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【プロップ】ザ・ロッキングマシーン(The Rocking Machine)

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 『時計じかけのオレンジ』で、キャットレディ撲殺の凶器にされた「芸術性豊かな」オブジェ。作者はハーマン・マキンク。レプリカがAmazonより発売されましたが、欲しいけど「高くて買えない」「家人が許さない」等事情がある諸氏は以下で我慢を・・・。そのリアル且つ洗練された動きをロッシーニと共にお愉しみください(笑。  ちなみに「クライスト・アンリミテッド」もマキンク作。なぜか第九がよく似合いますね。

【プロップ】クライスト・アンリミテッド(Christ Unlimited)

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 『時計じかけのオレンジ』で、アレックスの部屋に置いてあったオブジェ。「ザ・ロッキングマシーン」と同じくハーマン・マキンク作。

【関連書籍】フィルムメーカーズ スタンリー・キューブリック/巽 孝之 著

  作品レヴューはもちろん、詳細なデータや年表、対談や座談会など、キューブリックに関するあらゆるものを詰め込んだムックの決定版。特に幻の処女作『恐怖と欲望』の詳細なレビューは読みごたえあり。ただし『アイズ…』に関しては出版時期が公開直後のためか、論点の定まっていない意味不明な混乱した評ばかりなので、参考程度に留めておくべきだろう。

【名曲】また会いましょう(We'll Meet Again)/ヴェラ・リン(Vera Lynn)

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 第二次世界大戦中に流行した、ヴェラ・リンが歌うセンチメンタルなポップ・ソングで、戦地に行った夫や恋人への想いを歌い、当時兵隊達の間で大流行した。  キューブリックが『博士…』のラストシーンで、核爆発のキノコ雲の映像にこの歌を使ったのは、「また会いましょう」と言いながらまた会えるとは限らず、むしろ「もう会えないかもしれない」事を言い出せない当時の兵隊の切ない気持ちを、全世界レベルに引き伸ばす為であり、一部で言われているような「脳天気なラブソングを悲惨な映像に使うという皮肉」ではない。それは、この歌詞を見れば分かる通りだ。  また会いましょう、どことも知らず、いつとも分からないけれど  でもいつかまた晴れた日に会いましょう  いつものあなたのように笑顔を絶やさないで  青空が暗い雲を吹き飛ばしてくれるまで  知ってる人に会ったら、ハローと言って  もうじき私に会えると伝えてちょうだい  私がこの歌を歌っていたと知れば  きっとみんな嬉しがるでしょう  また会いましょう、どことも知らず、いつとも分からないけれど  でもいつかまた晴れた日に会いましょう ※動画は映画で使用された音源のフルバージョン。キューブリックはイントロの後、後半Aパート(男性コーラスあり)にとび、前半Bパート(コーラスなし)に戻り、そして後半サビ(コーラスあり)からエンディングと編集している。  悲しい歌を悲惨なシーンに使うというのはむしろ常套手段で、たいしたアイデアではない。実はキューブリックがすごいのは「青い空」や「晴れた日」、「暗い雲を吹き飛ばす」といった歌詞に乗せ、核爆発の映像を見事にシンクロさせて編集している所だ。これこそ「皮肉に満ちた救いようのない絶望的な結末」を表現するにふさわしいキューブリックならではの感性だろう。それを映画で是非確認して欲しい。

【俳優】ジョージ・C・スコット(George C. Scott)

  『博士の異常な愛情』でタージトソン将軍を演じた。他の出演作には『ハスラー』('61)、『パットン大戦車軍団』('70)、『ヒンデンブルグ』('75)、『炎の少女チャーリー』('84)、『エクソシスト3』('90)、『グロリア』('98)などがある。 『パットン…』では、アカデミー主演男優賞を受賞した。『恋とペテンと青空と』('67)ではスー・リオンと、『タップス』('81)では若き日のトム・クルーズと共演。  1927年10月18日アメリカ・バージニア州生まれ、1999年11月22日没。

【関連作品】『未知への飛行〜フェイル・セイフ』

  ついにDVD化なりましたね、冷戦時代の隠れた名作『未知への飛行』。衝撃的なラスト・シーンは今日観返しても全く色褪せてなく、第一級のポリティカル・フィクションとして楽しめます。愚直だけど緊迫感溢れる演出を、最近のハリウッド映画はこの映画からもっと学んで欲しいものです。  詳しいストーリー等はリンク先で確認して頂くとして、やっぱり気になるのは『博士…』との関係。どうやら当時、両映画の原作の間で盗作騒ぎがあったらしく、キュー側が訴えられてしまったそうです。でも、裁判はキュー側が勝訴。この話題性に目をつけたコロンビアが映画化権を獲得し、(『博士…』もコロンビア)両方ともヒットさせてしまいました。  監督はシドニー・ルメット。実直な演出では定評ありますね。主演はヘンリー・フォンダ。大統領を静かに熱演してました。一時代を築いた名優で、ジェーン・フォンダやピーター・フォンダのお父さんです。一方の『博士…』といえば、監督がキューで脚本がテリー・サザーン、そして主演がピーター・セラーズとなるわけで、どこまで行っても好対照のこの2作品、続けて観るのも一興かも。  キューブリックは『博士の異常な愛情』から『2001年宇宙の旅』、『時計じかけのオレンジ』で巨匠の名を欲しいままにしたけど、ルメットは『オリエント急行殺人事件』、『狼たちの午後』『評決』で「名監督なんだけど地味」。ならばと、コメディー・タッチの『ファミリー・ビジネス』を撮ったりしてるんですが、やっぱり評価は「悪くないんだけど地味」。  まあ、平気で地球を破滅させるぐらいの肝っ玉がないと巨匠にはなれないという事でしょうか?

【俳優】パトリック・マギー(Patrick Magee)

 『時計じかけのオレンジ』で、アレックスに妻をレイプされた反政府小説家、アレキサンダー氏を、『バリー・リンドン』ではイカサマ賭博師、シュヴァリエ・ド・バリバリーを演じた北アイルランド出身の舞台俳優。 主な出演作は『マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺』('67)、『テレフォン』('77)、『ラフ・カット』('80)など。  1924年3月31日北アイルランド生まれ、1982年8月14日没。

【スッタッフ】ジョン・オルコット(John Alcott)

  イギリス人の撮影監督。『2001年宇宙の旅』で追加撮影として参加。自然光撮影についてキューブリックと意気投合、以降『時計じかけのオレンジ』、『バリー・リンドン』、『シャイニング』の撮影監督を務めている。『バリー…』でアカデミー撮影賞を受賞した。バリーが二人の少女と逢瀬を交わしている隣で寝ている男性がオルコット本人。  キューブリック作品以外では、『料理長殿ご用心』('78)、『グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説』('83)、『追いつめられて』('87)など。1931年ロンドン出身、1986年7月28日死去、享年54歳。

【登場人物】ドロレス・ヘイズ(ロリータ)(Dolores Haze - Lolita)

  『ロリータ』で、ハンバートが想いを寄せる13歳も美少女・・・と言っても、すれっからしで口が悪く、生意気で意地悪な女の子だ。本名はドロレス・ヘイズ。(原作ではハンバートの獄中手記の形式を取っていて、作品中に登場する人物の名前、地名などは架空のものである、との但し書きがされている)「ロリータ」は愛称で、「ドロレス」→「ドリー」→「ロー」→「ロリータ」となっている。

【登場人物】ビクター・ジーグラー(Victor Ziegler)

 『アイズ ワイド シャット』で、ビルの患者のひとり。ビルを招待したクリスマスパーティーと、秘密の乱交パーティーの主催者でもある。ことの顛末はジーグラーの口から明かされるが、それを鵜呑みにするか否かは観客の判断に委ねられている。  当初この役はハーヴェイ・カイテルが起用されていたが、1997年5月から『グレイスランド』で主役を演じなければならなかったため、やむなく降板となった。しかし実際はカイテルがキューブリックのリテイクに耐えられず自ら放棄した。

【セット】ペンタゴン最高作戦室(War Room)

  『博士の異常な愛情』に登場するペンタゴンの最高作戦室(ウォールーム)ですが、もちろん当時、米軍からは何の協力も得られなかったので、キューブリックとデザイナーのケン・アダムが想像でデザインしたものです。  で、何かに似てると思いませんか?そう、これはカジノなんかによくあるボーカーのテーブルを模しています。まあ、今考えれば割とベタなネタですが、公開当時(冷戦の最中で、キューバ危機の数年後)の世界情勢じゃ、全然洒落になってませんよね。

【俳優】シドニー・ポラック(Sydney Pollack)

  『アイズ ワイド シャット』で、ヴィクター・ジーグラーを演じた製作兼監督兼俳優。監督としては『ひとりぼっちの青春』(1969)、『追憶』(1973)、『トッツィー』(1982)、『推定無罪』(1990)、『サブリナ』(1995)などがある。『ザ・ファーム/法律事務所』(1993)ではトム・クルーズを起用、『ザ・インタープリター』(19'93)ではニコール・キッドマンを起用している。『愛と哀しみの果て』(1985)でアカデミー監督賞を受賞した。  他の出演作には『夫たち、妻たち』(1992)、『シビル・アクション』(1999)、『チェンジング・レーン』(2002)などがある。  1934年7月1日アメリカ・インディアナ州生まれ。

【登場人物】双子の少女(Grady Twins)

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 『シャイニング』で、廊下の先に突然現れる双子の少女。衣裳が水色のワンピースというのも、周囲のインテリアと全くマッチせず、異様な感じを増幅させるのに一役買っている。この「一見しただけではあまり恐く無いが、よくよく考えるととたんに恐わくなってくる」という効果は『シャイニング』でしか味わえない。このシーンを観てしまったばっかりに、ホテルに泊まった際、薄暗い廊下の先に何となく違和感を感じる人も多いのでは?霊感の強い人に言わせれば「ホテルは嫌な空気でいっぱい」だそうだ。  演じたのはリサとルイーズのバーンズ姉妹。ダイアン・アーバスへのオマージュという話はかなりマユツバ。少なくともキューブリックがその旨の発言をしたことはない。

【スタッフ】ヤン・ハーラン(Jan Harlan)

  『時計じかけのオレンジ』でアシスタント・プロデューサーを勤め、それ以降のキューブリック作品『バリー・リンドン』、『シャイニング』、『フルメタル・ジャケット』、『アイズ ワイド シャット』の全てプロデュースしているプロデューサー。キューブリック未完のSF『A.I.』もプロデュースした。また、キューブリックのドキュメンタリー『ア・ライフ・イン・ピクチャーズ』のプロデューサー兼監督でもある。キューブリックの妻のクリスティアーヌの実弟。  1937年5月5日ドイツ・カールスルーエ出身。

【セット】白い部屋(White Room)

  ルイ王朝風だ、いやロココ調だとなにかと問題になる『2001年…』の白い部屋ですが、そのインテリアがいつの時代のものかはさして問題ではなく、重要なのはここが「ホテルの部屋」(もしくはホテルの部屋を模したもの)であるということです。ここがホテルの部屋である事はその調度品やバスルームを見れば理解できるし、撮影現場の写真にははっきりと「HOTEL Room」との記述がります。では、なぜ「ホテル」なのでしょうか?  それは、動物園を想像してみれば良いでしょう。人間は動物園の檻に動物を入れますが、動物にとって檻はどのように認識されているのでしょう?食事と寝床とトイレが用意され、しかも常に清潔に保たれている。外敵が襲ってくる心配もない。それはまさしく動物にとって「ホテル」と言えるのではないでしょうか?  クラークの小説版には「ホテルの部屋を模したもの」である事が明解に説明されています。それによると、月面のモノリスが地球のTV番組をモニターして地球人の生活環境や習慣を熟知。その知識を元にこのホテルの部屋を作り、ボーマンを迎え入れたと説明されています。(ボーマンが部屋を調べた際、引き出しが開かなかったり、本は背表紙だけの見せ掛けなのを発見するくだりは結構スリリング)。ボーマンは部屋に備え付けの天井TVに映し出されたドラマのワンシーンに、自分が今いる部屋と同じデザインのホテルの部屋が登場しているのを発見し、その真実を知ることになりました。  しかし、キューブリックはインタビューで「人間動物園のような環境」「彼自身の夢と想像から作られた」と説明し、「ホテル」とは説明していません。それは、ホテルにしては広すぎる部屋(カメラを自由に動かしたいキューブリックが、わざと大きめなスイートルームを作らせたのかもしれない)であること、ネタばらしである「ホテルの部屋」と言いたくなかったなどの理由が考えられます。  いずれにしても、この部屋がホテルの部屋であることは間違いありません。異星人(もしくは「科学的に定義された神」)よって作られたこの(偽物の)ホテルの部屋に招待されたボーマンは、加速度的に老いてゆき、死に、そしてスターチャイルドとして再生します。  ちなみにダグラス・トランブルによると、この部屋にはモデルがあり、それはロンドンの最高級ホテル「ザ・ドーチェスター」だそうです。

【登場人物】フランク・プール(Frank Poole)

  『2001年宇宙の旅』の、ディスカバリー号の乗組員で黄色い宇宙服の人。HALが操るスペース・ポッドに追突されて死んでしまう。おまけに遺体も放棄されるなんてちょっと可哀相すぎる。

【考察・検証】枕元の仮面のカット割りが持つ意味

  『アイズ ワイド シャット』のラスト近く、アリスの枕元に仮面が置いてあるシークエンスで、一連のカットが(1)ビル深夜の帰宅。(2)アリスの枕元に仮面。(3)ビル寝室に入り、仮面に気付く。の流れになっていた事に対し、「先に仮面を見せたらインパクトが弱い」「カット割りが素人くさい、ミスでは?」等の批判か少なからずありました。ちょっと待って下さい。「何よりも編集作業を好む」、「映画とは編集が全てといっても言い過ぎでは無い」と言っていた編集大好きのキューブリックがそんな初歩的なミスなんかをする筈なんかありません。これは、計算されてやっています。  理由は(1)『シャイニング』のタイプライターのシーンを想起させる。(2)ここで余りにもショッキングな演出を施すとラストシーンのインパクトが薄れる。の2つではないかと考えます。  実際、『シャニング』ではウェンディがタイプ用紙を見つめるシーンを粘って見せ、緊張感が最高潮に達したところで「タイプされた文字」を見せる事によって最高の恐怖感を演出しています。この方法論を使う事だってできた筈です。  でも、実際に採用したのは「先に仮面を見せる」でした。原作では、このあと全てを妻に告白し、寝室で新しい一日の夜明けを迎えたところで終わっていますが、キューブリックはおもちゃ屋のシークエンスを付け加え、ラストを「捨てセリフ一発」で終わらせています。このラストシーンのインパクトを弱めない為にも、あえて前のシークエンスでは、衝撃度を弱める編集をしたのではないでしょうか。

【台詞・言葉】微笑みデブ(Gomer Pyle)

  「名前が気に入らん!〈微笑みデブ〉と呼ぶ事にする!」とハートマン軍曹に怒鳴られても、〈微笑みデブ〉って一体何?…というわけで、ググってみました。こんな顔です・・・た、確かにアホ面ですね。  「アメリカのコメディ番組『ゴーマー・パイル』は日本では『マイペース二等兵』として放映された軍隊コメディで、アメリカ海兵隊に入隊した青年、ゴーマー・パイル二等兵が訓練基地で騒動を巻き起こす物語」って、そのままんま。数々のヒネリや皮肉の効いた名セリフを生み出したハートマン軍曹にしてはストレートな罵倒ですね。

【俳優】ピーター・セラーズ(Peter Sellers)

  イギリスの有名なコメディ俳優。『ピンク・パンサー』シリーズ〈『暗闇でドッキリ』『ピンク・パンサー2~5』のクルーゾー警部がハマり役。キューブリック作品は、『ロリータ』のキルティを見事に怪演した後、次の『博士の…』ではアメリカ大統領、イギリス軍の派遣将校、ストレンジラブ博士と3役を熱演している。他にB-52 機長も演じる予定だったが、ケガをしたためにスリム・ピッケンズが代役として演じた。だが実はそれは言い訳で、テキサス訛り丸出しのコング役が気に入らなかったので断ったらしい。ピッケンズの素晴らしい演技を見た後になって、演じなかったことを後悔したという。  他の主な出演作は『黒ばら』(1950)、『裸の島』(1953)、『マダムと泥棒』(1955)、『ピーター・セラーズの地上最小のショウ』(1957)、『赤裸々な事実』(1957)、『転覆騒動』(1958)、『親指トム 』(1958)、『ピーター・セラーズのマ☆ウ☆ス』(1959)、『ピーター・セラーズの 労働組合宣言!! 』(1959)、『とんだりはねたりとまったり』(1960)、『泥棒株式会社』(1960)、『喰いついたら放すな』(1960)、『求むハズ』(1960)、『トライアル・アンド・エラー』(1962)、『ワルツ・オブ・ザ・トレアドールズ』(1962)、『ミサイル珍道中』(1962)、『新・泥棒株式会社』(1963)、『ヘブンズ・アバーブ』(1963)、『ピンクの豹』(1963)、『マリアンの友だち』(1964)、『暗闇でドッキリ』(1964)、『何かいいことないか子猫チャン』(1965)、『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』(1966)、『無責任恋愛作戦』(1967)、『女と女と女たち』(1967)、『007/カジノ・ロワイヤル』(1967)、『太ももに蝶』(1968)、『パーティ』(1968)、『マジック・クリスチャン』(1969)、『不思議の国のアリス』(1972)、『別れの街角』(1973)、『ピーター・セラーズのおとぼけパイレーツ』(1973)、『これがピーター・セラーズだ!/艶笑・パリ武装娼館』(1974)、『ピンク・パンサー2 』(1975)、『名探偵登場 』(1976)、『ピンク・パンサー3』(1976)、『ピンク・パンサー4』(1978)、『ゼンダ城の虜』(1979)、『チャンス』(19...

【登場人物】ハンバート・ハンバート

  『ロリータ』で、ロリータに恋する哀れな中年男。職業は作家兼大学教授。さんざんロリータとキルティに振り回された揚げ句、心臓発作のため獄中で頓死してしまう。だがそれも元々は自分が蒔いた種、いずれはロリータもシャーロットのようになるのだから、最初からシャーロットを愛しておけば良かったのに・・・という論理は働かないのが変態の変態たる所以でしょう。ジェームズ・メインンのおどおどした感じがハマってました。

【パロディ】HAL2000

  今となっては「あの騒ぎは一体何だったんだ?」と首を傾げてしまうコンピュータの「2000年問題」。その2000年問題にMacintoshは対応済みというメッセージの為に製作された当時のAppleのCMにHALが起用され、話題になりました。その名も「HAL2000」。で、こんな事言ってます。  「ねえデイブ、西暦2000年に起きたコンピュータ障害に起因した金融市場での大恐慌は僕達が悪いんじゃないんだ。ねえデイブ、みんな人間が引き起こしたプログラムのバグが原因だったんだよ。でもMacintoshシステムだけは正常に作動を続けていたんだ。その時も。」  まあ、HALに言われても全然説得力ないんですが、結局実際は大した問題にはならなかったので、このCMも2000年問題同様すぐ忘れられてしまいました。日本では結局オンエアしなかったし。ところで、キューブリックは多分Winユーザーでしょう。律儀にIBMを使っているのはちょっと微笑ましい。なんせ「HALはIBMの一歩先」ですからねぇ。

【インスパイア】『ミッション・トゥ・マーズ』

  なんと申せばよいのやら、トンデモ説をもっともらしいCGでゴリ押しした、ブライアン・デ・パルマ監督による「観るに耐えないほどイタい脱力系SF映画」。  いつぞやのNASAの火星探査で撮影され議論を呼んだ、人の顔に見える岩の写真をヒントに、地球・火星同起源説を唱え、『2001年宇宙の旅』、『未知との遭遇』、『アビス』風味で仕上げる(あくまで「風味」だけ)というアイデアも底が浅いが、クルーの数を減らしたい意図がミエミエの「単なる事故」や、友好的とは言いがたいエグい嵐で危機感を煽った割に、突然手のひらを返して優しく地球人を迎える火星人の強烈な違和感(CG火星人は言わずもがな)、あげくにゲイリー・シニーズは突然「彼らと一緒に行く」と言い出す始末(動機はあるにはあるのだが弱い)。  豪華なCGで押しまくれば脚本のアラなんて気にならないさ、とデ・パルマが言ったかどうかは分からないけど、この監督にSFを撮る資格のない事だけははっきりしました。『2001年…』とプロットは似通っていても、監督の画作りひとつでこれだけ駄作になってしまうという事は、キューブリックがいかに偉大かよくわかる。クラークの『失われた宇宙の旅2001』によると、けっこうこの『ミッション…』と共通点が多く、雰囲気も似通っているため、一歩間違えば『2001年…』だってこうなっていた可能性があったのだ。  そういう意味ではキューブリックが撮る事を拒否した『2001年…』と思って観るのもありかもしれない。遠心機のシーンはそれなりに出来は良いし。でも・・・もうデ・パルマにはSF撮って欲しくないです。ホントに。

【考察・検証】『2001年宇宙の旅』の「スターゲート・シークエンス」を解説する

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キア・デュリアの目をアップを「パープルハート(俗称)」という色彩変換技術で 変換した映像。パープルハートとはドラッグの一種。  『2001年宇宙の旅』の有名なスターゲート・シークエンスは、大きく4つのパートに分けることができます。 (1)ワームホールによる空間転移シークエンス   (2)星の誕生・銀河の誕生、もしくは生命の誕生シークエンス     (3)地球外知的生命体との遭遇シークエンス  このシーンには「マインドベンダー(催眠術師)」というタイトルがある。このダイヤモンドの物体はモノリス初期案のピラミッド型(正四面体)のアイデアがベースになっているので、UFOではなく地球外知的生命体(もしくはそれを象徴するもの)と解釈するのが正しい。   (4)原始惑星の誕生シークエンス    こうしてみると、全て映像で説明しきっているのがわかります。(1)はワープという解釈でも良いのですが、小説版やその原案小説である『地球への遠征』にははっきりとワームホールである描写があります。(3)はもっと映像を準備するはずでしたが、当時の技術では納得できる表現ができず、かなりの部分が没になった経緯があります。  撮影の種明かしをすれば、(1)と(3)はダグラス・トランブルの開発によるスリット・スキャンを中心に、様々な手法を駆使して撮影。(2)は溶剤に色の液体を落とし、超スローモーションで撮影したもの。(4)はスコットランドのヘブリディーズ諸島と、アリゾナ州とユタ州にまたがるモニュメント・バレーの空撮で、それらの映像にソラリゼーション(厳密には単なるソラリゼーションではなく、もっと複雑な工程だったそう)の処理を施したものです。  人類が決して目にする事が出来ない宇宙や生命の成り立ちや、何万光年を一瞬に飛び越えるテクノロジーを映像化する事によって、地球外知的生命体の存在と、その力の強大さを印象づけるために、このシークエンスを作成しましたが、当時の若者はそれを全く理解せず、映画館の最前列に座り、ポケットからマリワナ取り出し吸い始めてしまいました。これにはさすがのキューブリックやクラークも頭を抱えてしまい、はっきりと「反ドラッグ」の立場を明確にしています。  もちろん、ディスカバリー号を男性器、スペース・ポッドを精子、スターゲートを女性器とする解釈...

【小説家】グスタフ・ハスフォード(Gustav Hasford)

  『フルメタル・ジャケット』の原作者。主人公のジョーカーと同様に、海兵隊の報道員としてベトナム戦争に参加し、その経験を元にこの作品を書き上げた。出版印税も底を尽き、車で生活していた所に映画化が決定し、思わぬ大金を手にする事に。映画にも脚本として参加するが、その扱いは決して良くなかったようだ。キューブリックは原作者による干渉を好まない。原作者の思い入れを映画に持ち込んで欲しくないからだろう。原題は『ショート・タイマーズ(Short Timers)』。  1947年11月28日アラバマ生まれ、1993年1月29日死去。

【プロップ】モノリス(Monolith)

  『2001年宇宙の旅』に登場した謎の石版。 奥行・横・縦の比率が1対4対9で、最初の整数(1・2・3)のそれぞれ二乗になっている。クラークの小説版によると、地球のモノリスは「進化を促す教育装置」、月面の物は「掘り出された時に自動的に電波を発信する警報装置」、木星の物は「遥か彼方、銀河系の違う場所に運ぶ為の運搬装置」とそれぞれ説明しているが、キューブリックはそういった直線的で明解な説明的描写は避け、「地球外知的生命体を象徴させる物体」、もしくは「神の化身」といった抽象的な扱いになっている。尚、月面のモノリスは「TMA-1」、木星のモノリスは「ビック・ブラザー」と呼ばれた。  撮影に使われたモノリスは木製で、それに黒鉛を混ぜた塗料を何度も重ね塗りし、丁寧に磨きをかけたものだそうだ。

【家族】ヴィヴィアン・キューブリック(Vivian Kubrick)

  キューブリックの三人姉妹の末娘。『2001年宇宙の旅』のテレビ電話の女の子として有名だが、彼女の名前は配役表には載っていない。「大きくなった時、いつまでも私の側にいるのは良くないから」というのがその理由。でもその後しっかりキューブリックに重用されている。成長した彼女は『バリー・リンドン』で食事シーンのエキストラとして出演。『シャイニング』ではキューブリックから誕生日に贈られたビデオカメラを使ってメイキング風景を撮影し、その映像がイギリスでTVスペシャルとして放映された。また、ボールルームパーティーの幽霊のエキストラでも出演している。『フルメタル・ジャケット』では、アビゲイル・ミードの名で音楽を担当。女性カメラマンの役で出演した。  1960年8月5日カリフォルニア州ロサンゼルス出身。

【小説家】マイケル・ハー(Michael Herr)

  『フルメタル・ジャケット』でキューブリックと共同で脚本を書いた作家・脚本家。『地獄の黙示録』('79)、『レインメイカー』('97)でもナレーションの脚本を担当している。代表作は『ディスパッチイズ』で、キューブリックはこの小説を気に入ってハーに脚本を依頼した。

【オマージュ】ミューズ/タイム・イズ・ランニング・アウト(Muse - Time is Running Out)

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 このバンド、パンク・ハードロック・ヘビメタ・グランジなどにある攻撃性と叙情性をベースに、歌い上げもできるファルセットボイス、クラシックフレーバーやイギリスのバンドらしいちょっとヒネったポップセンス、それにサイケデリック風味までと、クイーン、ブラックサバス、ELO、ストラングラーズ、U2、レディオヘッド、ニルヴァーナなど、過去のロックのおいしいとこ取りをしつつ、自分達独自のサウンドにまとめている点では才能豊かなグループ。  で、このプロモ。メンバーの趣味なのか監督の趣味なのかは不明だけど、歌詞つながりで『博士の異常な愛情』を引用したのでしょう。ウォールームを結構忠実に再現している点は嬉しい限り。こうして新しく撮り直した映像で観ると、いかに『博士…』のプロダクト・デザインが洗練され、画的美しさに溢れていたかが確認できます。ローアングルの多用や画面が広角気味なのも当然意識してますね。

【名曲】ツァラトゥストラはかく語りき(Also Sprach Zarathustra)

 リヒャルト・シュトラウス作曲の『2001年宇宙の旅』の事実上のテーマ曲。オープニングや進化のシークエンスには必ずかかっている。『ツァラトゥストラはかく語りき』とは、ニーチェの「超人思想」を記した著作ことで、その作品にインスパイアされたシュトラウスが、人類の前に姿を現した超人をイメージして作曲したとされている。  何故かエンドロールではノークレジットだったこの曲、公開当時のMGM版のサントラでは、カール・ベーム指揮を収録していたので、当然映画もベーム指揮だと思われていたが、実はカラヤン指揮のウィーンフィル演奏盤だった事が判明。では、何故サントラでは映画で使用されていないベーム盤を収録したのか?レーベルの関係でやむを得ず、という事だったのか?  「映画ではカラヤン盤を使用したにもかかわらず、サントラではレーベルの問題でベーム盤を収録したため、クレジットを載せる事ができなかった。しかし、ターナー版再発時(1996年)にはレーベルの問題はなくなり、カラヤン盤を収録した」という経緯が推測できるが、事実は不明だ。  上記はそのフルバージョン。これだけオープニングが有名な曲なのにフルで聴いた事がある人は少ないのでは?是非この機会にフルで聴いて欲しい。まちがいなく名曲なのだから。 2013年9月25日追記:<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/2001%E5%B9%B4%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%85" target="_blank" title="">wiki</a>によると以下の事情があったとの記述あり。  なお、(1)メインタイトル、(2)「人類の夜明け」、(3)ラストと合計3回使われている《ツァラトゥストラはかく語りき》の演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルのデッカ録音だが、デッカ(1968年当時は日本国内ではロンドン・レーベル)が演奏者名を出さないことを許諾の条件としたので、映画のエンド・クレジットでは曲名しか表示されていない。

【関連作品】ブレードランナー(Rlade Runner)

  公開当時はSFブームでもあり、それなりに話題になったのに、その難解な内容故か、デカダンな都市イメージとSFXのせいか、今ではすっかりカルムビー扱いの『ブレードランナー』。監督は、おなじみリドリー・スコットですね。  で、この『ブレラン』、あまりにも未来のない終り方に興行成績を危惧したワーナーが、無理矢理くっつけたラスト・シークエンスの森林の空撮。これ、実は『シャイニング』のオープニングのアウト・テイクというのは有名な話。その時、急遽キューブリックから送られてきたフィルムはなんと3万フィートもあったそう。実際に撮影したのは第2班だから、キューブリックは全てそれをチェックして、オープニング用に数分間使った事になる・・・。恐るべし、キューブリック。

【トリビア】散髪

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 『フルメタル・ジャケット』のファースト・シークエンスで、散髪をされるアメリカの若者達の映像が流れるが、このシークエンスの重要性はあまり語られていないような気がする。すなわち、これは人間が銃弾に改造される最初の通過儀礼なのだ。失ったのは髪の毛だけではない。名前、人格、個性、愛する恋人、家族や故郷・・・全てはここで刈り取られ、抹殺される。間の抜けたカントリー・ウェスタン『ハロー・ベトナム』が皮肉に聞こえるのはそのためだ。そしてそれはそのままエンドロールに流れる『黒く塗れ!』に直結している。  ここで使用しているバリカンは人間用のそれではなく、フレンチ・プードル用ものだそうだ。しかも、実際もそうであるらしい。それを知ってこのシークエンスを観ると、非常に嫌な気分になる。

【家族】クリスティアーヌ・キューブリック(Christiane Kubrick)

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Christiane Kubrick(IMDb)   キューブリックに最期まで連れ添った3番目の妻。結婚前はスザンネ・クリスチャン(Susanne Christian)の名前で女優として活躍していた。正しくはクリスティアーヌ・スザンヌ・ハーラン(Christiane Susanne Harlan)。『突撃』制作時、TV番組で見かけて一目惚れしたクリスティアーヌを強引にラスト・シーンに出演(兵士の前で歌を歌う少女役)させ、結婚までしようとしたキューブリックに当然周囲は大反対。いくら「自分は無神論者だ」と言っていてもユダヤ人であることは曲げようがなく、パートナーのハリスも「ナチの人間と結婚するなんて!」と大激怒。にもかかわらず、キューは離婚までしてクリスティアーヌと結婚、以降40年間連れ添う事になった。(後にハリスは「間違っていたのは自分だった」と笑いながらインタビューに答えている)  『2001年…』の撮影中にはあまりにも身なりに構わなすぎるキューブリックに業を煮やし、イギリスの有名デパート「ハロッズ」にオーダーメードの服の予約の手はずを整えておいたのに、キューブリックは、その売り場に行き着く前の既製服売場で足を止め、青いスーツに袖を通した後「いいね、これを4着くれ」といってすぐ車に戻り、撮影を再開したという。そんなキューブリックの服装を、クリスティアーヌは「風船売りのおじさん」と呼んでいた。  その後、キューブリックの映画製作に深く掛かわるようになり、キューブリック流ポルノ映画『ブルー・ムービー』を鶴の一声で止めさせたり、また、ナチによるユダヤ人迫害 を描いた『アーリアン・ペーパーズ』にも反対した(題材が題材だけに、この反対は当然だろう。キューブリックはユダヤ人なのだし)。『時計…』や『アイズ…』では、彫刻や絵画の作者としてクレジットされている。  プロデューサーのヤン・ハーランは実弟、ナチの宣伝映画監督だったファイト・ハーランは叔父に当たる。前夫ヴェルナー・ブルーンズとは1952年に結婚、1957年に離婚したが、前夫の間にカタリーナ(1953年12月25日)を授かっている。1958年結婚(キューブリック30歳、クリスティアーヌ26歳)との事だがクリスティアーヌは日付を明らかにしていない。実はこの頃キューブリックは妻ルース・ソヴォトカと別居状態ではあったが、...

【名曲】黒く塗れ!(Paint it, Black)/ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)

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   イギリス出身の世界最強のロックバンド、ローリング・ストーンズが'66年に発表した大ヒット・ナンバー。 ベトナム戦争映画に、当時のロックナンバーを使うのは『地獄の黙示録』以降、定番となっていたが、これほど暗喩的、象徴的に使用されたのは、この曲とドアーズの『ジ・エンド』だけではないだろうか。  キューブリックはこの曲の使用について 「ストーリーをまとめたいと思うなら、あの歌を使うよ。また、ローリング・ストーンズはあの頃のシンボルのようなもので、あの曲はちょうどいい時期に世に出てきた。だから、あの時代はローリング・ストーンズ抜きでは語れないんだ。」(『キネマ旬報』1988年3月上旬号より) とインタビューで語っている。  人格や個性や感情といったものを、完膚なきまでに塗りつぶされた兵士を象徴するかのように、『フルメタル・ジャケット』のタイトルバックで、まさしく「黒く」鳴り響いている。

【トリビア】ニンフェット(Nymphet)

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 少妖精の意。転じて、10代前半の美少女を差す。小説『ロリータ』で、ハンバートはロリータを始めとして彼の感性に添う美少女をこう呼んでいるが、年齢制限を9~14歳までとし、しかもそのニンフェットの呪縛を受けるには30~40歳の年齢差が必要とまでしている。ニンフェットの定義も非常にシビアで、「一般人が女学生の中から美少女を選んだとしても、その中にニンフェットは含まれていない」とまで言い切っている・・・というか、もう「しなやかな骨組み」とか「かん高い耳障りな声」とか「逆立つうぶ毛」とか「汗でべたつく首」とか「ふくらはぎの傷あと」とか「脇腹のほくろ」とか「足首でぴくぴく動く骨」とか、常に妄想炸裂。特にロリータを妄想の中で独占し、コトを成就させる(実際のロリータはただ普通にじゃれてるだけ)くだりに至っては変態以外の何ものでもありません。でも笑えます。

【関連書籍】失われた宇宙の旅2001/アーサー・C・クラーク著 伊藤 典夫 訳

  1972年に出版された、クラーク自身の筆による『2001年…』のアウトテイク集。これも早くから邦訳が望まれていたが、なんと38年も経ってからの出版となった。内容は、クラーク節全開のエンターテーメントSF然とした『2001年…』が満載で、もしこのままキューブリックが映像化したら、陳腐になること請け合いといった内容だ。クラークを「SFロマンの虜」として批判したキューブリックの気持ちが良くわかるような気もするが、小説版『2001年…』の、クラークらしからぬ筆致に少なからず違和感を覚えていたのも事実。クラークの本音は明らかにこちら側だ。 【クラークとキューブリックの共同作業の流れ】 1964年4月、クラークとキューブリックはニューヨークのレストラン、トレイダー・ヴィックスで初めて顔をあわせる。 1964年5月、原案として『前哨』を使うことに合意。製作期間を約2年と見積もる。(実際は4年) 1964年12月、スターゲート到着までの全体のおおまかな筋書きが完成する。 1965年2月、MGMにより、仮題『星々の彼方への旅(Journey Beyond the Stars)』のとして製作を発表する。 1965年春、一度は決定稿と思われていたセクションを次から次へと没にして、再度物語を練り直す。 1965年4月、タイトルをキューブリックが考えた、『2001年宇宙の旅』に決定する。 1965年5月、宇宙人をどう描けば良いのか悩むキューブリックは、クラークの『幼年期の終わり』の悪魔イメージを取り込みたい、と言い出す。 1965年8月、ロンドンのMGM撮影所でセットの立込みが始まり、クラークはそのアドバイスのためにロンドンに向かう。 1965年10月、物語の終わらせ方として、「ボーマンが子供に逆行し、赤ん坊となって地球軌道上に浮かぶ」という案を出し、キューブリックはそれに賛成する。また、キューブリックの判断で、ボーマン以外のディスカバリーのクルーは、皆殺しと決定する。 1965年11月、オリオン号のコクピットのセットを見学した時、思わず「中華レストランに似ている」と口走ってしまい、それを聞いたキューブリックはセットの改装をスタッフに命じる。 1965年12月、月のモノリス発掘現場から撮影が開始される。 1966年1月、「スター・ゲートのありかは土星の衛星ヤペタス以外に考えられな...

【俳優】ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)

 『アイズ…』で、主人公ビル(トム・クルーズ)の妻、アリス・ハーフォードを演じた。14歳で映画デビュー後、後に夫となるトム・クルーズと『デイズ・オブ・サンダー』(1990)で共演。その後『誘う女』(1995)、『バットマン・フォーエバー』(1995)、『ピースメーカー』(1997)、『ムーラン・ルージュ』(2001)、『めぐりあう時間たち』(2002)、『奥さまは魔女』(2005)などに出演。大量にテイクを撮るので俳優に嫌われていたキューブリックに「もう一度」とリテイクを要求したため、「もう一度、なんて言った俳優は君がはじめてだよ」と言わしめた珍しい人。クルーズとは90年結婚、01年離婚。一部では『アイズ…』が原因では?と囁かれたが、真偽は不明。  1967年6月20日アメリカ・ハワイ生まれのオーストラリア人。

【スタッフ】ソール・バス(Saul Bass)

 世界的に有名なグラフィック・デザイナー。映画界ではタイトルデザイナーとして有名で、手掛けた作品は『カルメン』('54)、『七年目の浮気』('55)、『80日間世界一周』('56)、『暴力波止場』('57)、『めまい』('58)、『北北西に進路を取れ』('59)、『栄光への脱出』('60)、『ウエスト・サイド物語』('61)、『グラン・プリ』('66)と、どれも名作ばかり。『スパルタカス』ではタイトルデザインとデザイン監修も担当。理解者の少なかった現場でキューブリックが頼れた唯一の存在で、バスの描くコンテにずいぶん助けられたようだ。その縁で『シャイニング』ではポスターのデザインを担当している。  生涯で唯一『フェイズ IV/戦慄!昆虫パニック』('73)で監督もしているが、12チャンのお昼に放映するのにピッタリなB級パニック映画で、なんでこんなもの撮ってしまったのか理解に苦しむ出来。まあ、その後監督としての声は掛からなかったのもしょうがないでしょう。  1920年5月8日アメリカ・ニューヨーク出身、1996年4月25日死去、享年75歳。

【俳優】キア・デュリア(Keir Dullea)

  『2001年宇宙の旅』のデビッド・ボーマン船長役。それ以外では『リサの瞳の中で』(1962)が有名らしいけど、 印象深いのはやっぱり 『2010年』(1984)のボーマン役。しょうがないけど。  1936年5月30日アメリカ・オハイオ州生まれ。

【登場人物】デヴィッド・ボーマン(David Bowman)

  『2001年宇宙の旅』のディスカバリー号の船長。ただ一人の生き残りで全人類の総代表。ラスト・シーンで次々に年老いて行き、死に、やがて胎児の姿になって再生し、地球圏に帰還する。草案段階では「アレックス・ボーマン」となっていたが、もちろん『時計…』のアレックスとは無関係です、念のため。

【家族】ルース・ソボトカ(Ruth Sobotka)

  キューブリック2番目の妻。バレリーナ出身で、その踊りを『非情…』のヒロインの回想のシークエンスで見せている。また『現金…』ではアート・ディレクターを担当した。キューブリックのヨーロッパ趣味は彼女の影響が大きいと言われていて、『アイズ…』の原作『夢がたり』は、彼女の紹介という説も。  1925年8月4日ウィーン出身。1955年1月11日結婚(キューブリック26歳、ルース29歳)、1957年頃には別居状態となり、1961年に正式に離婚、1967年6月17日死去、享年41歳。

【パロディ】『インデペンデンス・デイ』

  脳みその一片も使わせない映画を撮りつづける、偉大なる「バカ映画職人」ローランド・エメリッヒ。同じバカ映画監督のマイケル・ベイよりも、すがすがしいまでにバカに徹するので、個人的にはこの人嫌いじゃないです。  元ネタを古今東西のSFや、タブロイドのUFO記事から引っ張ってきて、壮大なヨタ話にまとめるなんて、よっぽどの才能がないとできません。ましてや、それを事もあろうに「アメリカ独立記念日」と結びつけてしまうなんて・・・。7月4日には全く関係のない我々日本人も喜んで戦闘に参加させて頂きます!!  ネタといえば、主人公「デイブ」のPowerBookで起動する「HAL」。もう、100人いたら100人思いつきそうなアイデアを堂々とやる監督に大拍手!そういえばもう一本の『2001年…』ネタ、『スターゲイト』もこの人でした。観てないけど。

【インスパイア】『アポロ13』

  映画でも触れられていた通り、このアポロ13号ミッションと『2001年宇宙の旅』とは驚くほど共通点が多いのです。まず、司令船が「オデッセイ」と名付けられていたこと。事故の第一声が「ヒューストン、問題が起こった」だったこと。(小説版『2001年』のHALのアンテナ故障予報の第一声が「お祝いの邪魔をして申し訳ないが、問題が起こった」)事故の直前、中継のBGMで「ツァラトゥストラ」をかけていたこと。キューブリックファン的には興味深い話ですが、当時はそれ以上に「13時13分に打ち上げたアポロ13号が、4月13日に事故を起こした」と話題になったそうです。  因にアポロ計画の宇宙飛行士に「フランク・ボーマン」という人がいます。ジェミニ計画の頃からの宇宙飛行士なので、当然クラークはその名前を知っていたはず。もしかして「デビット・ボーマン」と「フランク・プール」はこの人からの引用だったのでしょうか?それともただの偶然?

【登場人物】ジャック・トランス(Jack Torrence)

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  『シャイニング』で、ホテルに巣くう幽霊達によって狂気に駆り立てられるしまう、元教師で作家。小説版では主人公としてみっちりその心理を描写され、キャラクター造形もしっかりしているのだが、映画ではばっさり切り捨てられ、単なる狂気に駆られてしまう父親として描かれてしまっている。キングは物語の中心をジャックの心理に据え、著しく自己投影していたのに対し、キューブリックはホテルの呪われた過去と超常現象を中心に据えていたのだから、当然と言えば当然なのだが。

【台詞・言葉】O.P.E

  『博士の異常な愛情』で、B-52の帰還命令を伝えるCRM回路を開くための暗号。リッパー将軍が好んで口にした言葉である「Peace on Earth(地上の平和)」、「Purity of Essence(エッセンスの喪失)」の頭文字になっている。また、「オペ(手術)」とも読める。

【考察・検証】『アイズ ワイド シャット』でトム・クルーズとニコール・キッドマンをキャスティングした理由

  キューブリックは70年代初めの企画段階から夫婦の俳優をキャスティングする事を考えていたようで、アレックス・ボールドウィンとキム・ベイシンガー、スティーヴ・マーチンとヴィクトリア・テナントなどの候補が挙がっていた。結局トム・クルーズとニコール・キッドマンに決定するのだが、これは「夫婦共演」という話題性を狙ったというだけでなく、他にもっと大きな理由があるように思われる。  通常、夫婦の俳優を同じ映画で起用しても、夫婦役や恋人役にはキャスティングしないものだ。夫婦の俳優を夫婦役でキャスティングしてしまうと、観客にその俳優の私生活を覗き見るかのような錯覚を与える事になる。そうなると俳優がいくら役になりきっていても、観客はその俳優個人としてしか観れなくなるし、映画という虚構の世界に没入できなくなってしまう。これでは映画として成り立たない。  だが、キューブリックはあえてそこを狙った。ビル&アリスではなく、トム&ニコールとして観て欲しかったからだ。では何故そんな通常ありえないキャスティングをしたのか?  答えは全てラストシーンにある。下世話なイエロージャーナリズムで低俗な好奇心を満たして喜ぶ大衆が、トムとニコールのどんなプライベートが覗けるのかと期待して映画館に足を運んだ所に、2時間窮屈な座席に座らせた揚げ句あの一言を突き付け、「この映画に不快感を示す人間は、すなわちその存在自体が不快な人間に成れ果てている!」と断罪するキューブリック。ルック社時代に猿の檻の内側から客の痴呆的な姿を写すという、冷淡で皮肉に満ちた写真を撮っているキューブリックは、この頃から何ひとつ変わってはいなかった。いや、更に深化、先鋭化していたのだ。  本作をどう受け取るかそれは観客の自由だ。だが『博士…』や『時計…』の頃のキューブリックを評価しつつ、「あのキューブリックも老いてしまった」とか、「冷笑な監督が最期にして愛や性の喜びを肯定的に表現した」という評がはびこるのは一体どうした事だろう?「老いた」のは他でもない、こんな駄文しか書けない自分自身だというのに。  映画界をとりまく環境や、大衆の嗜好は時代によって大きく変化した。その変化は、大いにキューブリックを失望させたのかも知れない。だが、いつの時代もキューブリックはキューブリックだったのだ。彼の心臓が動きを止めるその瞬間まで。...

【オマージュ】『カプリコン・1』

  この頃には、この後まさか『2010年』を監督する事になろうとは思いもしなかっただろう、ピーター・ハイアムズ監督のポリティカル・フィクション。「月面着陸がアメリカ政府の仕組んだヤラセだったら・・・」というプロットを軸に、隠蔽しようとする政府側、陰謀に加担させられた宇宙飛行士、それを暴こうとするジャーナリストとの攻防をスリリングに描いた傑作・・・というのが当時の評価だったけど、今観るとさすがにショボイ。国家的陰謀のはずなんだけど、隠蔽側も暴露側もなんだか牧歌的で緊張感があまり感じられないし。当時は手に汗握って観た記憶があったんだけどなぁ。  で、オマージュシーンですが、逃げ出した宇宙飛行士が廃屋のガソリンスタンドでコーラの自動販売機を壊す、というもの。まあ、それだけと言えばそれまでですが。

【セット】無重力トイレ(Zero Gravity Toilet)

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  『2001年…』で、アリエス1B宇宙船に備え付けてあるトイレ。 フロイドが便意を催しトイレに行ったはいいが、あまりの操作の複雑さに困惑してしまう…というオチ。クラークによると、キューブリックは最初から冗談のつもりでこのシーンを作ったらしい。以下はその操作マニュアル。 ●無重力トイレ〈使用の前に指示書をよく読んでください〉 1)トイレは標準ゼロGタイプです。 必要に応じて 「システムA」又は「システムB」を選ぶことができます。 表示はトイレ内にあります。「システムA」の場合はレバーを押し下げてください。 するとダルクロン除去器が下の溝にセットされます。 粘着性の縁を締め、大文字の 「X」 と書かれた接合部に排出ホースをしっかりと固定してください。 接続部の1インチ下の銀色の輪が しっかりと接続されるまでひねってください。 2)トイレの準備ができました。ソノヴァッククレンザーは口の上の小さいスイッチよって作動します。安全のため、二つのオレンジ色の線が合うように、最初の位置まで後方に輪を戻し、外してください。後部の真空容器にダンクロン除去器を置き、青いボタンを押して作動させます。 3)「システムB」の操作盤は壁の反対にあります。赤いスイッチを押して、尿吸引器をセットします。これは青い手動ボタンを押せば、手動で上下に調整することができます。口は自動的に開きます。使用後は緑のボタンを押してください。蒸発器が作動し、尿吸引器が収納されます。 4)ドアの上にある緑の出口ライトが点灯したら、トイレを出てください。もし赤いライトが点灯している場合は、洗面所の装置が正しい位置でなく、安全ではありません。ドアの右手の「スチュワーデス呼び出しボタン」を押してください。スチュワーデスは外側のコントロールパネルから、すべての装置を正しい位置に戻します。緑の出口ライトが点灯したら、トイレを出てください。ドアはきちんと閉じてください。 5)超音波シャワーを使う場合は、最初に服を脱いで、服ラックにすべての服を置いてください。すぐ下のキャビネットにあるマジックテープ室内履きを履きます。シャワー室に入り、コントロールパネル右上の「シャワーシール」ボタンを押すと、下の青いライトが点灯します。調節ダイヤルでお好みの水量を選び、超音波シャワー作動レバーを押し下げて、通常のようにシャワーを浴びてくだ...

【登場人物】(レイモンド)・バリー・リンドン((Leymond)Barry Lyndon)

  『バリー…』の主人公。 アイルランドの没落した家系出身で、貴族に成り上がろうとしてヨーロッパを旅し、やがてイングランドの伯爵夫人と結婚するが、結局貴族の称号は得られないまま家を追い出され、アイルランドに戻ることになる。いい奴でもないが、そんなに悪い奴でもないという微妙な描き方加減がキューブリックらしい。

【小説家】フレデリック・ラファエル(Frederick Raphael)

  『アイズ…』で、キューブリックと共同で脚本を担当した作家兼脚本家。自著『アイズ ワイド オープン』には、キューブリックの強い要望で、ストーリーを膨らむに膨らませた揚げ句、最後に物語の骨子部分だけを抜き出し、残りを全部棄られてしまった一部始終が綴られてる。キューブリックにとって、脚本は文字通り映画の骨子でしかなく、物語は映像で語るものだったのだろう。他の作品は『いつも2人で』('67)、『デイジー・ミラー』('74)、『マスカレード/仮面の愛』('90)など。『ダーリング』('65)でアカデミー脚本賞を受賞。  1931年8月14日アメリカ・イリノイ州生まれ。

【俳優】ライアン・オニール(Ryan O'Neal)

  『バリー…』のバリー・リンドン(レイモンド・バリー)役。当時役者としては「下手」とされていたオニールがキャスティングされた理由の一つに、キューブリックの娘達の強力な推薦があったからだそう。さしものキューブリックも娘達の圧力には屈せざるを得なかったという事か。  主な出演作は『ある愛の詩』(1970)、『ペーパー・ムーン』(1973)、『遠すぎた橋』(1977)、『ザ・ドライバー』(1978)、『続・ある愛の詩』(1978)、『ペーパー・ファミリー』(1984)、『ニューヨーク 最後の日々』(2002)など。  1941年8月20日アメリカ・カリフォルニア州生まれ。

【プロップ】オリオン3号(Orion III)

  『2001年宇宙の旅』に登場する、 パン・アメリカン航空のスペース・シャトルの名称。元々「オリオン」とは、惑星間宇宙船の推進システムの計画名で、宇宙船の後部で小規模な核爆発を起こし、それを弛緩板を装備した宇宙船で受け止め、その反動で推進力を得よう、というもの。ディスカバリー号の推進システムとして検討されていたが、結局ボツになったため、その名称だけがスペースシャトルに付けられた。小説版によると、打ち上げ方法は現在のスペースシャトルと異なり、射出カタパルト式になっている。

【オマージュ】ブラー/ザ・ユニヴァーサル(Blur - The Universal)

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  イギリスのブリットポップバンド「ブラー」の95年に発表されたアルバム『ザ・グレート・エスケープ』からのシングルカット曲。  まあ、オープニングのタイトルバックからアレですし、観ての通りプロモは完全にナニしてますから、説明不要でしょう。この時期、イギリスではまだ『時計じかけのオレンジ』の公開は禁止されていて、元ネタがあまり広く知られていないだろうとの読みもあるのか、割とそのまんまやってます。ただ同じ近未来を舞台にしているとはいえ、若者の暴力と権力者の圧制で荒廃したディストピアが舞台の『時計…』と、理想であるはずの平穏なユートピア世界に「無気力」や「無関心」が蔓延する様を歌った『ザ・ユニヴァーサル』では世界観がまるで正反対。どちらかというとルーカスの『THX1138』や、『2300年未来への旅』(ひどい邦題で、原題は『2001年…』とは全く関係ない『Logan's Run(ローガンの脱出)』)の方がぴったりくると思うのだが。

【関連書籍】2001年宇宙の旅/アーサー・C・クラーク 著

  通常キューブリック作品は、ちゃんとした原作があり、それを脚色、映画化するというスタンスを取っているのだが、この『2001年宇宙の旅』に限っては多少事情が異なり、「原作」としては『前哨』を含む何編かのクラークの短編小説がそれに当たるだろう。では、この小説『2001年…』は何かといえば、キューブリックと共同で生みだした全く新しい物語を、クラークが小説に書き下ろしたもの、と言うことができる。現に、クラークは「映画と小説は相互にフィードバックが行われ」、「ラッシュフィルムを観てから小説を書くという、少々贅沢な創作方法をとっている」と言っている。  だが、前代未聞のこの映画を創るに当たっての、クラークの苦労は並大抵の物ではなく、圧倒的な支配力でダメ出しをし続ける、キューブリックの飽くなき追求に疲労困ぱいだったらしく、完成した(クラークにとって)小説の小説の出版を、キューブリックが「まだ読むヒマがない」として差し止めるに至り、相当なプレッシャー(クラークはこの時点でかなりの借金をし、また、「ポリオ症候群」という原因不明の病気にも蝕まれていた)を抱え込んでいた。結果的には映画も小説も大成功・・・となるわけだが、これ以降、クラークは決してキューブリックと一緒に仕事しようとしなかった。  そんなキューブリックの強大な干渉の影響もあってか、クラークの他の著作に比べて、この『2001年…』は、明らかに肌合いが異なっており、通常なら人間味タップリに魅力的に描写される筈の登場人物が、妙にサバサバした印象を与えるものになっていたり、出来事を淡々と描写するそのドライな筆致など、キューブリックのフレーバーがそこここに感じられるものになっている。  どちらにしても、この二人のコラボレーションなくしては、この傑作は産まれることはなかった訳であるし、映画の謎をクラーク側から解説する書としても重要なので、必読に値するのは間違いないだろう。

【小説家】スティーブン・キング(Stephen King)

  『シャイニング』の原作者。'74年に『キャリー』を処女出版後次々に傑作を発表、「モダン・ホラーの旗手」と呼ばれるベストセラー作家に。映画化された主な作品だけ挙げてみても、『クリープショー』(1982)、『クリスティーン』(1983)、『スタンド・バイ・ミー』(1986)、『ペット・セメタリー』(1989)、『ミザリー』(1990)、『ショーシャンクの空に』(1994)、『グリーン・マイル』(1999)、『アトランティスのこころ』(2001)、『ドリームキャッチャー』(2003)、『シークレット ウインドウ』(2004)などめちゃくちゃ多数。1997年には、よほどキューブリック版が気に入らなかったのか、『シャイニング』のリメイク権をワーナーから買い戻し、TVシリーズとして製作・監督している。  1947年12月21日アメリカ・マイアミ出身。

【プロップ】アルファ・エコー・35・ユニット(AE-35 Unit)

  『2001年宇宙の旅』の宇宙船ディスカバリー号のアンテナの背面にある装置の名前。 アンテナを正確に地球のある方向に向ける働きをしている。この装置の故障を HAL が「わざと」誤って予報した事から、HALの狂気が始まった。

【家族】トーバ・メッツ(Toba Metz(Kubrick))

  キューブリックの最初の妻。1944年、当時キューブリック一家が住んでいたアパートにメッツ一家が引っ越してきたのがキューブリックと知り合うきっかけだった。タフト高校では同級生となり、学校では目立った美人だったそうだ。1948年5月29日、ニューヨークのマウント・ヴァーノンで結婚式を挙げ(キューブリック19歳、トーバ18歳)、グリニッジ・ビレッジに新居を構えた。その頃は秘書の仕事をしていたそうだ。後に『恐怖…』で台本監督を務めている。キューブリックとは1953年に離婚し、その後1955年9月11日にジャック・アドラーと再婚した。  1930年1月24日ニューヨーク出身。現在生死不明。

【俳優】ヴィンセント・ドノフリオ(Vincent D'Onofrio)

  『フルメタル・ジャケット』で、デブの新兵レナードを演じた。この時点では新人俳優だったが、『 JFK 』(1991)、『マルコムX』(1992)、『エド・ウッド』(1994)、『ストレンジ・デイズ』(1995)、『メン・イン・ブラック』(1997)、『ザ・セル』(2000)、『クローン』(2001)など、その後話題作に多数出演している。  1959年6月30日ニューヨーク・ブルックリン生まれ。

【プロップ】デュランゴ95(Durango 95)

  『時計じかけ…』で、アレックスが乗り回すスポーツカー。実在した車で本当の名称は「アダムスプローブ16(1969 Adams Probe 16)」。この作品は正式に年月を特定していないけど、「95」ってことは1995年なのかも。

【インスパイア】デヴィット・ボウイ/スペース・オディティ(David Bowie - Space Oddity)

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  1969年にイギリスのミュージシャン、デヴィット・ボウイが発表した曲。歌詞は「トム少佐」がドラッグを飲んで宇宙に行き「僕に出来る事はなにもない」と気持ち良くなっている・・・という他愛もない内容。アコースティックギターの微妙なコード弾きと相まって、浮遊感のあるトリップ・ソングになっている。当時『2001年…』が「究極のトリップ映画」と解釈されていたのが想像できる、まさに『宇宙の珍品』の名に相応しい曲。でも名曲です。

【撮影・技術】ステディカム(Steadicam)

  それまでの移動撮影は、ドリー(台車)やクレーンに載せてレールの上で動かすというのが一般的で、この方法だと、レールやクレーンの設置をしなければならず、レールがばれないようアングルも限定され、しかもレールやクレーンの動く範囲でしか撮影ができなかった。手持ちで撮影する方法もあるが、重いミッチェルカメラだと、どうしても手ブレが起きやすく、手ブレの効果を意図的に使う時以外は現実的ではない。しかし、このステディカムを使うと、手持ち撮影にもかかわらず全く手ブレが起きないので、ドリーショットのような効果がレールを敷く手間も、アングルの限定もなく、またレールが敷けないような起伏の激しい場所や、狭い場所での撮影も可能になった。  原理は、カメラをショックアブソーバーのついたアームにのせ、それをショルダーベルトで身体に装着するもので、カメラマンの動きによる振動を、カメラに伝わる前に相殺させることができる。弱点と言えばこの装置の重さと操作の難しさで、『シャイニング』の迷路のシーンでは、キューブリックの指示で重い装置を担いだまま、長い距離を何度何度も全力で走らされた開発者のギャレット・ブラウンがへとへとになってしまったという苦労話も伝わっている。  キューブリックはこのステディカムの革新性に夢中になり、その開発にもアドバイスしたそうだ。『メイキング・ザ・シャイニング』では、ステディカムを駆使して撮影している様子を観る事ができる。

【作品紹介】『フルメタル・ジャケット』

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Full Metal Jacket(IMDb) 邦題/フルメタル・ジャケット 原題/Full Metal Jacket 公開日/1987年6月26日(116分、カラー、ワイド) 日本公開/1988年3月19日 製作会社/ワーナー・ブラザーズ 製作総指揮/ヤン・ハーラン 製作/スタンリー・キューブリック 監督/スタンリー・キューブリック 脚本/スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード 原作/グスタフ・ハスフォード『ショート・タイマーズ』 撮影/ダグラス・ミルサム 編集/マーティン・ハンター 音楽/アビゲイル・ミード 美術/アントン・ファースト 出演/マシュー・モディーン(ジョーカー)、リー・アーミー(ハートマン教官)、ヴィンセント・ドノフリオ(ゴマー・パイル)、アイリス・ハワード(カウボーイ)、ケヴィン・メイジャー・ハワード(ラフターマン)、アダム・ボールドウィン(アニマル・マザー)、ニョック・リ(ベトナム人狙撃兵)ほか 配給/ワーナー・ブラザーズ ●ストーリー  サウスカロライナ州、パリスアイランド海兵隊新兵訓練基地。ハイスクールを出たばかりのジョーカーは達は髪の毛を刈られ、屈強な海兵隊員になるべく8週間に及ぶ厳しい訓練を課せられる。いきなり情け容赦ないハートマン教官から罵詈雑言を浴びせられ、ハードな特訓に耐えるしかない日々が始まった。同僚のレナードは基礎体力もなく、銃の扱いや行軍など何をやらせても駄目な落ちこぼれだった。ある時、ハートマンの鉄拳制裁に怯まなかったジョーカーは班長に任命され、レナードの教育係をしろと命令される。マンツーマンで銃の扱いや靴の紐通し、毛布のたたみ方まで丁寧に指導するジョーカー。そのおかげかレナードは少しずつ訓練をこなせるようになってきた。  ある夜身辺チェックの時、レナードが食堂からくすねたドーナツを隠し持っているのが見つかってしまう。怒ったハートマンはレナードに罰を与えず、連帯責任として小隊に罰を与えるようになった。それに怒った面々は就寝後、レナードにリンチを与えることを企てる。石けんをタオルにくるみ、レナードを殴るのだ。躊躇したジョーカーも促され、結局リンチに参加するのだった。すると翌日から見違えるように優秀な訓練兵になったレナード。しかし眼光は異常だ。銃を手入れするレナードは銃にシャーリーンと名を付け話かけ...

【DVD】『ア・ライフ・イン・ピクチャーズ』(原題:A Life in Pictures)

  とにかく、この豪華な出演者を見て欲しい。キューブリック・ファンならそのインタビュー姿が拝めることができるだけでも貴重な人物が多いということが、すぐ理解できるだろう。その上、惜しげもなく挿入されているキューブリック秘蔵のプライベート映像(幼少の頃や、イギリス移住後の一家の映像)や貴重なスチール写真(ルック社時代の報道写真も)、そして『2001年…』や『フルメタル…』などのメイキングシーン…。さすが製作・監督が身内(キューブリックの義弟)だけあって、内容はとても充実していて素晴らしいものに仕上がっている。そして、たったワン・シークエンスだが、キューブリック初のドキュメンタリー『拳闘試合の日』や、まぼろしの処女作『恐怖と欲望』のフィルムまで収録されている。  インタビュー・シーンが多く、長さも2時間22分もあるが、全く飽きさせない一級のドキュメンタリーに仕上がっている。「これを観ずしてキューブリックは語れない」そう断言しても良い程の良質のドキュメントだ。

【関連作品】『片目のジャック』(One-Eyed Jacks)

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One-Eyed Jacks(IMDb)   キューブリックが撮影直前まで監督する予定だった、マーロン・ブランド監督・主演の西部劇。リオ(ブランド)は相棒のタッド(カール・マルデン)と組んで銀行を襲撃、まんまと大金をせしめるが、タッドに裏切られ一人投獄される。5年後、脱獄したリオはタッドを探し出し復讐しようとするが、強盗から足を洗い保安官になっていたタッドは結婚し、妻と義理の娘ルイザの三人で暮らしていた。本心を隠したまま、タッドに近づいたキッドは、祭りの夜、ルイザと関係し妊娠させてしまう。だが、ルイザを本当に愛し始めていたキッドは、復讐と愛とどちらを選ぶか悩み始める・・・というストーリー。  銀行強盗、保安官、裏切りと復讐、決闘、そしてラブシーンと、西部劇お決まりのパターンが詰め込まれた平凡な作品。脚本家がサム・ペキンパー、カルター・ウィリンガム+キューブリック、カルロ・フィオレ、ガイ・トロスパーと次々に入れ替わったせいなのか、全体的にリズムの悪い、冗漫な印象が残る。  また、リオが受けた刑務所内での「屈辱的な扱い」がさっぱり描かれていないため、リオの復讐心がどれほどのものか全く伝わってこないし、「銀行襲撃の決行日が地元の祭りだったためやむなく中止」というなんとも間抜けな設定のため、ここまでの緊張感がプッツリ。それから繰り広げられる恋愛模様もだらだらと冗漫で、だんだんリオが「名の知れた凄腕の銀行強盗」に見えなくなってしまう。そしてどっちつかずの中途半端なラストシーン・・・。この映画の製作過程を象徴するかのような、なんともしまらないお話だ。

【小説家】アーサー・C・クラーク(Arther C. Clarke)

  世界的に超有名な SF作家、 科学者。 その豊富な科学知識に裏打ちされた作品は、リアルな触感で読者に迫ってくる。 『2001年…』では、キューブリックと共同で原作を書き、キューブリックはそれを映画にし、クラークは小説に書き下ろしている。だが、クラークにとってそれは辛い日々だったらしく、キューブリックの意図が変わるたびに書き直しを強いられたり、映画の完成まで小説の出版を止められたり、また、原因不明の病気での身体の麻痺(のちにポリオ症候群と診断されている)や、多額の借金も抱えていたと言われている。もちろん、映画公開後や小説出版後は、事態は急速に好転するのだが…。(後に、クラークは「キューブリックと銀行への道すがら、二人とも笑いが止まらなかった」と言っている)でも、この経験がよっぽどこたえたらしく、続編の『2010年』では、「キューブリックはナシ」というのを映画化の条件として挙げていたぐらいだ。キューブリック久々の本格SF映画になる予定だった『A.I』では、脚本を依頼されたり、アドバイスしたりするなど、2人の親交は続いていた。2008年、自身の小説を映画化した『2010年』を迎えることなくスリランカの自宅で死去した。  代表作は、『宇宙への序曲』('51)、『幼年期の終り』('53)、『銀河帝国の崩壊』('53)、『渇きの海』('61)、『宇宙のランデヴー(1,2,3,4)』('73~)、『グランド・バンクスの幻影』('90)など。オデッセイシリーズは、 『2001年宇宙の旅』('68)、 『2010年宇宙の旅』('82)、 『2061年宇宙の旅』('87)、『3001年終局への旅』('97)の4作品ある。  1917年12月16日イギリス・サマセット州生まれ。2008年3月19日死去。享年90歳

【オマージュ】『ツイスター』

  キューブリックファン的にはドライブインシアターで上映中の『シャイニング』で有名な『ツイスター』。監督のヤン・デ・ボンはキューブリック好きなんでしょうねぇ。竜巻が近づいてくる恐怖感と、ニコルソンが斧持って追っかけてくる恐怖感とは何となく近いものがあるのか、そんなに違和感なく観てしまいました。でも、そんな事にかまけているばっかりに、キャラ描写は薄っぺらいは、大げさなCGばかりてんこ盛りだは、竜巻の発生はご都合主義だわ、そんな事も思いつかなかったの?とあきれるオチだわ、最高にひどい映画に仕上がってます。憧れるのは勝手だけど、これほど才能のない監督に憧れられてもねぇ。ツッコミながら観るにはいい映画でしょうけど。

【関連書籍】アイズ ワイド シャット(角川文庫)/スタンリー・キューブリック、フレデリック・ラファエル 著、高橋 結花 訳

  『アイズ…』の脚本と原作がセットになったお得な文庫本。映画から書き出した脚本は字幕スーパーより丁寧に訳されているので、キューブリックの真意の確認にはもってこいの資料だ。  一方の原作は『夢奇譚』より現代語訳されているので読みやすい。そのかわり19世紀のウィーンの雰囲気が若干損なわれている気はしないでもないが、それは好みの問題だろう。そして巻末の解説は・・・やはりキューブリックの「真意」に気付いていない。「ノゾキに淫した映画」はそうなのだが、そのノゾキ感覚こそが「カリカチュアと寓話」そのものであり、キューブリックの「痛烈な批判」であるとは思い至っていないようだ。残念。

【俳優】スー・リオン(Sue Lyon)

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 Sue Lyon(IMDb)  7500人の候補者の中から選ばれた『ロリータ』のロリータ役。 公開当時 「13歳には見えない」との評があったが、 撮影時の本当の年齢は14歳だった。 (キューブリックは「13歳だ」 と言い張っいたが・・・)   他の主な出演作は『イグアナの夜 』(1964)、『荒野の女たち 』(1966)、『恋とペテンと青空と』(1967)、『トニー・ローム/殺しの追跡』(1967)、『キャプテン・アメリカ 』(1971)、『サイキック・マーダー/透明殺人鬼の復讐』(1976)、『激突39台!史上最大の自動車事故/ハイウェイ・パニック』(1976)、『クラッシュ! 』(1977)、『エンド・オブ・ザ・ワールド/死を呼ぶエイリアン脱出計画 』(1977)、『アリゲーター』(1980)など。『恋とペテンと…』でジョージ・C・スコットやスリム・ピケンズと共演している。  1946年7月10日アメリカ・アイオワ州生まれ。尚、正確には「スー・ライオン(ライアン)」と発音するが「ライオン」「ライアン」だとニンフェットのイメージに合わないため、日本ではフランス語読みの「リオン」としていた。この事を来日した本人に確認すると「リオンでも悪くないわね」との事だったのでそのまま定着したという。

【台詞・言葉】ルドヴィコ療法(Ludovico Technique)

  『時計じかけ…』でアレックスが受ける人格矯正療法。投薬による不快感を、暴力的な映画を観ることによる不快感に「関連づけ」させる、というもの。もちろん実在しない。  一般的には「洗脳」と解釈されているが、どちらかというとスキナーの「オペラント条件付け」のイメージの方が近い。「オペラント条件付け」とは、ネズミにスイッチを押せばエサが自動的に出てくる装置を与え、最初は偶然にスイッチに触った事からエサを得るが、だんだん「スイッチ=エサ」と理解しはじめ、最終的にはエサ欲しさにスイッチを押すようになるという行動心理学の事。しかしキューブリックは「人間はそんなに単純な生き物ではない」とスキナーには否定的だったようだ。

【俳優】ジョー(ジョセフ)・ターケル(Joe(Joseph) Turkel)

  『現金に体を張れ』では、最後に金を横取りするために、部屋にマシンガンで押し入るヴァルの仲間ティニーを、『突撃』では、くじ引きで選ばれた上、殴り合いの末に重傷を負ってしまう処刑兵を、『シャイニング』では、幽霊のバーテンダー、ロイドを演じている。他には、『ブレードランナー』(1982)でタイレル社長役が有名。1927年7月15日アメリカ・ニューヨーク・ブルックリン生まれ。2022年6月27日、サンタモニカで逝去、享年94歳。

【DVD】『20世紀の巨匠 スタンリー・キューブリック』(原題:Stanley and Us)

  まあ、このテの商品はいつの時代でも何かにつけ登場するものだし、いちいち目くじらを立てたくもないのだが、それにしてもこれはひどい。内容は、イタリアのTV局のスタッフが、キューブリックのインタビュー番組を作りたいと製作を始めるのだが、どうしてもアポが取れず、それではと他の関係者をインタビューしている内に、当のキューブリックが急逝してしまうという顛末を収めたドキュメンタリーだ。  インタビュー以外のシーンははっきり言ってスタッフの思い入ればかりが先行していて、(自分たちでキューブリックの映画の有名なシークエンスを再現している)それはそれで微笑ましいのだが、まあ、どうでもいい出来だし、インタビュー自体も『A Life in Picture』がリリースされた今、さして貴重だとは思えない。ただ、問題なのは、こんな粗末な番組をDVD化し、さもキューブリックの貴重な映像が見られるかのごとくパッケージし、DVDBOXとリリース時期を合わせてまで店頭に並べたパイオニアの見識だ。これは明らかに便乗商法でしかない。  ちょっと怪しいかなとは思ったが、パイオニアが販売元だったため購入したが、結果は金をドブに捨てただけだった。一流メーカーであるパイオニアも地に落ちたものだ。猛省を望みたい。

【登場人物】ティニー

  『現金…』で、現金を横取りしようとアジトに現れたヴァルの仲間。ショットガンではなく、拳銃を持っている方。でもあっさり銃撃戦で死んでしまう。でもあの『シャイニング』のバーテンダー、ロイドの若き日の姿でもあるので見逃さないように。

【俳優】ジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)

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Jack Nicholson(IMDb)   1969年の『イージーライダー』で一躍有名になり、『カッコーの巣の上で』(1975)や、『シャイニング』のジャック役で決定的な評価を得る。他の主な出演作は『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1981)、『愛と追憶の日々』(1983)、『黄昏に燃えて』(1987)、『イーストウィックの魔女たち』(1987)、『バットマン』(1989)、『マーズ・アッタク!』(1996)、『恋愛適齢期』(2003)など。『ア・フュー・グッドメン』(1992)ではトム・クルーズと共演し、『カッコーの巣の上で』と『恋愛小説家』(1997)で2度の主演男優賞を受賞している。  キューブリックはニコルソンを高く評価していて、『ナポレオン』ではナポレオン役をニコルソンのキャスティングで考えられていたという。『シャイニング』では、「君は有名な俳優だからお手並み拝見といこう」と軽くプレッシャーをかけられた、とインタビューで答えている。キューブリックが1997年に受賞したD.W.グリフィス賞の授賞式には、キューブリックの代理として賞を受け取った。  1937年4月22日、ニュージャージー州生まれ。

【パロディ】『ザ・ロック』

  監督のマイケル・ベイという人は、どうやら『博士』が大好きみたいで、ペンタゴンの作戦室を似せてみたり、ハメル准将が葉巻くわえて電話するローアングルのショットでマネしてみたり。でも、「気付く人は気付く」という程度だったので、次作『アルマゲドン』では、更に露骨に言及。『ザ・ロック』であまり気付いてくれなかったのがよっぽど悔しかったんでしょうか?  まあ、キューブリックファン的には見どころといえばそれだけで、ニコラス・ケイジがFBIの科学者に見えないとか、ハメルの行動がイマイチ意味不明とか、ショーン・コネリーはセルフパロディやりすぎとか、できの悪いマンガのような展開がてんこもり。頭の悪い映画を撮らせたら天下一品のマイケル・ベイ。まあ、彼の映画に深い思想性とか哲学なんて誰も期待していないので、これからもどんどん頭の悪い「爆発」映画を撮ってほしいものです。

【作品論】『メイキング・ザ・シャイニング』(原題:Making The Shining)

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Making The Shining(IMDb)   キューブリックの三女、ビビアン・キューブリックが父親から贈られたカメラで撮影した、『シャイニング』製作の裏側。イギリスのTVシリーズ「アリーナ」の一編として、1980年に放映された。一時はレア・アイテムとして入手・鑑賞は困難だったが、現在はDVDやBDの特典映像として容易に観る事ができる。  あまり舞台裏を明かさないキューブリックが、身内だからこそ許せたであろう、『シャイニング』のメイキング・フィルム。ジャック・ニコルソンやダニー・ロイド、スキャットマン・クローザースのインタビューや、撮影現場の裏舞台、演出や撮影に細かく指示を出すキューブリックの姿など、貴重な映像は多々あるが、特にウェンディ役のシェリー・デュバルをとことん追い込んで行く演技指導は圧巻だ。手慣れた役者らしい演技を嫌うキューブリックにとって、シェリーの演技はわざとらしくとしか映らなかったのだろうが、この徹底ぶりには少々驚かされる。揚げ句、プレッシャーに堪えかねたシェリーは、撮影中に倒れてしまうのだから、実際はもっとすごかっただろうと容易に想像できる。  それでも殊勝にインタビューに応えるシェリーに、痛々しさを感じずにはいられないが、彼女はキューブリックの求める理想の役者像とは違うと思われるので、仕方ないことかも知れない。キューブリックは、自分で自分を追い込める役者(ピーター・セラーズ、マルコム・マクドウェル、ジャック・ニコルソン等)には、比較的自由に演技をやらせているが、それが出来ない役者には、徹底して高圧的になっているようだ。だが、そのことで誰もキューブリックを責めることは出来ないだろう。何故なら、この撮影現場で一番強大なプレッシャーを受けているのは他ならぬキューブリック自身だからだ。

【登場人物】ストレンジラブ博士(Dr. Strangelove)

  『博士の…』に登場する、元ナチスの科学者。この奇妙なキャラクターは、映画『メトロポリス』に登場するマッド・サイエンティスト、ロートヴァングへのオマージュであり、ナチスで V2 ミサイルを開発した科学者フォン・ブラウンと、水爆開発の第一人者エドワード・テーラーをモデルにしたもの。最後に立ち上がって歩くのは「私は歩けるほどの健康体なので、地下に潜る権利がある」とでも言いたいのでしょう。

【関連書籍】ザ・コンプリート キューブリック全書/デイヴィッド・ヒューズ著

  キューブリックの全作品を、スタッフやキャストはもちろん、興行成績から撮影技術、宣伝や影響、噂話に至るまで、詳細に紹介、解説したまさしく「全書」と呼ぶにふさわしい完ぺきなデータベース。評伝と併せて、ファンなら持っておきたい必携の一冊。

【企画作品】『燃える秘密』(原題:Burning Secret)

  1956年に『現金に…』を知ったMGM制作部長ドーア・シャリーが、自社が映画化権持っている小説を見せたところ、ハリスとキューブリックはシュテファン・シュヴァイツの『燃える秘密』を選び、7万5千ドルの予算と40週間の期間で脚本化する契約を結ぶ。しかし、当のシャリーがMGMを解雇されたため、企画自体が消滅した。  ストーリーは、ヨーロッパのリゾート地で旅行中の幼い子を持つ妻が、男に誘惑されるというもの。この小説自体は、1988年になって、アンドリュー・バーキン監督により『ウィーンに燃えて』の邦題で映画化された。

【考察・検証】『非情の罠』と『裏窓』の類似点

  キューブリックの商業映画デビュー作となった『非情の罠』ですが、当時全盛だったヒッチコック先生の影響はモロ。光と影の使い方や、サスペンスの盛り上げ方、サウンドトラックに至るまで、その影響は散見されます。興行的成功を目論んで、ポスターもご覧の通り。  まあ、ポスターと悪漢やヒロインの顔が全然違うのは突っ込まないであげるとして、当時若干27才のキューブリックの青さっぷり、いいじゃないですか。でもその後、そのヒッチコック先生と同じく、何故かアカデミー賞には振られっぱなしって事になろうとは・・・。憧れた対象が悪かったのか?それとも類が友を呼んだのか??どうなんでしょうか?  因に、キューブリックはヒッチコックの「映画的手法」は真似たにせよ、「映画に対するスタンス」は対極。会話のウィットやシチュエーションの面白さを重視するのヒッチコックと、淡々とした会話とドキュメンタリー的なクールさが特徴のキューブリック。  「映画界の下積みから監督へ」と「写真誌のカメラマンからニュース映画を経て監督へ」の違いと言えばそれまでですが。

【台詞・言葉】フィデリオ(Fidelio)

 ベートーベンの歌劇の題名で、無実の罪で投獄された夫を救うため、男装して刑務所に潜入する妻の物語。乱交パーティーに参加するためのパスワードとして用いられたが、そのまま解釈すると、アリスがビルを助けるために、このパーティーに潜入していた、という暗喩とも考えられる。尚、元の脚本ではパスワードは「Fidelio Rainbow」となっている。

【登場人物】リッパー将軍(General Jack D. Ripper)

 『博士…』でトチ狂ってソ連に核攻撃を命じてしまう、空軍基地の司令官。葉巻をくわえたままで「自分の精力の衰えは、水道水にフッ素を混入しているソ連の謀略だ」とする主張を、饒舌に、そして雄弁に語るその姿は完全にイッてます。「ジャック・リッパー」との役名は、19世紀のロンドンを震撼させた猟奇的殺人鬼「切り裂きジャック」から。

【作品論】『空飛ぶ牧師』(原題:Flying Padre)

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Flying Padre(IMDb)  ネットは今や動画が当たり前となり、こんな貴重な映像が手軽に観られるようになったのは、大変喜ばしい事ではあるのだが、著作権的には限りなくクロに近いグレーなので心情的にはちょっと微妙。まあ、その是非はともかく、観れるものなら観たいのがファンというもの。アップした方に感謝しつつ、堪能させて頂きました。  内容は、ニューメキシコ州のフレッド・スタットミュラー牧師が、軽飛行機に乗って教区を飛び回る活躍をレポートしたもので、当時、映画館で流れていたニュースフイルムとして一般的な作り。キューブリックが監督したものでなければ、今となっては全く価値のないフィルムだっただろう。後に飛行機嫌いになるキューブリックだが、'51年当時はまだ飛行機に夢中で、恐らく牧師の飛行機に同乗してカメラを回したのではないだろうか。  短いフィルムだが、キューブリックらしさを感じるシークエンスはある。まず、子供が病気になるという緊急事態での離陸で、操縦する牧師の横顔にスロットルを操作する映像がインサートされるシーン。こういう編集はキューブリックの得意とする所で、その場の緊張感がよく表現されている。  また、ラストシーンの、救急車の中から親子の目線で離れて行く牧師を撮影し、それにエンドマークをかぶせるというセンス。通常なら牧師と飛行機を手前に配し、その奥に向かって救急車が走り去り、牧師が親子の無事を願って見送る・・・とする所を、あえて母親の目線で撮影する事によって、より牧師のヒーロー像を強調している。まあ、キューブリックが単にあまのじゃくなだけかも知れないが。  全般的にはヤラセ感ありありで時代を感じさせるものではあるが、大変貴重なフィルムなのは間違いない。ニーズはあると思うので、然るべき所が、然るべき手順で、然るべきメディアで発売して欲しい。もちろん、残りの未公開フィルム『拳闘試合の日』、『海の旅人たち』、『恐怖と欲望』も併せてお願いしたい。

【プロップ】ピースバッジ(Peace Badge)

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 主人公のジョーカーが胸に付けていた「ピースバッジ」。平和の象徴である鳩の足跡をシンボライズしたもので、反戦平和のシンボルとして60年代に大々的に流行、反戦運動家も好んで使用したのはよく知られていますが、これを付けていたからといって『フルメタル…』を反戦映画と解釈するのは早計すぎ。今一度この主人公の「ニックネーム」を思い出してみて欲しい。  また、ヘルメットに「Born To Kill(生まれながらの殺し屋)」と落書きされていたり、上官に「何故ピースバッジを付けているんだ?」との問いに、「ユングの二面性に関係するからです」と答えているからといって、『フルメタル…』を善と悪、正気と狂気の二面性を描いたものと解釈するのは早計すぎ。今一度この主人公の「ニックネーム」を思い出してみて欲しい。  ・・・結局、戦争なんて「たちの悪い冗談」でしかない。戦場で浪費される兵士の命以外は。「弾丸は冗談を言わない」からね。

【考察・検証】映画ではなく、絵画に近いキューブリック作品

  キューブリックの諸作品を観るにつけ、所謂一般の「映画」のそれとはかなり趣きを異としている事がわかる。誤解を怖れず言葉にすれば、一種の「組み写真」というか、一つのテーマを連続した写真で見せる「写真展」というか、まるで「映画を観る」というより、「作品を鑑賞する」という表現の方がしっくりくるようにさえ思われる。  だがそれは、常に「退屈」「平板」との評がつきまとう事を覚悟しなければならない。キューブリックはそれを知りつつも、画の持つ力を信じ、「画で語る」という方法論を実践した。何故なら一般的な映画が持っている「俳優や台詞の面白さ」や「演出された映像の迫力」といった特徴は、感情に訴える事はできても、感性に訴える事はできない、と考えていたからだ。  キューブリックは「映画は演劇を映像に収めたものではない」と発言している。だが多くの映画は演劇の延長でしかなく、親しみやすい演技、説明的台詞の多様、紋切り型の演出等に終始している。キューブリックはそんな「演劇的映画」を撮ろうとはしなかった。それは演出家でも俳優でもなく、カメラマン出身だという出自を考えれば、ごく自然な帰結だろう。  キューブリック作品は「演劇的映画」として鑑賞してはならない。スクリーンに映し出された圧倒的なその画に、美術館にいるような緊張感を持って対峙しなければならないのだ。

【関連書籍】キューブリック・ミステリー『2001年宇宙の旅』論/浜野保樹 著

  『2001年…』を中心にしたキューブリックの諸作品を独自の解釈で読み解きながら、その映像表現からメディアの本質を読み解くメディア論。特にHALやモノリスが産まれるに至った、当時のテクノロジーや社会背景の解説はとても興味深い。  1990年の初版なので、多少情報が古くなってしまった部分はあるが、今でもその考察や指摘は充分に読みごたえがある。内容もかなり平易で、あまり専門的になりすぎないよう配慮されて書かれているのも好感が持てる。  著者の浜野保樹氏は現在、東京工科大学メディア学部の教授で、キューブリック関連書籍の邦訳にも携わっている。海外には良書も多いと聞くので、是非その方面での活躍にも期待したい。

【関連作品】『A.I.』(原題:A.I. Artificial Intelligence)

  キューブリックが20年の歳月をかけて積み重ね、練り上げたプロットを、ワーナーに期限を切られたとはいえ、たった1年(撮影は68日)で完成させてしまったスピルバーグに、高い完成度と深い思想性を求めるのは少し酷なことかも知れない。だが、この雑な作品をどうしても高く評価できないのは紛れもない本心だ。  物語の根幹は「愛」にあることはキャッチコピーが示唆する通りだが、物語は終始「愛すること」、「愛されること」の行為のみに終始し、「愛とは何か?」という本質的な問題はおざなりにされてしまっている。キューブリックは、人間であれ、機械であれ、かりそめの肉体に「愛すること」をインプットされている点では対した違いはないと考え、愛の行為のみに終始し、「愛の本質」を考えようとしない人間に対して疑問を投げ掛けている。それは、同じ「愛する行為」ながら全く相反する(母性愛と性愛)プログラムをインプットされたデイヴィッドとジョーに象徴されているのだが、本来なら、もっと「愛の本質」について疑問を持ち、絡まなければはらない二人の機械は、「本物の人間になりたい」や「子供にはわからない」などの簡単な台詞のやりとりに終始し、全く話が深まっていない。  キューブリックはこのプロットの映像化に当たり、本物のロボットを欲しがったと言う。この事は、キューブリックの完全主義者ぶりを象徴するエピソードとして有名だが、この物語の主題を、「愛の本質の追求」と考えるならば、それも納得のいく話かも知れない。何故なら、映像的に完全なロボットに見えれば、「機械が愛を求める姿」に強烈な違和感を覚えるはずで、それが機械的に「愛する行為」のみを求める人間の姿を逆説的に象徴させることができるからだ。スピルバーグの失敗は、この二人の重要なキャラクターに魅力的な俳優(ハーレイとロウ)をキャスティングしてしまったがために、中途半端な感情移入を呼んでしまった点にある。  スピルバーグの失敗はそれだけではない。雑な脚本やご都合主義なストーリー展開は、製作期間の短さを考慮して大目に見るにしても、物語の後半に頻出する説明的なセリフのオンパレードや、未来人(機械人?)の映像化は、観るものをシラけさせるのに絶大なる効果を発揮している。  キューブリックが目指したのは、ピノキオを下敷きに、おとぎ話的ファンタジーに彩られつつも、「愛の本質」を現代人に...

【登場人物】ハートマン先任軍曹(Sergeant Hartman)

  『フルメタル…』で、そのあまりにも洗練かつ独創的な罵詈雑言により、物語前半で強烈なインパクトを残すアメリカ海兵隊パリス・アイランド新兵訓練基地教官。  このハートマンを演じたリー・アーメイは当初、軍事アドバイザーとしての参加だったが、実際に訓練教官だった経歴を買われ、この役に大抜擢されたのは有名な話。アーメイによると「この役が欲しかったので奪い取った」のだという。  このハートマン先任軍曹によって繰り出された「黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん。すべて平等に価値がない!」とか「アカの手先のおフェラ豚!」とか「おまえの顔を見たら嫌になる! 現代美術の醜さだ!」とか「タマ切り取ってグズの家系を絶ってやる!」とかの名言により、世界中の「両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない」「地球上で最下等の生命体」どもから熱い支持を受け、パロディやリアルなアスキーアートまで作られる始末。  まあ、それはそれで良いのだが、やはり『フルメタル…』におけるハートマンの意味をもう少し考えては欲しい。つまり「兵隊」という大量消費材の製造工場で、「パイル」という不良品ができてしまった責任を「現場責任者」だったハートマンが取らされた、という事。この数々の罵詈雑言も新兵製造工場における「製造装置」のひとつに過ぎないのだ。

【プロップ】ディスカバリー1号(Discovery 1)

  『2001年宇宙の旅』に登場した、 アメリカの惑星探査宇宙船。地球軌道建造され、軌道~月軌道間の処女飛行でテスト、それから木星を経由し、最終的に土星へと向かう探査の旅に出発した(小説版 『2001年…』による。映画版では目的地は木星)。推進力は熱核反応炉を利用したプラズマ推進で、先端の球形の部分が居住区とポッド・ベイ、 HALを設置しているロジック・メモリー・センターがあり、居住区は遠心力を利用して人工的に重力を作り出す仕組みになっている。コードネームは「XD-1(エックスレイ・デルタ・ワン)」で、交信時に管制官がディスカバリー号をそう呼んでいる。全長ついては700フィート(213m)、400フィート(122m)、140mと諸説ある。  何かと物議を呼んでいるディスカバリー号の形状だが、気密室は球形が理想的だし、放射線の悪影響を考えると、そこからなるべく離れた場所に原子炉を置くのは理にかなっている。本当はその原子炉の熱を拡散させるための放射翼がつく予定だったが、キューブリックが「(飛行機の)翼にしか見えない」との理由で却下した。「精子を模した」とか、「恐竜の背骨に見える」というのは、科学的リアリティを追及した結果、そうなっただけなのかもしれない。  NASAがこの名前をスペースシャトルに採用した時、誰もが不吉なものを予感したが、全5機体の内、2機体喪失しつつもこの機体は生き残っているので、逆に運が良い名前かも知れない。もしくは、搭載コンピュータに何も名前をつけなかったのが功を奏したのかも。  映画用に制作された模型は全長50フィート(約15.2m、54フィートという情報も)と15フィート(約4.6m)の二種類あったそうで、 素材はファイバーグラスが使用された。

【作品論】突撃(原題:Paths of Glory)

  カーク・ダグラスという大物俳優をキャスティングした意欲作。第一次世界対戦中、フランス軍で実際にあった事件を基にして書かれた反戦小説『栄光の小径』の映画化で、昇進をほのめかされたフランス軍の将軍が、成功不可能な「蟻塚作戦」を無理矢理遂行したが、作戦は見事失敗し、さらには臆病者だとして、見せしめに3人の無実の兵士を、簡単な軍法会議を経ただけで処刑してしまうという物語。  難しい題材である反戦小説であるがゆえに製作会社も尻込みしてしまい、なかなか製作に漕ぎ着けなかったが、前作『現金に…』を好意的に観ていたカークが脚本を気に入ったため、プロジェクトは実現に向けて一気に動き出した。  その題材ゆえ、フランス国内でのロケを断念したり、映画を当てたいキューブリックが勝手にハッピーエンドに脚本を書き換え、カークを激怒させるなどのトラブルもあったが、様々なプレッシャーの中、大物俳優を使いこなし、自らの主張を堂々とフィルムに焼きつけている点では、初期キューブリックの完成形として考えて間違いないだろう。  ここでのキューブリックは、所謂「映画」としての枠組みの中で、最大限その個性を発揮している。原作が反戦小説とされていただけに、この作品も反戦映画と評されることが多いが、むしろ戦争そのものよりも、戦争を遂行する権力システムの中に潜む矛盾や独善、そのツケを末端の兵士の命に払わせようとするエゴや傲慢さを糾弾していて、それは『博士…』や『フルメタル…』にも通底しているものだ。まるでスティディカムのように滑らかに塹壕の中をすり抜けていくカメラや、突撃シーンに見られる、その後の『フルメタル…』での市街地突入シーンを彷彿とさせる平行同時移動ショットなど、キューブリックにしか出せないカメラワークを駆使した演出・撮影・編集は、すでに「巨匠」の風格を感じさせるものにさえなっている。  「映画」としての魅力に溢れる本作は、一般的な映画ファンにもとっつきやすいのか、公開当時から今日に至っても極めて評価が高い。メジャー2作目(劇場用映画としては4作目)にしてすでに「映画監督」としてピークを迎えたキューブリック。凡庸な監督ならこの時点で自己模倣に入るのだが、そんなちっぽけな地位にキューブリックが満足する筈もなく、自分にしかできない個性的で野心的な「映像表現」を目指して、更なる挑戦を続けていく事になる。 ...

【パロディ】ファミコンウォーズ

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   ウィキペディア によると88年8月の発売だから、映画公開からたった半年後だったんですね。当時このCMを見た時、「元ネタわかる人、いるのかな?」と思ったものですが、(ベトナム戦争映画に食傷気味だった当時の日本で、『フルメタル…』はあまり話題になってなかった)今じゃこのCMで『フルメタル…』を知ったという方も多いそう。時代ですねぇ。