遭い、彼女の頭だけを持って自分だけ生還。それを再生させ、その頭にくっつける胴体を探しに街へ行くが、肝心の彼女は怒り心頭(まさに「頭」だけに)。同じ境遇の哀れな仲間とともに復讐をする・・・というお話。これかも分かるようにかなりグロいです。  1962年といえばキューブリックはちょうど『ロリータ』の頃。メジャー監督の仲間入りし、これからって時ですね。そのキューブリックのデビュー作『恐怖…』を手伝ったリースはそれをどう思っていたのでしょうか。キューブリックは『恐怖…』を忌み嫌っていたので、彼女の存在は「なかった」ことにしてたでしょうから、そういう意味ではアンラッキーかも知れません。リース自身もそんなに作品には恵まれたとは言えませんが、女優としてはそこそこ活躍できたようではあります。  上記は予告編ですが一部ではカルト的人気があるようで、『美しき生首の禍』のタイトルでDVD化もされています。けっこうキてますよ。

【俳優】ヴァージニア・リース(Virginia Leith)

  『恐怖と欲望』で捕まって木に縛りつけられた少女を演じた。他の出演作は『意外な犯行』(1954)、『白い羽根』(1955)、『恐怖の土曜日』(1955)、『ロケット・パイロット 』(1956)、『宇宙への挑戦』(1956)、『赤い崖 』(1956)、<a href="http://kubrick.ldblog.jp/archives/52026671.html" target="_blank" title="">『死なない脳 』</a>(1962)、『ファースト・ラブ』(1977)、『大津波/コンドミニアムの恐怖』(1980)など。  1932年10月15日アメリカ・オハイオ州出身。1960年に俳優でコメディアンのドナルド・ハロンと結婚するが1968年に離婚。ハロンと前妻との間には『アメリカン・サイコ』の監督メアリー・ハロンがいる。現在生死不明。

【上映情報】「新・午前十時の映画祭」で『2001年宇宙の旅』上映決定!!

 こういう企画があるんですね、初めて知りました。劇場の閑散時を有効利用した良企画で、素晴らしいと思います。『2001年宇宙の旅』の上映スケジュールは このように なっています。週末は混んでそうなので、狙い目は平日。できれば地味な錦糸町がいいけど、無理なら来年の六本木まで我慢するしかないかも知れません。公式サイトは こちら 。

【上映情報】『恐怖と欲望』予告編公開

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 公開中の『恐怖と欲望』ですが、予告編がアップされています。かなりシーンが追加になっていて、前回のティザーより内容が分かりやすくなっています。例の窒息しかけたという霧のシーンもありますね。これだけ観るとカット割など素人臭い危うさはありますが、やはり陰影の使い方や画面構成力は素晴らしい!その点に注目するだけでも大画面で観る価値はありそうです。

【ブログ記事】『恐怖と欲望』公開時のオリジナルポスター

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 本日2013年5月3日からキューブリック幻のデビュー作『恐怖と欲望』が日本で初公開になります。それを記念して当時のオリジナルポスターを転載いたします!!・・・・・えーと、これのどこが戦争映画なんでしょうか?(汗。これではまぎれもなく「ポルノ映画」ですね。キューブリックが封印したがったのも分かるような気がします。キャッチコピーが「閉じ込められた・・・絶望的な男と奇妙な半獣の女!」ですからね。写真も絶妙なトリミングをして軍服だとは分からないようにしてあるし。  しかも、大きく扱われている女性写真は本編のものではないですよね。それにライフ誌からは「でかいの、見つけた!」と煽りコピーまで用意してもらってます。あと下1/3は同時上映の正真正銘のポルノ映画じゃないですか。  当時キューブリックは何を思ってこのポスターを見たんでしょうね。個人的には自分の劇映画が初めて一般公開された喜びよりも、屈辱感や無力感など大いなる挫折を味わったんじゃないかと。その反動がフィルム買い占めによる封印や、次作『非情…』における商業映画指向への方向転換に表れているんじゃないかと想像するのですが。  結局大手の配給会社に軒並み断られたのが全てだったのでしょう。ギルド劇場という独立系で細々と公開されるしかなかった無名の新人の「芸術映画」に人が集まる筈はなく、二束三文で場末のポルノ映画館に転売される・・・キューブリックの大いなる野心とは裏腹な、そんな現実の非情さをこのポスターが如実に示しているのではないでしょうか。

【インスパイア】『ALEX Teaser / Trailer Sci-Fi Action-Film Nikolai Kinski, Werner Daehn, Genta Ismajli』

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 ベルリンの紳士服オーダーメイドブランド『ダンディ・オブ・ザ・グロテスク』が発表した映画の予告編風PV『ALEX Teaser』です。映像中のコスチュームは『ダンディ…』の制作によるものです。「coming soon」となっていますのでファッションブランドとして立ち上げる予定かも知れません。それにしても完成度が半端無く高く、ビジュアルもメチャメチャかっこいいです。このレベルで『時計じかけのオレンジ』をリメイクしたらかなりの人が納得するんじゃないかと思うくらい素晴らしいです。  ただ惜しむらくはアレックスが・・・残念。アレックス役のニコライ・キンスキーは映画監督クラウス・キンスキーの息子、ナスターシャ・キンスキーの兄です。ですので年齢が問題ですね。敵役のヴェルナー・ダーエンはいかにもドイツ人らしい冷徹な感じがはまっています。トム・クルーズ主演の『ワルキューレ』にも出演していました。暴行されそうになって逃げるのはゲンタ・イスマイリです。あの内戦で有名になってしまったコソボ自治区出身の歌手だそうです。  もし続編があるのなら大いに期待したいですね。

【オマージュ】『Immersive Cocoon "2011"』のPV

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 『没入型繭』とでも訳すのでしょうか、360度LEDディスプレイにインタラクティブ・ナビゲーションを実装し、モーションキャプチャで動作をトレースさせ、床下にはサーバを設置、筐体はカーボンファイバー製という没入型技術のコンセプト・モデル『Immersive Cocoon "2011"』プロモーションPVです。  その筐体の黒さとシンプルな形状からこうなったのでしょう、全編が『2001年…』のオマージュになっています。キア・デュリアまで出演とは・・・。『Immersive Cocoon "2011"』自体目新しいアイデアではないですし、既存の技術で十分実現可能でしょうからあまりインパクトはありませんが、このPVの完成度は高いです。しかもポチポチと頼りなくMacのキーボードを叩くデュリアは、今だとメーキャップなしで『2001年…』の老衰シーンを再現できてしまうんですね・・・。デュリアもまさかこの歳になって『2001年…』の再現シーンを演じるとは思ってなかってしょう。  実はこの『2001年…』オマージュPVを撮りたいがためにこの技術コンセプトを思いついたのでは?と思わせるほどよくできています。でも日本だったら『2001年…』ではなく、 武器を否応なく渡されて潜入した星人と戦う事を強要される PVを撮りそうですけど。