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【考察・検証】キューブリックが『2001年宇宙の旅』の美術監督を手塚治虫にオファーしたのは本当か?を検証する

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キューブリックから手塚治虫に届いた手紙の封筒。中身は本人によると「お袋が燃やしてしまった」そうだ  キューブリックから手塚治虫に「『2001年宇宙の旅』の美術監督を担当して欲しい」とのオファーがあり、それを断ったという有名な逸話がありますが、一部ではこれを「手塚治虫のホラ話」とする論調も見られます。今回はこの真偽を主に3つの資料から検証したいと思います。 (1)キューブリックが手塚治虫に当てた手紙の封筒の写真  上記の写真です。これによると差出人のキューブリックの住所は「239 Central Park West New York City」となっています。またニューヨークの郵便局の消印は1965年、石神井郵便局の消印は昭和40年(1965年)1月9日です。もし美術監督の話が「手塚治虫のホラ」であるならば、この封筒は偽造された事になります。 (2)自叙伝『ぼくはマンガ家』(毎日新聞社・1969年)に於ける記述  日本に帰ってしばらくしたら、S・キューブリックと署名した手紙が来た。「博士の異常な愛情」や「スパルタカス」「突撃」などで、ぼくの好きなニューヨーク派の映画監督、スタンリー・キューブリック氏だとわかって、とびあがった。 「わたしは、小さなプロダクションで映画を作っている一製作者であります」と、手紙は謙虚に始まった。「あなたの作られた『アストロ・ボーイ(※鉄腕アトムの英題名)』を見て、NBCにあなたの住所を訊いてお便りするのですが、実は、こんど、わたしは、純粋なSF映画をひとつ作ろうと思っています。それは二十一世紀の月世界を舞台にしたもので、科学的根拠に基づいた、シリアスで、真面目なドラマであります。ついては、あなたにその映画の美術デザインのことで協力を求めたいので、次のわたしのお訊ねにご返事いただければ幸いです。一、あなたは英語ができるのか?二、一年ほどの間、あなたが家族とはなれ、ロンドンのわれわれのスタッフといっしょに生活してもらえるか?以上、なるべく早くご返事を賜れば幸甚」 というていねいな文面で、これはぼく個人にとっては、またとないチャンスであった。  だが、残念なことに、すでに「鉄腕アトム」は製作を進行し、虫プロダクションを一年も留守にすることは、到底できない。 「非常によいお話で興味を持ったが、なにしろうちには、食わせなければならない人間が二百六十名...

【台詞・言葉】白人の呪い・白人の責務(White Man's Burden)

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   『シャイニング』のバーシーンでジャックがロイドにバーボン・オン・ザ・ロックを作ってもらいながら呟く台詞ですが、訳では「酒は白人の呪いだ、インディアンは知らん」となっています。しかし、調べてみるとイギリスの作家で詩人のラドヤード・キップリングが1899年に詠んだ詩『White Man's Burden(白人の責務)』を指しているようです。以下はその詩と訳になります。 The White Man's Burden Take up the White man's burden -- Send forth the best ye breed -- Go bind your sons to exile To serve your captives' need; To wait in heavy harness On fluttered folk and wild -- Your new-caught, sullen peoples, Half devil and half child. Take up the White Man's burden -- In patience to abide, To veil the threat of terror And check the show of pride; By open speech and simple, An hundred times mad plain. To seek another's profit, And work another's gain. Take up the White Man's burden -- The savage wars of peace -- Fill full the mouth of Famine And bid the sickness cease; And when your goal is nearest The end for others sought, Watch Sloth and heathen Folly Bring all your hope to nought. Take up the White Man's burden -- No tawdry rule of kings,...

【ブログ記事】ソール・バスが描いた『シャイニング』のポスターのボツ案

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  キューブリックはかの有名なタイトルデザイナー、ソール・バスに『シャイニング』のポスター製作を依頼しましたが、そのボツ案をキューブリックのコメントと共に紹介します。 まるでSF映画みたいだ。ロゴが読みづらい 手と三輪車というのは見当違いだ。ロゴも小さすぎるし、インクがなくなったように見える 迷路と登場人物はやり過ぎ。迷路を出すべきだとは思わない アートワークが好きじゃない。ホテルが変だ。アートワークが広がり過ぎだ。コンパクトで十分。ロゴに点を使うのは好きじゃない。小さすぎるし読みづらい  キューブリックの悪筆をなんとか解読してみましたが、だいたいこんな事を書いているみたいです。どれももっともな指摘ばかりで納得できるのですが、ソール・バスもなぜこんなクオリティの低いアイデアばかり提出したのか謎です。キューブリックはダメ出しを繰り返し、結局300案以上をバスに提出させたそうです。  1枚目は完全に『未知との遭遇』を意識してのコメントでしょうね。2枚目はどこから手のビジュアルが出てきたのか不明です。3枚目は思いっきりネタバレしたいますから不採用は当然でしょう。4枚目の迷路が目になっているのは迷路が霊として家族を見ているのを表現しているのでしょうけど、ちょっと分かりにくいですね。5枚目は雪に閉ざされたホテルの孤立感を表現したかったのかも知れませんが、逆にキューブリックの不評を買っています。  結局採用された案は これ ですが、これもいい出来だとは思えません。映画告知の初期やサントラ盤のジャケットに使用されたくらいで、現在はジャック・ニコルソンの『Here's Johnny!』が一般化しています。ただしタイトルロゴだけはしっかりとその後も使用され続けているので、バスもデザインした甲斐があったと思っていたかもしれません。  グラフィックデザイナーとしてのソール・バスの神髄はやはり映画のタイトルデザインにあると思います。デザインとグラフィカルな動きのかっこよさですね。CGのない時代にこんなにCG的な発想ができたデザイナーは他にいません。ただキューブリックは「タイトルバックに回すお金があるなら本編に回す」と、けんもほろろなことを言っています。まあ、それでもあれだけ力強いオープニングを作るのですからさすがですけどね。

【ロケーション】スタンリー・キューブリックの墓(The grave of Stanley Kubrick)

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義長女のカタリーナ・キューブリックが撮影し、2018年4月に Redditに投稿 したキューブリックの墓石   キューブリックの墓はロンドン郊外のハートフォード・シャーにあるキューブリック邸の庭の円形の柵内( Google Map )にある。生前キューブリックはここにあった樹を気に入り、愛した犬や猫を葬っていた。本人もこの地に眠る事を生前から希望しており、行政から特別な許可を貰って埋葬したそうだ。  墓石は無神論者のキューブリックらしく楕円形の巨石のみで、宗教性は一切排除されている。そこに、 STANLEY KUBRICK Here lies our love Stanley Born in New York City on 26 July 1928 Died here at home on 7 March 1999 スタンリー・キューブリック 私たちの愛したスタンリーはここに眠る 1928年7月26日ニューヨーク市生まれ 1999年3月7日この家で逝去 と刻まれている。また2009年7月7日にガンで亡くなった実娘で次女のアンヤも同所に眠っている。

【スタッフ】ルイス・C・ブラウ(Louis C. Blau)

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Louis Blau(IMDb)  キューブリックの代理人兼弁護士。上記は『2001年宇宙の旅』のセットでのルイス・ブラウ(左)とキューブリック。  1915年アメリカ生まれ。2014年5月30日死去、享年99歳。

【関連記事】スタンリー・キューブリックの代理人兼弁護士、ルイス・C・ブラウ氏が99歳で死去

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キューブリックとブラウ。『2001年宇宙の旅』のセットにて Louis C. Blau, Entertainment Attorney Who Represented Stanley Kubrick, Dies at 99 Entertainment attorney Louis C. Blau, who represented directors Stanley Kubrick and Francois Truffaut, Motown founder Berry Gordy and actors including Donald O’Connor, Mitzi Gaynor, Walter Matthau, Richard Widmark and Lana Turner, has died. He was 99.  スタンリー・キューブリックやフランソワ・トリュフォー監督、モータウンの創始者ベリー・ゴーディ、俳優のドナルド・オコナー、ミッツィ・ゲイナー、ウォルター・マッソー、リチャード・ウィドマーク、ラナ・ターナーなどのエンターテインメント界の弁護士だったルイス・C・ブラウが死去した。99歳だった。 (以下リンク先へ: Variety/2014年6月2日 )  『ア・ライフ・イン・ピクチャーズ』のインタビューに登場していたルイス・C・ブラウが死去しました。99歳とはずいぶんと長命でした。故人のご冥福をお祈りいたします。

【台詞・言葉】アン=マーグレット(Ann-Margret)

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 『フルメタル・ジャケット』でロックハート大尉から友軍の深刻な被害の報告を受けた後に、ジョーカーが「それじゃアン=マーグレットは中止?」と聞き返します。この攻撃の前にロックハートからアン=マーグレットの取材をするように指示されていたのでジョーカーは皮肉を込めてそう言ったのですね。  そのアン=マーグレット。全く知らなかったので少し調べてみましたが、あのエルビス・プレスリーとも恋仲だった歌手兼女優だそうで、上記の『バイ・バイ・バーディー』やエルビス映画『ラスベガス万才』が有名だそう。もちろん実際にベトナムにも慰問に訪れていてます。そしてなんと、ザ・フーのロックミュージカル『TOMMY』のあのキチ●イママがアン・マーグレットだったとは!全然気にしていませんでした。因にこの『TOMMY』、フーのメンバーやエルトン・ジョンはもちろんですが、今ではすっかりいいおじいちゃんのエリック・クラプトンの怪しい教祖姿や、まだ髪の毛が若干多めなジャック・ニコルソンなんかも楽しめます。機会があれば是非どうぞ。  話が逸れましたが原作にはないこの台詞、キューブリックが何故アン=マーグレットに言及したかは不明ですが、コメデェンヌとしての彼女のイメージがこの深刻な状況に全くそぐわない事から、より皮肉が効いて良い、と判断したのかもしれませんね・・・まあ、キューブリックが単に彼女を気に入っていたからかも知れませんけど。

【撮影・技術】絵コンテ(Story Boad)

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キューブリック直筆の『スパルタカス』ラストシーン用の絵コンテ。キューブリックは絵はあまり得意でなかったようだ。   撮影の準備をするために描かれた連続されたスケッチ画。撮影するシチュエーションや構図、ライティング、セリフなどが書き込まれている撮影のための「下書き」。  キューブリックは基本的に出たとこ勝負の撮影を好むので、緻密に設計された絵コンテは必要としなかったようだが、『スパルタカス』では大規模な撮影が、『2001年宇宙の旅』では特撮が中心で緻密な撮影計画が必要だったので、絵コンテが残されているのだろう。まだ本格的な撮影に不慣れだったハリウッドデビュー作の『現金に体を張れ』では当時妻だったトーバに絵コンテを描かせている。また『2001年…』と同じように特撮中心の『A.I.』も絵コンテやイメージボードが大量に残されている。

【関連記事】米サイトが選ぶ「死ぬまでに見るべきホラー映画20本」 日本からは1本選出

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 米カルチャーサイトWhatCulture!が、「死ぬまでに見るべきホラー映画20本」をピックアップした。  いずれ劣らぬ傑作ぞろいだが、日本からは三池崇史監督の「AUDITION オーディション」が唯一ランクインした。ちなみに同作は、2009年に米エンターテインメント・ウィークリー誌の評論家オーウェン・グレイバーマンが、1989年以降に製作されたホラー映画のなかからベスト20を選んだ際にも第1位に選ばれている。  20本は以下の通り。 「サイコ」(1960) 「ジョーズ」(1975) 「エクソシスト」(1973) 「シャイニング」(1980) 「悪魔のいけにえ」(1974) 「ローズマリーの赤ちゃん」(1968) 「ハロウィン(1978)」 「ウィッカーマン(1997)」(製作年度は1973年) 「サスペリア」(1977) 「ゾンビ」(1978) 「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922) 「鳥」(1963) 「キャリー(1976)」 「赤い影」(1973) 「AUDITION オーディション」(2000) 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999) 「怪物団 フリークス」(1932) 「28日後…」(2002) 「エルム街の悪夢」(1984) 「ポルターガイスト」(1982) (引用: 映画.com ニュース/2014年6月1日 )  『ジョーズ』や『鳥』をホラーと呼ぶには若干抵抗がありますが(動物パニックものでは?)キューブリックとの関連だと『シャイニング』は当たり前のランクインですね。この中では『エクソシスト』『ローズマリー…』『悪魔のいけにえ』の三作品をキューブリックは高く評価していたそうです。

【キューブリック展】オーストリアのアートフォーラム・ウィーンでキューブリックのルック社在籍時代の写真展が開催中

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Waffen, Zirkus, schone Frauen Shoe Shine Boy Mickey steht am Strasenrand und wartet. Nachste Szene: Mickey blickt auffliegenden Vogeln nach. Die Fotos, die Stanley Kubrick (A Clockwork Orange, Shining und 2001: Odyssee im Weltraum) in den spaten 1940ern fur das Look-Magazin machte, sind akribisch komponiert und lassen bereits seine filmische Handschrift erahnen. Kubrick sagte dazu nur: "Well, I never shoot anything I don't want." Das Kunstforum Wien zeigt in der Ausstellung Eyes Wide Open eine Auswahl seiner Fotoreportagen. (引用: ZEIT ONLINE/2014年5月27日 )  オーストリアのアートフォーラム・ウィーン(Kunstforum Wien)でキューブリックのルック時代の写真展が『EYES WIDE OPEN』と題して2014年5月8日から7月13日まで開催中です。上記はその紹介動画です。日本でも是非開催して欲しいものですね。

【ブログ記事】スタンリー・キューブリックが遺した約1万6千枚もの写真がネット上に公開中

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Rosemary Williams, Show Girl [Stanley Kubrick taking a picture of Rosemary Williams applying lipstick.]  スタンリー・キューブリック・フィルム・アーカイブとニューヨーク市立博物館が、キューブリックがルック社在籍時代に遺した約1万6千枚以上の写真を ネット上で公開 しています。写真集『スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945‐1950』や『Stanley Kubrick Photographs: Through a Different Lens』にも掲載されていない未見の写真が大量にありますので、時間をかけてじっくりご覧ください。

【関連動画】スティーブン・キングのTV版『シャイニング』の予告編

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 スティーブン・キングが製作、ミック・ギャリスが監督をしたTVドラマ版『シャイニング』の予告編です。  なかなかの緊迫感が好印象の予告編ですが、本編はもっとグダグダ感があってこんなにスピーディーじゃありません。まあ原作にくらべればこれでもサクサク話が進むんですが。観ていただければ分かるように、ダニー役のコートランド・ミードの口元の緩さは、原作の聡明で行動力のある少年のイメージを根底から覆すものです。なんでこんな子役をキャスティングしてしまったのか、不思議でしょうがありません。  ジャック役のスティーヴン・ウェバーはなかなかの熱演を見せていますが、知名度のせいでクレジット順でウェンディ役のレベッカ・デモーネイの後に追いやられているのはちょっと可哀想。でもこの人、どうしても大泉洋に見えて仕方ないのが問題です。まあ本人に非はないのですが。  特典の未公開映像には原作者のスティーブン・キングが「溶ける」シーンがあるのですが、これがまたチープな味わいでなんだかなあという感じです。というか、幽霊のバンドマスターがキング本人だったんですね。全然気づきませんでした。ミック・ギャリスとキングや他のスタッフの音声解説はキューブリック版に対するリスペクトと対抗心が伺えて興味深かったです。  現在このTV版『シャイニング』のDVDは、中古DVDショップ等で安価で入手できますので、念のため押さえておいても悪くはないでしょう。管理人も最近未開封品を激安で入手しましたが、1000円以上出す価値はないと断言しておきます。

【関連動画】スティーブン・キングのTV版『シャイニング』の犬(狼)男

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キューブリックはこうなる事を予見して犬男とタキシード紳士のホモシーンに改変した  1997年にアメリカABCテレビのミニシリーズとして放映されたスティーブン・キングのTV版『シャイニング』で映像化された原作の犬男のシーンです。キングもさすがに犬はないと思ったのか、オオカミに変更していますが、結果的にたいして違いはなかったようです。キューブリック版の該当シーンについては こちら 。

【関連記事】『ゼロ・グラビティ』監督、『シャイニング』前日譚を監督か

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『シャイニング』の舞台のオーバールック・ホテル  映画『ゼロ・グラビティ』でアカデミー賞監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン監督が、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』の前日譚(たん)を描いた映画『ザ・オーバールック・ホテル(原題) / The Overlook Hotel』の監督オファーを受けたことがEmpireや複数のメディアで明らかになった。  『ザ・オーバールック・ホテル(原題)』は、映画『ホワイトハウス・ダウン』の製作者レータ・カログリディス&ブラッドリー・J・フィッシャーと、映画『ゾディアック』の製作者ジェームズ・ヴァンダービルトがワーナー・ブラザースの下で企画している作品。脚本はテレビシリーズ「ウォーキング・デッド」のグレン・マザラが執筆し、このたびキュアロンが監督のオファーを受けたようだ。 (以下リンク先へ:シネマトゥデイ映画ニュース/ 2014年5月26日 )  舞台がオーバールック・ホテルなら、ジャックが管理人として採用される前の話になるのでキューブリック版との整合性は取りやすいでしょうね。主人公が誰になるのか興味津々ですが、グレイディ一家の惨劇が描かれるのなら面白くなりそう。あの双子の少女にまた会いたい! キュアロン監督ならオマージュも大量に仕込んできそうですし、人選としては悪くないのでは。キングの後日譚『ドクター・スリープ』も映画化の可能性がありますが、もしそうなってもキューブリック嫌いのキングがキューブリックの世界観を踏襲するとは思えませんので、前日譚であるこちらの『オーバールック・ホテル』はキューブリック寄りになるのでは、と期待しています。続報を待ちましょう。

【台詞・言葉】私たちは心が広い(We're both broad-minded)

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 『ロリータ』でジーンがハンバートにこう問いかけるのは、いわゆる「夫●交換(ス●ッピング)」を指しての事でしょう。「大学教授で作家でもあるあなたと同じように、私たちも進歩的文化人なのでこういった〝革新的な〟関係も結べますよ」という意味ですね。もしくはそういった人たちが集まっているダンス・パーティーなので、その場にいるキルティも進歩的文化人である、と示すためでしょう。ただハンバートは思想的にも性的にも「勘が悪い」ので、その真の意味になかなか気づかない・・・という図式が『ロリータ』では繰り返されます。  こういった「進歩的思想」に対する皮肉や、性的暗喩は表現を検閲機関に大幅に規制されたキューブリックのせめてもの抵抗なのですが、その意図をちゃんと理解して鑑賞するなり批評するなりして欲しいですね。その意味ではキューブリック作品の中では一番誤解され、冷遇されているのがこの『ロリータ』ではないか、そう考えます。

【プロップ】血清 Exp./Serum No. 114

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 『時計じかけのオレンジ』でアレックスにビタミン剤と偽って注射された薬品。詳しくは描写されていないが、ルドビコ療法の主目的であるオペラント条件付けのために、吐き気や倦怠感、嫌悪感を催す成分が入っているものと思われる。  この「Serum No. 114」は「CRM(シーラム) 144」と読め、『博士…』の暗号封鎖回路「 CRM114 」の引用であるとともに、「 クリティカル・リハーサル・モーメント 」の略にもなっている。

【アーティスト】トミー・ウンゲラー(Tomi Ungerer)

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トミー・ウンゲラー(Wikipedia)  『博士の異常な愛情』のポスターのイラストレーションを担当したイラストレーター・児童文学作家。オリジナルのアートワーク(下記参照)も描いている。  主な著書は『ゼラルダと人喰い鬼』(1977)、『ラシーヌおじさんとふしぎな動物』(1977)、『月おとこ』(1978)、『マッチ売りの少女アルメット』(1982)、『へびのクリクター』(1982)、『メロップスのわくわく大冒険 <1>・<2>』(1986)、『かたつむりみつけた』(1987)、『くつくつみつけた』(1987)、『すてきな三にんぐみ』(1989)、『こうもりのルーファス』(1994)、『フォーニコン』(1999)、『フリックス』(2002)、『カッチェン ― ウンゲラーのねこワールド』(2004)、『オットー ― 戦火をくぐったテディベア』(2004)、『ぼうし』(2006)、『あたらしいともだち』(2008)、『あおいくも』(2010)、『アデレード ― そらとぶカンガルーのおはなし』(2010)など。  1931年11月28日フランス・ストラスブール出身。

【関連記事】新遺伝子「時計じかけのオレンジ」理研などが発見

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 理化学研究所は6月19日、ショウジョウバエの体内時計で重要な役割を持つ新遺伝子を発見し、「時計じかけのオレンジ」と名付けたと発表した。似た遺伝子を持つ人間の体内時計の解明につながると期待している。  体内時計は睡眠などの生理機能に影響を与える体内の仕組みで、複雑な遺伝子ネットワークで成り立っていることが分かってきた。人間などの体内時計システムを解明するため、同じ起源ながら単純なショウジョウバエの体内時計システムの研究が世界的に進められている。  新遺伝子の発見は、理研の発生・再生科学総合研究センターの上田泰己チームリーダーらの研究チームと、九州大学の松本顕助教、国立遺伝学研究所の上田龍教授、米国テキサス農工大のポール・ハーディン教授らの研究チームとの共同研究の成果。  研究チームは、ショウジョウバエの頭部で24時間周期で発現している遺伝子を200個見つけた。ゲノム技術を使い、遺伝子の変異に成功した137遺伝子の変異ショウジョウバエについて24時間周期の行動リズムを観察。そのうち、行動リズムが著しく長くなった変異体の遺伝子を調べたところ、体内時計を制御する重要な役割を持っていることが分かった。  発見した遺伝子が「Orangeドメイン」と呼ばれるたんぱく質構造を持つことから、スタンリー・キューブリックによる映画化で知られる、アンソニー・バージェスの小説にちなんで「clockwork orange」(cwo)と名付けた。  cwoたんぱく質は時計遺伝子の発現を抑える働きがあり、自分自身と他の時計遺伝子の働きをコントロールする役割があるらしい。人間にもcwo遺伝子に似た遺伝子があることが知られており、体内時計システムの完全な理解につながる成果だとしている。 ( ITMediaニュース/2007年6月19日 )  古い記事ですが、何かと今話題の理研(理化学研究所)が発見した遺伝子を「時計じかけのオレンジ」と名付けたという記事が引っかかってきたのでご紹介。まさかこれも捏造・・・ではないとは思いますが、どうも昨今の報道を見る限り疑心暗鬼にならざるを得ません。これも「発見!かくにん、よかった(はぁと)」とか研究ノートに書かれていたんでしょうか?どんな偉大な発見をしても「理研」という名前がそこにある限り、ネタ扱いにされるのは避けようがないですね。

【セット】ロジック・メモリー・センター(Logic Memory Center)

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 『2001年宇宙の旅』でボーマンがHALの機能停止の為に赴いた部屋。無数のソリッド・ステート・論理ユニットで構成されていて、ボーマンが抜き取ったのは認識フィードバック、自我補強、自動思考のユニット(小説版による)。HALの高等中枢回路だけを切断し、ディスカバリー号の航行・制御に必要な自動管理システムは残しておくのがボーマンの目的だった。その際にHALが歌った『デイジー・ベル』については こちら 。

【関連動画】映画に於ける偉大なアドリブシーン25

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  こういったランキング動画は数多くYouTubeにはアップされているのですが、ランキングの根拠がその動画製作者の判断なので、あまり意味がないと今まで取り上げませんでした。しかし、この動画は再生回数が1300万回以上と突出して多かったのでご紹介します。  なんと25作品中キューブリック作品が『博士の異常な愛情』、『時計じかけのオレンジ』、『シャイニング』、『フルメタル・ジャケット』と4作ランクイン。それだけインパクトのあるアドリブシーンがキューブリック作品に多い、という事でなのでしょう。この事はいかにキューブリックがアドリブを重視し、撮影現場で生まれる「 その瞬間 」を待ち望んでいたかの証左なのですが、それは当ブログで再三指摘している通りです。 こちらも似た趣旨のランキング。チョイスも似通っています

【関連動画】グリーン・クロス・コードマン(Green Cross Code Man)

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 『時計じかけのオレンジ』でアレキサンダー氏のアシスタントとして立派な体躯を見せていたデヴィッド・プラウズがその後ダース・ベーダーの「中の人」になったのは有名ですが、本国イギリスではそれよりも前に交通安全の公共広告で、子供を交通事故から守る「グリーン・クロス・コードマン」として一躍有名になりました。そのCM動画がYouTubeにありましたのでご紹介。  こういった「心優しき力持ち」って全世界共通なんでしょう。日本で言えば女性ですがALSOKの吉田沙保里でしょうか。キューブリックはハロッズで健康器具のセールスマンをしていたプラウズをスカウトして『時計…』に起用したそうですから、この出会いが彼の運命を大きく変えた、と言えるでしょうね。

【考察・検証】『時計じかけのオレンジ』でカットされたシーンから、原作小説の暴力性とバージェスのキューブリック批判を考える

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 原作での最初の被害者、結晶学の本をビリビリに破かれる学者風の紳士のシーン。このあとこの紳士は入れ歯を奪われ、その口を殴られて血まみれに。挙げ句に着ている服も全て破られ棄てられるという残虐極まりない仕打ちを受けます。  パブで気前よくおばさんたちにお酒をおごった後タバコ店で強盗をし、パブに戻ったところで警察に職務質問されたが、おばさんたちが気を利かせて嘘のアリバイ証言をしてくれる(アレックスたちがそうするように仕向けている)シーン。  デュランゴ95を盗み出すシーンです。原作によるとここはただ合鍵を使って車を盗むだけですので、カットされたのはしょうがないですね。  以上のカットされた3シーンは全て暴力、または暴力に関係するシーンです。実は映画よりも原作の方が何倍も、何十倍もアレックスたちは凶暴で残忍です。キューブリックの映画版はあれでもずいぶんとトーンダウンさせているのです。なのに原作者のバージェスは「キューブリックがアレックスの暴力衝動が薄れていくラストシーンをカットし、暴力性を取り戻したところで終わらせた」と非難しています。自身が書いた小説の方が何十倍も暴力描写が激しいというのに・・・。  キューブリックによると、バージェスは当初から非難していたわけではなく「ある日突然に」非難を始めたそうです。公開前に試写でバージェスに観せたところ、そんな事は全く言っていないどころか、レイプシーンがあまりにも辛いと妻が退席しようとした際に「キューブリックに失礼だから」と我慢して観続けるように促したり、公開後にも旅行嫌いのキューブリックの代わりに映画の宣伝に世界中を飛び回っていたり、  「映画も文学も、原罪に対して責任を持たない。叔父を殺した人がいても、それをハムレット劇のせいにすることはできない。逆に殺戮や殺人に対して文学が責任を負うというのであれば、この世に存在するもっとも執念深い本である聖書こそがもっとも罪深いものだ」(引用:『映画監督 スタンリー・キューブリック』) と自身の原作や映画を擁護さえしています。   ここ と ここ で記事にまとめていますが、要するにバージェスにもキューブリックと同じくかなり強烈な脅迫があったのではないか、と推察をしています。あの21章は出版当時、出版社の意向に沿ってバージェスが「書き加えた」という事実。映画が公開され暴力描写が問題視されるまで...

【関連作品】火を噴く惑星(Планета бурь)

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  キューブリックが『2001年宇宙の旅』を製作するにあたり参考に観た映画のひとつ。  旧ソ連製のSF映画で、あらすじは「金星探査に向かったソ連の宇宙船三艇の内、一艇が隕石と衝突して破壊されてしまう。それにも挫けずソ連人民と共産党の期待に応えるべく残りのクルーで金星探査を続行するが、そこには人間を喰らう植物や恐竜、荒ぶる火山などが行く手を阻む・・・」という物語。  未知の惑星探査、謎の声と先史文明の存在、クルーの相棒的存在のロボットなど『禁断の惑星』の影響をかなり感じさせますが、宇宙服や水陸両用車のデザインなどは一周回ってかなりかっこ良く感じます。宇宙船のセットや特撮にもそれなりにお金がかかっているし、人間を裏切るロボットがアメリカ製であるなどプロパガンダ臭もあるので当時の共産党宣伝部が真面目に、それなりのお金を使ってつくったんだろうなあ、とは思います。  まあでも水や海や植物まであって火まで起こしているのに、いつまで宇宙服着っぱなしなの?とか、なんでもかんでも敵とみれば銃をぶっ放すのはどうなの?とか、突っ込みどころは満載ですが、それはそれ、1961年の映画なので大目に見てあげましょう。  でもこのストーリー、キューブリックやクラークが当初構想していた『2001年…』のプロットの  「地球外の人工物体との出会いを、発端ではなくクライマックスに置くというものだった。その手前では、いろいろな事件なり冒険をとおして、月や惑星の探検が描かれるという趣向だ」(引用『失われた宇宙の旅2001』) とそっくりなんですが。まさかパクっ・・・たわけではないでしょうけど、この作品を反面教師としたのなら『2001年…』にインスパイアを与えたと言えなくもありません。キューブリックはそのジャンルの映画を撮ると決めると、リサーチも兼ねてありとあらゆる同ジャンルの映画を見たそうです。ですので「キューブリックが観た=影響を受けた」と自慢げに知識を語る方々は、肝心の「キューブリックはリサーチマニアだった」という基礎的な知識が欠落しているか、その程度の知識もなくアクセス欲しさに語っているんでしょうね。「どんな映画でも学ぶべき点はある」とはキューブリックの弁ですが、それは「愚作を観れば愚作にならずにならずに済む方法も学べる」という意味を含んでいます。つまり「反面教師」ということです。  余談です...

【プロップ】1957年型フォード・カントリーセダン(Ford Country Sedan 1957)

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 『ロリータ』でハンバートとロリータが旅をする際に乗っていた車。実際はヘイズ家所有の車だった。  アメリカ各地をドライブするシーンは第二版がアメリカロケをし、スー・リオンの代わりにキューブリックの妻、クリスティアーヌが乗っていたそう。つまり「お前アメリカロケに行ってきてくんない?俺も行きたいけど、こっち(イギリス)での撮影もあるから忙しくて行けないんだよ」「何言ってんの、飛行機乗るの嫌だから行きたくないって正直に言いなさいよ!」という会話がキューブリック家であった・・・のかも知れない。

【サウンドトラック】Dr. Strangelove And Other Great Movie Themes

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Dr. Strangelove And Other Great Movie Themes(Amazon) Theme from Dr. Strangelove (2:17)|The Laurie Johnson Orchestra Theme from The Victors (My Special Dream) (2:36)|Sol Kaplan & Orchestra River Kwai March - Colonel Bogey (2:30)|Morris Stoloff & Orchestra Moonglow - Picnic (3:01)|Morris Stoloff & Orchestra From Here To Eternity (2:44)|Morris Stoloff & Orchestra Diamond Head Theme (2:28)|Johnny Williams Conducting the Columbia Pictures Studio Orch. Damn the Defiant! (3:05)|Orchestra Conducted by Muir Mathieson Lawrence of Arabia (1:54)|Orchestra Conducted by Maurice Jarre Theme From Psyche 59 (1:40)|Orchestra Conducted by K.V. Jones In the French Style (2:14)|Norman Percival & His Orchestra Barabbas (5:05)|Orchestra Conducted by Mario Nascimbene Song Without End (The Rakoczy March) (4:02)|Orchestra Conducted by Morris Stoloff Theme From The Interns (Toss Me a Scalpel) (2:53)|Leith Stevens & Orchestra  1964年にモノラル・ステレオの2種類のアナログLPでリリースされた『博士の異常な愛情』唯一のオフィシャルサウンドトラック。 ...

【名曲】トライ・ア・リトル・テンダネス(Try a Little Tenderness)

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キューブリックがローリー・ジョンソンに依頼してアレンジした『博士…』バージョン この曲を一躍有名にしたオーティス・レディングのバージョン スリー・ドッグ・ナイトのバージョン ロッド・スチュワートのバージョン  『博士の異常な愛情』のオープニングに使用された『トライ・ア・リトル・テンダネス』は様々なアーティストにカバーされていて、上記の他にビング・クロスビー、フランク・シナトラ、クリス・コナーなどもカバーしているようです。  歌詞は「男を若い女に取られた女性には、少しだけ優しく慰めてあげたらいい」という内容でとても思いやりに満ちた美しいラブソングなのですが、それを爆撃機の空中給油のシークエンスにかぶせるというセンスがいかにもキューブリックです。  この空中給油はよく性的な意味合いで語られる事が多いのですが、歌詞を読む限りもっと純粋で、切なく優しい歌ですね。エンディングで流れる『また会いましょう』もラブソングと簡単に語られてしまっていますが、これも別れの切なさの歌です。つまり、この曲はエンディングの伏線であり、対にもなっているのです。この手法はキューブリックが好んで使っていて、『突撃』の『ラ・マルセイエーズ』→『忠実な兵士』、『フルメタル…』の『ハロー・ベトナム』→『黒く塗れ』と同じです。  他の手法としては、劇中のキーになる曲を再度エンディングに使う(『2001年…』『時計…』『シャイニング』)、オープニングとエンディングが同じ曲(『バリー…』、『アイズ…』)と計3パターンに分類できます。この辺りの考察も今後記事にまとめたいと思います。

【音楽家】ローリー・ジョンソン(Laurie Johnson)

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Laurie Johnson(IMDb)    『博士の異常な愛情』の『トライ・ア・リトル・テンダネス』と『テーマ(ジョニーが凱旋するとき)』のアレンジを担当した作曲家。  他の主な参加作品は『追いつめられて… 』(1959)、『暴力の門 』(1961)、『苦い報酬 』(1963)、『欲望の終着駅 』(1964)、『激流ナイルの恋 』(1964)、『H.G.ウェルズのS.F.月世界探険 』(1964)、『華麗なる天才詐欺師/ミスター・ジェリコ 』(1969)、『女子大生・恐怖のサイクリングバカンス 』(1970)、『真夜中の放火魔 』(1971)、『吸血鬼ハンター 』(1974)、『子ぎつね物語 』(1976)、『悪魔の赤ちゃん3/禁断の島 』(1987)、『ヒュー・グラントの 浪漫騎士 』(1989)、『ワイルド・レーサー2 』(2003)など。  1927年2月7日イギリス・ロンドン出身。2024年1月16日逝去、享年96歳。

【名曲】ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)

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 『突撃』のオープニングで流れるフランス国家。よく「過激な歌詞」という話を聞くので wiki を見てみると・・・確かに過激。『突撃』はフランス軍の腐敗を扱った作品ですので、もちろんキューブリックはこの歌詞の意味を知った上で、皮肉としてオープニングに使ったのでしょう。  映画ではキューブリックのブロンクス時代の旧友、ジェラルド・フリードによってマーチにアレンジされたバージョンが使用されています。キューブリックはフランスや親仏国での上映が困難にならないように、パーカッションによる別の音楽も用意していたのですが、残念ながらその努力は実を結ばなかったようで、結局フランスやスイスでは上映禁止、ベルリンのフランス区域でも上映が禁止されたそうです。

【関連商品】映画「シャイニング」のあのカーペットが着れちゃうよ

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 スタンリー・キューブリックの作品はいつ観ても色褪せませんよね。その巨匠キューブリック監督による映画「シャイニング」の舞台である「The Overlook Hotel」のあの印象的なオレンジとブラウン色なカーペットにインスパイアを受け、アメリカのテキサスにあるアートブティックMondoがニットウェアを制作しました。  ラインナップはセーターとカーディガン、スカーフ、スキーマスク、ドアマット、ラグの6種類。 (引用元: GIZMODO/2014年5月9日 )  シャイニングのカーペットはあちこちでネタにされているので、今更感はありますが結構本気で売っているようですね。このカーペットの柄がハニカムなのは原作に登場した蜂の巣をイメージしたのでは? という指摘をしているのですが、それを示す資料がある訳ではないので実際は分かりません。  しかしなんだが痒そうに見えるのは私だけでしょうか。まあマニア相手に一定数は売れそうですが、着るには勇気が要りそうです。セーターが85ドル、カーディガンが75ドル、マフラーが50ドル、目出し帽が35ドル、ドアマットが85ドル、ラグが300ドルですので欲しい方はお早めに。

【ローケーション】サマーセット田園生活博物館(Somerset Rural Life Museum)

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サマーセット田園生活博物館( Street View )  『バリー・リンドン』の終盤近く、ブリンドン卿とのピストル対決のロケが行われた納屋のロケ地で、イギリスのサマーセット州グラストンベリーにひっそりと佇む小さな博物館。このシーンでは十字架から差込む外光が印象的だが、もちろん自然光ではなく、照明を使っている。

【関連記事】「オーメン」「シャイニング」「エクソシスト」……ホラー映画の子役たちはいま

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 スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」で忘れがたい印象を残した双子の少女が34年ぶりに公の場に登場し、SNSを始めたことが話題になったが、英カルチャーサイトShortListが、ホラー映画の子役たちのその後と現在を紹介している。映画の製作年度順に並べた。 〈中略〉 「シャイニング」(1980) ダニー・トランス少年役 ダニー・ロイド(現在41歳) 米シカゴ生まれ。「シャイニング」撮影時は6歳だったが、非常に集中力のある子どもだったという。その後、俳優としては82年のテレビ映画への出演のみ。養豚家を経て、生物学の教授になり、2007年から米ケンタッキー州のエリザベスタウン・コミュニティー・カレッジで教鞭をとっていた。現在は米ミズーリ州の大学にいるという。 「シャイニング」(1980) 双子の少女“グレイディ・ツインズ”役 リサ&ルイーズ・バーンズ姉妹(現在46歳) イギリス生まれの一卵性双生児。「シャイニング」出演当時は12歳だった。姉妹ともに映画に出演したのは「シャイニング」のみで、その後ふたりは普通の生活を送り、リサは文学を学び、ルイーズは微生物学者として活動している。2013年12月、突如として「Shining Twins」の名義でTwitterとFacebookを開始し、ネットを騒然とさせた。 (記事全文はリンク先へ: 映画.com ニュース/2014年5月5日 )  ダニー役のダニー・ロイドの近況については こちら 、双子の少女(グレイディ・ツインズ)のリサ&ルイーズ・バーンズの近況については こちら で記事にしています。

【関連記事】製作されなかった偉大な映画25本

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キューブリックは長い間『ナポレオン』の映画化を望んでいた   奇才アレハンドロ・ホドロフスキー監督がフランク・ハーバートの「デューン/砂の惑星」映画化に挑んだものの、実現に至らなかった経緯を描いたドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」がアメリカで公開されたのを受けて(6月14日日本公開)、米映画サイトThe Playlistが「製作されなかった偉大な映画25本(The 25 Greatest Movies Never Made)」を特集している。  構想段階で終わったもの、脚本は完成しているもの(その多くはオンラインで読むことができる)、撮影にこぎつけたが中断したものなど、未完の理由はさまざまだが、映画ファンなら見たいと思う企画ばかりだ。25本は以下の通り。 スタンリー・キューブリック「ナポレオン」 スティーブン・スピルバーグがキューブリックの脚本をもとにミニシリーズ化を企画中。 ケン・ラッセル「ドラキュラ」 脚本は「Ken Russell's Dracula」として書籍化されている。 デビッド・クローネンバーグ「フランケンシュタイン」 オーソン・ウェルズ「Heart of Darkness(ハート・オブ・ダークネス)」 ジョセフ・コンラッドの小説「闇の奥」の映画化。ラジオドラマとしては放送された。 マーティン・スコセッシ「ガーシュウィン」 ポール・バーホーベン「Crusade(十字軍)」 アーノルド・シュワルツェネッガー主演で十字軍を描く予定だった。 フランシス・フォード・コッポラ「Megalopolis(メガロポリス)」 ニューヨークにユートピアを築こうとする建築家を主人公にしたSF映画。 (記事全文はリンク先へ: 映画.com/2014年4月20日 )  キューブリックのナポレオンは当然として、ケン・ラッセルの『ドラキュラ』やクローネンバーグの『フランケンシュタイン』は観てみたい。ウェルズの『闇の奥』は有名ですがタルコフスキーの『白痴』は知りませんでした。スコセッシの『ガーシュウィン』って作曲家のガーシュウィン? バーホーベンとシュワちゃんで『十字軍』だと殺戮描写の嵐になりそう。コッポラがSFを撮ろうとしていたんですね。これは興味深いです。

【キューブリック展】クラクフ国立博物館でのスタンリー・キューブリック展のオープニングに大勢の観客が集まる

 Tłumy na otwarciu wystawy Stanley Kubrick w Muzeum Narodowym Wśrod licz-nie zgro-ma-dzo-nej pu-blicz-no-ści otwar-to w nie-dzie-lę wy-sta-wę pre-zen-tu-ją-cą życie i twor-czość re-ży-se-ra Stan-leya Ku-bric-ka, twor-cy m.​in. "Me-cha-nicz-nej po-ma-rań-czy" i "2001: Ody-se-ja Ko-smicz-na", w Mu-zeum Na-ro-do-wym w Kra-ko-wie.  『時計じかけのオレンジ』や『2001年宇宙の旅』の監督、スタンリー・キューブリックの人生や仕事の展覧会がクラクフ国立博物館で始まった。日曜日には大勢の観客を集めた。 (以下リンク先へ: onet.wiadomosci/2014年5月4日 )  ポーランドのクラクフでキューブリック展が始まりました。写真を見る限り規模は小さそうですが、オープニングには今回もクリスティアーヌが来場したようです。前回のサンパウロやその前のロサンゼルスと比べるとずいぶんと地味な展示ですが、人口規模を考えると仕方ないかも知れません。さて、日本での開催は・・・・?

【考察・検証】『フルメタル・ジャケット』のベトナム・パートを原作と比較・検証し、キューブリックの真意を探る。

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  フルメタル・ジャケット (角川文庫)(Amazon)  まず、原作『フルメタル・ジャケット(ザ・ショートタイマーズ)』第2章の『殺害戦果』と、映画の後半のベトナム・パートのあらすじを整理したいと思う。 【原作小説】 (1)ダナンでラフターマンと映画館へ行き、そこでカウボーイと再会する。 (2)ラフターマンに「前線に行きたい」と相談される。(ベトナム人の売春婦が少しだけ登場) (3)宿舎に戻り休憩中、テト攻勢を受ける。 (4)リンチ少佐からピースバッチをとがめられる。そしてラフターマンと共にフバイ行きを命令される。 (5)フバイの広報部に着任、ジャニュアリー大尉から軍曹昇進の報を受けるがジョーカーはこれを固辞。 (6)宿舎で休息。ペイバックが「千里眼」の話をする。 (7)暇つぶしにネズミ退治を始める。退治したネズミを埋葬し『ミッキーマウス・マーチ』を全員で歌う。 (8)明け方にベトコンの奇襲を受け、ラフターマンは初めての実戦を経験する。 (9)ヘリでフエに移動。途中銃撃手が眼下の農夫を銃撃する。 (10)フエに到着。戦車に同乗させれもらい、司令部に向かうが途中でベトナム人の少女をひき殺してしまう。 (11)司令部に到着。翌日そこでCBSテレビの撮影チームを目撃。 (12)最前線に取材に向かうが、そこにはカウボーイの所属する部隊「ワン・ファイブ」がいる事を知る。 (13)カウボーイと再び再会。クレイジー・アールがベトコン兵の死体を紹介する。 (14)王城での作戦開始。ジョーカーとラフターマンも作戦に同行する。誰かがミッキーマウス・マーチを歌い始める。 (15)ロケット弾を受けジョーカーは気絶するが、意識を回復。しかしミスター・ショートラウンド、クレイジー・アールが戦死。 (16)ジョーカーは気絶している間に狙撃兵がひとりひとり嬲り殺しにした事実を知り、その狙撃兵を探す事にする。 (17)カウボーイが部隊を指揮し、狙撃兵を探す。ラフターマンが狙撃兵を仕留め、ジョーカーがとどめを刺す。そしてアニマル・マザーが首をはねる。(カウボーイは戦死しない) (18)部隊は休みを言い渡され、ジョーカーとラフターマンは虐殺現場の取材をする。 (19)ジョーカーとラフターマンは部隊を離れ、フバイへ向けて歩き出す。しかしラフターマンは戦車に轢かれ死亡する。 (20)ジョーカーはひ...

【台詞・言葉】クロンカイト(Cronkite)

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 『フルメタル・ジャケット』でロックハート中尉がテト攻勢の概略をジョーカー達に説明する台詞で「TVも勝ち目のない戦争と呼ぶ気らしい」とあるが、実際の台詞は「クロンカイトも勝ち目のない戦争と呼ぶ気らしい」だ。  そのウォルター・クロンカイトとはCBSイブニングニュースの有名なアンカーマンで、この台詞は実話に基づいてる。  ケネディ政権時代の1960年代前半にアメリカが本格介入したベトナム戦争に対して当初は客観的な立場からの報道を続けていたものの、南ベトナム解放民族戦線による南ベトナムへの攻撃「テト攻勢」が行われた直後の1968年2月に「民主主義を擁護すべき立場にある『名誉あるアメリカ軍』には、これ以上の攻勢ではなく、むしろ交渉を求めるものであります」と厳しい口調で発言して戦争の継続に反対を表明、アメリカの世論に大きな衝撃と影響を与えた。これを知らされた当時の大統領ジョンソンは、「クロンカイト(の支持)を失うということは、アメリカの中産階級(の支持基盤)を失うということだ(If we've lost Cronkite, we've lost Middle-America)」と嘆いたという。その後保守派の多くもベトナム戦争の継続に懐疑的になり、この直後にジョンソンは2期目の大統領選への出馬断念を発表するに至った。 (引用: wikipedia/ウォルター・クロンカイト )  つまりキューブリックは有名なこの「クロンカイト・リポート」に言及する事により、戦争がいかにメディアによって左右されるものなのかを暗に示しているのだ。それを単に「TV」と訳したのはクロンカイトを知らない日本人に配慮したものだと想像できるが、そういった「配慮」がこの『フルメタル・ジャケット』という作品のテーマ、コンセプトを見えにくくしているのもまた事実だ。  「メディアを操る者が思想を語れば、それはすなわちプロパガンダである」報道カメラマン出身のキューブリックはそれを身を以て知っていた。「映画」というメディアを操るキューブリックは、戦争を淡々と描写する事に終始し、反戦・好戦など一切の思想性を拒絶している。そして「戦争とはマクロ的には権力者(マスコミや一般大衆も含む)の欺瞞であり、ミクロ的には銃弾のごとく浪費される人命である」とシンプル且つ冷徹に告発するのみにとどめ、そこから先の「思想」は受...

【キューブリック展】スタンリー・キューブリック展 開催地リスト

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エド・リーブ、ロンドン・デザイン・ミュージアム提供 イスタンブール (トルコ) 開催場所:イスタンブール映画博物館(İstanbul Sinema Muzesi) 開催期間:2022年10月1日~2023年3月1日 マドリード (スペイン) 開催場所:マドリード総合芸術協会(Circulo de Bellas Artes) 開催期間:2021年12月21日~2022年5月8日 ニューヨーク (アメリカ) 開催場所:ミュージアム・オブ・ザ・ムービングイメージ(Museum of the Moving Image) 開催期間:2020年1月18日~7月19日(会期途中で2021年4月30日~10月17日に変更) 備考:『2001年宇宙の旅』展として開催 ロンドン (イギリス) 開催場所:デザインミュージアム(Design Museum) 開催期間:2019年4月26日~9月17日 バルセロナ (スペイン) 開催場所:バルセロナ現代文化センター(Centre de Cultura Contemporania de Barcelona) 開催期間:2018年10月24日~2019年3月31日 フランフクルト (ドイツ) 開催場所:ドイツ映画博物館(Deutsches Filmmuseum) 開催期間:2019年3月21日~2019年9月23日 備考:『2001年宇宙の旅』展として開催 コペンハーゲン (デンマーク) 開催場所:KUNSTFORENINGEN GL STRAND 開催期間:2018年9月23日~2018年1月14日 メキシコシティ (メキシコ) 開催場所:国立メキシコ映画館(Cineteca Nacional MEXICO) 開催期間:2016年12月1日~2017年3月31日 サンフランシスコ (アメリカ) 開催場所:ユダヤ現代美術館(Contemporary Jewish Museum) 開催期間:2016年6月30日~10月30日 ソウル (韓国) 開催場所:ソウル現代美術館(Seoul Museum of Arts) 開催期間:2015年11月29日~2016年3月13日 モンテレイ (メキシコ) 開催場所:メキシコ現代美術館(Museo de Arte Contemporaneo) 開催期間:2015年3月6日~7月26日 トロント (カナダ) 開催...

【プロップ】M16ライフル(M16 rifle)

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ジョーカーやカウボーイが使用したM16ライフル 銃を撃たないシーンではモデルガンを使用。指のような突起物が特徴 銃を撃つシーンでは実銃を使用。突起物がない  『フルメタル・ジャケット』の後半の市街戦で使用されたM16ライフル。この時撮影用に使用されたのが日本の会社MGC社製のモデルガンというのは良く知られた話で、赤丸で示した突起物の形状を見れば容易に識別可能。発砲シーンでは実銃(アメリカ空軍採用のモデル604)の空砲で、それ以外はこのモデルガンを使用したそうです。これをもって「完全主義者のキューブリックにしては・・・」という論を展開する方を見かけますが、映画撮影では安全を優先させ、必要のないシーンではダミーを使うと言うのは常識です。特に危険がつきまとう戦争映画の撮影で、必要のないシーンまで本物のライフルを使って撮影するなどあり得ません。そうでなくても映画撮影での事故(死亡事故)は珍しくないのですから。  大体「カメラに映るもの全て本物でなければならない」なんて言い出したら映画なんて作れません。要はキューブリックの求めている高いクオリティに達していればいい訳で、そういう意味ではMGC社製のM16はキューブリックのお眼鏡にかなった高品質のモデルガンである、とガンマニアやユーザーは胸を張っていいんじゃないんでしょうか。

【関連動画】『シャイニング』のゴールドルームで流れていた音楽4曲

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 『シャイニング』でジャックがムシャクシャしながらゴールドルームに向かうシーンから、パーティーシーン、バーのシーン、トイレのシーンまでバックに流れる楽曲の一覧の動画です。 Masquerade|Jack Hylton and his Orchestra / singer : Pat O'Malley Midnight, the Stars and You|Ray Noble and his Orchestra / singer : Al Bowlly It's All Forgotten Now|Ray Noble and his Orchestra / singer : Al Bowlly Home|Henry Hall and his Gleneagles Hotel Band / singer : Maurice Elwin  2はラストシーンにも流れますので有名ですが、他はうっすらとしか聴こえないので、この調査は助かります。4はサントラに収録されていますが、この曲を入れるくらいなら2を入れるべきでしょう。まあ、レーベルや契約の問題があったのかもしれませんが。  それにしてもキューブリックってジャズやワルツが好きですね。

【プロップ】MG-TD

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 『現金に体を張れ』で馬を狙撃したニッキが乗っていた車。MGとはイギリスの自動社メーカー、モーリス・ガレージ社の意味で、このTDは1950年台前半に生産されたスポーツカーです。『現金…』は1956年の映画なので、当時の洒落者が乗っていたスポーツカーという認識でよさそうです。  でも・・・オープンカーで白昼堂々と銃をぶっ放すっていうのはどうかと。まあそういった細かい事よりも犯罪映画としてのダイナミズムを優先した、と良心的に解釈しておきましょう。

【パロディ】とっても『2001年宇宙の旅』なデンマークのバターのCM

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  まあ、『2001年宇宙の旅』は世界中のCMでパロディにされているので、今更感はありますが気合いが入っていて、なかなか面白かったのでご紹介。ナレーションがなんと言っているのか分かりませんが、恐らく「LURPAKさえあれば料理の範囲が広がります」という意味なんでしょう。  全ては触れませんが、あれはあのシーン、これはあのシーンが元ネタだな。と思われるカットが何ヶ所も(笑。スターゲートをああいう風に表現する発想は面白いですね。ムーンバスもなかなかのアイデアです。BGMはもちろんアレ。製作スタッフのこだわりと思い入れが伺えて嬉しくなっちゃいます。このLURPAK、日本での取り扱いはないようですが、ちょっと味見してみたくなりますね。

【名曲】憎いあなた/ナンシー・シナトラ(Nancy Sinatra - These Boots Are Made for Walkin')

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  1966年に発表されたフランク・シナトラの娘であるナンシー・シナトラによるヒット曲。同年のビルボード・チャートで第1位を獲得した。歌詞の内容は「憎いあなた」などと可愛らしいものではなく、「ブーツは歩くためにあるものよ。その内あなたをこのブーツが踏みつけて行くかもね」とかなり挑発的で過激、浮気している男を懲らしめる内容になっている。まさにこのシーンの売春婦の挑発的な歩き方そのものだ。  『フルメタル・ジャケット』後半のベトナム・パートの最初のシーンで流れるこの曲。パイルの自殺シーンでジリジリとした緊張感を強いられていたところで、ここで一気に緊張が緩む。原作小説ではジョーカーとラフターマンがPX(米軍購買部)から映画館に行くシーンから始まるが、それではメリハリが弱いと感じたのか、売春婦とのくだらないやりとりを頭に持ってきている。

【関連動画】エンド・オブ・ザ・ワールド/死を呼ぶエイリアン脱出計画

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 映画好きも長い間やっているとだんだん耐性ができてしまい、めったな作品では感動できなくなってしまうという弊害を生んでしまいます。そうなると嗜好があらぬ方向に向かってしまい、カルトやB級、さらにそれらさえも超越した「Z級」を好むようになるという困った事態に。以前ご紹介した『恐怖と欲望』のヒロイン、ヴァージニア・リースが出演していた『死なない脳』もそうですが、こういった作品を見つけた時の香ばしい気持ちと言ったら!!・・・いえ、何でもないです(汗。  そんな管理人が見つけたZ級映画である、この『エンド・オブ・ザ・ワールド/死を呼ぶエイリアン脱出計画』ですが、何故この作品を取り上げたのかというと『ロリータ』ではスクリーンの外と中でしか共演できなかったスー・リオンとクリストファー・リー(ロリータを驚かせたフランケンシュタインの怪物)が、堂々と(!)共演しているからです。しかも主人公の妻と神父(敵のボス)というメインキャストで。  ただこの作品、早送りしないで観るのはとても困難を伴います。つまり見せ場がほとんどないグダグダ展開で、かったるくってしょうがない。これってひょっとしたらZ級ではなくて単なる駄作なのでは・・・と思ってしまうのですが、まあそれを「味」として嗜みましょう。その苦労は一瞬見せる神父の正体と唐突なラストシーンで報われ(?)ますので。

【サウンドトラック】『2001年宇宙の旅』オリジナル・サウンドトラック(2001: A Space Odyssey Original Sound Track )※CBS盤

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2001:A Space Odyssey Soundtrack(Amazon) Overtune:Atmospheres (Excerpt)(Ligeti) 2:47/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour Title Music:Also Sprach Zarathustra(R. Strauss) 1:39/Karl Bohm Conducting Berlin Philharmonic Orchestra From Earth to the Moon:The Blue Danube(J. Strauss) 9:49/Herbert von Karajan Conducting Berlin Philharmonic Orchestra TMA-1:Lux Aeterna(Ligeti) 5:57/Stuttgart Schola Cantorum Conducted by Clytus Gottwald Discovery:Gayane Ballet Suite (Adagio)(Khachaturian) 5:13/Leningrad Philharmonic Orchestra Conducted by Rozhdestvensky Star Gate:Requiem For Soprano, Mezzo Soprano, Two Mixed Choirs & Orchestra(Ligeti) 5:58/Francis Travis Conducting The Bavarian Radio Orchestra Star Gate II:Atmospheres(Ligeti) 8:37/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour Transfiguration:Atmospheres (Excerpt)(Ligeti) 1:39/Sudwestfunk Orchestra Conducted by Ernest Bour  1990年にアメリカCBSからリリースされたオリジナルMGM盤のCD化だが、一曲目に『序曲:アトモスフェール』を追加、前後に分かれていた『ドナウ』を一つにまとめて、曲順を映画の登場順に変更している。

【ロケーション】シェパートン・スタジオ(Shepperton Studios)

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シェパートン・スタジオを空軍基地に見立てて撮影中のキューブリック  『博士の異常な愛情』でバープルソン空軍基地の外観に使用されたのは、ロンドン西部、クイーンメアリー貯水池の南にあるシェパートン・スタジオです。もちろん最高作戦室など、『博士…』の他のシーンはこのスタジオにセットを建て込み、撮影されました。また『2001年宇宙の旅』のTMA-1発掘現場もこのスタジオが使用されました。(それ以外の主な撮影はボアハムウッドにあったMGMスタジオ)  因にリッパー将軍の執務室に飾ってあった滑走路がある基地の上空写真は、このシェパートン・スタジオのすぐ北側にあるヒースロー空港です。  現在は当時と様子が全く変わっています。Googleのストリートビューは こちら 。

【関連動画】スタンリー・キューブリック・アーカイブのリポート動画

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  ロンドン芸術大学内にある「スタンリー・キューブリック・アーカイブ」をリポートした動画がありましたのでご紹介。  これらの資料は元々ハートフォードシャーのキューブリック邸に保管されていたのものでしたが、2007年に遺族がロンドン芸術大学に寄贈、その際に同大学がこの保管設備を整備したものです。この動画ではほんの一端しか見る事しかできませんが、それでも『フルメタル・ジャケット』の少女スナイパーの生首や『時計じかけのオレンジ』のフィリップ・キャッスルによるイラストレーションなど、マニア垂涎のレアなお宝がゴロゴロと。  最初にチラっと映る閲覧スペースは『2001年宇宙の旅』の宇宙ステーション内部をイメージしたものです。無料で一般にも公開しているそうなので、ロンドンに行かれる際は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

【撮影・技術】ADR(Automatic Dialogue Replacement)

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ADR・Dubbing(wikipedia)   「オートマティック・ダイアログ・リプレースセメント」自動的に台詞を置き換えること。つまりアフター・レコーディング(アフレコ)もしくはダビング。  キューブリックはこのアフレコを毛嫌いしていて、マイクの小型化が実現するとすぐに採用するなど、常に撮影と台詞の同時録音にこだわった。アシスタントのレオン・ヴィタリによると、  「撮影の際に描写される雰囲気が決してADRでは、醸し出すことができないからだと思う」 とインタビューで応えている。  現場では小型マイクとブームマイクを使い分けていたようで、編集の際には他のテイクの台詞の一部分のみを切り出し、使用テイクの音源と差し替えたりするなど、あくまで同時録音にこだわっていたようだ。  キューブリックは処女作『恐怖と欲望』でアフレコに手間取り、当初4万ドルだった経費に更に上乗せして2万~3万ドル余計に支払わされる羽目になり、それもあってこのADRを嫌っていたのかもしれない。  ただし、すべて同時録音だったわけではなく、状況によって(例えば『2001年宇宙の旅』のHALのセリフ)はADRも使用している。

【コンピレーション】Dr. Strangelove: Music From The Films Of Stanley Kubrick

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Dr. Strangelove: Music From The Films Of Stanley Kubrick(Amazon) Also Sprach Zarathustra (1:48)/ツァラトゥストラはかく語りき(2001年宇宙の旅)Richard Strauss / Prague Philharmonic Orchestra Main Title (3:41)メイン・タイトル(スパルタカス)Alex North / Prague Philharmonic Orchestra Ode To Joy (5:35)ベートーヴェン交響曲第九番「合唱」第4楽章(時計じかけのオレンジ)Ludwig van Beethoven / Prague Philharmonic Orchestra Women Of Ireland (4:31)アイルランドの女(バリー・リンドン)Traditional / Prague Philharmonic Orchestra Sarabande (4:07)サラバンデ(バリー・リンドン)Prague Philharmonic Orchestra Full Metal Jacket: Themes (5:15)フルメタル・ジャケット:テーマ(フルメタル・ジャケット)Abigail Mead / Prague Philharmonic Orchestra Surfin Bird (2:22)サーフィン・バード(フルメタル・ジャケット)The Trashmen Main Title / Robbery (4:51)メイン・タイトル/ザ・ロバリー(現金に体を張れ)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra Murder 'Mongst The Mannikins (3:30)マーダー’マング・ザ・マネキン(非常の罠)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra A Meditation On War (5:52)ア・メディテイション・オン・ウォー(恐怖と欲望)Gerald Fried / Prague Philharmonic Orchestra Madness (3:45)マッドネス(恐怖と欲望)Gerald Fried / Prague Phil...

【トリビア】ジャズ・ドラマー(Jazz Drummer)

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1950年3月3日、ルック誌の取材時にジョージ・ルイス・アンド・ヒズ・バンドとセッションをするキューブリック   キューブリックはハイスクール時代、ドラマーとして数々のオーケストラやダンスパーティーなどで演奏していたそうだ。その腕前はというと当時のクラスメートによると、  「彼は、熱心に練習に来て演奏していた。スウィングやジャズ、流行の曲などを演奏している時が、一番練習に集中していた。驚くのは、練習に彼がカメラを持ってこなかったことだ。バンドに全力投球ていた。ドラムが上手だった彼はリズムをとるだけではなく、ソロもこなした」(『映画監督 スタンリー・キューブリック』より) と証言している。キューブリックは一時期はかなり真剣にジャズ・ドラマーになる事を考えたという。しかし後にツアーばかりのミュージシャンの生活を知るに及び、こんなに大変で体力的に厳しいならならなくてよかった、という旨の発言をしている。  キューブリックのこのドラマーとしての資質は映画製作にも活かされ、撮影時のアドリブを好み、まるで俳優とジャムセッションをするかようにアイデアの応酬を繰り広げていたようだ。その後の編集作業でもサウンドトラックと合わせたリズミカルな編集などにその影響が見て取れる。

【関連動画】ドキュメンタリー『ピーター・セラーズ・ストーリー』のキューブリック関連部分の動画

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 1995年、イギリスBBCの『アリーナ』で放映されたドキュメンタリー、『ピーター・セラーズ・ストーリー』のキューブリックに関する部分のみ抜きだした動画です。ピーター・セラーズ邸の裏庭のテニスコートでクリスティアーヌとペアでテニスをするキューブリック(相手はプロデューサーのジェームズ・B・ハリス)というレアなシーンも面白いですが、セラーズとカメラマンのウィージーとのやりとりが録音されているテープは貴重です。『博士…』のストレンジラブ博士の口調は、当時キューブリックが映画のスチール撮影に招聘していたウィージーの口調を真似たものですが、何故かこの事実はあまり知られていなくて、未だにキッシンジャーがモデル(キューブリックもセラーズもキッシンジャーを見たこともなかったのにも関わらず)などという間違った認識が広まったままになっています。  他にはクリスティアーヌが「特徴的」と語っていたキューブリック独特の足の組み方も映像で確認できますね。クリスティアーヌはそれがよほど印象的なのか、死去直後にそれを『スタンリーの思い出』という絵の中に描いています。

【パロディ】とある科学の超電磁砲 第13話『ビキニは目線が上下に分かれますけどワンピースは身体のラインが出ますから細い方しか似合わないんですよ』に登場した『2001年宇宙の旅』のパロディ

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水着で月面のモノリスに遭遇。まあバーチャルなんですけど   2009年秋にオンエアされたアニメ『とある科学の超電磁砲 』の第13話『ビキニは目線が上下に分かれますけどワンピースは身体のラインが出ますから細い方しか似合わないんですよ』でパロディにされた月面のモノリスです。また、ツインテールの女の子が骨を持っていたり、月、地球、太陽の天体直列があったりします。BGMは言わずもがな。全く脈絡なく唐突に始まりますので、まあスタッフのお遊びでしょう(笑。  このようにアニメでキューブリック作品のパロディを探そうと思えば結構ありそうです。『エヴァ』や『ガンダム』は「影響」なので、それを取り上げるとなると論じなければならくなってしまい、当ブログの趣旨から外れしまいますのであえて触れませんが、こういったお遊びやパロディは嫌いじゃない(もっと遊んでもらってもいいくらい)ので、今後も取り上げていきたいと思っています。

【関連動画】『フルメタル・ジャケット』の日本版劇場用予告編

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 現在DVD等に収録されているのはオリジナルの公式予告編ですので、この日本版予告編映像のソースはどこからのものでしょうか。キューブリック作品はVHSを始めLDなど様々なメディアで映像ソフト化されていますので、それらのいずれかに収録されていたものかも知れません。もしくはどなたかがたまたま録画しておいたのが残っていたとコアか。ナレーションは内海賢二氏のようです。

【アーティスト】アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)

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 オランダ、アムステルダム出身の建築デザイナー。『2001年宇宙の旅』で、ボーマンとプールが食事に使用したカトラリーは、ヤコブセンが1957年にコペンハーゲンのSASロイヤルホテルのためにデザインしたもの。そのミニマムなフォルムは『2001年…』の世界観にピッタリで、キューブリックが採用したのもうなずけますね。しかし・・・高すぎます(笑。インテリアが好きな方にはAJテーブルランプやセブンチェア、ローゼンダール時計などが有名。