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【関連記事】中川翔子さん(マルチタレント)と読む『2001年宇宙の旅』

 ヲタクアイドルとして有名な中川翔子さんの『2001年宇宙の旅』(小説版)のインタビューがありましたのでご紹介します。  『2001年宇宙の旅』は先に映画を見ていました。ナレーションもなく、謎めいている。もっと深く知りたくて本を読んでみたら、宇宙船の目的地が、映画では木星なのに、土星なんですね。サルたちの生態、モノリスを月に埋め込んだ者の描かれ方、コンピューター「HAL」との心理戦……映画とは違う感じで、戦慄(せんりつ)を覚える瞬間がいくつもありました。 (引用: ブック・アサヒ・コム/2012年04月22日 )  常日頃からオタクを公言していた彼女が、日本のマンガやアニメに引用されまくっている『2001年…』とこの小説に触れていた事には驚きませんし、感想もまあ当たり前のものかな、と思いますが、これを読む限り彼女はちゃんと『2001年…』の本質に思いを馳せるまで到達しているようです。でないと「思い出す本 忘れない本」というテーマを与えられて『2001年…』を選ぶなんてことまずないですからね。  「小説を読まないと理解できない映画なんて欠陥云々」という評もよく見かけますが、映画→小説→映画という順番で鑑賞すると、映画は映像でちゃんと「説明」してるんですよね。例えば猿人が一瞬モノリスをフラッシュバックするとか、月のモノリスがちゃんと陽を浴びてるとか。だから当時は「なんで気づかなかったんだ!」と自分の未熟さ加減に地団駄を踏んだものですが、最近の視聴者には荷が重いようです。でも彼らは悪くないでしょう。目先の利益ばかり追い続け、低レベルの映画や音楽を垂れ流し続けた大人が悪いのです。反省しましょう。

【考察・検証】『ロリータ』はロリコン映画か?

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 キューブリックの『ロリータ』はすこぶる評判が宜しくない。曰く「ロリータがロリじゃない」「ロリータむかつく」「全然エロくない」「おっさんの行動意味不明」「トタバタコメディが笑えない」などなどネット上の評判はさんざん。時代性を考えれば仕方ない部分があるにせよ、それら批判に対して有効な反論ができないのもまた事実。だってタイトルが『ロリータ』ですからね。それはもう萌えまくらせてくれるって思いますよね普通。  まあ、ロリコンの定義自体、この頃と現在じゃかけ離れているので、まずそこから話を始めないとどうしょうもない。で、その定義とは小説によると「偏愛とも言える屈折した恋愛感情で、その対象がローティーンに固執した形。幼少期に於ける思い入れの激しい恋愛とその喪失感が主な原因」として描かれています。簡単に言えば「少女偏愛」ですね。屈折してますがまあ広義には恋愛と言えるものです。ところが今では「幼児的従順さと稚拙な精神性を美化し、自分だけに性的興奮を向けるよう少女に要望するエゴイスティックな性向」に変化してしまってます。つまり「自分は何もしないけど、少女は自分だけに従順で純粋でいなきゃ駄目、性欲は自分だけに向いてなきゃ許さないよ」って事です。こうなるともう恋愛などというものではなく、単なる自己愛と現実逃避ですね。もちろんそんなロリコンではない作家が『ロリータ』という小説を書き、ロリコンでない監督が映画化しても、それはどうしたって「ロリコン映画」にはなりようがないって事です。  ハンバートは少女偏愛について確固たる定義と信念を持ってます。そのハンバートが見つけた最高の少女、それがロリータです。でもなかなか思う通りには事は進みません。だけどハンバートは嫌いになるどころか、困らせられれば困らせられるほどロリータにのめり込んでいきます。でもある日突然ロリータはいなくなります。この時のハンバートの喪失感はいかほどだったでしょう。次にロリータがハンバートの前に姿を現したのはもう少女でも女でもなく結婚して単なる妊婦になってました。つまり「産む肉塊」です。でもその時始めてハンバートは少女偏愛などという偏狭なものではなく、一人の女性として本当にロリータを愛していた事に気が付いたのです。  まっ、女性からすれば「勝手に天使だ妖精だって妄想膨らませておいて、いまさら愛してます、結婚してくださいって馬鹿じゃ...

【名曲】ヘンデルのサラバンド(Suite No. 4 in D Minor, HWV 437, Sarabande)

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 『バリー…』でメインテーマとして扱われた『サラバンド』、正式には『ハープシコード組曲 第2番 HWV437 第4曲 サラバンド』ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲です。日産フーガのCMで使われたり、邦画『劒岳 点の記』に使われたり、あの宮崎アニメ『風の谷のナウシカ』でも「ナウシカ・レクイエム」として使われ、いやパクリ、いやいや多大なる影響を与えています。一度聞いたら耳を離れない印象的なメロディ。キューブリックはこういう既存曲を探すのが本当に上手いですね。

【関連書籍】時計じかけのオレンジ/アンソニー・バージェス 著

 キューブリックの『時計…』があれだけの傑作になったのは、もちろんキューブリックのセンスによるところも大きいのだが、この原作小説が傑作であった事に拠るのは疑うべくもない。  原作のアレックスの残忍さは映画以上で、暴行、強盗、強姦、殺人と悪行の限りを尽くしている。その上裏切りや寝返り、ゴマすりが上手ときている。それに映画以上に頻出する「ナッドサット言葉」は、大人や社会とのコミュニケートを完全に拒否した今の若者の姿そのものだ。また、アレックスは恐ろしく頭が良く、温和な両親と暖かな家庭がある点も見逃せない。不遇な家庭環境が非行を呼び込む、という旧来の図式が完全に崩れ去るのを、60年代に予見していたのには驚くばかりだ。  キューブリックは『ナポレオン』の企画が中止された後、テリー・サザーンにもらったままになっていたこの小説を読み、たちまち魅了されたという。また「小説の答えはすべて小説の中にある。それを見いだせないとするならば、それは単なる怠慢だ」とまで言い切っている。そんなキューブリックに対し、この作品を「暴力賛美」とか「非行を助長する」と非難し、上映中止まで追い込んだ一部のマスコミや団体は、キューブリックにはさぞかし「怠慢」に思えてならなかっただろう。  この小説に魅せられたのはキューブリックだけではなく、かのローリング・ストーンズもミック・ジャガー主演で映画化を検討していたらしい。だが肝心のバージェスはこの小説を忌み嫌っていたようで「クズ本」とか「ムカムカする」とか言いたい放題。作中の小説家と同じように妻をレイブされた経験があり、自身も脳腫瘍と診断され、酒を浴びるように飲みながら書いた本を好きになれない気持ちも分からないでもないが、映画の公開時にはプロモーションで各地を飛び回っていた事実を考えると、正直疑問が残る。ちょっと穿った見方かも知れないが、この映画に対するあまりにも激しい批判と脅迫に恐れをなし、否定的な立場をとるようになったのではないだろうか。(もしそうだとしてもバージェスを批判する気はさらさら無いが)  尚、日本版の旧版では最後の一章が掲載されていないが、それは当時のアメリカ版に倣ったようだ。この『完全版』でやっと全訳となったが、これは当時のバージェスの意思(たとえ担当編集者の圧力に屈したのだとしても)にを反映したものであるので、この件については全く異論はない...

【インスパイア】手塚治虫の『時計仕掛けのりんご』

 以前、 ここで 手塚とキューブリックのつながりを紹介したのだが、手塚はこんな作品も発表している。もちろん元ネタは『時計じかけのオレンジ』。ただしキューブリックの映画版ではなくアンソニー・バージェスの小説版だ。なにしろこの短編が発表されたのは1969年4月。キューブリックの『時計…』の製作発表が1970年3月、公開は1971年の12月だった事実を考えると当然手塚はキューブリックの映画版を観ていないどころか、キューブリックが映画化を決定する以前にこの作品を描いたことになる。  当時手塚は小説は読んでなく、小説の紹介記事を元にこの短編を執筆したそうだ。そのため内容は小説とは全く関係なく、完成度が低くオチもいまいち。だが偶然とはいえ、キューブリックと手塚がほぼ同じタイミングでこの小説に興味を示したという事実に、なにがしかの因縁めいたものを感じずにはいられない。

【関連記事】スタンリー・キューブリック監督の右腕として25年間仕事をしてきたレオン・ヴィタリ

 映画ファン、あるいは映画を志したことのある人たちの間で、スタンリー・キューブリック監督の名を知らない人は恐らくいないであろう。ハリウッドを代表する監督スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラでさえも敬意を表してきた偉大な監督だ。だがこれほど多大な影響を及ぼしてきた彼のことについては、わずかな書物と資料不足のインターネットの情報でしか知ることができない。今回は、スタンリー監督の映画『バリー・リンドン』にブリングドン侯爵として出演し、後に彼の右腕として25年間ともに仕事をしてきたレオン・ヴィタリにスタンリー監督の撮影方法から私生活まで話を聞いてみた。 〈以下引用元で〉 (引用: ~この人の話を聞きたい~その22 シネマ・トゥデイ/2008年3月17日 )  キューブリックのパーソナル・アシスタントとして常にその側にいたレオン・ヴィタリのインタビュー。『バリー・リンドン』のブリンドン卿と言えば思い出す人も多いはず。その内容はキューブリックにまつわる一つの固定観念「完全主義者」のレッテルを剥がすのに多いに興味深いものでした。実は私、キューブリックを完全主義者だとは思っていません。その考察はまとまったら記事として投稿したいと思います。

【トリビア】F.D.R DEAD(フランクリン・ルーズベルト死す)

  キューブリックが初めて写真でお金を稼いだ記念碑的な作品。正式には『スタンリー・キューブリック、無題、1945年4月』。ルック社に25ドルで買い取られ、写真雑誌『ルック』6月26日号に掲載された。この時キューブリックは高校在学中でまだ16歳。早熟すぎますね。そして高校卒業後、ルック社で報道カメラマンとして4年余り働く事になる。

【アーティスト】ハーマン・マキンク(Herman Makkink)

 『時計じかけのオレンジ』で使用されたペニス型のオブジェとアレックスの部屋にあったキリスト像の作者。  1966年からロンドンに定住し、そこで作家のジュリア・ブラックバーンと出会う。ロンドン印刷大学の3D部門で技術助手として働いている間に、基本的な彫刻技術を習得。画家で弟のコルネリス・マキンク(1940~1993年)と共に、アーティストのブリジット・ライリーとピーター・セッジリーが率いる「S.P.A.C.E.」からセント・キャサリン・ドックのスタジオを借り受け活動した。キューブリックはマキンクの作品を見て『時計じかけのオレンジ』で使用されている2つの作品「ザ・ロッキングマシーン」と「クライスト・アンリミテッド」を購入した。  マキンクは「S.P.A.C.E.」を通じていくつかのグループ展に参加し、1971年にコート・トールド美術館で個展を開催。1972年にはアムステルダムに戻って、彫刻を製作したり、アカデミーでアートを教えたりしていたそうだ。  1937年オランダ・ウィンショーテン生まれ。1961年には日本に住んでいたことがあるそう。2013年10月20日死去、享年75歳。

【交流録】ダイアン・アーバス(Diane Arbus)

 畸形者や障害者、性倒錯者などを被写体にした作品で知られる著名な女性写真家。キューブリックがルック社にカメラマンとして在籍していた頃、彼女に気に入られ可愛がられたそうだ。ただし、その頃は夫妻でファッションカメラマンをしており評価は高くなかった。彼女の代表作は 「一卵性双生児 ローゼル ニュージャージー州 1967年」 で、一般的には『シャイニング』に登場した双子の少女はこれのオマージュ(「もしくは着想元)と言われるが、キューブリックがそのような発言をした事実はないので注意が必要。もちろん師弟関係でもない。  1923年3月14日アメリカ・ニューヨーク生まれ、 1971年7月26日自殺により死去、享年48歳。

【サウンドトラック】ミュージック・フロム・モーションピクチャー・サウンドトラック『2001年宇宙の旅』(Music From The Motion Picture Sound Track 2001: A Space Odyssey)※ポリドール盤

ツァラトゥストラはかく語りき( R.シュトラウス)(18:38)/カール・ベーム指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団|Also Sprach Zarathustra(Richard Strauss)/Karl Bohm Conducting Berlin Philharmonic Orchestra ソプラノ、メゾ・ソプラノ、2つの混成合唱と管弦楽のためのレクイエム(リゲティ)(4:17)/フランシス・トラヴィス指揮:バイエルン放送交響楽団|Requiem For Soprano, Mezzo-Soprano, 2 Mixed Choirs & Orchestra(Gyorgy Ligeti)/Francis Travis Conducting Bavarian Radio Orchestra 永遠の光を(リゲティ)(7:57)/ヘルムート・フランツ指揮 :北ドイツ放送合唱団|Lux Aeterna(Gyorgy Ligeti)/Choir Of Norddeutscher Rundfunk Under Helmut Franz 美しく青きドナウ(J.シュトラウス)(9:56)/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団| The Blue Danube(Johann Strauss)|Herbert von Karajan Conducting Berlin Philharmonic Orchestra 舞踏組曲《ガイーヌ》から「アダージョ」(ハチャトゥリアン)(5:20)/ゲンナディ・ロジェストヴェンスキー指揮:レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団|Gayne Ballet Suite(Adagio)(Aram Khatchaturian)/Leningrad Philharmonic Orchestra Conducted By Gennadi Rozhdestvensky 無限の宇宙(リゲティ)(8:38)/エルネスト・ブール指揮:南西ドイツ放送管弦楽団|Atmospheres(Gyorgy Ligeti)/Sudwestfunk Orchestra Conducted By Ernest Bour ツァラトゥストラはかく語りき( R.シュトラウス)(1:41)/カール・ベーム指揮:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団...

【関連動画】現代風に再構成された『2001年宇宙の旅』の予告編

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   まあこういった類いの代物は面白がっていい訳だし、口角に泡飛ばして怒り狂うほど悪いデキでもない。2001年が既に過去になった現在でもこうしていまだに話題に上るのも、その影響力の証左であるので、微笑ましく眺める余裕を持ちたいものだ。ただ、キューブリックの創った映像があまりにも「静的」で「美的」あったために、真逆の「動的」で「刺激的」に編集するのにものすごく苦労しているのが手に取るように分かるのは興味深い。これはいかに『2001年宇宙の旅』がトータルなコンセプトとセンスを元に、隅々まで完成され尽くしている作品なのかを証明している。

【キューブリック展】アート界の常識を覆す──LACMA CEO マイケル・ゴヴァン氏インタビュー

 映画にまつわるエキシビジョンを美術館で行うという、ありそうでなかったプロジェクトに奔走するLACMAのマイケル・ゴヴァン氏。映画の都ロサンゼルスでグッチのサポートを受け実現する、映画とアートを融合させるその試みについて聞いた LACMA スタンリー・キューブリック展  『時計じかけのオレンジ』『2001年宇宙の旅』など数々の映画史に残る名作を作ったスタンリー・キューブリックの軌跡を辿る展覧会。実際に使用された衣装や小道具などとともに展示される手書きのメモやアイデアノートから制作・撮影過程を知ることができる。決して映画では知ることのできなかった映画界の天才の頭を垣間見ることのできる内容だ。2013年6月30日まで開催中。 (引用: GQ Japan/2013年1月17日 )  まあ、アメリカに行った事のない自分でさえLAよりNYの方が「アートっぽい」と思いますからね。氏の苦労はいかほどばかりか、想像以上に大変だったことでしょう。2015年に敷地内に映画ミュージアムを建設する事になっているそうですが、「映画の都」と称されるLAでさえこうなら日本では・・・都心では逆に地価の問題で実現が難しいでしょうから、どっか地方都市で手を挙げませんかね?いい集客施設になると思うのですが。

【台詞・言葉】牡蠣〈カキ〉と蝸牛〈カタツムリ〉(Oysters and Snails)

 『スパルタカス』でクラサスとアントナイナスの同性愛を示唆しているとカットされた風呂場のシーンで語られる例え。クラサスは自分の身体をアントナイナスに洗わせながら「牡蠣は食うのか?」「蝸牛は?」「牡蠣を食うのは美徳で蝸牛は悪徳か?」「味覚と食欲は違う、故に徳とも関係ない」などとねっとり語っているので示唆どころかそのまんまです。さすがリアルでもホモ(正確にはバイセクシャル)だったローレンス・オリビエ、演技とはとても思えません。  まあこのシーンがないと、クラサスがスパルタカスに激しく嫉妬し憎悪を向ける理由が、アントナイナスとバニリアの両方に愛されたからだという説明の片方が欠けるわけで、それなりに重要ではあります。その意味では完全なオリジナルプリントが残っていない状態で、しかもオリビエは既にこの世を去っていたというハンデにも関わらず復活させた関係者(特にクラサスの台詞をアフレコしたアンソニー・ホプキンス)の努力には頭が下がります。

【登場人物】クラサス(Crassus)

 『スパルタカス』でローマ元老院で閥族派(オプティマス)の長老。女奴隷のヴァリニアを気に入り、スパルタカスからヴァニリアを奪おうと何かと画策するが結局果たせなかった。クラサスが同性愛者だったことを暗示させるシークエンスは、当時の検閲を考慮してカットされたが、後のTV放映やBD等では『復元版』として復活している。演じたローレンス・オリビエは実際にホモセクシャル(正確にはバイセクシャル)だったようで、マーロン・ブランドとプールでキスしていたところを目撃されている。マーロン・ブランドといえば『片目のジャック』でキューブリックと対立し、遂には追い出してしまった元凶。その二人の間では当時「やあローレンス、キューブリックとは上手くいっているかい?」「君は奴を自分の映画から追い出したそうじゃないか、マーロン」「あの若造は俺の言う事にはいっさい従わなかったからな。そういう奴は大嫌いなのを知ってるだろ?」「ああ、よく知ってるよ、マーロン・・・」などという会話が交わされた・・・のかも知れない。

【俳優】ローレンス・オリビエ(Laurence Olivie)

 『スパルタカス』でクラッカスを演じた言わずと知れた名優。スター俳優だが渋い脇役としての起用も多く、それも印象に残る役が多い。他の出演作は『お気に召すまま』('36)、『嵐ケ丘』('39)、『レベッカ』('40)、『ヘンリー五世』('44)、『ハムレット』('48)、『黄昏』('52)、『三文オペラ』('53)、『リチャード三世』('55)、『王子と踊子』('57)、『空軍大戦略』('69)、『三人姉妹』('70)、『探偵スルース』('72)、『マラソンマン』('76)、『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』('76)、『遠すぎた橋』('77)、『ジャズ・シンガー』('80)、『タイタンの戦い』('81)など。  『ハムレット』でアカデミー主演男優賞受賞している『ヘンリー五世』はキューブリックが選んだ映画ベスト10の第6位にランクしていることから、その監督・主演俳優を演出できただけでも『スパルタカス』に参加した意義があったのかも知れない。貴族(Lord)の爵位を与えられるくらい賞賛されているが、結婚生活も二度破綻させ(ひとりはあのヴィヴィアン・リーだ)三度目の結婚でやっと落ち着いた。ただ、実はバイセクシャルだったと三人目の妻ジョーン・プロウライトは回想している。  1907年5月22日生まれ、1989年7月11日死去、享年82歳。

【考察・検証】『スパルタカス』を巡るキューブリックとカーク・ダグラスの暗闘

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 生前「『スパルタカス』は私の作品ではない」と発言していたキューブリック。作品の製作に関する事全てを把握しコントロールするのが信条のキューブリックにとって、そうはならなかった本作品を除外したい気持ちは痛いほど分かる。実質的に現場を取り仕切っていたのがカーク・ダグラスとドルトン・トランボであり、事あるたびに衝突していたという事実を考えれば、キューブリックがいつ降板しても不思議ではない状態にあったはず。では何故そんな屈辱的な状況にも関わらずこの仕事を降りなかったのか。当時のキューブリックの置かれた状況からまずは考察してみたい。  キューブリックにとってハリウッド3作目に当たる本作は、『突撃』で獲得したハリウッド内での地位を確たるものにし、さらに一般レベルでの認知度を広めるには絶好のチャンスだったに違いない。何故なら当時流行の歴史スペクタルカラー大作であり、スターが軒並み出演する話題作でもあり、何よりもビックネーム、カーク・ダグラスが主演するのである。これはもうヒット確実で上手く行けばアカデミー賞さえ狙えると考えるのが当然である。キューブリックはこの作品に「監督」としてクレジットされれば、その後の作品制作の資金集めやマスコミの注目度など、メリットは計り知れないと考えたはず。そのためにはなんとしてでもこのプロジェクトをやり遂げなければならず、それによる数々の(キューブリックにとっての)不合理には耐える以外になかったのであろう。  その野心の一旦は、本作を監督しながら着々と次作『ロリータ』の準備をしていたことからも伺える。つまり『スパルタカス』の話題がまだホットな内に、あまり間を空けず矢継ぎ早に作品をリリースしたいというキューブリックの思惑が垣間見える。そんな野心丸出しのキューブリックを見てカークが好意的に思うはずはなく、両者の不仲は決定的なものになる。カークにとってキューブリックは「才能を見いだし、チャンスを与えてやった後輩監督」なのであり、「自分はキューブリックの恩人」という自負もあったはず。そんなカークを顧みず、自身の野望のためにひたすら邁進するキューブリックに理解を示す要素など皆無だ。  本作は世界中で大々的に興行され大ヒットし、アカデミー賞(助演男優賞・撮影賞・衣裳デザイン賞)を受賞する。自分のやり方は間違ってなかったとカークの自尊心はさぞかし満たされたであろう。こ...

【俳優】アンソニー・シャープ(Anthony Sharp)

 『時計じかけのオレンジ』の内務大臣役と、『バリー・リンドン』のハーラン卿を演じた。  他の主な出演作は『剣と薔薇』(1953)、『姿なき訪問者』(1965)、『ジョーカー野郎 』(1967)、『明日に賭ける 』(1967)、『大逆転』(1969)、『最後の脱出』(1970)、『ブラック・スネイク』(1973)、『まぼろしの緑の騎士 』(1973)、『魔界神父』(1976)、『王子と乞食』(1977)、『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983)、『わが父を巡る航海』(1984)など。  1915年6月16日イギリス・ロンドン出身、1984年7月23日死去、享年69歳。

【俳優】フィリップ・ストーン(Philip Stone)

 元々は舞台俳優だったがキューブリックに見いだされ、『時計じかけのオレンジ』ではアレックスのピー(パパ)を、『バリー・リンドン』では執事のグレアムを、『シャイニング』ではホテルの前管理人のグレイディを演じた。赤いトイレでジャックに「言うことを聞かないなら〈矯正〉が必要ですな」と説教をするシーンは可笑しく、また恐ろしい  他の主な出演作は『宇宙から来た女』(1964)、『007/サンダーボール作戦 』(1965)、『荒鷲の要塞 』(1968)、『ポンペイ殺人事件』(1970)、『愛を求めて』(1971)、『アドルフ・ヒトラー/最後の10日間』(1973)、『オー!ラッキーマン』(1973)、『さすらいの航海』(1976)、『ダブル・シークレット・エージェント/世界を揺るがせたスパイたち』(1977)、『恐怖の魔力』(1978)、『指輪物語』(1978)、『失われた航海』(1979)、『フラッシュ・ゴードン』(1980)、『エメラルド大作戦』(1981)、『オペラ座の怪人』(1983)、『フィービー・ケイツの レース』(1984)、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984)、『ある作家と死』(1985)、『ジェニーズ・ウォー』(1985)、『フィービー・ケイツの レース II 』(1985)、『ベイビー・オブ・マコン』(1993)、『十戒』(1995 )など。『オー…』では、再度マルコム・マクドウェルと共演している。  1924年4月14日イギリス・ウエストヨークシャー州生まれ、2003年6月15日死去、享年79歳。

【名曲】雨に唄えば(Singin' in the Rain)

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 有名なミュージカル映画、『雨に唄えば』の主題歌。でもここで取り上げるのは、もちろん『時計じかけ…』のアレックスが歌っているから。実は当初、暴力シーンでアレックスがこの歌を歌う予定はなかったのだが、リハーサルの際、役のマルコム・マクドウェルが唯一歌詞を知っている歌として歌ったことがきっかけとなり、映画に採用した・・・というのは有名すぎるぐらい有名な話。でも、あまりにも例のシーンのインパクトが強すぎて今この動画を観ても全然「Happy Again」になれません・・・というか、違う意味でハッピーになってる自分が怖いライティライト?

【作品論】海の旅人たち(The Seafarers)

 キューブリックが1953年6月に船員国際労働組合の広報用に撮影技術だけを提供したドキュメンタリー。クレジットには「監督・撮影」とあるが、実際には雇われ仕事として撮影を担当したに過ぎなかったようだ。もちろん編集も担当していない。  当時25歳のこの時点でドキュメンタリー映画3本(内1本は未確認)、劇映画を1本製作していたキューブリックは、初めてカラー作品あるにも関わらず、海千山千の海の男たちを向こうに回して堂々とカメラを回していた事にまず驚く。これは年配のベテランカメラマンの仕事と言っても誰一人疑う者はいないだろう。キューブリックは以前勤めていたルック社の得意先であるアメリカ労働総同盟から、メキシコ湾岸地域事務所の広報映画を作りたいとのオファーがあり、これを引き受けたようだ。  内容は特に特筆すべきものはなく、組合の活動内容の紹介に終始し、関係者以外にとっては退屈以外の何物でもない。並々ならぬ映画への情熱とこだわりがあったキューブリックが、単なる広報映画のオファーを引き受けた理由は分からないが、カラー撮影の経験ができる、この春に公開になった初めての劇場用作品『恐怖と欲望』の制作費の穴埋めになる等の考えがあったであろう事は容易に想像できる。それだけキューブリックは自らの映画監督としての才能に賭けていたのだ。そのためならこの程度の撮影技術の提供なら致し方ない、と割り切っていたのではないだろうか。  ただ、最大の誤算はその後あまりにも偉大な監督になりすぎてしまい、本来なら時の彼方に埋もれて、忘れ去られてしまう筈のフィルムがこうして陽の目を浴びてしまったことだろう。YouTubeという誰でも視聴できるプラットホームに堂々とアップロードされているさまをキューブリックが知ったら、さぞかしバツの悪い思いをするに違いない。

【スタッフ】ウォーリー・ヴィーヴァース(Wally Veevers)

  イギリスのベテラン特撮マン。『博士の異常な愛情』では、 B-52の飛行シーン、『2001年宇宙の旅』では宇宙船の合成のほか特撮全般を担当した。1983年死去。

【スタッフ】ジェフリー・アンスワース(Geoffrey Unsworth)

  イギリス映画界を代表する名カメラマン。『2001年宇宙の旅』に撮影監督として参加後、『オリエント急行殺人事件』('74)、『ピンクパンサー2』('74)、『遠すぎた橋』('77)、『テス』('79)などを撮影する。 また、『キャバレー』('72)と『スーパーマン』('78)では、アカデミー賞撮影賞を受賞している。  1978年63歳で死去。

【スタッフ】ダグラス・トランブル(Douglas Trumbull)

 SFXといえばこの人、という位有名な特撮マン。 そのキャリアをスタートさせたのが『2001年宇宙の旅』だ。 スター・ゲートの「スリット・スキャン」を始め様々な特撮シーンを担当し、例えば宇宙船のコクピットに映し出されるCGは、なんと彼の手描きによるアニメーションによるもの。しかし当初はイラストレーターをして雇われたに過ぎなかったというから才能というものは分からない。『2001年…』ではアカデミー賞特殊視覚効果賞にノミネートされる予定だったが、アカデミーから「一つの賞にノミネートは3人まで」と言われて仕方なくキューブリックが代表で賞を受け取った。  『2001年…』後に特撮の会社設立し、『未知との遭遇』、『スター・トレック』('79)、『ブレードランナー』('82)などの作品を担当している。また、『サイレント・ランニング』('71)、『ブレインストーム』('83)では、自ら監督を務めた。代表作『サイレント…』は未だカルト的な人気を集めていて『2001年…』で挫折した土星の輪の映像化に成功した。  1942年4月8日カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。 2022年2月7日、 中皮腫 による合併症により死去 。享年79歳。

【関連書籍】未来映画術「2001年宇宙の旅」/ピアース・ビゾニー 著 浜野 保樹 訳 門馬 淳子 訳

  『2001年宇宙の旅』の貴重な写真、図版等を多数収録した豪華本。当時謎とされた特撮も、当時のスタッフの証言等により詳細に解説されている。再現された宇宙機のイラストがとても美しい。

【交友録】手塚治虫とキューブリックからの手紙

 手塚治虫宛にキューブリックから「次に制作するSF映画(『2001年…』)の美術監督を引き受けて欲しい」とのオファーの手紙があり、「僕には食べさせなければならない家族(社員)が100人もいるのでそちらには行けない」と返事、するとキューブリックから「それは残念です。しかし100人の(個人的な)家族というのはアメリカ人にとっては驚きです」というエピソードは有名だけど、一時は手塚の作り話としてその真偽を疑われた事も。現在では無事証拠の封筒も発見され疑いも晴れたけど、その封筒の消印を見ると手紙のやりとりは1964年の暮れから翌65年の始めの頃だということがわかります。  『2001年宇宙の旅』のアウトテイク集『失われた宇宙の旅2001』よると丁度スターゲートまでのおおまかな筋書きが完成した頃で、1965年2月の記者発表の直前。この「おおまかな筋書き」というのは、クリンダーという異星人が登場したり、当初はソクラテスという名前だったロボットがアテーナというコンピュータになったり、地球上でのモノリスに関する様々な騒動や議論や(この案ではモノリスの存在は秘匿されていない)、ディスカバリー号が木星に無事到着しクルーがモノリスの調査をしたりと、いかにも当時の冒険ものSF然としていて、この内容なら手塚にオファーがあっても不思議じゃないですね。  記者発表後にこの筋書きはボツにされ、より完成度を高めるためにNASAを始めとする多くの専門機関の協力を仰ぎ、1965年末に撮影がスタートする頃には現在の形にほぼ固まっていたようです。やがて公開になった『2001年…』を観た手塚は「そこまでやるんだったら僕はやらないほうが良かった」とコメント。それは「そこまでやるなら僕の出る幕はない」という意味でしょうね。 追記:この件に関して真偽を疑う論調もあるようなので、改めて検証記事を作成しました。

【作品論】拳闘試合の日(Day of the Fight)

 キューブリックが生まれて始めて製作・撮影・監督した映像作品は、映画館で上映されるニュース・フィルムという形で実現した。その後の映画監督してのキャリアは、全てこの16分のモノクロ短編映画から出発したという意味で、非常に価値のある、記念碑的作品だ・・・とはいえ、観ていただければ分かる通り、当時のニュース・フィルムの範疇を超えるものではなく、ごく当たり前でありきたりな物。キューブリックが製作したものでなければ時の彼方に忘れ去られ、棄てられていたであろう。  ただし、この時キューブリックはまだ21歳。そんな若造が制作費3900ドル(約140万円。ただし実際は4500ドルかかったという話も)を自力で調達し製作、それを配給会社に4000ドル(約144万円)で売りつけるという事をやってのけたのであり、この事実だけでも特筆に値する。21世紀の現在でも、ここまでの強い自信と野心を持って行動できる若者がどれほどいるだろうか。  映像的には洗練され、当時のプロの水準に達していることは疑いない。登場するボクサーとマネージャーは個人的にも交流のあった双子の兄弟。キューブリックは映像デビューするにあたり一番身近でコントロールしやすい取材対象を、スタッフも身近な友人・知人ばかりを集め、なおかつ金銭面も自己資金で賄い、不足分は父に借りるなどリスクを最小限に抑えて作品を創っている。一見保守的で後ろ向きな方法と思われがちだが、要するに全て自分のコントロール下に置きたかったのだろう。失敗できないというプレッシャーもかなりあったに違いない。  「成功しても失敗してもリスクは全て自分が負う。そのかわり自分の作品に関する事柄には全て関与する」この方針はこのデビュー作以降、『スパルタカス』を除き生涯変わることはなかった。

【関連記事】鬼才映画監督・スタンリー・キューブリックが撮影したシカゴの街並みの画像32枚

 「2001年宇宙の旅」「ロリータ」「シャイニング」などで知られる鬼才・スタンリー・キューブリックは、映画を撮影する前にはカメラマンとして写真雑誌で活躍していました。これはその時代にシカゴの街並みを捉えたもの。後の映像作りに通じるセンスを感じます。 (引用: デイリィ・ニュウス・エィジェンシィ/2012年6月13日 )  ルック社在籍時の取材写真のアウトテイクでしょうね。ただ「鬼才キューブリック」って久しぶりに聞きました。死去前なら度々聞いた表現でしたが、今時この枕詞を使う人って皆無でしょう。

【俳優】マディソン・エジントン(Madison Eginton)

 『アイズ ワイド シャット』でハーフォード夫妻の一人娘ヘレナを演じた。  他の出演作は『スタートレック/ジェネレーションズ』(1994)でのピカード艦長の娘役や、『サイコ・ビーチ・パーティ』(2000)など。そういえばこの時の敵役はあのマルコム・マクドウェルでした。最近ではすっかりふくよか・・・イヤ立派な大人になってます。  1989年8月28日生まれ。

【登場人物】ヘレナ・ハーフォード(Helena Harford)

 『アイズ ワイド シャット』で、ビルとアリスの一粒種。作中特に重要な役割は担っていない。本作に限らないが、キューブリックは子供に関しては常に優しく撮っている。その代わりに周囲の大人たちは必要以上に醜悪に描く。そのコントラストが絶妙だ。

【名曲】ショスタコーヴィチの舞台管弦楽のための組曲 ワルツ2

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 タイトルを見て「あれっ?」と思われた方も多いはず。『アイズ ワイド シャット』のオープニングのタイトルバックで使われたのは『ジャズ組曲2番 ワルツ2』のはずでは?と。実は以下のような経緯があるそうです。  オリジナルの第2番は1938年に作曲されたが、戦争によってオーケストラの楽譜が消失し、2000年になってピアノ総譜が発見されるまで、その内容は謎に包まれていた。それどころか、全く関係がない曲と混同されてもいた。イギリスの作曲家G・マクバニーによってオーケストレーションが行われ、2000年9月9日に初演された。 現在「第2番」と呼ばれているのは、誤って「第2番」として知られているもので、この曲の本来の題名は舞台管弦楽のための組曲である。 舞台管弦楽のための組曲 1950年代に作曲された。全8曲からなり、旧作からの引用やアレンジが見られる。演奏時間は約20分。 行進曲 (映画音楽「コルジーンキナの出来事」より) リリック・ワルツ ダンス1 (映画音楽「馬あぶ」より) ワルツ1 小さなポルカ ワルツ2 (映画音楽「第1軍用列車」より) ダンス2 フィナーレ (引用: Wikipedia / 「ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ)」 )  映画の公開は1999年ですから、訂正のしようがありませんでしたね。キューブリックが『アイズ…』で使用したばっかりに誤記である『ジャズ組曲2番 ワルツ2』が広まってしまったのだとしたら皮肉というかなんと言うか・・・現在では完全に一般化してしまい訂正が不可能な状態に。『ジャズ組曲1番』の3曲はダンス曲ながらブルーノートの多用でなんとなく「ジャズ」と言われても納得できたのですが、<a href="http://www.youtube.com/watch?v=rkXQXAvMICs" target="_blank" title="">『ジャズ組曲2番』の全曲</a>を聴いて「これのどこがジャズ?」を首を傾げた方も多かったはず。管弦楽で、しかも本来は映画用の劇伴音楽だったんですね、これで納得できました。

【スタッフ】リズ・ムーア(Liz Moore)

 『2001年宇宙の旅』のスターチャイルド、『時計じかけのオレンジ』のコロバミルクバーのヌードテーブルやヌードミルク販売機を手がけた天才アーティスト。『スター・ウォーズ』のストーム・トゥルーパーやC3POの造形も担当した。1976年8月13日、当時の恋人ジョン・リチャードソンが『遠すぎた橋』撮影のためにオランダに行くのを追って、『スター・ウォーズ』の仕事を抜け出した。乱暴な運転で知られていたリチャードソンの車の助手席に同乗していた時、対向車に激突する事故でリズは死去。享年32歳だった。

【関連動画】一点透視図法(One-Point Perspective)

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 キューブリックがある種独特の緊張感をスクリーン上に表現したい時に好んで使った構図。観客の注意を周囲から中央に集めたい時(『シャイニング』の双子の霊など)、また逆に中央から周囲に注意を払うようにしむけたい場合(『時計…』のオープニングショット)に使用している。一見単純で簡単な構図だが、それ故に使いどころを間違うと、とても間抜けになってしまうので細心の注意が必要。キューブリックは特に奥行きを深く取る構図を好んでいて、それは上記の動画を観ても一目瞭然。なんかもうこれだけでも・・・・圧倒的です。

【関連動画】淀川長治氏による『2001年宇宙の旅』の解説

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 1981年10月25日オンエアの日曜洋画劇場での淀川長治氏の解説部分の動画です。『2001年…』の地上波オンエアはこの時と1988年7月24日の同番組での2回だけ。しかもキューブリックが指示した編集版。当時の日曜洋画劇場のスタッフの熱意には頭が下がります。  実はこの頃『スターウォーズ』のヒットで盛り上がったSFブームのおかげて都市部ではリバイバル上映がされていたようなのですが、当時地方住まいだった管理人はそれを指をくわえて見ているしかありませんでした。そんな折のTV放映決定!よっぽど嬉しかったのかTVの前で正座してこの日のOAを迎えたのを憶えています。それに解説内容もほぼ記憶通りだったことを考えると当時の自分にどれほどのインパクトを与えたのか・・・まあ想像したくもないですが(笑。  そして視聴後、強烈な印象を残しつつもラストシーンに「???」になり、小説版の『2001年…』を読んでとっても「悔しい」思いをしたのがキューブリックにはまったキッカケでした。なぜ「悔しい」のかというと、小説の内容は全て映像で示唆されていたからです。それを見抜けなかった自分の感性の鈍さが「悔しかった」んですね。  それにしても淀川氏の名調子は今見ても素晴らしい。こういった名解説者はほとんど故人となり、もうどこにも居ません。さびしい限りです。 2020年2月22日:加筆・修正

【名曲】真夜中、星々と君と(Midnight, the Stars and You)

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 『シャイニング』のラストに流れる1934年2月16日にリリースされたダンス曲。満面の笑みをたたえ写真に収まるジャックはとても幸せそうに見える。そしてやがて音楽は終わりパーティーのノイズに取って代わられる・・・ホテルやジャック的には「これでハッピーエンド」という事なんでしょう。歌詞の「生まれてからずっと知っていた」はホテル(霊)がジャックについて語りかけているようにも受け取れます。歌はアル・ボウリーで、演奏はレイ・ノーブルのバンド。 Midnight with the stars and you Midnight at a rendezvous Your arms held a message tender Saying I surrender all my love to you Midnight brought us sweet romance I know, for my whole life through I'll be remembering you Whatever else I do Midnight with the stars and you 真夜中に星々と君と 真夜中に待ち合わせ場所で 君は手にやさしいメッセージを携える すべての愛を私にささげると 真夜中は甘いロマンスのひとときと 生まれてからずっと知っていた いつまでも君のことを忘れない ぼくに何があろうとも 真夜中に星々と君と

【パロディ】チャンネル4 キューブリック・シーズンPV(Kubrick Season)

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 以前YouTubeで観て感動したものの、その時は紹介しなかったのですが、まだアップされていたので今更ですがご紹介。イギリスのテレビ局Channel 4が、2008年にキューブリック特集「Kubrick Season」の為に制作したPV。『シャイニング』の制作現場を見てきたかのような完成度が素晴らしい!細かくネタが仕込んであるので何度でも見てしまいますね。

【キューブリック展】スタンリー・キューブリック・ザ・エキシビジョンのアプリ

  現在ロサンゼルスで開催中の『スタンリー・キューブリック・ザ・エキシビジョン』ですがオフィシャルアプリが無料でダウンロードできるようです。当時の貴重な撮影現場のスチール写真やポラロイド、撮影に関するメモやスケッチ、コールシートやスクリプトの一部、インタビューなど、かなりのボリュームが収められています。たぶんキューブリック邸に残っていた物の一部だとは思いますが、どれもサザビーズあたりに出品すれば高値落札間違いなしの貴重な歴史的資料ばかり。これらを読み込むだけでもかなりの充実度でしょう。  もし日本語解説付きで日本での展示が実現すれば多分一日じゃ足りないしょうね。大型展示物はほとんどレプリカでしょうから、当時の雰囲気を味わうにはいいにしても、価値はあまりないでしょう。でも、こういった資料の展示は非常に価値があります。ただ、それを存分に味わうにはそこそこの予備知識を持ってないといけないでしょうから、現在の日本におけるキューブリックを取り巻く現状を考えると日本での開催は絶望的でしょうね。

【セット】237号室(Room 237)

 『シャイング』で、女の幽霊が出る部屋。小説版では217号室だったが、映画で外観として使用されたホテル「ティンバー・ライン・ロッジ」の希望により、実在しない237号室に部屋を変えた。ちなみにスティーブン・キングが原作を修筆中に滞在した「スタンリー・ホテル」での部屋番号は原作そのままの217号室。このホテル、実際に幽霊が出ると評判らしく・・・。勇気のある方は宿泊してみてはいかがでしょう?管理人はもちろん遠慮しておきます(笑。

【考察・検証】『シャイニング』の【初公開版(146分)】【北米公開版(143分)】【コンチネンタル版(119分)】の違いを検証する

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『シャイニング』の【北米公開版】にはあって、【コンチネンタル版】にはない「骸骨パーティー」シーン。このシーンの必要性ついては議論が分かれるところ。   キューブリックは前作『バリー・リンドン』で興行的に失敗し、この『シャイニング』は絶対ヒットさせなければならない状況に置かれてました。当時『エクソシスト』('73)、『オーメン』('76)などが大ヒットし、ホラーブームがわき起こってました。キューブリックはここでいったん自分の作家性を引っ込めて、よりヒットの可能性が高いホラーを次作の題材に選んだのでしょう。また、『2001年…』の時と同じように「自分だったらもっと優れたホラー映画が作れる」という自負もあったはずです。そうやって制作に入り、やがて完成したフィルムを全米で初公開(【初公開版(146分)】※現在は視聴不可)した5日後、以下のシー クエンスをカットをします。 (1)ジャックが矢などが並べられたオブジェから声が聞こえたような気がする。すると一人の幽霊がボールを投げ返す。 (2)ジャックの死後、病院に入院しているウェンディをアルマン(ホテルの支配人)が見舞い、そこにいたダニーに「忘れ物だよ」と言ってテニスボールを渡す。(その脚本はこちら)  ここで重要なのは、(テニス)ボールが霊的存在の象徴として強調されている点です。(2)の通り、アルマンはホテルが悪霊に支配されていた事を知っていました。もっと言えば、悪霊が暴れだすとホテルの営業に支障をきたすので、定期的にホテルに「いけにえ」を捧げていたともとれます。つまり「アルマン黒幕説」です。アルマンの行動はボールが霊の象徴として知っていたからこそであり、それを端的に表すシークエンスが(2)になります。これらをカットした理由は「アルマン黒幕説」は割とありがちなラストだと判断したからだと思われます。(個人的には好きですが)また、余韻が薄く謎が残りませんし、ホテルの霊的存在感も削がれてしまいます。キューブリックは「映画のクライマックスで観客の興奮ぶりを初めて目の当たりにして、そのシーンは必要ないと思った」と語っています。『2001年…』でも公開ギリギリのタイミングでナレーションをカットしているように、キューブリックは「蛇足」を嫌います。ただ今回は前作『バリー…』の興行的失敗からより慎重になり、いったんはすっきりと説...

【キューブリック展】スタンリー・キューブリック・ザ・エキシビジョン(Stanley Kubrick: The Exhibition)

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2012年6月にアムステルダムで開催された「スタンリー・キューブリック展」  昨年パリやアムステルダムで開催されていたキューブリック展が、キューブリックゆかりの地、ロサンゼルスで開催中のようです。こういったキューブリック展は海外では過去に何度か行われているようですが、今回は未亡人のクリスティアーヌや義弟のヤン・ハーランがオープニングに登場するなど、かなり気合いが入っているみたいです。あまり情報が入ってこないので展示の充実度はわかりませんが、撮影時に使われた本物なのかそれともレプリカなのかでその価値はだいぶ変わるかと思うので、詳細なレポートが欲しいところ。ロサンゼルス郡立美術館(LACMA)で今年の6月30日まで。日本には・・・残念ですが多分来ないでしょうね。

【登場人物】ミリチの娘(Milich's Daughter)

 いきなり下着姿での登場がインパクト大の貸衣装店「レインボー」店主、ミリチの娘。この時リーリーは14~15歳のはずで、同じ15歳の割には大人っぽかったスー・リオンよりも、ロリータ役にはこんなエロロリな娘の方が良かったんじゃ、と思った人も多かった(はず)。キューブリックが「エロティックな関係を充分に描けなかった」と語った『ロリータ』制作時の積年の遺恨をここで晴らした・・・のかも。

【俳優】リーリー・ソビエスキー(Leelee Sobiesky)

   『アイズ ワイド シャット』で、貸衣装屋の娘を演じ、いきなり下着姿での登場してロリファンの心をわし掴みに。一躍有名になった『ディープ・インパクト』(1998)での生き延びる少女役は、年の割にはしっかりした印象だったので『アイズ…』の時のロリぶりにはちょっとびっくりだ。  他の主な出演作は『ジャングル2ジャングル』(1997)、『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』(1998)、『ヴァージン・ブレイド 』(1999)、『25年目のキス』(1999)、『愛ここにありて』(2000)、『マイ・ファースト・ミスター』(2001)、『アップライジング』(2001)、『グラスハウス』(2001)、『ロードキラー』(2001)、『アイドル 欲望の餐宴(バンケット)』(2002)、『アドルフの画集』(2002)、『ヘラクレス 選ばれし勇者の伝説』(2005)、『ザ・ダークプレイス 覗かれる女』(2006)、『ウィッカーマン』(2006)、『ボンテージ・ポイント』(2007)、『88ミニッツ』(2007)、『デス・リベンジ』(2007)、『冒険してもいいコロ! 』(2009)、『パブリック・エネミーズ』(2009)、『ミッドナイト・トレイン』(2009)、『ブランデッド』(2012)など。  1983年アメリカ・ニューヨーク州生まれ。

【関連記事】英誌が選ぶ、映画の中のクレイジーなキャラクター10組

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 英Total Film誌が、クレイジーなキャラクター10組を選出した。「ダークナイト」のジョーカーや「シャイニング」のジャック・トランスといった狂気にとりつかれたキャラクターから、巨大なうさぎが親友だと思い込んでいる「ハーヴェイ」の主人公など、クセ者ぞろいのラインアップとなった。  「毒薬と老嬢」は、毒殺魔の老姉妹エビイとマーサ(ジョセフィン・ハルとジーン・アディア)、老姉妹の甥で、自分がルーズベルト大統領だと思い込んでいるテデイ(レイモンド・マッセイ)、もうひとりの甥で殺人鬼のジョナサン(ピーター・ローレ)と、甲乙つけがたかったようでブルースター一家として選出された。「ファイト・クラブ」はネタバレになってしまうので、ナレーターとなっている。  クレイジーなキャラクター10組は以下の通り。 ▽ケビン(イライジャ・ウッド)/「シン・シティ」 ▽ゴラム(アンディ・サーキス)/「ロード・オブ・ザ・リング」3部作 ▽ガーランド・グリーン(スティーブ・ブシェーミ)/「コン・エアー」 ▽ドレフュス署長(ハーバート・ロム)/「ピンクパンサー」シリーズ ▽ジョーカー(ヒース・レジャー)/「ダークナイト」 ▽ブルースター一家(ピーター・ローレら)/「毒薬と老嬢」 ▽ピーター・ロウ(ニコラス・ケイジ)/「バンパイア・キッス」 ▽ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)/「シャイニング」 ▽エルウッド・P・ダウド(ジェームズ・スチュアート)/「ハーヴェイ」 ▽ナレーター/「ファイト・クラブ」 (引用:映画.com ニュース/2013年1月6日)  でましたジャック・ニコルソン。やっぱりこうなりますよね。どれもまあ順当な選出な気がしますが、『ファイト・クラブ』の「ナレーター」には笑いました(笑。

【関連動画】エコーズと2001年宇宙の旅(Echoes & 2001 A Space Odyssey)

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 『2001年宇宙の旅』の「木星、そして無限の彼方へ」のスーパーからラストシークエンスまで、ピンク・フロイドが1971年に発表した名曲『エコーズ』と完全にシンクロするという話がかなり昔からあって、実際映像と曲を合わせてみた動画も以前からいくつかアップされたりしています。単なる偶然とも言われているけど、それは上記リンクで是非そのシンクロ具合を確認してみてください。  因にキューブリックがフロイドに『2001年…』の音楽のオファーを出したという話が伝わっているけど、個人的にはかなり懐疑的。1968年4月の公開直前まで制作を続けていたとはいえ、ピンクフロイドがデビューしたのは前年の1967年。デイブ・ギルモアの加入は翌68年なのでこの頃はまだシド・バレット時代で、後のプログレ色はまだなくサイケデリック色の強いブルース+ジャズ+インプロビゼイションが中心の頃。アルバムリリースはデビュー作の『夜明けの口笛吹き』のみで、キューブリックがこのアルバムを聴いてオファーを出したとはとても思えない。唯一可能性を感じるのは『星空のドライブ(Interstellar Overdrive)』という曲だけど、これもバリバリのサイケブルースロックだし。でも、ウォーターズやギルモア時代も悪くないけどこの頃が一番好み。バレットは後に「クレイジーダイヤモンド」となってしまうのだけどね。

【考察・検証】撃ち抜かれた少女の肖像画が象徴するものとは

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  『ロリータ』のラスト、ハンバートがキルティを狙った際に撃ち抜かれた少女の肖像画。このシークエンスの持つ意味は、そのものズバリ「少女偏愛との決別」でしょう。この時点でハンバートはドロレス(ロリータ)を少女偏愛の対象としてではなく、一人の女性として愛していた事を自覚していたのですから、キューブリックはそのハンバートの意思を分かりやすい形で視覚化したのだと思います。この手法は形を変えて『アイズ…』でも繰り返していましたね。この時は銃弾ではなく「ファック!」という台詞で撃ち抜いています。その対象はトムであり、観客自身ですね。キューブリックはよく恋愛物は苦手と言われますがそんなことはありません。ちゃんと男女の愛の姿を表現してみせています。かなりシニカルで皮肉に満ちてはいますけど。

【撮影・技術】編集(Cuting)

 『2001年宇宙の旅』での有名な骨から衛星へのジャンプ・カットを始め、キューブリックはことのほかこの「編集」が大好きらしい。以下は本人の弁。 「私は編集が大好きだ。軽薄だと思われてもよければ、編集に先立つ全てのことは編集用のフィルムを作りだす作業に過ぎない、と言うだろう。」 「編集は他のどんな芸術の形式にも似ていない。映画製作唯一のユニークな局面だ。これはいくら強調してもしすぎることのないほど重要なポイントだ。(すでに私はこれを強調していることはわかっている!)編集は映画を生かす事もできれば殺す事もできる。」 「カットするには常に理由があるべきだと思う。もしあるシーンが一つのアングルで良く演じられているならカットする理由は何もない。だから私はそういうときにはカットしない。編集効果の多くを消してしまう機械的なカッティングのリズムは避けるようにしている。」 (引用:『イメージフォーラム増刊 キューブリック』)

【関連動画】キューブリック大絶賛のTVCM

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 まずは上記の動画を観ていただきたい。キューブリックはこのミケロブ(アメリカのビールブランド)のTVCMを観て 「あの編集と撮影の出来上がりはめったに観る事が出来ない」「目で見るポエムだ。圧倒されるような8フレームのカット。30秒(動画は1分あるがキューブリックが見たのは30秒バージョンだったかも知れない)で複雑なものをつくる事ができる」 (引用:映画監督『スタンリーキューブリック』/晶文社) と大絶賛!!・・・っていうかこの編集モロにあなたの影響受けまくりじゃん!特に男が部屋から出てくる一連のカットは『時計…』の予告編だし!  まあそれはそれとしても、今観ても全然古く感じないのは確かにすごい。素早いカット割とか、ブラウン管を映してデジタルっぽい効果を狙うとか、カメラ手持ちでわざと揺らした映像を使うとか、この時代にしてはとても斬新。音楽とファッションの80年代臭さはどうしようもないとしても、それ以外では充分現代でも通用しますね。それにしてもやっぱりコメントが「 編集 と撮影」なんですね、「撮影と 編集 」じゃなくて。笑

【関連書籍】前哨(The Sentinel)/アーサー・C・クラーク 著

 『2001年宇宙の旅』のベースになった、 1950年に発表したクラークの短編小説。人類は月に謎のピラミッドを発見したが、謎のまま結局破壊してしまう。だがそれは異星人が残していった人類進化の進捗状況を知るための「警報装置」だったかもしれない・・・というお話。「映画の原作に使えそうだ」とクラークがキューブリックにこのストーリーを勧めたという点から「2001年の原作」と評する向きもあるようだが、『2001年…』は本作以外にも様々な作品から要素を取り込んでいるので、「映画『2001年…』を製作するにあたっての出発点の小説」という認識が正しい。  興味深いのは『2001年…』の元ネタの一つでもある『地球への遠征』が収録されている点だ。この作品は本書でしか読むことができないのでその意味では貴重だろう。  ちなみに本作は本書以外でも『失われた宇宙の旅2001』や『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』でも読むことができる。

【関連記事】ハリウッド・レポーター紙が選ぶ、世界の終わりを描く映画19本

 マヤ文明の暦から連想された2012年12月の人類滅亡説が杞憂に終わったが、ハリウッド・レポーター紙は、世界の終わりを描いた19本の映画をリストアップした。  このジャンルを得意とするローランド・エメリッヒ監督の3作(「インディペンデンス・デイ」「デイ・アフター・トゥモロー」「2012」)をはじめ、スタンリー・キューブリック監督の傑作「博士の異常な愛情」、CGアニメ映画「ウォーリー」に至るまで、幅広い作品が選ばれている。 「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(1964) 「猿の惑星」(68) 「ターミネーター」(84) 「マッドマックス サンダードーム」(85) 「12モンキーズ」(96) 「インデペンデンス・デイ」(96) 「アルマゲドン」(98) 「ディープ・インパクト」(98) 「28日後...」(2002) 「デイ・アフター・トゥモロー」(04) 「宇宙戦争」(05) 「トゥモロー・ワールド」(06) 「アイ・アム・レジェンド」(07) 「ウォーリー」(08) 「2012」(09) 「ザ・ロード」(09) 「テイク・シェルター」(11) 「メランコリア」(11) 「エンド・オブ・ザ・ワールド」(12) (引用: 映画.com/ニュース 2012年12月31日 )  ・・・んまあそうでしょうね。終末もので『博士…』が入らないなんてありえませんし。個人的にはアニメを含めるなら『風が吹くとき』は?とか、核戦争ものなら『渚にて』や『未知への飛行』がないのはなぜ?とか、『ノウイング』や『ザ・コア』はネタ映画扱いで除外ですか?とか突っ込みどころは沢山ありますが、個人的に一番恐ろしかった終末ものは、映画じゃないですが<a href="http://www.youtube.com/watch?v=SWQaTOj1H4A" target="_blank" title="">コレ</a>ですかね。実はリアルタイムのOAでこの番組見てました。後にあんなにネタ動画扱いされるとは思いもしませんでしたが。汗 えーと、そういえばキューブリック(関連)作品では『A.I.』なんかも入るかと思うのですが・・・・忘れられているようなので、寝た子は起こさないようにし...

【台詞・言葉】訓練歌(Running Cadence)

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   ネット上では「軍曹ソング」「行進ソング」「ミリタリー・ケイデンス」などと言われているパリスアイランドのブートキャンプでランニング中に歌う歌。下ネタ満載なのがウケたのか、あっちこっちでネタにされてます。ファミコンウォーズのCMの元ネタとしても有名ですね。最近はマラソンが流行ってますが「俺はこれをiPodに入れて走ってるぜ!」というツワモノがいるかも。その際は歌詞を見れば分かる通り「bed-said」など韻を踏んでいるので、ちゃんとリズムを意識して歌いましょう。でも大きい声で歌うのは・・・おすすめしません(笑。 Mama & Papa were Laing in bed Mama rolled over and this is what's she said Oh, Give me some Oh, Give me some P.T.! P.T.! Good for you Good for me Mmm good Up in the morning to the rising sun Gotta run all day.till the running's done Ho Chi Minh is a son of a bitch Got the blueballs, crabs and seven-year itch I love working for Uncle Sam Let me know just who I am 1,2,3,4, United States Marine Corps! 1,2,3,4, I love the Marine Corps! my Corps! your Corps! our Corps! The Marine Corps! I don't know, but I've been told Eskimo Pussy is mighty cold Mmm good feels good is good real good tastes good mighty good good for you good for me I don't want no teen-age queen I just want my M14 If I die in the combat zone Box...

【登場人物】仮面のカップル

 謎めいた物語で物議を醸した『アイズ ワイド シャット』ですが、乱交パーティーにビルが潜入した時に会釈した仮面のカップルの正体をめぐっも、様々な解釈が飛び出しました。いわく、「貸衣装屋とその娘」とか「サボスとアリス」とか「ジーグラーとマンディー」とか・・・。そんなに勘ぐらなくても、答えは簡単なんですけどね。実はあの二人、「ジーグラー夫妻」です。意外性のない当たり前の答えですが、このパーティーが最初のクリスマス・パーティーと表裏一体の関係にある事に気が付けば自明ですね(個人の解釈です)。 

【ブログ記事】スタンリー・キューブリックとアカデミー賞

 さて、キューブリックとアカデミー賞ですが、自身の名義で獲得できたのは『2001年宇宙の旅』の「特殊視覚効果賞」のみ。それも、本来の該当者は4人だったのに、アカデミーから「一つの賞に該当者は3人まで」と言われて代表でキューブリックが受け取ったというもの。さらに悪かったのは名誉賞(当時メイクアップ賞はなかった)が『猿の惑星』に奪われた事。これにはクラークも怒り心頭で「アカデミーの審査員は、猿人を本物と思い込んだんだ!」と吐き捨てたそうです。  キューブリックはもちろん、アカデミー賞受賞における興行的価値は理解していたので(資金集めに苦労しっぱなしのキューブリックは、興行成績が次作の資金集めに影響するのを恐れていた)受賞資格を得る為にわざわざ上映時期をずらしたり期間中に再上映したりしていたのに、アカデミー賞にはノミネートがせいぜい。まあ「ハリウッドの異端」「イギリスへの亡命者」とされていたキューブリックに、身内が身内を誉め讃えておめでたがる閉鎖的なハリウッドが賞なんか贈るはずがないわけで、かえってこのぐらい無視されている方がスッキリしていて気持ちいいくらい。お願いだから「アカデミー特別賞」なんて中途半端な代物を贈る事なく、死して後も尚「ハリウッドに背を向け続けた映画界最大の巨匠」であり続けて欲しいものです。 【キューブリック作品で獲得したアカデミー賞】 ●『スパルタカス』 最優秀助演男優賞/ピーター・ユスティノフ 最優秀撮影賞/ラッセル・メティ 最優秀美術監督賞/アレクサンダー・ゴリツェン、エリック・オーボム、ラッセル・A・ゴスマン、ジュリア・ヘロン 最優秀衣裳デザイン賞/J・アーリントン・ヴァレーズ、ビル・トマス ●『2001年宇宙の旅』 特殊視覚効果賞/スタンリー・キューブリック ●『バリー・リンドン』 最優秀撮影賞/ジョン・オルコット 最優秀衣裳デザイン賞/ウルラ=ブリット・ショダールンド、ミレナ・カノネーロ 最優秀美術監督賞/ケン・アダム、ロイ・ウォーカー、ヴェロン・ディクソン 最優秀編曲賞/レナード・ローゼンマン

【登場人物】レナード・ローレンス

 『フルメタル・ジャケット』で、ハートマン軍曹に徹底的にシゴかれる新兵。またの名を「ゴマー・パイル」。ハートマン軍曹に「おまえの顔を見たら嫌になる! 現代美術の醜さだ! 」「アホ面を続ける気なら目玉えぐって頭蓋骨でファックしてやる! 」「じじいのファックの方がまだ気合いが入ってるぞ! 」「ベトナム行く前に戦争が終わっちまうぞ、あほ!」など徹底的にハートマン軍曹にイビられるが、同僚のリンチを機に頭のネジがぶっとんでしまい軍曹を射殺、そして自身も銃口を銜えて脳天をぶち抜き自殺する。  できそこないの兵隊(銃弾)は製造過程で排除する・・・それがパリスアイランド「兵隊工場」の役目であり、その現場監督が軍曹であったというだけの話。自身を打ち抜いた銃弾が「フルメタル・ジャケット」であったのはいかにもキューブリックらしい皮肉だ。

【考察・検証】『市民ケーン』に見るキューブリックの指向性

 映画史に残る傑作として名高いオーソン・ウェルズの『市民ケーン』。公開当時(1941年)十代の若者だったキューブリックに影響を与えたのも当然で、ベスト10ムービの第3位に本作を挙げている。このレビューを書くに当たって再度観直したところ、感心させられるのは25歳の若者が監督・主演したものとは思えないその完成度だ。「薔薇の蕾」という謎の言葉を残して死んだ大富豪「チャールズ・F・ケーン」の生涯を辿りながら、人間の欲深さと愛憎、人生の儚さを観るものに強烈に問いかけるラストシーンまで、隙のない、圧倒的な完成度を誇っている。  本作が今なお語り継がれるのはそれだけの理由ではない。この高い完成度を保ちつつ、実在のメディア王「ハースト」に代表される当時のアメリカの社会、メディア、風俗を鋭く風刺しているからだ。ケーンが繰り返す傲慢、暴言、奇行、無意味な収集癖などはそのままハーストの悪癖をなぞっているのだが、なんといっても傑作なのが「薔薇の蕾」という言葉。これはハーストが愛人の性器を指す隠語だったそうで、何も知らず映画を観た知人から「薔薇の蕾には思い入れがあったのでしょうね」などと感慨深げに言われでもすればさぞかしハーストも面喰らうだろう。感動の名作映画の裏側にこんな下世話な皮肉と当てこすりを忍ばせたウェルズは、当代きってのペテン氏でもあるのだ。  キューブリックも皮肉屋で人をケムに巻くのが上手い監督だ。ローアングルやパン・フォーカスなど映像的に影響を受けたであろう部分を挙げるのは簡単だが、それよりも指向性の共通点に着目したい。特に『アイズ…』との比較は面白いかもしれない。「ミステリーの謎解きを物語の主軸にしつつ、実はその裏で全く違う皮肉を込める」という意味では両者は共通している。「ケーン→ハースト、薔薇の蕾→愛人の陰部」の図式は、『アイズ ワイド シャット』の場合「ビル→大衆、ファック(セックス)→ファック(クソッタレ)」となるだろう。  本作がハーストの怒りを買い、ハリウッドからトラブルメーカーの烙印を押されてしまったたウェルズは、以降自由に映画を撮れなくなってしまう。キューブリックはもっと周到に立ち回り、ハリウッドから映画製作の絶対的自由を獲得するのだが、それはもちろんウェルズという先人の姿を見ていたからできたこと。その後のウェルズの没落ぶりはキューブリックに大きな教訓をもたらし...